まこっちに双子の妹がいる食文化研究部の日常 作:ハナサキ
“──無事に学期末テストも終わったし、次の連休、みんなで旅行に行きたいと思いますっ!──”
……そんなおしんこの発案で、本日。
私たち食文化研究部の面々は今回の旅行先にして私やまこ、そしておしんこの地元でもあるとある海沿いの田舎町へとやってきていた。
この連休はちょうど私とまこに里帰りの予定が入っていたので、みんなにはそれに合わせてもらった形になる。
宿泊先はうちの祖母の持ち家である古民家。
祖母は現在、私たちの実家のほうで両親と一緒に暮らしているため、今そちらの家には誰も住んでおらず、空き家同然の状態になっていた。
──朝四時に東京を出発し、到着したのは昼前。
移動時間としてはかなりのものになるのだが、その間ずっと運転手を務めてくれていたくれあの心労はきっと計り知れないものであっただろう。
ちなみにメンバーの中で二人しかいない免許持ちのうち、もう一方の片割れであるおしんこはというと、くれあが運転する傍ら、助手席で爆睡していた。
長時間の運転で目がバッキバキになっているくれあの横で、ぐーすかと寝息を立てながらそれはもう気持ち良さそうに爆睡していたのである。
……くれあママンはたぶん一発ぐらいならぶん殴っても許されると思う。
「──じゃあお母さん、今日は向こうに泊まってこっちの家にはまた明日帰ってくるから」
「お父さんにもそう伝えといて〜」
「ええ、わかったわ。掃除は済ませてあるから、布団や調理器具もそのまま自由に使ってね」
「囲炉裏の使い方は覚えてるかい?」
「うん、大丈夫だよ!」
「まこの囲炉裏ご飯久しぶり〜、超楽しみ!」
……と、一度私たちの実家のほうに立ち寄り、母や祖母に軽く挨拶を済ませつつ。
疲労によって完全にダウンしてしまったくれあに代わり、おしんこの運転で祖母の家へと移動する。
全員で折半して借りた七人乗りのワンボックスカー(レンタカー)は庭先の脇に停め、軽く家の中の説明をしてくれあを布団に寝かせた後。
私、まこ、おしんこの三人は他の面々とは別行動を取り、かつて慣れ親しんだ地元の商店通りへと向かった。
そして──。
「うわ〜! ゆなっちにひよっち、久しぶり〜! めっちゃ大人になってるじゃんっ!」
「久しぶり〜! 河合姉妹とは小学校以来だよね? 二人とも相変わらずそっくり〜!」
「背もだいぶ伸びたね〜」
まこの指定した待ち合わせ場所である喫茶店の前で、小学校時代の親友──ひより&ゆな、二人の幼馴染と実に約六年ぶりの再会を果たしたのであった。
「いや、そんな……! 私ぜんぜん変わってないよぅ……!」
「……いやさすがに身長は伸びてるよ?」
「あははっ、ごめんね〜。うちのまこってば二人と久しぶりに会うからって、なんか変に緊張しちゃってるみたいでさ〜」
「ええっと、じゃあこっちがまこっちで、こっちがもかっち?」
「ん、そうそう〜。服までお揃いで来ちゃったから見分けづらいよね〜。でもヘアピンの色は違うからさ、わかんなくなったらそれで見分けてね」
先程から緊張でガチガチになっているまこの隣でそんな注釈を入れつつ、私は改めて再会した二人の幼馴染をじっと観察する。
ひよりは背が高く、上はパーカーにスカジャン、下はデニム生地の長パンにスニーカースタイルというストリート系に近いファッションで、全体的にボーイッシュな印象を受けるかっこいい系の女子といった感じで。
対してゆなのほうは、なんというかこう……思わず読モか何かですか!?と言いたくなるような、ミニスカスタイルで頭にはベレー帽、手に提げたハンドバッグとかアクセサリー類などの小物も含め、とにかく全身
二人とも小学校時代の面影も残しつつ、それぞれがそれぞれに大人びた変貌を遂げており、正直──私の好みドストライクだった。
……いいなぁ、二人とも自立してそうだなぁ。
ゆなに至っては既に職に
「ちょっともかっち〜、なんか目がやらしーよ?」
「そういえばもかっちて昔からちょっとそっちの
──はい、その通りです。
可能ならワンチャン狙いたいぐらいにはタイプです。
まるで昔を懐かしむように悪戯っぽく揶揄ってくるひよりとゆなに、私は心の中でそう即答した。
けれど、私は下心は持ちながらも友達としての付き合いも大切にしていきたい派なので特に肯定も否定もせず「え〜、何それ〜」という誤魔化し笑いを浮かべてその場を流す。
「ん? “ソッチノケ”……? モノノケ的なこと? ジ○リ?」
尚、横で私たちの会話を聞いていたおしんこはというと、そんな見当違いな言葉を漏らしながらひたすら首を傾げていた。
ピュアかよ。
「う〜ん、おしんこにはまだちょっとだけ早いかな〜?」
「無垢だねぇ〜」
「あはは……」
「……? ?」
揃ってうんうんと頷き合うひより&ゆな、そして意味は理解していながらも実の姉妹のことであるだけに気まずげな様子で苦笑することしかできないまこ。
……というか、私って好みの女の子を見てるときそんな露骨にエロい顔してるのかな?
