鍛冶狂いのTS美少女さんが紹介するイカれたメンバーたち(ガチ)   作:TSしか書かないマン

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第1話

 霧雨が降る、ヨーロッパ風の街並み。

 

 すっかり日は暮れ、街にはガス灯の光が輝いている。この地方の街である”ハイ

ンスター”にもようやく文明という物がやって来て、去年からこういうガス灯が点灯されるようになった。

 

 ただ、ガス灯と言うのは電灯と比べその光と言うのは穏やかなもので、水にぬれたこの街をオレンジ色の優しい光で照らしていた。

 

 ピチャピチャと水たまりを自分のロングブーツで踏みながら、そんな街の中を進んでいく。街を行き交う仕事終わりの労働者たちの顔を見届けながら、とあるショーケースの前で足を止める。

 

 ショーケースには、光が反射し、自分の顔が映っていた。

 

「……この姿になってからもう15年か」

 

 そこにはこの雨の湿気のせいか、ややぼさついたショートの金髪をひっさげた少女がいた。瞳は青く、このオレンジ色に照らされたこの世界では浮いた色だった。

 

 唇は若々しく瑞々しい。リップや化粧の類はしていない。というか、そのやり方も知らない。だがしかし化粧はしていないというのに肌はきめ細かく絹の様に滑らかだ。むしろ化粧をしていない事でその初々しさが際立っている。

 

 散々見てきた姿ではあるが、やはり自分ってやはり美人なんだなと思いつつ、用事がある事を思い出し顔をふりふりと横に振り、再び歩みを続ける。

 

(そうだ、今日は俺たちの”鍛冶大好き秘密結社”の初の集会の日だったんだ。こうやってうかうかしてたら遅れちゃうな。そうなったらリーダー失格だ)

 

 そう、何を隠そう自分というのはどうしようもない鍛冶狂いなのだ。鍛冶と言うのはなんとも素晴らしい物で、モンスターの素材から武器や防具といった物を鍛造することが出来るのだが、これがまたなんとも自分は大好きなのだ。

 

 そして鍛冶が大好きだからこそ”鍛冶同好会”またの名を”鍛冶大好き秘密結社”という物を開いた。鍛冶を愛する連中と共に日々研鑽し、また素材のありかの情報を共有するという素晴らしい共助精神を持った組織である。

 

 ちなみに、”秘密結社”というのは単にカッコいいからと言う適当な理由でつけられたものである。これと言って深い意味はない。

 

 ……さて、そんな秘密結社を開いた自分であったが、最初はこんな物好きの組織には誰も参加しないとは思っていた。だが、何の偶然か何人か仲間が集まることになった。

 

(やっぱり俺は恵まれているな。5人も仲間が参加してくれるなんて、感謝しなくちゃ)

 

 なにせ自分には不釣り合いなくらい頼もしい仲間たちだ。

 

 ちょっとだけ個性的な仲間たちではあるが、それでもこんな物好きの”鍛冶大好き秘密結社”なんていう珍奇な同好会に属してくれているだけでそれはそうれはもう頼もしい。

 

 自分の幸運という物に感謝なくちゃいけない……と噛みしめつつ、霧雨の中を歩いていく。

 

 暫く歩みを進めたところでさびれた廃ビルが見え始める。

 

 長年放置され続けたせいか凄まじくさびており中に入るのはなんともためらわれる雰囲気ではあるが、気にせず廃ビルの扉を開け中に入っていく。

 

 

▽▲▽▲

 

 廃ビルに入ると、そこにはすでに先に来ていた秘密結社のメンバーたちが瓦礫の上に腰かけて待っていた。

 

「みんな、待たせてすまなかった。今日は集まってくれてうれしいよ」

 

 そしてニコリと笑い、頼もしい仲間である彼らの顔を見渡す。

 

「ボスが来ましたっ!久々で嬉しいです!」

「ふふふ、やはりボスは主人公っぽい。それでこそ僕のモブAが輝くッ」

「わぁーちょうちょさんがみえるぅぅぅぅ」

「ワンッ、ワンッ、ワンッ」

「ひ、ひ、ひ、ひぃぃぃぃぃぃ、話しかけないで話しかけないで話しかけないで」

 

 うん、相変わらず今日も頼もしい仲間たちだ。

 

 ……ちょっとだけ個性的な彼らではあるが、ちゃんと本気を出せば頼もしいんだ。そう、頼もしいんだ。頼もしいんだよな?

