今回は5300文字になりました
生まれ変わりというものを経験するとは思ってもいなかったが、こうして実際にファンタジーな世界に生まれ変わってみると、現代の日本はとても生活しやすい場所だったのかもしれない。
今生の私の名前はモビタ・モビという名前で、野比のび太のパチモノみたいな名前だが、何故か外見ものび太くんと似たような感じである。
眼鏡はかけていないがのび太くんに似ている自分自身に戸惑ったりもしたが、のび太くんよりかは運動神経がいいこの身体は、全てが完全にのび太くんと同じ訳ではないようだ。
なんてことを思いながら村を歩いてみたが、通りがかった家の前で、木刀で素振りをしていた今の私と同年代らしき少年が私の姿を見て「のび太くんっ!?」と驚きの声を上げた。
野比のび太くんを知っている少年は、もしかしたら私と同じ転生者かもしれないと思った私は「きみはドラえもんの野比のび太くんを知っているんですか?」と話しかけてみたが「そうだけど、もしかしてきみも転生者なのか」と更に驚いていた少年。
ゲド・ライッシュと名乗った転生者の少年に話を聞いてみたところによると、この世界は「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」という作品の世界で間違いないようで、原作のゲド・ライッシュという存在は、主人公がヒロインと仲良くなる為の踏み台のような存在だったそうだ。
とりあえずそんな存在になるつもりはないゲドは「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」と同じ運命を辿るつもりはないようである。
長い題名を略してダンまちとも呼ばれるこの世界には神が存在しており、天界に飽きて下界である地上に降りてきた神々は人々に神の恩恵を授けて、ファミリアというものを作っているらしい。
神の恩恵を授かりダンジョンに潜る冒険者として活動していたゲドの両親は元冒険者で荒事には慣れていて、野生のモンスターや害獣を狩る仕事もしているようだった。
ゲドもいずれはオラリオに行くと決めているそうで、両親から武器の扱いなどを教わっているみたいだ。
ゲドには剣と槍に斧や短剣などを扱う才能があるようだが、まずは剣の才能を集中して伸ばす為に木刀で毎日素振りをしていると言っていたな。
殆ど素人の私から見ても様になっていたゲドの素振りにはブレが無く、正確に木刀を振るえているように見えた。
それでもまだ満足していないゲドは、更に日々の鍛練を増やそうと考えているようである。
互いが転生者だと気付いたその日からゲドとはよく話すようになったが、村の全てを見て回ったことがない私とゲドは、この村の全てを知っている訳ではない。
この村はそれなりに大きく、村の鍛冶屋のような場所も存在しているようだが、鍛冶屋を営んでいるお爺さんは頼りにされていても、そのお爺さんの孫は、この村の人々には避けられているみたいだ。
私の両親やゲドの両親は避けていたりはしないが、村の他の人々には完全に避けられている鍛冶屋の孫。
私の両親とゲドの両親から頼まれて、私とゲドは農具の手入れを鍛冶屋にお願いしにいくことになったが、そこで私とゲドは1人の少年と出会うことになる。
私の顔を見て「のび太くんに似た顔してんな」と呟いた少年の声を聞いた私は「きみもドラえもんの野比のび太くんを知っているんですか?」と問いかけたが「きみもってことはあんたもドラえもんの野比のび太くんを知ってるんだよな」と驚いていた少年。
ジーン・グライペルと名乗った鍛冶屋の孫の少年も転生者であったようで、同じ転生者である私とゲドの存在に驚きながらも喜んでいたことは間違いない。
その日から私とゲドにジーンは友人となり、共に行動することが増える。
鍛冶屋のお爺さんのライン・グライペルさんは孫のジーンに友人ができたことをとても喜んでくれていて、手作りの菓子を私達にも用意してくれたり、鍛冶屋の仕事を見学させてくれたりと、良くしてくれた優しいお爺さんだった。
ジーンの誕生日には必ず特製のアップルパイを用意して祝ってくれるラインさんは、ジーンにとって大切な家族なのだろう。
鍛冶屋であるラインさんに鍛冶を習っていたジーンは鍛冶の才能があったのか、簡単なものなら既に作れるようになっており、余った鉄を使った素振り用の頑丈な鉄棒なども作ってくれていた。
それに喜んだゲドはさっそく鉄棒を持ち上げて素振りをしようとしたが、重くて全く持ち上がらない鉄棒に「無理、これ重くて持ち上がらない」と諦めていたゲド。
