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黒竜が風の大精霊によって風印されているという竜の谷。
【異界記憶】で竜の谷に関する情報も得たジーンが言うには、そんな竜の谷には黒竜以外にも数多の竜が存在しているそうだ。
黒竜に比べれば木っ端とも言える竜達ではあるが、力ある竜達もその中には含まれている。
しかもその竜達は風印の隙間から外に出てきたりもするようで、度々竜の谷から降りてきた竜達により、人々が被害を受けることもあるらしい。
竜の谷から竜達が降りてくることは世界的な問題となっていて、訪竜問題とも言われているとのことだ。
訪竜問題は放置していい問題ではなく、この世界で生きるならどうにかしなくてはいけない問題だろう。
ジーンが用意したパワードスーツを着用したヘスティア様やアルテミス・ファミリアの面々は移動速度も向上し、下界では身体能力が常人並みな神様達に合わせた速度で移動する必要がなくなった為、世界を巡る速度が上がった。
その結果、竜の谷から降りてきた竜に襲われていた町を助けることに成功し、竜への対策として町にオリハルコンで巨大な防壁や避難場所を作成するジーンを手伝った私達。
私が【増殖鏡】で増やした大量のオリハルコンをジーンが防壁に加工し、全員で協力して町の周囲に設置していく。
パワードスーツでLv5の冒険者並みになっているヘスティア様やアルテミス・ファミリアの面々も、重量があるオリハルコンの防壁設置を手伝ってくれたことで、早めに設置が完了した防壁。
地上を移動する翼のない竜への対策となる防壁の設置が完了した後、飛竜などの飛行を可能とする竜が飛来した場合に避難する避難場所を作成していくジーン。
総オリハルコン製の壁と天井に覆われた巨大な箱形の避難場所を幾つか町中に用意し、飛行を可能とする竜がやって来たら逃げ込む場所にした。
完成した防壁と避難場所があれば、竜の谷から降りてきた竜でも、そう簡単には人を襲えない。
それからも竜に襲われていた町を幾つか助けて、オリハルコンで防壁と避難場所を用意していった私達ヘスティア・ファミリアとアルテミス・ファミリアの面々。
竜以外にも地上のモンスター達による被害を防ぐ為に、町や村に防壁を設置したり、地上のモンスター達を倒していった全員。
パワードスーツが無ければゴブリン相手にも苦戦したであろうヘスティア様でも、アーマードヘスティア様となっている今なら問題なくモンスターを倒せている。
竜を倒し、モンスターを殲滅して、旅を続けたヘスティア・ファミリアとアルテミス・ファミリアは、いつの間にか有名になっていたようだ。
以前ヘスティア・ファミリアが倒した海竜についても同じ船に乗っていた船乗り達から広まっていたようで、高まっていたヘスティア・ファミリアの名声。
しかしヘスティア・ファミリアの私達は特に名声を高めようと思っていた訳ではなく、モンスターが居たから倒しただけであったり、誰かが困っていそうだから助けただけではあったりもした。
それでも私達に助けられた人々が広めたことで、女神の騎士団と呼ばれるようになった私達ヘスティア・ファミリアとアルテミス・ファミリア。
何故騎士団なのかとは思ったが、どうやらパワードスーツを知らないこの世界の人々にはパワードスーツが全身鎧に見えたからであり、大多数がパワードスーツを纏っている集団が騎士団のように見えていた為、女神の騎士団と呼ばれるようになったみたいだ。
新たに呼び名が増えようと変わらずに過ごしていたヘスティア・ファミリアとアルテミス・ファミリアだったが、そんなある日、私達に会いに来た1人の男性。
「あなた達が女神の騎士団か。会えて光栄だ」
そう言ってきた長身で金髪の男性は、学区という場所で教師をしているらしい。
レオン・ヴァーデンベルクと名乗った男性は、オラリオのオッタル以外の冒険者よりも強そうに見えたが、そんな男性がLv7で、ナイト・オブ・ナイトと呼ばれる存在であるとアルテミス様が教えてくれた。
