今回は4800文字となりました
ヘスティア・ファミリアの担当をしてくれているギルド職員のエイナさんに、私達3人全員の全ステイタスがSに到達していることを明かすと、物凄く驚いていたエイナさん。
私達が冒険者になって1ヶ月も経過していないのに全ステイタスがSに到達しているのは、普通ではありえないことであり、しかもそれが一気に3人ともなると驚きも倍増されていたようだ。
鍛冶や農作物の飲食で全ステイタスの熟練度が上昇するスキルを持っている私とジーンは兎も角として、そんな私とジーンに負けないぐらいステイタスが上昇していたゲド。
どう考えても成長に補正がかかるようなスキルがゲドに発現している可能性が高そうだが、ヘスティア様はそれを隠したいと思っているのかもしれない。
まだ明かさない方がいいとヘスティア様が思っているのなら、眷族である私達も何も聞かない方が良さそうだ。
そんなことを考えながらも、上層の範囲なら何処に行っても構わないとエイナさんに許可を得た私達は、到達階層を更新することにしてダンジョンに向かう。
1階層でゴブリンやコボルトを倒しながら薄い青色に染まった壁面と天井が特徴的な1階層を進んでいくと、天然の迷路であるダンジョン内には、二股に分かれた道や十字路、緩やかな下り坂などの一定間隔で整った道が形作られていた。
特に異常な事態もなく、順調にダンジョンの階層を進んでいた私達は、遭遇したモンスターを倒して魔石を抜き取り、モンスターが残したドロップアイテムと魔石を別々の袋に詰めていく。
袋が満杯になってきたらゲドの【リトルフィート】で袋ごと中身も小さくし、小さくなった袋をバックパックへとしまい、荷物を最小限にして続けたダンジョン探索。
コボルトの爪や、ゴブリンの牙などのドロップアイテムの出現確率が高く、袋が直ぐに満杯になってしまうが、ゲドの【リトルフィート】で小さくした袋を沢山持ってきているので、袋が足りなくなるということはない。
階層を降りていくと薄青色だった壁面や天井が淡い緑色に変わっており、通路の幅も細くなって、複雑化している迷路の構造。
ダンジョンの6階層、この階層から出現するモンスターは低級なモンスターとは異なり、駆け出し冒険者では倒せないような存在も現れるようになる。
歩みを進めていった私達が辿り着いたのは部屋状の広い空間で、正方形を形作る広間には視界を遮るものは何もなかった。
薄緑色の壁面だけが見えるような殺風景な空間には先に繋がる道は無く、完全に行き止まりであるみたいだ。
私達が引き返そうと考えたところで、何かが割れるような音が連続して響き渡ったが、音の出所はダンジョンの壁面で間違いない。
モンスターはダンジョンの中で生まれ、迷宮の壁を内側から破り誕生する。
正方形の広間の壁という壁から生まれ落ちるのは、大量のモンスター達。
地面に落下するダンジョンの破片を撒き散らし、壁面の亀裂から現れたのは大量のウォーシャドウ。
身の丈は160cmほどで手足の先から頭の天辺まで黒一色に染まった身体を持つウォーシャドウは、シルエットだけなら2腕2足で人の形に近い。
十字の形を描く頭部に顔面と思われる手鏡のような真円状のパーツがはめ込まれているウォーシャドウは、6階層から出現するモンスターだ。
異様に長い両腕の先に、鋭利な3本の指を持つウォーシャドウの3指は、ナイフの形状に酷似している。
ゴブリンやコボルトとは比較にならない移動速度で3本の指を振るうウォーシャドウの戦闘能力は6階層でも随一で、新米の冒険者では敵わない相手であるとエイナさんも言っていた。
そんな相手が一気に10体も現れることになってしまったが、両手に2丁の拳銃を無詠唱魔法【ガンスミス】で作り出した私は、2丁の拳銃で行う早撃ちで的確にウォーシャドウの頭部に弾丸を叩き込んだ。
鏡面のような頭部の部位を穿ち貫いた弾丸により、倒れたウォーシャドウ達は動かない。
手分けしてウォーシャドウの魔石を抜き取ると、全てのウォーシャドウがドロップアイテムとして指刃を残す。
