中々続きを書くタイミングに恵まれませんでした。
水着キキョウ、あまりにも卑しすぎますね。
でも恒常なんですよ。
我慢しなきゃいけないんです。
ガンダムがそう言っている。(最終回に便乗するな)
ーーーーー
ゲーム開発部の部室棟に着くと、何やら部屋の中が騒がしかった。
『お取り込み中でしょうか…?』
「気にしないで、いつものことだから。」
カラカラと部室のドアを開ける。
すぐに2対のヘイローの灯ったそっくりな頭髪が見えた。
「もう!お姉ちゃんまたシナリオが思いつかないからってネタ出ししてもらおうとするの本当に良くないよ!?」
「そんなわけないじゃん!今の時世はAIの時代だよ!ネットの海に飛び込めば優秀なAIが次々に展開を出してくれるんだよ!?使わない理由がないじゃん!」
「クリエイターとしての矜持はお姉ちゃんにないの!?」
「使える物を有効活用ているだけだもん!!」
「ふ、2人とも…喧嘩はやめて…。」
「うわーん!またモモイとミドリがMetsで喧嘩をし始めました!!」
「えっと…みんな元気いっぱいだね。」
「「「「………。」」」」
自分たちの醜態を私とコトネに見られていることを自覚した瞬間、4人は揃ってフリーズした。
「ごめんね、急に来ちゃって。」
「もう!来るなら連絡してくれれば良かったのにさ!」
「うぅ…恥ずかしいよぉ…。」
「騒がしくてごめんなさい……。」
「先生!アリスは先生と会えて嬉しいです!!」
「私もだよ、アリス。」
アリスの頭を撫でる。
すると、ミドリがコトネに目を向けた。
「ところで、その子は…?」
「この子は水無底コトネちゃん。トリニティの生徒だよ。」
『先生、今わざと私をちゃん付けで呼びましたね?子供に見えるからですか…?』
「そりゃ生徒だからね。」
『答えになってません。』
ゲーム開発部の子達もコトネもやはり背が低いこともあってか、かなり幼なげに見えてしまう。
なお、決してロリコンとかそう言うわけではない。
「コトネはスマホで会話をするんですね!恐ろしい速さの打ち込みです!アリスじゃなかったら見逃しちゃいますね!」
誰だアリスに手刀を見逃さなかった人ネタを吹き込んだのは。
コトネにくっつき持ち前の明るさで質問攻めにするアリス。
流石のコトネもたじたじの様子。
「その…今日はどんな用事で…?」
おずおずと質問するユズ。
「大した用事じゃないんだけどね、ユウカがまたえらく怒ってたから何をしたのかなぁって。」
「何も悪いことなんてしてないもん!」
声を荒げて講義するモモイ。
「ミレニアムにおける最強の創作ツールを有効に活用していただけだからね!」
スマホを掲げて高らかに宣言するモモイ。
「もしかして…Metsのこと?」
「なんだ!先生もわかってるじゃん!」
「もう、また始めるつもり!?」
「ふっふっふ…ゲーム開発部は最強のシナリオ創作ツールを手に入れたんだよ!
この凄さがわかる!?天気も交通情報も、テスト勉強も!なんならゲームのシナリオだってネタを提供してくれるんだよ!?ミドリのイラストの構図だって簡単に出してくれるんだよ!?」
「だから、何でもかんでも創作をAIに頼るのは良くないっていってるでしょお姉ちゃん!」
「もぉー!そうやってすぐにミドリは否定する!実際このアプリが出してくれたシナリオのネタがあったからこの間のコンテも通過できたんじゃん!」
「だから!それがそもそも自分の実力じゃない時点で問題でしょ!!」
「私のツールで私が有効活用してるんだから私の実力に決まってるじゃない!!」
「お姉ちゃんのわからずや!!」
「あーもう!あったまきた!!」
すかさず取っ組み合いを始めるモモイとミドリ。
そうか…だからユウカは怒っていたのか。
「モモイ。」
モモイの肩に手をおく。
「先生?」
「私も、その使い方は良くないと思うよ。」
「なんでよ!」
「……何かを作るってすごく熱量のいることなんだ。AIは簡単に答えを出せるかもしれないけど、そこに至るためのプロセスは誰も教えてくれない。だから、私はモモイにもっと悩んで欲しいな。悩んで、悩んで、その上で出てきたゲームが見たい。