だとしたら気をつけないと……。
♢♢♢♢♢
「じゃあ三人ともまたね〜」
「久しぶりにまたみんなで遊べて楽しかったよ」
「うん、IDも交換したし、寂しくなったらいつでも連絡してね。……待ってるよ♡」
「ちょ、やらしいやらしい。またエロい顔になってるからもかっち」
「ん〜、私は結構ありかな〜、なんて……♡」
「ゆなっち!?」
「? なに? どゆこと?」
「……あ、あわわわわ」
「おっと、どうやら確定演出来ちゃったかな、これは」
──などと。
そんな会話もありつつ昔馴染みとの旧交を充分に温め合った私たちは、夕方頃には二人と別れ、食文化研究部のみんなが待つおばあちゃん家へと帰ってきた。
そうして……。
「──でね〜、最後にそのゆなっちって
「……いえ、えっと、その」
「そういう話はあんまり食事時にはしないほうがいいんじゃ……」
「……ていうかもか、やっぱり
……まこの主導のもと食文化研究部らしく、皆で協力して作った囲炉裏ご飯──鶏肉ときのこの白だし鍋と釜炊きの白米──を囲みながら、おしんこが一切の悪気なく、まるで普通の世間話をするかのように今日あったことをべらべら話す。
それに対し、つつじ、なな、くれあの三人は至極複雑そうな顔をして私のほうへと静かにちらちらと視線を送りながら様子を窺ってくるのだった。
……うん、さすがにこれはちょっと居心地が悪い。
けれども私は決してポーカーフェイスを崩すことはなく。
あたかもやましいことなんて何一つありませんよ〜という顔をして「んまんま」と、ふっくらつやっつやの白米を咀嚼するのだった。
「……まあ人の趣味にとやかく言うつもりはないけどさ、あくまでそういうのはサークルの外だけにしてね? くれぐれもサークル内で変な気とか起こさないでよ?」
「んー、それはもちろんわかってるけど〜」
話しながらもぐもぐごっくんと頬張った白米を嚥下しつつ、私はにやり、と意味深な笑みをくれあへと向ける。
「──でも、くれあママンはあんまり人のことは言えないんじゃないかな〜?」
「!? な、なな、なに言って……!?」
「っ……」
私が茶化すようにそう言ってみると、くれあが途端に顔を耳まで真っ赤にさせながら動揺し、まこが恥じらうような表情を見せそっと俯く。
……フッ、やはり、か。
この二人、なんとなくそうじゃないかな〜、と前々から察しはついていたのだ。
とはいえ、私の見立てではまだお互いにほんの少しだけ意識し合ってるぐらいの感覚だろう。
まこはこんな私と長年双子をやっているだけあって、
ゆえに同性に対して欠片ぐらいはそういった意識を向けてしまっても、ある意味仕方のないことなのかもしれない。
しかしこの反応を見るに、どうやらくれあもくれあで思いの外満更でもない様子。
私はこの時、心の中でグッと拳を握り確信した。
──おいこの女、たぶんもう一押しでイケるぞまこ!
……って、いやいやいや。
落ち着け。落ち着くのだ私よ。
彼女たちを私のようなただの肉欲にまみれた浅ましい女好きと一緒にしてはならない。
この二人の関係性はあくまでプラトニックなものであり、それはすなわち、純粋で精神的な心と心の繋がりを意味する。
よってここは外野が面白半分で囃し立てるような場面ではなく、ただ黙って傍で温かく見守ることが最適解と言えよう。
つまりは“見”。ここは“見”に徹するのだ、河合もか──!
「フッ……これ以上は野暮、だね……」
「ねえ、なに勝手に一人で納得した雰囲気出してるの? せめてこのとんでもない空気だけでもどうにかしてくれないかな? ねえ」
「も、もかってば……もぅ……」
「? なになに、どしたの? なんの話?」
「いやぁ、お鍋美味しいですねー、なな」
「そうだねー、ひつじちゃん」
焦るくれあ、照れるまこ。またしてもなにもわかっていない様子のおしんこに、全力で聞こえていないフリをするというある種の優しさを見せるつつじ&なな。
それぞれがそれぞれに十人十色、いや、六人六色? の反応を示しつつ。
この日の夜はこうして緩やかに過ぎていくのであった──。
……と、いうわけで。
もかという肉食女好き女がいる影響で原作に比べ少々GL色が強めになっているまこくれ、或いはくれまこのお二人でした。
今後もこういった雰囲気でゆるくのんびり続けていきますので、お気に召した方はどうぞよろしくお願い致します。