無能力の村人、魔法理論を学び世界最強になる   作:Menma_Taro

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第6話

 

村の魔物騒動から三日が経った。

 

幸い、大きな被害はなく、村人たちの協力で魔物たちは撃退できた。しかし、ライナスの心には新たな決意が芽生えていた。

 

「アルベルトさん、僕も実戦的な魔法を覚えたいんです」

 

森での定例会合で、ライナスは真剣な表情で切り出した。

 

「実戦的な魔法……?」

 

「はい。この前の魔物騒動の時、何もできずにいるのが辛くて……」

 

アルベルトは少し困ったような表情を見せた。

 

「気持ちは分かるが、君はまだ7歳だよ。戦闘魔法は危険すぎる」

 

「でも、いつか必要になる時が来るかもしれません」

 

ライナスは諦めなかった。

 

「村の人たちを守りたいんです。そのためには、もっと強くならないと……」

 

アルベルトはしばらく考え込んでから口を開いた。

 

「……分かった。ただし、条件がある」

 

「条件?」

 

「まず、基礎的な防御魔法から始めること。攻撃魔法はその後だ」

 

「はい!」

 

「そして、絶対に一人で危険な場所に行かないこと」

 

「分かりました」

 

「最後に、戦闘魔法の練習は私の監督下でのみ行うこと」

 

ライナスは大きく頷いた。

 

「ありがとうございます、アルベルトさん!」

 

「まず、君の現在の実力を正確に把握しよう」

 

アルベルトが提案する。

 

「『魔法理論解析』を使って、自分の魔法をすべて分析してみてくれ」

 

ライナスは言われた通りに、自分が使える魔法を一つずつ発動し、スキルで解析していった。

 

「火の魔法、効率71%、威力は……うーん、数値で言うと45ポイントくらいです」

 

「45ポイントか。参考までに、一般的な大人の魔法使いは60ポイント程度だ」

 

「そうなんですね……」

 

「君の年齢を考えれば、十分に高い数値だよ」

 

ライナスは少し安心した。

 

「水の魔法は効率68%、威力40ポイント。風の魔法は効率65%、威力38ポイント……」

 

すべての魔法を解析し終えると、アルベルトが総評を述べた。

 

「全体的に、基礎魔法のレベルは高い。しかし、戦闘で使うには威力不足だね」

 

「威力を上げるにはどうすればいいんでしょうか?」

 

「二つの方法がある。一つは魔力量を増やすこと。もう一つは効率を上げることだ」

 

アルベルトが説明を続ける。

 

「魔力量は年齢と経験によって自然に増えていく。しかし、効率は技術次第で大幅に改善できる」

 

「技術……」

 

「そうだ。そして君には『魔法理論解析』がある。これを活用すれば、効率改善は他の人より格段に早くなるはずだ」

 

ライナスは希望を感じた。

 

「それじゃあ、効率改善から始めましょう」

 

「その前に、防御魔法の基礎を教えよう」

 

アルベルトが立ち上がり、手のひらに半透明の壁を作り出した。

 

「これは『魔力壁』という基本的な防御魔法だ」

 

ライナスは『魔法理論解析』でアルベルトの魔法を観察した。

 

「魔力が薄い膜状に展開されて……効率は89%、防御力は……82ポイントですね」

 

「よく分析できているね。この魔法のコツは、魔力を均等に薄く伸ばすことだ」

 

「均等に薄く……」

 

ライナスは挑戦してみた。手のひらの前に魔力を集中させ、それを壁状に広げていく。

 

最初はうまくいかなかった。魔力が偏ったり、厚すぎたりして、安定した壁ができない。

 

「難しい……」

 

「焦らずにゆっくりと。魔力の流れを意識して」

 

アルベルトの指導を受けながら、ライナスは練習を続けた。

 

三十分ほど経った頃、ようやく小さな魔力壁を作ることができた。

 

「できました!」

 

解析してみると、効率42%、防御力19ポイントという結果だった。

 

「最初にしては上出来だ」

 

「でも、効率が低いですね……」

 

「それは当然だよ。これから改善していけばいい」

 