それは、ミドリやユズ、アリスでも同じだよ。」
「うぅ……。」
私に諭されたのはやはり効いたのか、しょんぼりとした表情を浮かべるモモイ。
『……歌の練習も同じです。』
「コトネ?」
『少しでも声を出せる様に、息を続けられる様に、声を遠くに飛ばせる様に。
教科書はあっても、それを体得するには試行錯誤をしないといけないから。いろんな方法を試さないと、その人のためにならないと思います。』
コトネから帰ってきた返事。
だが、それは当然なものであった。
元々は真面目で、歌の練習に打ち込む生徒だったのだから。
『それはきっと、創作でも変わらないかと。』
「コトネは歌が好きなのですか?」
アリスの質問にコトネは一瞬、どこか遠い目をした後、返事を打ち込んだ。
『そうですね……、好きですよ。』
「きっと…、ですか?」
口の動きから音のない言葉を読まれたコトネは、驚いて目を見開いた。
アリスであれば確かに口の動きだけで言葉を読み取るのは不思議ではない。
『……えぇ。』
「アリスは、好きなものはもっと胸を張って答えても良いと思います。アリスは、冒険も、ゲームも、友達も、みんな大好きです。」
『……純粋な子なんですね、アリスさんは。』
「そうだね。アリスは純粋で、とても良い子だよ。」
コトネの歌に対する気持ちは複雑だろう。
それでも、いつか彼女が迷いなく歌が好きと言える日が来るのであれば。
いつかそんな日が来てくれる事を心から願うばかりだ。
もしかしたら来ているかもしれないと思い、部屋の中を見まわしてみるが、目的の生徒は残念ながらゲーム開発部には訪れていないようだった。
「ところで、モモイ以外にもMetsを使っているのかい?」
「私も使ってますよ、先生。」
ミドリが手を挙げる。
「でも、お姉ちゃんほどは……使ってないかな。」
「そっか。」
「ユズは?」
そう質問するとユズはビクビクと答えた。
「私は……あんまり……。気のせいかもですが、たまに、『変なの』が見えるんです。」
「『変なの』?それって?」
「わ、わかりません……。本当に、わずかな一瞬だけなんです。で、でも……すごく、変というか、こ、怖いというか……。」
今の所Metsを使っていてそんなものが見えたという話は一度も聞いていない。
なんだろうか……?
「アリスは使っていません。」
「どうして?」
「勇者は自分の足で街もダンジョンも踏破するものですから!」
「うん、アリスらしいね。」
それからしばらく雑談をして私とコトネは部室を後にした。
一度、ウタハの進捗を確認しようとエンジニア部の部室を目指して歩く。
コトネはスマホで文字を打ち込んで、私に音声を流した。
『先程は、すみませんでした。』
「大丈夫だよ、あの子たちみんな良い子だから。」
躊躇うような表情を浮かべた後、続けて文字を打ち込もうとする。
そんな彼女を見て、私はあることを思いついた。
「ちょっと待ってくれる?」
『?』
私もスマホを取り出す。
数秒とせず、コトネのスマホにメッセージが届いた。
《これで話そっか。》
《お気遣い、ありがとうございます。》
せめて、コトネと同じ視点に立ちたい。
そう思っての方法だった。
幸い、チャットを打ち返しているだけの時間は十分にある。
《アリスさんが悪いわけではないんです。
ただ、あの子の目を見ていたら……。正直に答えられなくなりました。歌が好きだと、そう言える資格があるのか。》
コトネがそう悩む理由を私は知っている。
トリニティ総合学園を巻き込んだ事件。
聴く人を海に沈める人魚の歌。
水無底コトネはかつて自らに生じた異変と神秘に絶望し、学園を巻き込んでの心中を図った過去がある。
自分が最も愛していた歌を、大勢を傷つける道具にしてしまった。
そんな自分が歌が好きだと言い張れるのか。
ミカと出場した自治区の音楽祭が終わっても、やはり心のどこかで迷いは感じているのだろう。
