今回は3700文字で、転生ゲド視点の話になりました
冒険者が思いきり暴れても問題ない場所であるダンジョン。
空間操作の空間転移で、単独転移した俺はダンジョンの深層に存在するコロシアムと呼ばれる場所へと向かう。
たまに1人で剣を振りたくなる時に訪れていたコロシアムという場所は、絶えず生まれ続ける深層のモンスター達が殺し合っている危険地帯。
モンスター同士で殺し合って魔石を喰らい、無限に現れる強化種。
そんな危険なコロシアムであってもLv8となった今の俺には、物足りない場所であった。
現れる様々なモンスターを相手に戦っていると、あっという間に倒せてしまう為、手応えがない。
本気で戦えた海竜や、黒騎士の竜女と、穢れた精霊が用意した竜に、大英雄エピメテウスなどと比べると数段以上に劣るコロシアムのモンスター達。
数多の魔石を喰らった強化種であろうと足りていない実力。
剣の1振りで終わってしまう戦いは、単なる作業のようになってしまう。
そろそろコロシアムは卒業かな、と考えながら魔石ごと斬り裂いていたモンスター達の身体。
剣を振るって気分転換にはなったので、帰り支度をしていた俺は、コロシアムに足を踏み入れてきた新たな怪物の姿を見て、空間転移を使うことを止めた。
それは以前戦った黒騎士の竜女に酷似した怪物であったが、その体色は黒とは正反対な純白で、全身が鎧のような白い甲殻で覆われていたが、人間の女性のような口元だけは露となっている。
襲い来るコロシアムの怪物達を相手に剣を振るい、容易く両断していった白騎士。
剣の技量は間違いなく黒騎士よりも上な白騎士は俺に近付いてきたかと思えば、一定の間合いを取って立ち止まり、手に持つ白剣を地に突き刺して、剣の柄に両手を乗せた。
「わたしの名はアルビオン。貴方の名を聞かせてほしい」
人の言葉を喋り出して名まで名乗ってきた怪物に対し、驚く気持ちはあったが、例え相手が怪物だろうと名乗ってきた相手に名を聞かれたなら答えておこうと思った俺は、名を名乗ることに決める。
「ゲド・ライッシュ」
「ゲドというのですね。それではゲド、貴方は剣を持った黒い竜女のことを覚えていますか?」
俺の名を聞いた後に問いかけてきた白騎士の竜女。
「覚えてるよ、倒すには苦労した」
白騎士は黒騎士と何か関係があるのか、とは思いはしたが、嘘をつく理由もないので正直に答えておく。
「わたしの記憶には剣を振るいわたしを斬り裂いた貴方の姿が鮮明に残っています。生まれ変わってもその記憶は失われることはありませんでした」
「生まれ変わったということは、あの黒い竜女はきみだったってことか」
「ええ、その通りです」
俺と戦った記憶を覚えている白騎士の竜女は、黒騎士の竜女の生まれ変わりであったようだ。
「再び貴方と出会うことをずっと夢見ていました。わたしは貴方に勝ちたい」
地に突き刺していた白剣の柄を掴み、剣を引き抜いた白騎士の竜女は、白剣の切っ先を此方に向けて言う。
「ゲド、どうか再戦を」
再戦という願望を口にした白騎士は、どうしても俺と再び戦いたいみたいだった。
より強い相手と出会えることを幸運だと感じる俺は、発展アビリティの幸運が仕事してくれたのかな、とは思ったが、それを口にしたりはしない。
「戦おうアルビオン、再戦だ」
剣の竜女アルビオンが望んだ再戦を受けて立った俺は、蒼剣を構え直す。
「感謝します、ゲド」
剥き出しの口元に嬉しそうな微笑みを浮かべた白騎士は、白剣を構えたまま突撃してきた。
黒騎士であった頃よりも隙がない魔力放出によって、瞬時に最高速へと到達した白騎士が振るう白剣。
用いていた【戦場支配者】のスキルで、反応速度を上昇させていた俺は、なんとか加速した白騎士の剣に反応し、振るわれた白剣の軌道に蒼い剣を割り込ませて斬撃を防いだ。
白剣による斬撃を受けた瞬間に巻き起こった凄まじい暴風。
それにより、俺と白騎士の周囲に集まろうとしていたコロシアムの怪物達が、凄まじい勢いで吹き飛ばされていって壁面に埋まる。
スキル【亜種龍手】で身体能力を倍加し、完全不壊の「覇海の剣」でなければ、受け止めることはできなかった凄まじい白剣の一撃。
しかしそれすらも小手調べであったようで、魔力放出をして加速した後、再び魔力放出を行う2段加速まで行ってきた剣の竜女。
白騎士の白剣が赤く染まる程に、幾度も斬り裂かれていった俺の身体。
加速に次ぐ加速、凄まじい高速で行われる戦闘。
【竜鱗鎧化】の装甲すらも容易く斬り裂く白剣の威力は高い。
白剣で斬り刻まれた全身を【秘伝治癒】で癒して流れる血を止めたが、気休め程度にしかなっていなかった。
だがそれでも、まだ戦えるなら、戦うだけだ。
幾度も見た白騎士の魔力放出による加速。
それを自らのスキルを用いて自分なりに再現する。