「あ、悪い。それオレ用だったわ」
そう言いながらゲドでは両手を使っても持ち上げられない鉄棒を、片手で軽々と持ち上げたジーン。
「ゲド用のはこっちな」
「いや、こっちはなんとか持ち上がるけど、1回振るだけで限界になりそうなんですが」
ジーンから差し出されたもう1本の鉄棒を受け取ったゲドは震える両腕で、なんとか鉄棒で素振りをしたが、宣言通り1回振るだけで力尽きる。
並みの子どもとは比べ物にならない怪力と身体の頑丈さを持っているジーンは、逞しい身体を持っているラインさんでも簡単には持ち上がらないものを片手で軽々と持ち上げる力を持っているようだ。
ラインさんよりもジーンが力持ちなことが、村の多数の人々にジーンが避けられている原因であるみたいだが、ジーンが理由もなく暴れるような存在ではないと知っている私とゲドはジーンを避けたりはしない。
それなりに大きい村であるからか、現在の私達よりも年上な青年達も存在していたが、鉄を仕入れにラインさんとジーンが出かけていて村に居ない時に、私とゲドに向かって「怪物と仲良くしてるお前らも怪物なんじゃねぇの」と嘲笑うような声で話しかけてきた年上の青年。
「怪物とは誰のことですか?」と落ち着いた様子で聞いた私に苛立ったように「ジーンの奴に決まってるだろ!」と喚くような声で青年は言った。
「ジーンは怪物ではないですよ人間です」と言う私に「あんな人間離れした力を持った奴が人間な訳ねぇだろ!あいつは怪物の血をひいてるに違いねぇ!」と言い放つ青年は、性格があまり良くない。
「怪物にはさっさとくたばってほしいもんだぜ!」などとまで言った青年に対し「言いたいことがそれだけならさっさと帰ってくれませんか、くだらない存在の貴方と話している無駄な時間が惜しいんですよ。ジーンとの会話の方がよっぽど楽しい」と言っておく。
すると逆上して殴りかかってきた青年に対し、私は拾った石でゲドは持っていた木刀で応戦。
友人を嘲笑い散々馬鹿にして喧嘩まで売ってきた相手を許すつもりはなかった私とゲドは、年上の青年相手だろうと1歩も退くことなく前に出ると、青年に何度殴られようが殴り返し続けた。
最終的には全く怯まずに立ち向かってくる私とゲドに怯えて逃げ去ろうとした青年を、容赦なく気絶させた私とゲドの勝ちで終わった喧嘩。
私とゲドはボロボロで身体中が痣だらけになっていたが、友人を馬鹿にした相手を倒せたことに喜んだ。
互いが互いに手を貸して、家まで歩いていた私達に近付いてきたのは焦った顔をしたジーンで「そんなに怪我してどうしたんだお前ら!?」と私とゲドのことを心配してくれていた。
「ちょっとこれはデパートの自動ドアに挟まって」
「こんな村にデパートはねぇからな」
明らかにバレるような嘘を言ったゲドに、呆れた顔で言葉を返したジーン。
「これは、まあ、性格を10倍以上悪くして良いところが消滅したジャイアンみたいなのと喧嘩しまして、私とゲドが勝ちましたが」
嘘ではないことを語る私に真剣な顔をしたジーンは「普段は温厚なモビタとゲドがコンビを組んで喧嘩したってことは相手は同年代じゃねぇな。年上の相手か」と冷静な判断力を見せる。
「多分手を出したのは相手の方が先だろうな。先に殴らせてから反撃しただろお前ら」
私とゲドのことをよく理解しているジーンは「で、喧嘩の理由は何だ?」と続けて聞いてきた。
「大切な友人であるジーンのことを侮辱されれば私だって怒りますよ」
「ああ、モビタの言う通りだ。俺達の友人のジーンを馬鹿にするやつは許さない」
そう答えた私とゲドに「そうか、確かにオレも友人のお前達を馬鹿にしたり傷付けるようなヤツが居れば怒るし、相手を許すつもりはねぇな」と言ったジーンは頷く。
「オレの為に怒ってくれて、ありがとな、モビタ、ゲド。お前達と友人になれて良かった」
私達に向かって照れくさそうな顔でそんなことを言って笑ったジーンは嬉しそうだった。
その後、私とゲドを殴った青年の前で「今度モビタやゲドに手を出したら、てめぇがこうなるぜ」と言いながら、鉄の棒を容易く捻り切ってから丸めて握り潰し、鉄の棒を歪な球体に変えたジーンの脅しと本気の怒気に泣きわめいて逃げ出した青年は、2度と私とゲドに近付くことはなかったな。
そんなことがあったりもしたが私とゲドにジーンは一緒に過ごし、剣の修行をするゲドを手伝ったり、ジーンが鍛冶で作ったものを試したりしながら過ごした日々。
ある日、ジーンの祖父でもあるラインさんが「ジーンとその友人のきみ達に、渡したいものがある」と言い出して、渡してきたのは私達用の防具と武器の数々。
