まこっちに双子の妹がいる食文化研究部の日常 作:ハナサキ
今回ちょっと短めです。
「「「「「「──メリークリスマ〜スッ!」」」」」」
──時は十二月も終わりに差し掛かったクリスマス当日。
今日は食文化研究部のみんなで集まって盛大なクリスマスパーティーを開いていた。
会場となるのは我が家。私とまこが二人で暮らしているアパートの一室で、家具や調理設備も充実しているし、防音性も高くそれなりに広くもあるのでみんなで集まるにはうってつけの場所だった。
料理の仕込みや部屋の飾り付けも(私はまるで戦力にならなかったのでほぼまこ一人で作業していた)完璧に済ませてあるし、後は今日一日目一杯楽しむだけである。
みんなで囲んだテーブルの上にはローストチキンにクリームスープ、ブルスケッタやリースサラダなど多種多様な料理が並んでおり、もちろんクリスマスケーキもちゃんと用意してある。
それぞれしっかり味わって料理を堪能しつつ、やがて食べ終えてお腹を満たした後。
次はクリスマスパーティーの定番とも言えるプレゼント交換の時間がやってきた。
おしんこが作成した厳正なるあみだくじによって決められた順番に従うがまま、まず最初は私からくれあへとプレゼントを渡すことになった。
「──はい、くれあママン! どうぞ受け取って!」
「ありがと〜! ──わっ、なんか結構ずっしりしてるね。開けてもいい?」
「もちろん! くれあママンならきっと喜んでくれると思うけど……」
「え〜、なんだろ〜。──ん? これは……」
私が手渡した紙袋の包装を開けながら、くれあが戸惑い気味に首を傾げる。
──フッ、どうやら気付いたようだな。
「ええっと、漫画、だよね……? それにしてはやけに分厚くてサイズも大きいような」
「そうだよ! なぜならそれは、私が厳選に厳選を重ねて選び抜いた珠玉の百合・GL大判アンソロ漫画セットだからね!」
「〜〜〜〜っ!?」
「まさかこれを受け取るのがくれあママンになるだなんて、もはや運命、だね……」
「──ウソでしょ……女の子同士で、こんな事まで……!?」
「あ、一部ほぼ成人指定レベルの過激な描写入ってるやつもあるから人前で読むときは注意してね」
「〜〜〜〜……っ」
……って、あれ? もしかしてあんまり聞こえてない?
最初に開いたページが結構アレなシーンだったのか、すっかり赤面しきって呆けている様子のくれあ。その隣でくれあが開いているページを覗き見たまこも同様に口元を手で覆いながら頬を紅潮させて固まっている。
……ふむ。やはり耐性の無い人間には少し刺激が強すぎたか。
「なになに? 漫画なら私も読んでみた〜い!」
「だ、ダメだよしのんちゃん! こんなのしのんちゃんにはまだ早いよ!」
「同い年なのに……!?」
……その後も、プレゼント交換は滞りなく進んでいき。
「──わあ、帽子だ〜! ちょうど欲しかったから嬉し〜!」
くれあからななへ帽子。
「お〜! リップじゃ〜ん、女子力たか〜!」
ななからしのんへおしゃれブランドのリップ(おそらくななの姉のチョイス)。
「ほ〜、マフラーですか〜! ありがとうございます、しのん」
しのんからつつじへマフラー。
「かわいい〜! ひつじのマグカップだ〜!」
つつじからまこへひつじのデザインが象られたマグカップ。
──と。
皆それぞれ貰ったプレゼントを喜びつつ、遂に最後となるまこの番がやってきた。
だが……。
「ごめんね……私のプレゼントはまだ……」
「あ〜、大丈夫大丈夫〜。元はと言えば二人揃って寝過ごしたのが悪いんだし。──ってかむしろ、あげる相手が私で良かったよね〜、変に気を遣わなくて済むからさ〜」
「うん……、まあそうかも」
──実は今日、まこが用意するはずだったプレゼントは少し事情があってまだ手元に無い。
本来なら今日の午前中に宅配業者から届く予定だったのだが、昨日のパーティーの準備で夜ふかしした影響で二人とも起きたのが昼過ぎで受け取れなかったのだ。
荷物の再配達は依頼しているが、残念ながらまだ届いていない。
──などと。
そんな話をしていたちょうどその時。
──ピンポーン、というインターホンの音が不意に部屋中に響き渡る。
「あっ、もしかして!」
「お、来た〜?」
まこと二人で玄関へと向かうと、呼び鈴の主はやはり宅配業者の配達員さんだった。
伝票に受け取りのサインをして、まこが荷物を受け取る。
どうやら無事にプレゼントも届いたようだ。
受け取ったダンボール箱をリビングへと運ぶと、自然と他のメンバーもプレゼントの周りへ集まってくる。
プレゼントの中身はまだ私も聞かされていないので実は純粋に楽しみだったりする。
「じゃあ開けるね〜、まこ」
「うん、どうぞ!」
そうして意気揚々とダンボール箱の封を切り、中を開くと、そこには──。
「……ん? これって」
「そう! プレゼントはバスボムだよ! ちょっと良いやつなんだ〜。……あ、でももかが使うなら結局うちで使うことになるから、ある意味自分用みたいになっちゃったね、えへへ」
少し気恥ずかしそうにそう語るまこだったが、正直、あまりその話は入ってこなかった。
なぜなら──。
「バス……ボム……?」
……そこにあったのは一般的に想像するソレとはあまりにもかけ離れた──明らかにバスボム以外の何かだったからだ。
こんもりと盛られた腐った落ち葉の山というか、匂い的にもほぼ泥そのものというか……。
「わかったまこっち、これ泥風呂でしょ!泥風呂のバスボムなんて珍しいね!」
「え、泥……? いや、私が買ったのは普通のバスボムで──、……っ!? 何これ……!? 私こんなの買ってないよ……!?」
「えっ、なに、詐欺!? イタズラ!? こわっ!」
「と、とと、とりあえずけけ警察に連絡──」
「──いや、ちょっと待ってください。これよく見たら差出人の名前……」
……結果。
この正体不明の落ち葉の山は同じ大学の先輩で農業サークルの部長である児玉さくら先輩が送ってくれた家庭菜園用の肥料──腐葉土であることがわかった。
どうやら少し前にまこがベランダで育てている野菜の成長が芳しくないことを先輩に相談していたらしい。
また、このすぐ後にバスボムのほうもちゃんと届いたので今回の件はそれで一件落着となったのだった。
──そして。
「ね、ねぇもか、こういう系の漫画って他にも……」
「──フッ、あるよ」
やはり素質があったのか、この日を境に見事に百合沼へと落ちていくくれあママンなのであった──。