今回は3100文字になりましたが、最後だけちょっととある少年視点になります
私の新たなスキルの1つである【増殖鏡】は、鏡に映した物を増やせるが、生物やひみつ道具などは増やせない。
つまり、生きているものやひみつ道具以外の物なら増やせるということになる。
そこで私はひみつ道具以外で、ドラえもんの劇場版に登場した役立ちそうな道具を増やせるかを試してみた。
私の魔法【シネマティッククリエイト】で創造できるものは、ドラえもんの劇場版に登場したものに限定されるが、ひみつ道具じゃなくても創造は可能だ。
1日に3回しか使えない制限がある【シネマティッククリエイト】の魔法を2回連続で使い、創造したのは宇宙開拓史に登場したひみつ道具ではないショックガンと、夢幻三剣士に登場した白銀の剣。
宇宙開拓史でロップルくんが持っていた拳銃型のショックガンと、夢幻三剣士の夢世界でのび太が手に入れた白銀の剣は、ひみつ道具という訳ではない。
ジーンが私の為に作ってくれた頑丈な鏡に映してみたショックガンと白銀の剣を【増殖鏡】で増やすことに成功した私は、ショックガンはヘスティア様の分も考えて4つ、白銀の剣はヘスティア・ファミリアの3人分で3つ増やしておく。
【シネマティッククリエイト】で創造したものは、一定時間が過ぎると消えてしまうが、創造したものをスキル【増殖鏡】で増やしたものは、一定時間が経過しても消えることはなかった。
下界では零能で、身体能力も常人並みなヘスティア様に自衛の手段として渡しておいたショックガン。
ゲドの【粗悪複製】で複製したスペアポケットは、ヘスティア様にも渡してあるので、使わない時は腹部に付けているスペアポケットの中にショックガンはしまわれることになる。
「うん、見た目も可愛いし、とても便利な道具だねこれは」
満足気に頷きながら複製品なスペアポケットに様々なものをしまったり出したりをしていたヘスティア様。
「これって売ってみたりはしないのかい?結構売れそうな気がするんだけど」
そんなことを聞いてきたヘスティア様は、スペアポケットという便利な道具だとは思っていても、悪用するという発想まではないらしい。
善神なヘスティア様は、便利な道具を悪事に使うという考えが出てきたりしないのかもしれないな。
「幅広く売り捌いてしまうと、必ず悪用してくる相手も出てくるでしょうし、売るつもりはないですよヘスティア様」
「ああ、そっか。悪用しようと思えば幾らでも悪用できてしまうかもしれないね。ボクの考えが足りてなかったよモビタくん」
「ヘスティア様は悪くありませんよ。悪いのは悪用しようとする悪人だけです。まあ、スペアポケットには人も入れようと思えば入りますからね。人拐いなどに使われたら面倒なことになります」
「こんな小さいのに人も入るの!?」
スペアポケットに人が入るということに物凄く驚いていたヘスティア様。
外見は白いポケットにしか見えないスペアポケットの収納力が高いことはヘスティア様も知っていたが、流石に人まで入るとは思っていなかったみたいだ。
「結構広がるんですよこのポケット」
そう言ってスペアポケットの口を大きく広げて見せた私。
「凄いね!こんなに広がるんだ!」
人間がすんなり入る位に広がったスペアポケットの口を見て、びっくりしながらもヘスティア様は興味津々。
「結構大きなものでも入ったりしますから、スペアポケットの収納性は高いですね」
「うん、やっぱり便利だね」
再び満足気に頷いていたヘスティア様と会話をしていると「ご飯できたよ」と呼びに来てくれたゲド。
それからゲドが作ってくれた料理を食べた私とヘスティア様。
ヘスティア・ファミリアにアルテミス・ファミリアと数多の精霊達に加えてアルフィアまで居て、かなりの数の料理を用意していたゲドに感謝をして食事をした私達。
私が【増殖鏡】で食材を増やせるようになったことで、食費がある程度浮いたのは確かだった。
大所帯での食事が終わってから、それぞれが自由に行動を始めた面々。