それから旅の同行者として加わったレオンさんは、私達ヘスティア・ファミリアの軽い手合わせを見て、驚愕に目を見開いていたな。
Lv9である私達の動きを完全には目で追えていない様子だったレオンさん。
塊のような黒大剣を持つジーン1人に対し、漆黒の槍を両手で持ち、スキル【亜種龍手】で背から生やした銀色の手で蒼剣を持ったゲドと、白銀の剣の柄を両手で握った私がコンビを組んで、武器を振るう。
Lv9の私達にとっては、ちょっとした運動程度の動きだが、それでもLv7であるレオンさんでは私達の動きを目で捉えられていなかった。
黒大剣を振るうジーンを相手に2人がかりで戦う私とゲド。
Lv9になったジーンの常時発動スキル【祝福巡継】により、能力値に900加算されていた私達2人。
ジーンが一定の距離に居る限り、常に強化されている私とゲドの2人がかりでも、そう簡単には倒せないジーンは凄まじく強い。
少しずつ激しくなっていく手合わせにより、巻き起こる暴風。
アーマード化していなければヘスティア様やアルテミス・ファミリアでは飛ばされていた程に荒々しい風が吹き荒れる中、武器を打ち合わせた私達。
連続で鳴り響く激しい金属音が、武器同士が接触したことを周囲に教えていく。
両手で持つ槍を用いて突きを繰り出し、背から生やした銀色の手で蒼剣による斬撃も放つゲドの攻撃を、片手で持つ大剣の腹で受け止めていくジーン。
回り込もうとした私の動きにも反応して手早くゲドを弾き飛ばし、私に大剣を横薙ぎに振るってきたジーンの一撃を、白銀の剣で受けた私は、力強いジーンの一撃によって地面を両足で削りながら後退させられる。
高速で繰り広げた手合わせにより、しばらく続けていた攻防。
レオンさんはなんとか必死に私達の動きを確認しようとはしていたみたいだが、どうやら私達が最後に飛ぶ斬撃を軽く放ったところしか見えていなかったみたいだった。
「残光すらも容易く放つ。きみ達のLvは、幾つなんだ?」と問いかけてきたレオンさんには、ヘスティア・ファミリア団長の私が代表として「ヘスティア・ファミリアは団員全員がLv9ですよ」と答えておく。
私達3人がLv9なことに凄まじく驚いていたレオンさんは「これまできみ達は、どんな戦いを繰り広げてきたんだ?」とも聞いてきた。
とりあえず私達のLv1からLv9になるまでの戦いについて、異端児関係の情報を除きながら、休憩も挟んで語ってみたが「きみ達は、よく生きていたな」とレオンさんが思わずそう言ってしまう程に、私達のこれまでの戦いはとんでもなかったのかもしれない。
その後、残光が何なのかをレオンさんに聞いてみたが、ゼウスやヘラのファミリアの団員が使っていた飛ぶ斬撃を、レオンさんは残光と名付けて使っているそうだ。
一応飛ぶ斬撃にも名前があった方がいいかと考えた私達は、これからは飛ぶ斬撃を残光と呼ぶことに決めた。
旅の最中、ジーンの鍛冶師としての腕や治療魔法、ゲドの作るポーションに、私のスキルなどを少し知ったレオンさんは「きみ達には是非とも教員として学区に来てほしい」と言ってくるが、学区の生徒としてではなく教員として勧誘された私達。
まだ10代の私達が教員になるのは学区の生徒達に反発されないだろうか、とは考えたが、更に勧誘を続けてきたレオンさん。
「正式な教員になるのが難しいということなら、外部協力者として臨時講師というのはどうだろうか?」
なんて提案までしてくるレオンさんは、どうにかして私達を学区に招きたいという気持ちがとても強い。
鍛冶師としてだけではなく治療師としても優秀なジーンや、凄腕な薬師のゲドを勧誘したい気持ちは、理解できる。
それでも私達が学区に行く必要が特にないので、お断りするしかないレオンさんからの勧誘。
「そうか、それはとても残念だ」
物凄く残念そうにしていたレオンさんには悪いが、今の私達が学区を訪れることはないだろう。
勧誘を断られたレオンは、ちょっと落ち込んで学区へと戻っていきました