 

 うーん、取り合えず頼もしいと思う事にしよう。こういうのは気にしたら負けなんだ……。

 

 一抹の不安を感じつつも気を取り直し話を続けることにした俺は、より声が行き届くように皆の前にあるひときわ大きな瓦礫の山によじ登った。そして見晴らしの良い頂上からみなに話しかける。

 

「よっこいしょっと……さて皆の衆よ、今日は何の日か分かるかい?」

 

 そう問いかけると、一瞬の沈黙ののちにそれぞれが返事をした。

 

「うーん、”皆の衆”って何?」

「ふふふ……それは決まっているだろう。今日は記念すべき第一回目の集会さ」

「うああああぁぁぁぁ、ちょうちょさんがあああぁぁぁぁきえたあああぁぁぁ」

「ワンッ、ワンッ、ワンッ!!!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……生きててごめんなさい」

 

 みんなが一斉に返事をしたことによって若干聞き取りずらくなってしまったが、リーダーたるもの仲間たちの声は聞き逃してはならない。きちんと言葉を受け止め、返す。

 

「うん、正解だ”ブラック”。君はやっぱり物分かりがいい。素晴らしい特技だ……ああ、あと”ビースター”、皆の衆って言うのは”みんな”っていう意味だ。覚えておくといい」

 

「みんなって意味なんだ。はじめてしったー」

 

「よし、知識が増えるという事はいい事だ。君はまた一つ成長した。ああ、それと”サンレヴィ”。君は生きていてもいい。なぜならば生きているだけでも君は素晴らしいからだ」

 

「はいぃぃっぃいいぃぃぃぃぃ」

 

 と、そんな感じで各々と心温まるトークをしつつ、次の話へ進める。

 

「さて、みんなの緊張がほぐれてきたところで話を戻そう。さっき”ブラック”が言ってくれたように今日は記念すべき我らが秘密結社の第一回めの集会だ。だがそれにあたって一つ重大な問題がある。”ヌゥン”、それが何かわかるかい?」

 

「ちょうちょ」

 

「あーうん、お前に聞いた俺が悪かった。ちょうちょは確かに綺麗だ。だが、今回はちょっとだけ違う。それはだな……俺はみんなの鍛冶の得意分野と言う物を知らないんだ。この”鍛冶大好き秘密結社”においてそれは大変不味い。だから、これから面接をしようと思うんだ」

 

「ワンッ、ワンッ」

 

「うん”アンザック”、返事ありがとう。だがそこは人間の言葉で頼む。ああ、それとこの面談っていうのは人見知りのメンバーもいるから俺と一対一でやるぞ」

 

「はーい」

 

 と、そういう訳で一人一人の面接会が始まった。

 

 

▽▲▽▲

 

 そうしてこの廃ビルのとある個室にて、俺はソファーの上に座りメンバーが入ってくるのを待っていた。

 

 しばらく待っていると、ドアがノックされる。

 

「入ってもいいぞー」

 

「入るぞ、ボス」

 

 入って来たのは、この組織のナンバーツー兼唯一のまとも枠である”ブラック”。黒髪黒目の至って平凡な青年であり、かつ唯一のまとも枠とはされてはいるがコイツはコイツで中々にとがっている。

 

「で、どうなんだい陰の暗躍者としての活動は」

「ふふふ、順調さ。皆は僕の事を今日もモブAだと思い込んでくれている」

「あー、モブAか。それは良かったな」

 

 さて、何を隠そうコイツは重度の中二病である。

 

 コイツが語るところには彼は生まれたときから”陰の暗躍者”にあこがれていたらしい。そしてその陰の暗躍者になるためにはモブAを演じなければならないとの事だ。

 

 曰く、彼の趣味はそこらへんでたむろっているチンピラたちに自ら「ご、ゴミはちゃんとごみ箱に捨ててください」と言って逆上させ、殴られる事らしい。

 

 チンピラに殴られているとモブAっぽさが出るかららしい。

 

 チョットナニヲイッテルノカワカラナイ……。

 

 だが、まぁそれでも個人の趣味と言うのは尊重されるべきだ。俺が鍛冶狂いなようにコイツの趣味と言うのも尊重されるべきだろう。

 

 それに、コイツは話が通じるのだ。それだけで十分と言えるほど素晴らしい人間である。

 

「さて、ブラック……ところで君の得意分野と言うのはなんだ?」

「うーん、それは陰で暗躍する事だな。いつもは表でモブAとして振る舞うが、誰も知らぬところで暗躍するという事は得意だ」

「いや、ほら、得意分野って言うのは鍛冶とかの話で……」

「え?」

「はい?どしたん」

「いや、ここって秘密結社じゃないのか?」

「確かにそうだけど……。でもどっちかっていうと”同好会”って側面の方が強いよ?」

「……初めて知った」

「は?」

 

 おいおい、まさかのここに来ての新事実。

 

「ちょいちょい、ちょっと待て。お前今までこの組織の事を何だと思ってたんだよ!?」

「いや、ほら、あの……善良な市民に紛れ裏で戦う秘密結社なのかと」

「マジかよ」

「マジ」

 

 【悲報】唯一話が通じると思っていたブラックさん、そもそもこの組織が鍛冶同好会だってことを知らなかった。

 

 おーい、これどうすんねーん。

 

 まさかこんな衝撃の事実が出てくるとは思いもしなかった。

 

 いや、これ本当にどうするんだ?

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