アルテミス・ファミリアは狩猟なども行う為、弓などの道具を手入れし始めていたが、アルテミス様も弓と矢を手入れしていた。
精霊達はそんなアルテミス・ファミリアの手伝いをしていて、仲良くやっているように見える。
ゲドは機嫌良く食器を洗っていて、ジーンはゲドが使っていた包丁を研いでいるところだ。
暇そうにしているのは、ヘスティア様と私とアルフィアだけということになっていたが「ボクはゲドくんを手伝ってくるね」と言って立ち去っていくヘスティア様。
その場に残ったのは私とアルフィアだけとなり、しばらく静かな時間が経過したが、珍しくアルフィアが先に口を開く。
「わたしには妹が居た。メーテリアという大切な妹だ」
語り出したアルフィアの言葉は止まらない。
「わたしと同じ不治の病だったメーテリアは、病弱で冒険者としては活動も出来ない妹だった」
かつての記憶を思い出すようにアルフィアは、語り続ける。
「弱った身体でも芯は強いメーテリアが、わたしにとって何よりも大切な存在であったのは間違いないだろう」
大切な肉親のことを思い出して語るアルフィアの顔は、とても穏やかだった。
「だがメーテリアは、わたしよりも先に亡くなってしまった。冒険者となっていたわたしよりも身体が弱っていたことが理由だ」
妹を亡くした記憶を思い出して話すアルフィアの顔が悲しみに染まっていく。
「だが、メーテリアは子を産んでいた。今でもその子は生きているだろう」
悲しみが消えて、暖かな表情が戻ってきたアルフィアの顔。
「その子の居場所は知っている。ここからはそう遠くはない」
そう語るアルフィアは、妹の子に複雑な気持ちを持っているのかもしれない。
「会えるのならば、あの子に会ってはみたいとは思う」
自身の願いを口にしたアルフィアは、閉じていた目を見開いて真剣な眼差しで言う。
「だが、今のわたしに妹の子に会いに行く資格があるのだろうか」
「貴女が会いたいと思うのなら、会ってくればいいと思いますよ。その子が嫌がっていたらもう会わない方がいいですが」
「お前らしい答えだなモビタ。では精々嫌がられないようにするとしよう」
私の言葉を聞いて口端を緩め、僅かに微笑んだアルフィアは、近場にある村に向かうつもりらしい。
もう戻ってはこないかもしれないアルフィアには餞別として、ある道具を渡しておくことにした。
それは魔法【シネマティッククリエイト】で創造した道具で、魔界大冒険に登場した北風のテーブルかけというひみつ道具ではない魔法の道具を【増殖鏡】で増やしたものだ。
アルフィアには使い方を教えておき、幾らでも食べたい料理が出せる魔法のテーブルかけだと説明しておく。
それからアルフィアは妹の子が居るという村に向かったようで、もうアルフィアが戻ってくることはない。
まあ、これからアルフィアは家族と一緒に生きていくのだろうな。
それはきっと悪いことではないと私は思う。
とあるのどかな村。
そこでおじいさんと一緒に暮らしていた白髪赤目の少年が居た。
そんな少年が農作業をしていたある日、少年の家に訪れた来客。
来客である灰色の髪をして黒衣を纏う女性は、少年に近付いてくる。
「今日からわたしがお義母さんだ」
「ええええっ!」
少年が物凄く驚くようなことをいきなり言った灰色髪の女性。
それから少年の家には新たな家族が増えたりもした。
お義母さんによくぶっ飛ばされるおじいさんに「おじいちゃーん!」と悲鳴を上げたりもする少年。
そんなことがあったりもしたが、新しく家族が増えたことを少年は純粋に喜んでいた。
家族であるお義母さんと手を繋いで歩く少年の顔に浮かぶ笑みを見て、お義母さん、アルフィアの顔にも微笑みが浮かぶ。
それはとても穏やかな日々。
家族が増えたことが嬉しかった少年は、間違いなく幸せだった。
ちなみに【増殖鏡】で増やした白銀の剣は、ジーンが素材を確認したりもしていますが、白銀に似た未知の金属で作られていることが判明しました