スキル【竜息吹】により竜のブレスを放てる俺は、身体の何処からでも火属性のブレスを放つことが可能。
【竜鱗鎧化】で纏う装甲に覆われた背から【竜息吹】で火炎のブレスをジェット噴射の如く放射し、加速していく。
魔力放出ならぬ火炎放出により加速した身体を動かし、多段火炎放出の加速により上回った白騎士の速度。
此方の攻撃が白騎士へと当たり始め、白騎士の甲殻を斬り裂く蒼い剣。
超高速で行われ続ける戦いで、動きを加速する為に放出されていく魔力と火炎。
交差する白剣と蒼剣の刃が火花を散らし、幾度も打つかり合う。
激しく鳴り響く金属音、絶え間無く打ち合わされた白剣と蒼剣。
より速く、より強くなっていく互いの攻撃。
止まることなく動き続けて、剣を振るう俺と剣の竜女。
真正面から打ち合った互いの剣により、弾き飛ばされた互いの身体。
距離を取ることになった俺と白騎士は、剣を構えた状態で、最大の加速を行う為に力を溜めていた。
高まる魔力、放出される時を待つ火炎。
地を蹴った互いの背から、放出された魔力と火炎により、これまでの最高速を超える速度に加速した俺と白騎士。
僅かな隙が敗北に繋がる高速での戦闘。
スキル【亜種龍手】の効果の1つには、銀色の龍の手を生やす効果がある。
蒼い剣を握る両手は塞がっているが、背から生やした銀色の龍の手は、まだ空いている為、使えるスキルがあった。
「【盗賊窃盗】!」
背から生えた銀色の手を相手に向けて用いた【盗賊窃盗】のスキルの効果は、相手の持つ何かを奪うというものだ。
白騎士が持っているものは白剣以外には存在しない為、俺の銀色の手には白騎士の白剣が握られており、完全に素手となった白騎士には、俺の蒼剣を防ぐ手段はない。
深々と剣の竜女を斬り裂いた蒼剣。
致命的な傷を負って地に倒れた白騎士との再戦は、再び俺の勝利で終わる。
「まさか、あんな手があるとは思ってもいませんでした」
「切り札は、最後まで取っておくもんさ。俺は冒険者だからね」
「貴方を剣士だと判断していたことがわたしの敗因だったようですね」
「冒険者なら何でもするからね。こんな手も使うよ」
「再び貴方と戦ったことには後悔していません。敗北したわたしの魔石を砕いてくれませんかゲド。それで貴方の完全な勝利となる」
「その要請は却下ね。アルビオンには生きていてもらいたいかな」
「既に助かるような傷ではないのですが、遅かれ早かれわたしは死ぬ運命ですよ」
「なら、その運命が変われば問題ないね」
剣の竜女との会話を切り上げて、俺は魔法を使うことに決めた。
「【心理之王、御調子者、調子者】」
唱えるのは詠唱により、効果が変化する魔法の詠唱。
「【道化の星よ、運命を変える奇跡をここに】」
今回使う効果は、運命を変える効果。
「【ムードメーカー】」
発動した魔法により、死の運命が消え去った剣の竜女アルビオンの傷が消えていく。
「何故、怪物であるわたしを助けたのですか?」
「生きていてほしいと俺が思ったからだね。俺以外の人間を襲おうとは考えてないでしょアルビオンは」
「確かに貴方以外の人間には興味はありません。理由が無ければ他の人間に手を出すことはないでしょう」
「なら大丈夫だよ」
「怪物であるわたしが言うのも何ですが、貴方という人は変わっていますね」
そう言った剣の竜女の口元は、笑みの形になっていた。
それからダンジョンでアルビオンと別れて、空間転移で戻ってきた俺は、完全には塞がってはいない身体の傷をジーンに治療してもらってから、女神ヘスティアに確認してもらった背の恩恵。
全ステイタスがSSSだった俺は、予想通りランクアップできるようになっていたので、行っておいたランクアップ。
ゲド・ライッシュ
Lv9
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
幸運:S
耐異常:S
剣帝:B
神秘:C
精癒:D
閃斬:F
覇撃:H
斬術:I
《魔法》
【リトルフィート】
【ムードメーカー】
【エクスプロージョン】
《スキル》
【幸運冒険者】
【創薬師】
【特殊火遁術】
【渦槍水流撃】
【竜鱗鎧化】
【不死王手】
【盗賊窃盗】
【亜種龍手】
【寒氷陣】
【健全化】
【秘伝治癒】
【竜撃会心】
【竜息吹】
【千里狙撃】
【戦場支配者】
【竜翼飛行】
【雷霆招来】
【粗悪複製】
【断切力】
・空間を断ち切る力が使用可能となる
・攻撃には使用できない
新たに増えていたスキルは、攻撃には使用できないようだが、それ以外には役立ちそうなスキルだ。
ついにLv9になったが、先にLv9になったモビタに追い付けて良かったとは思う。
異端児の剣の竜女、白騎士アルビオンは黒騎士の竜女よりも強い怪物となりました
まだ強さに限界は来ていないので、更に強くなることが可能な白騎士になります