「……なんだここは、何も見えないな……」
青年は気がついたら真っ暗な空間に立っていた。だがそれよりも気になったのは、何故自分は生きているのかということだ。自分は重い病にかかり、病院のベッドの上で最期を迎えた筈だった。
「あなたをここに招いたのは私です」
「っ!誰だ?」
突然どこからか声が聞こえ、青年は辺りを見回す。
「こちらです」
再び声が聞こえ、そちらへ視線を向けると、神々しい光に包まれた美しい女性がいた。
「私は女神。あなたをここに招いたのはこの私です」
目の前に現れた女性は自らを女神と名乗り、青年に柔らかな笑みを浮かべる。
「どうして俺はここにいるんだ?俺は病院で死んだ筈だ」
「確かにあなたは病院でその生涯を終えました。ですのでここにいるのはあなたの魂を具現化させたものです」
「魂を……とりあえずそれは分かった。じゃあ俺をここに招いた理由はなんなんだ?」
「実は下界の人々を見ていた時、偶然あなたの姿が目に入りました。幼少期に重い病に侵され、それから亡くなるまでの十数年を病院の一室で過ごした……それで終わらせてしまうのは惜しいと思い、私が魂をここに招き入れました」
「そうか……それで、ここに俺を連れてきてどうするつもりなんだ?」
ここにいる理由が分かった青年は、女神に自分をどうするつもりなのか問いかける。
「はい、そのことなんですが……先程言ったようにあれであなたの生涯を終わらせてしまうのはとても惜しいと感じました。偶然とはいえ目に入ってしまった以上、何かしてあげたいと思ったのです」
「そこで提案なんですが、転生するつもりはありませんか?」
「転生?」
「ええ。あなたがこれまで過ごしていた世界とは違う世界。そこで新たに生きていくというものです」
「いかがですか?」
「………」
女神から出された提案に青年は暫し考え込む。正直転生は魅力的だ。今まで病室で過ごし何もすることができなかったため、このまま終わるのは未練はある。
それから考えること数分、答えを出した。
「決まった、転生を頼む」
考えた末、青年は転生することを決めた。
「分かりました。それでは、これから新しい世界へ転生する餞別として、私から贈り物をさせていただきます。何か要望はございますか?」
「要望か……」
そう言われ青年は再び考える。そしてあれこれ悩んでいたが、ふとあるものが脳裏に浮かんだ。
「(そういえば……エターナルになるってこともできるのか?)」
彼が思い浮かべていたのは生前最も好きだったとある戦士の姿。それは特撮作品、仮面ライダーダブルに登場するライダー、仮面ライダーエターナルだった。
まだ自分が健康だった頃、観に行った映画で初めてエターナルを見て一瞬で心を奪われた。敵ライダーでこそあったが、その圧倒的な強さ、全てのガイアメモリの頂点という設定、そして変身者である大同克己、どれをとっても最高と言える。
病院に侵され入院してからも、毎週仮面ライダーの放送を見て、両親が見舞いとして持ってきてくれた過去のライダー作品も見たが、自分の中でエターナルを越えるライダーはいなかった。
「……なぁ」
「お決まりになりましたか?」
青年は女神に仮面ライダーエターナルとしての力を所望した。
「そう言う訳なんだが、大丈夫か?」
「ええ、それでしたら可能です。ですが今すぐというわけにはいきません。あなたが転生しある程度成長したら、私の方から色々お送りします」
「ああ、それで構わない」
「それでは、あなたを新しい世界に転生させます。どうか、あなたの第二の人生が満足のいくものになることを願っています」
女神がそう言うと、青年の身体が光に包まれ、ゆっくりと消えていった。
「………あ、そう言えば……ライダーの力を欲していましたが、彼が転生する世界は確か………」
青年がいなくなってからしばらくして、彼の転生する世界がライダーとは関係のないものであることに気づく女神がいた。