ジーンには頑丈な大剣とナイフに鎧、私には短剣とダーツのような投擲武器に籠手、ゲドには長剣と短剣に軽鎧という装備が渡され、それぞれの身体にピッタリで扱いやすい装備は、鍛治師としてのラインさんの腕前が高いことを表している。
「モビタくん用の投擲武器の作り方はジーンに教えてあるから、数が少なくなったらジーンに補充してもらいなさい」
そこまで言ったラインさんが前のめりに倒れそうになった時、ジーンと私とゲドはラインさんを支えた。
「ジーン、なんとか気力だけで持たせてきたがワシはもう長くない。だがもうお前には大切な友人が2人居て、1人ぼっちじゃないから、ワシは穏やかな気持ちで最期を迎えられそうだ」
穏やかに微笑みながら言っていたラインさんの身体から、どんどん力が抜けていくことが感じられて、寿命が近いことを察した私は「ジーン!ラインさんに伝えたいことがあるなら今言うんです!後悔しないように!」とジーンに言う。
「ラインじいちゃんはいつもオレの誕生日にさ、アップルパイ作ってくれたよな。あれがオレは大好きだったんだ。ラインじいちゃんがオレが生まれた日を祝って作ってくれるから、それが嬉しかった。ありがとうラインじいちゃん、オレはじいちゃんの孫で幸せだったよ」
ラインさんに向かって口を開いたジーンの言葉は続いた。
「オレはラインじいちゃんに負けない鍛治師に、いやもっと凄い鍛治師になってみせる。だから安心してくれラインじいちゃん、オレは大丈夫だ」
祖父であるラインさんを安心させるように笑いかけながら言ったジーンの言葉に「ジーン、お前ならきっとワシよりも凄い鍛治師に」と笑顔を見せたラインさんの身体から完全に力が抜けていき、笑顔のまま動かなくなったラインさん。
友人の家族が亡くなる場面を間近で目撃した私とゲドは、何も言わず泣くのを堪えていたジーンに寄り添う。
それから死を迎えたラインさんの遺体をジーンと一緒に埋葬した私とゲドは、ラインさんの墓を作り、綺麗な花を供えておいた。
ラインさんが亡くなった翌日がジーンの誕生日で、ゲドと一緒に私は、ジーンの為にアップルパイを作って渡す。
「ありがとな、モビタ、ゲド」
ラインさんから聞いていたレシピ通りに、私とゲドが作ったアップルパイを食べながら感謝をしてジーンは笑った。
その日から数日後、オラリオに向かう為に村を出ることに決めた私とゲドにジーンは、旅支度を整えて村を出る。
旅の最中、襲い来るモンスターを倒しながら進んでいったオラリオへの道。
到着したオラリオで、ガネーシャ・ファミリアとガネーシャ様に神の恩恵を授かっていないことを確認してもらってから、入ることができた迷宮都市。
オラリオで神の恩恵を授かると決めてはいたが、どうせならまともな神様がいいと思っていたのは私だけではなく、全員がそうだった為、眷族となった相手を玩具扱いしない善神を探すと決めた私達。
そんな私達に「きみ達、ボクのファミリアに入らないかい?」と話しかけてきたのは、何の用途に使うのかわからない紐を装着していた女神様だったが、女神様を見て「メチャクチャ善神な女神様だぞ」と言い出したゲド。
ゲドが言うなら間違いないだろうが、一応名前を聞いておこうと思った私は「お名前を聞かせてくれませんか女神様」と女神様の名前を聞いてみた。
「ボクの名前はヘスティアさ」
そう答えてくれたヘスティア様は、ギリシャ神話の中でもまともな神様で、孤児達の守護神でもある女神様だった筈だ。
この女神様なら大丈夫かもしれないと思った私はゲドとジーンに「私はヘスティア様のファミリアに入ろうかと思いましたが、お2人はどうします?」と問いかけてみる。
「モビタが入るんなら俺も入るよ」
「モビタとゲドが入ると決めたなら、当然オレもだ」
私だけではなくゲドとジーンもヘスティア様のファミリアに入ることを決めると「勧誘が初めて成功して、ファミリアに入ってくれる子が一気に3人も増えた!」と大喜びしていたヘスティア様。
どうやら私達以外はヘスティア様のファミリアに入団が決まってはいないらしい。
まあ、まともな女神様であるヘスティア様を発見できたのは悪いことではないだろう。
神の恩恵を授かっていない幼い少年だったモビタとゲドは、あまり強くはありませんでしたが痛みに耐えて動く精神力を持っていた為、青年に勝利しました
ちなみにトリオが到着した現在のオラリオはダンまち原作が始まる3年前で、ヘスティア様は3年早く降りてきていたようです