だからアリスに質問された時、彼女は文字に打ち込まずとも、『きっと』と返してしまったのだ。
それを読み取られてしまったが故に、コトネは狼狽したのだろう。
聴こえるはずのない、人魚の呟きを。
「いいんじゃないかな?」
「!?」
すぐに私はスマホに文字を打ち込む。
《どんな理由でも、コトネは歌に向き合ってる。だから、私はそれを悪いことだとは思わないよ。確かに過去は消えないけど、それでも、向き合えてると言うことは、ちゃんと進めている証拠だと私は思うよ。》
《……強いですね。》
《強くはないよ。ただ、ちょっと視点を切り替えただけ。》
《ずるいです。》
《ずるいのが大人の専売特許だからね。》
《それを胸を張って言うのはどうかと思いますけど。》
ふふ、と声にならない笑みをこぼしながら、ストールの位置を直すコトネ。
そんなコトネを見ながら、エンジニア部に向けて歩を進める。
ーーー直後、背後から耳障りなノイズが鳴り響いた。
ーーーーー
【こんにちは、
あなたの生活をより便利に。
スマートコンsシェルジュアプリ、
『Millennium Everything Solver』こと、Metsがあなたをお手伝いしします。】
【気象警報、事故情報、流行のファッション、今日の献立、創作のおお悩み、全てお答えします。】
【貴方の生活の全てをおお手伝いし、必ず幸せな未来をめMetsがて提供しましょう。】
【では、良いし週末を。】
ーーーーー
背後から響いたノイズ。
いや、金切音と形容するのが正しいだろうか。
振り返ると、校舎に取り付けられた巨大モニターが異常なまでに明滅を繰り返し、モニターには砂嵐が走っていた。
「な、なんだ?」
コトネも両手で耳を塞いでいる。
巨大な画面は白黒の嵐が吹き荒び、見ているだけで意識が飛びそうになる。
おかしい。
目を逸らすべきなのに、吹き荒ぶ暴風から目を離すことができない。
明滅する画面、嵐はやがて何かを象ろうとしてーーー、
体に衝撃が走り、蹌踉めく。
バランスを崩したコトネがぶつかったと遅れて理解した。
「……今のは…?」
気がつくとノイズは既に止んでおり、モニターに映る画面もいつもと変わらない物だった。
『大丈夫ですか?』
「うん、コトネは?」
『私も大丈夫です…。すごく気持ち悪かったですけど…。』
モニターのエラーだろうか?
それにしては周りにいる生徒たちに変わった様子はない。
まるで先ほどの現象が嘘だったかの様に。
「後でノアに確認してみよう。」
ーーーーー
エンジニア部の部室を訪れる。
すでにノアの姿は見えなかったものの、変わらずウタハ、ヒビキ、コトリの3人の姿が見えた。
「やぁ、ウタハ。」
「先生、ちょうど良いところに来てくれた。」
困り果てたようなウタハの声、一体どうしたのだろうか?
「いや、コトネの補助機につける機能について話し合っていたのだが少し問題が発生してね。今回は長期使用を考慮して耐久性の向上を図るべきと考えていたのだが……。」
「問題?」
「だから何度も言ってるじゃないですかウタハ先輩!Metsからも提案がある全言語翻訳機能をつける事でどこであっても会話を対応可能にすべきなんですよ!」
「違うと思う、今回はコトネさんの体質を考慮して首周りに保湿ローション塗布機能をつけるべき、とMetsが言っている。」
「絶対後ろ二つの機能余分だよね?」
『あの、なんですかMetsが言っているって。』
「グローバル化の進む時代、私たちは多種多様な言語とのやりとりに対応できるようにですね!」
「ローション塗布機能で常に乾燥いらずの生活こそ必要だと思う。」
「2人ともやめたまえ、クライアントの前だぞ?」
「「ウタハ先輩は黙っていてください!!!」」
「(ガーン!!!)」
「すごくショック受けてるね。」
しかしなんだろうか、この違和感は。
エンジニア部は大体余分な機能を搭載しようとする場合、あれもこれもと全員の意見を搭載していた記憶がある。
晄輪大祭、ヴァルキューレのプールでのメカワニと思い返せばキリがない。
しかし、今のヒビキとコトリは?