ウォーシャドウの指刃には布を巻いておき、鋭利な刃で袋を突き破ることがないようにしてから慎重に、入れ方を考えながら袋に入れてゲドの魔法【リトルフィート】で小さくした袋。
それからダンジョン内を移動していったが、倒したウォーシャドウが毎回毎回指刃を残す為、大量のウォーシャドウの指刃が集まってしまう。
それは悪いことではないが、指刃に巻く布が流石に足りなくなり、一旦ダンジョンを出ることにした私達。
ゴブリンやコボルトのドロップアイテムは魔石と一緒にギルドで換金したが、ウォーシャドウの指刃は全部ジーンに渡して、武器に加工してもらうことに決まる。
鍛冶師としての腕前を上げる為、暇さえあれば鍛冶を行っているジーンの腕は悪くない。
大量のウォーシャドウの指刃を用いて、ジーンが作成していった武器の数々。
ナイフのような指刃を投げやすい形に加工した十数本の投擲武器「シャドウダート」は私に渡され、複数の指刃を用いて作り上げられた長剣の「影刃」はゲドに渡された。
全員用に「シャドウナイフ」というナイフも1本ずつ作られ、大量の指刃を用いて作成された「影塊」という大剣はジーンの新たな武器となる。
全員の武器が一新されてから再びダンジョンに潜った私達は、再び6階層にまで到達したが、薄緑色の十字路で三方向からそれぞれ現れたモンスター達に襲われることになった。
正面の道から来ていたのは全身が血にまみれたトロールで、手には深層のモンスターが持つような天然武器の石刃を持っており、あのトロールが少なくとも深層にまで到達していることは間違いない。
明らかに私やゲドよりも格上な強化種のトロールには、躊躇いもなくジーンが突撃していき、相手をしている。
十字路の左からやって来ているモンスターは、インファント・ドラゴンではあるが、通常のインファント・ドラゴンよりも大きく、何故か首が2つある双頭の竜となっていた異形のインファント・ドラゴン。
双頭のインファント・ドラゴンはゲドが相手をすると決めて、長剣を振るい戦い始めたゲド。
十字路の右からやって来ていたモンスターはミノタウロスであるが体色が青色であり、角まで青いという青一色のモンスターだった。
青いミノタウロスは私を標的に定めたようで、突撃してくるミノタウロス。
それぞれがそれぞれのモンスターを相手に戦いを始めた私達。
現在の私の無詠唱魔法【ガンスミス】の弾丸では、青いミノタウロスの外皮を貫くことはできないようで、弾を撃ち込まれた衝撃ぐらいしかミノタウロスには通っていない。
Lv2だったザニスよりも格上な青いミノタウロスは、ザニスとは比べ物にならないほどに頑丈で、そしてザニスよりも素早い動きをする。
迫り来る青い豪腕が振るわれて、あまりの素早さにそれを避けきれずに直撃した私の身体が吹き飛ばされた。
骨が軋み、肉が潰れ、痛烈な打撃を受けた身体が痛みを感じていたが、それでも立ち上がった私は、ミノタウロスとの戦いを止めることはない。
無詠唱魔法【ガンスミス】は通じないが、私の攻撃手段はそれだけではなく、ジーンが作ってくれた武器がある。
ウォーシャドウの指刃を元に作成された投擲武器を構えた私は、青いミノタウロスへと、影のような色合いのダートを投擲。
スキル【銀矢投擲】により、投げた投擲武器の威力が増大し、投擲武器を装備した時に一時的に発現する発展アビリティ投擲によって強化されたダートの攻撃。
それは頑丈な青いミノタウロスの外皮を貫くことができる攻撃となり、青いミノタウロスの腕へと突き刺さったダート。
私から与えられた痛みによって怒り、苛烈な攻撃を行ってきた青いミノタウロス。
四肢を用いて打撃を繰り出すミノタウロスの攻撃を何度か受け、吹き飛ばされて壁面に叩きつけられながらも私は投擲による攻撃を続けた。
ミノタウロスの四肢の関節部に突き刺さり、可動域を狭めたダートによって動きが鈍った青いミノタウロスへと接近し、ウォーシャドウの指刃を素材に作られたナイフを胸部へと突き刺す。
浅くしか刺さらず、魔石にはまだ届いていないナイフの先端。