その後、ライナスは毎日魔力壁の練習を続けた。『魔法理論解析』で自分の魔法を客観視しながら、少しずつ改善を重ねていく。

 

一週間後、効率は58%まで上がった。

 

「素晴らしい進歩だ」

 

アルベルトが褒めてくれる。

 

「次は、魔力壁を移動させる練習をしよう」

 

「移動?」

 

「敵の攻撃に合わせて壁を動かすんだ。これができれば、防御効果が格段に上がる」

 

新たな課題に挑戦していると、突然森の奥から大きな音が響いた。

 

「何の音ですか?」

 

「……魔物の声だね」

 

アルベルトの表情が緊張した。

 

「かなり大きな魔物のようだ。村に向かっているかもしれない」

 

「えっ……」

 

ライナスは不安になった。また魔物騒動が起きるのだろうか。

 

「ライナス君、今日の練習は中止だ。すぐに村に戻りなさい」

 

「でも……」

 

「君はまだ戦闘経験がない。危険すぎる」

 

アルベルトが厳しい口調で言う。

 

「私が魔物の様子を見てくる。君は村の人たちに警戒を呼びかけてくれ」

 

「分かりました……」

 

ライナスは不本意ながら村に向かった。しかし、途中で再び大きな音が響く。今度は村に近い方向からだった。

 

「あっちは……村の方向……」

 

ライナスは急いで村に駆け戻った。すると、村の入り口付近で騒ぎが起きていた。

 

「みんな! 大型の魔物が現れた! 子供たちは家の中に避難して!」

 

村長が大声で指示を出している。

 

「お父さん!」

 

ライナスはハルオを見つけて駆け寄った。

 

「ライナス! どこにいたんだ、心配したじゃないか」

 

「森で……魔物はどこに?」

 

「村の北側に現れた。オーガという大型の魔物だ」

 

オーガ……ライナスは魔物の本で読んだことがある。人間の三倍ほどの大きさで、怪力を持つ危険な魔物だ。

 

「みんなで戦うの?」

 

「そうするしかない。でも、君は家にいなさい」

 

「でも……」

 

その時、村の北側から悲鳴が聞こえてきた。

 

「うわあああ! こっちに来る!」

 

「みんな下がれ!」

 

ライナスは建物の陰から様子を伺った。村の男性たちが農具を持って立ち向かっているが、オーガの巨体には歯が立たない。

 

オーガは身長が3メートルほどあり、太い腕には巨大な棍棒を持っている。村人の攻撃をものともせず、こちらに向かってくる。

 

「やばい……このままじゃ村が……」

 

ライナスは迷った。家にいるべきだが、このままでは村人たちが危険だ。

 

(僕の魔法で何かできないだろうか……)

 

『魔法理論解析』でオーガを観察してみる。すると、魔物の情報が表示された。

 

【オーガ】

【体力:340ポイント】

【防御力:89ポイント】

【弱点:頭部、関節部】

 

(体力340ポイント……僕の魔法の威力は45ポイント程度だから、7〜8回当てれば倒せるかも……)

 

しかし、オーガに近づくのは危険すぎる。

 

その時、ライナスはある可能性に気づいた。

 

(複合魔法を使えば、威力を上げられるかもしれない)

 

火と風を組み合わせれば、より強力な炎の魔法になる。アルベルトから習った理論を思い出しながら、魔法の構成を考える。

 

「よし……」

 

ライナスは建物の陰からオーガに向けて魔法を準備した。

 

まず風の魔法でオーガの周囲に気流を作り、そこに火の魔法を重ねる。風が火を増幅し、より強力な炎になるはずだ。

 

「えい!」

 

ライナスが放った複合魔法は、オーガの足元で爆発的な炎を起こした。

 

「グオオオオ!」

 

オーガが痛みで叫ぶ。解析してみると、85ポイントのダメージを与えていた。

 

「やった……」

 

しかし、オーガは怒り狂った。炎の発生源を探して、ライナスの隠れている方向を見つめる。

 

「まずい……」

 

オーガがライナスに向かって突進してくる。

 

「ライナス! 危ない!」

 