「すまない、先生。ここのところ意見を出し合うといつもこうなりがちなんだ。Metsの提案が有意義なのはある程度理解しているが……。」
「ヒビキ、コトリ。2人とも少し落ち着こうか。」
「いいえ、ここは譲れません!私のメッツが導き出した解説が信じられないのですか!?」
「私も、譲る気はないから。」
ヒビキもコトリもこのままでは部室内で銃撃戦を始めかねないくらいの雰囲気だ。
嫌な空気が流れ始めている。
その時だった。
『皆様、ごめんなさい。』
ノイズ混じりの歌が聴こえたと思った途端、私の意識は闇に溶けた。
ーーーーー
一発の銃声の後、暗闇に落ちていた私の意識は浮上した。
「……私はどうして……?」
「先生、目が覚めたか。」
近くにはウタハがいた。
体を起こして辺りを確認する。
先ほどと変わらない、エンジニア部の部室だ。
『目が覚めましたね、先生。』
声のする方を向くと、コトネがいまだに眠ったままのヒビキとコトリに何かをしていた。
見ると、2人の手を結束バンドで縛っている。
「一体、何をしたの?」
『……それです。』
コトネが指差した方を見ると、銃弾で破壊されたボイスレコーダーがあった。
「それって……。」
『私がやりました。2人とも止まる気配がないと判断したので……。』
「いや、いい判断だったと思うよ。」
「驚いたな……本当にこんなことが起きるのか……。」
ウタハは驚愕の表情を浮かべていた。
『ボイスレコーダーに私が水中で歌った歌を録音すると、他の人に聴かせた時に眠らせることができるんです。』
コトネの説明に対して、ある疑問が浮かぶ。
「待って、でも前回は?」
『歌に込める感情によって、眠らせた後の効果が変わるみたいです。トリニティの時は……先生も知っての通りです。』
「そうだったんだね……。」
すると、コトリとヒビキも目を覚ました。
「あれ……私は……ってなんか気がついたら縛られています!?」
「え、どうして……私、眠って……どういうこと?」
『放っておいたら争い始めそうだったので、大人しくしてもらいました。ごめんなさい。』
「2人とも。」
私は後ろ手に縛られたヒビキとコトリを見やる。
何故だろうか、先ほどのモモイもこの2人に近しい状態だった。
「自分の意見をアプリケーションに頼りっぱなしにするのは、よくないと思うよ。」
「ごめんなさい……気がついたらヒートアップしていました……。」
「私も、反省してる……。」
一度意識を失ったことで、どうやら沈静化したらしい。
しかし、どうにも違和感を感じる。
あのエンジニア部が仲間割れを起こし始めるなんて。
先程の異様なノイズといい、何かが起き始めている……?
その時、スマートフォンが鳴り響いた。
「もしもし?」
『先生!助けてください!』
「アリス?」
電話から流れた声は先ほど訪れたゲーム開発部の天童アリスだ。
「落ち着いて、何があったの?」
涙交じりにアリスの声がスマートフォン越しに響いた。
『このままだと……、このままだと、ゲーム開発部が崩壊してしまいます!』
ーーーーー
ゲーム開発部が、崩壊?
アリスの悲鳴にも近しい助けを求める声に、私の脳はフリーズしかけた。
「先生、すぐに彼女たちの元に向かってあげてくれ。私たちはもう大丈夫だ。」
「ウタハ……。わかった、2人をよろしく頼むよ。」
「あぁ。」
ウタハにヒビキとコトリを任せ、コトネを連れて元きた道を戻る。
すると、
『先生、あそこです!』
「モモイ!ミドリ!アリス!ユズ!」
部室棟に辿り着くまでもなく、4人の姿を見つけた。
どうやら屋外に出ていたらしい。
気づかせようと、4人の名前を呼ぶ。
しかし、
ダァン!!
「なっ!?」
一発の銃声。
その音の主は……モモイだった。
「ほんとイライラしてきた!Metsのアドバイスがあればどんなことだって思いのままなんだよ!?なんでわかんないの!?」
「お姉ちゃんこそいい加減にしてよ!一回痛い目に合わせないと分かんないんだね!?口を開けばMets Metsって頭にくる!」
「ふ、2人とももうやめて!……さっきまではまだ普通だったのにどうして……?」
「モモイもミドリももうやめてください!」
ゲーム開発部、いやモモイとミドリが取っ組みあいの喧嘩をすること自体は珍しくない。
しかし、銃を撃ち放つほどの事態は見たことがない。
「分からず屋のミドリにはMetsの素晴らしさを体に叩き込んであげるんだから!!!」
「お姉ちゃんに痛い目合わせるならこっちだって!!」
2人が同時に取り出したのはスマートフォン。
「待って、2人とも何をする気、」
「「Mets!!!」」
そして、2人の口から飛び出した言葉に私はゾッとした。