四肢の関節部に数本のダートが突き刺さったまま強引に身体を動かした青いミノタウロスの腕が至近距離から振るわれる。
薙ぎ払うような豪腕の一撃を受けた私の片腕がへし折られ、その勢いのまま吹き飛ばされる私の身体。
ダートは全て使いきって残っていないが、ミノタウロスの胸部に突き刺さったナイフを更に押し込んでやれば此方の勝ちだ。
折れてはいないもう片方の腕に無詠唱魔法【ガンスミス】で作り出した大口径の拳銃を握り、撃ち放つ弾丸。
ナイフの柄頭へと連続で着弾した弾丸が切っ先を押し込んでいき、魔石へと到達したナイフの刃が青いミノタウロスの身体を灰へと変える。
私はなんとか勝ったが、ジーンとゲドがどうなったか確認しなければいけない。
まずはゲドがどうなったか確認したが、双頭のインファント・ドラゴンの首を斬り落として倒していたゲドは疲労困憊で荒い息をしていて、全身が火傷状態になっていた。
「大丈夫、では無さそうですねゲド」
「そっちも腕が折れてるから大丈夫じゃないなモビタ」
とりあえず火傷をしているゲドの身体には応急処置としてハイポーションをかけていったが、それで火傷の痛みがある程度は和らいだらしい。
ゲドが用意してくれたハイポーションは質がいいので、効果も高いようだ。
最後に血まみれのトロールと戦っていたジーンがどうなったかゲドと一緒に確認しに行ってみると、全身が傷だらけで素手になっていたジーンがトロールの顔面を殴り潰す瞬間を目撃することになった私とゲド。
全身が裂傷だらけになりながらも血まみれのトロールに勝利したジーンは、此方に気付くと「お前ら大丈夫か!?」と言いながら近付いてきて全治魔法で私とゲドを治療してくれた。
「治療してくれてありがとうございます。でもジーンも早く怪我を治してくださいね」
「火傷治してくれたのは助かるけど、ジーンの裂傷も結構深いから早めに治した方がいいぞ」
「オレの怪我の治療なんかよりも、先にモビタとゲドの怪我の治療がしたいと思っちまったんだから仕方ねぇだろ」
そう言った後に全治魔法で自身の治療をしたジーンへと、ヘスティア・ファミリア団長としての言葉を私は伝えることにする。
「ジーンのその気持ちはありがたいんですが、唯一の治療師が先に倒れられても困りますので、直ぐに治療しないと死んでしまうような時以外はジーン自身の治療を優先してください」
「そうそう、団長のモビタの言う通り」
「わかったわかった。今度からそうすりゃいいんだろ」
そんな会話をした私達は倒したモンスターが残したものを集めて、今日はダンジョンを出ることにしたが、通常のモンスターとは違うモンスターと6階層で遭遇したことはエイナさんに報告しておいた方が良さそうだ。
ジーンやゲドから聞いた血まみれのトロールや双頭のインファント・ドラゴンについての情報に青いミノタウロスも加えて、エイナさんに話してみたが「強化種の血まみれトロール!双頭のインファント・ドラゴン!青いミノタウロス!」と言いながら驚きを隠せていない。
エイナさんは私達が交戦したモンスターが6階層に居たことに驚くと同時に、そんなモンスター達を倒した私達にも驚いていたみたいだった。
「うう、胃と頭が痛い」と言い出したエイナさんには「これをどうぞ」とゲドが作成した胃薬と頭痛薬を渡しておくと、よく効く薬に喜んでいたエイナさん。
なんてことがあったりもしたが戻ってきたヘスティア・ファミリアのホーム。
「おかえり!」
そう言いながら出迎えてくれたヘスティア様へと私達は「ただいま」と言った。
その後、私とゲドにジーンはヘスティア様にステイタスを確認してもらったが、どうやら3人ともランクアップができるようになっていたらしい。
通常とは違うモンスターと戦って倒したことが偉業となったのかもしれないな。
ちなみにジーンが戦った血まみれのトロールはLv5並みの強さがあり、ゲドが戦った双頭のインファント・ドラゴンはLv2の最上位、モビタの戦った青いミノタウロスはLv2上位並みでした