ハルオが駆け寄ってくるが、間に合わない。

 

ライナスは咄嗟に魔力壁を展開した。しかし、オーガの棍棒の威力は凄まじく、魔力壁が砕け散る。

 

「うわあ!」

 

ライナスは吹き飛ばされ、地面に転がった。

 

「ライナス!」

 

村人たちが心配そうに叫ぶ。

 

(まだ……終わりじゃない……)

 

ライナスは立ち上がった。少し痛いが、魔力壁のおかげで大きな怪我は避けられた。

 

オーガが再び攻撃してこようとした時、森の方から声が響いた。

 

「そこまでだ」

 

アルベルトが現れた。彼の手には、これまで見たことのない強力な魔法が準備されている。

 

「君は約束を破ったね、ライナス君」

 

「ごめんなさい……でも……」

 

「後で話そう。今はこいつを片付けないと」

 

アルベルトが高度な複合魔法を発動した。氷と雷を組み合わせた魔法が、オーガを包み込む。

 

「グゴオオオ……」

 

オーガは氷に包まれ、動けなくなった。そして、雷撃によってとどめを刺された。

 

「すごい……」

 

ライナスは感嘆した。アルベルトの魔法は、自分とは次元が違っていた。

 

「ありがとうございます!」

 

村人たちがアルベルトに感謝する。

 

「いえいえ、たまたま通りかかっただけですよ」

 

アルベルトは謙遜しているが、ライナスには真実が分かっていた。彼は最初からライナスを心配して、後を追ってきていたのだ。

 

騒動が収まった後、ライナスはアルベルトに呼び出された。

 

「君は約束を破った」

 

「はい……ごめんなさい」

 

「しかし……」

 

アルベルトの表情が少し和らぐ。

 

「君の判断は間違っていなかった。あのまま何もしなければ、村人に犠牲が出ていただろう」

 

「本当ですか?」

 

「ああ。そして、君の複合魔法は見事だった。短期間でよくあそこまで上達したものだ」

 

ライナスは安堵した。

 

「でも、もう少し慎重に行動してほしい。今回は運が良かっただけだ」

 

「分かりました」

 

「それと……」

 

アルベルトが真剣な表情になる。

 

「君の魔法を見ていた村人がいるかもしれない。7歳の子供があんな魔法を使えるとなると、注目を集める可能性がある」

 

「それは……まずいですね」

 

「しばらくの間は、魔法の練習を控えめにした方がいいかもしれない」

 

ライナスは頷いた。確かに、あまり目立ちすぎるのは危険だった。

 

「でも、今日の戦闘で分かったことがある」

 

「何ですか?」

 

「君には実戦での才能がある。冷静に状況を判断し、最適な魔法を選択できた」

 

アルベルトが続ける。

 

「恐らく、前世での経験が活かされているのだろう」

 

「前世での経験……」

 

「大人としての判断力と、子供としての柔軟性。この組み合わせは、戦闘においても有効だ」

 

ライナスは考え込んだ。確かに、今日の戦闘では恐怖よりも冷静さが勝っていた。

 

「これからは、もう少し本格的な戦闘訓練も取り入れよう」

 

「本当ですか!」

 

「ただし、今まで以上に慎重に行う。そして、絶対に一人で危険に近づかないこと」

 

「はい!」

 

こうして、ライナスの新たな修行が始まることになった。

 

研究者としての知識と、戦士としての技術。両方を身につけることで、彼はこの世界での生存能力を高めていく。

 

しかし、今日の出来事は村人たちにも大きな印象を残していた。

 

「あの子、魔法を使ったよね?」

 

「7歳であんな魔法が使えるなんて……」

 

「天才なのかもしれない」

 

ライナスの噂は、少しずつ村に広まり始めていた。

 

そして、その噂はやがて村の外にも届くことになる……

 

(これからが正念場だ)

 

ライナスは決意を新たにした。自分の能力を隠しながら、それでも大切な人たちを守れるだけの力を身につけなければならない。

 

転生者としての秘密を守りつつ、この世界で生き抜いていく。その困難な道のりが、今始まったばかりだった。

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