「「ミドリ(お姉ちゃん)を立てなくなるくらいボコボコにする方法を教えて!!!」」
「なっ……。」
『嘘でしょ……?』
少しの間の沈黙、二つのスマートフォンから無機質な電子音声が響いた。
『『承知しました、才羽ミドリ(才羽モモイ)を再起不能にする方法を提示いたします。』』
ーーーーー
「や、やめるんだ2人とも!!」
慌ててモモイとミドリに声をかける。
しかし、2人ともスマホの画面から目を離さない。
『『対象を再起不能にするために、まず胴体を狙います。』』
スマートフォンから音声が流れた瞬間、2人は互いに向かって勢いよく駆け出した。
2人のアサルトライフルから銃声が響く。
『『胴体を狙い弾丸を命中させた後、動きを止めるために足を狙います。』』
なおもスマートフォンから流れる無機質なアナウンス。
迷いもないかのように2人は銃を持つ手を離さず互いに向かって弾丸を放ち続ける。
私とコトネは2人を避けつつアリスとユズに合流した。
「アリス!どうしてこんな事に!?」
「わかりません!先生とコトネさんが部屋を出て少ししてから、外で砂嵐みたいな音がありました!それが終わってからモモイがまた Metsを使い始めたんです!それを見たミドリも急に怒り出して……!」
「どうしよう……このままじゃ……!」
「コトネ!さっきみたいにレコーダーを!」
『ダメ!ここだと人が多すぎます!』
先ほどエンジニア部でコトネがレコーダーを使えたのはあくまで5人しかいない空間だったからだ。
周囲を見回すとすでに、2人の喧嘩を見にきた生徒やそれ以外の生徒もかなりいる。
この場でレコーダーを使ってしまえばそれらの生徒も巻き込んでしまう。
コトネのレコーダーはつまるところ無差別兵器に近しい性質を持ってしまっているのだ。
なおも激しくなる2人の争い。
それは姉妹喧嘩と呼ぶにはあまりにも激しい。
このままではお互いに多少の怪我どころでは済まなくなってしまう。
「きゃああっ!」
モモイの方から悲鳴が上がった。
ミドリの弾丸が命中していた。
「モモイ!」
『『足に打ち込んだ後は、手にも同様に撃ち込みます。』』
動きの鈍ったモモイにミドリはさらに弾丸を打ち込む。
足、腕と正確に。
弾丸を打ち込む度にモモイからは悲鳴が上がる。
「ミドリ!もうやめるんだ!」
アリスとユズがミドリを止めるべく駆け寄ろうとする。
ズドン!!
しかし、彼女たちの足は地面に打ち込まれた弾丸によって止められてしまった。
「……止めないでよ、これはお姉ちゃんを2度と Metsが使えないようにするために必要な事なの。」
「やめてください!こんなの何も正しくありません!」
「そ、そうだよ!それに、ミドリだってあれだけモモイが Metsを使うのを嫌がってたのに!!」
「そうだよ?」
「なら……!」
確かにそうだ、ミドリはモモイが Metsを使うのを酷く嫌っていた。
それは Metsに依存しすぎる姿勢を嫌ってのもののはずだ。
なのに彼女は今モモイを攻撃するために Metsを持ち出している。
明らかな矛盾。
しかし、ミドリから帰ってきた答えに私は戦慄した。
「 ……Metsの『答え』は私のものだから。」
答えは、ミドリの、もの……?
「ミ、ミドリ……?」
「気に入らないの、
……私に答えてくれる Metsをお姉ちゃんが目の前で自分のものみたいに扱うのが!
気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!気に入らない!
死ぬほど!!お姉ちゃんなんか!!気に入らない!!!」
アサルトライフルを再びモモイに構えるミドリ。
「ミ、ミド……リ……」
息も絶え絶えなモモイの声。
その姿を見てもなおミドリは止まらない。
「……ダメだ!ミドリ!!」
引き金に指をかけるミドリ。
無慈悲なアナウンスが広場に響く。
『『……最後は、相手の意識がなくなるまで頭蓋に至近距離から弾丸を撃ち込み続けてくだ』』
銃弾の音と共にスマートフォンから流れるアナウンスは途絶えた。
「な、何?きゃあああああ!!!」
続けての発砲音と共に、ミドリの体が吹き飛ばされる。
「……よぉ?」
銃声の響いた方を見ると、1人の生徒の姿があった。
……その姿を誰が見間違えるのだろうか。
身に纏うはメイド服。
チェーンのついた2対のサブマシンガン。
背に龍をあしらったスカジャン。
その姿を見れば誰もが震え上がるであろう存在。
「……姉妹喧嘩にしては、ちょっとやりすぎじゃねぇのか?」
Cleaning&Clearingのリーダー。
コールサイン・ダブルオー。
ーーー約束された、勝利の象徴。
美甘ネルの姿が、そこにはあった。
ーーーーー