METAL WOLF Archive XD   作:W.B.O

16 / 58
4.5周年ガチャ楽しんで済ますか? 私は3天井して石が無くなりました。


Chapter Ⅱ-Ⅳ ”The Ride of the HOUNDS Part.Ⅱ”(猟犬の騎行パート2)

 ―――アビドス自治区でマイケルとカイザー理事が交戦する約3時間前。

 日の出にはまだ時間があり、夜の闇が世界を覆う中、活動停止中のSRT特殊学園のヘリポートに1機の強襲重攻撃ヘリコプターが待機状態にあった。

 SRT専用に設計、製造されたものの予算の都合量産がキャンセルされたワンオフ機体。開発会社がカイザーインダストリーに買収されるなどの曰く付きであるそのヘリの名はXAH-12という。

 兵員輸送、重対地攻撃、その要求性能を実現するために機体はCH-53K(キングスタリオン)級の大型機となり、SRTに制式採用されたMH-60(ブラックホーク)と比べるとそのサイズ差は歴然としている。尚、ペットネームは量産決定後につける計画だったので、この機体には公式な愛称は無い。

 そんなXAH-12の前に整列するのはHOUND小隊の面々。彼女たちはカズミを除いて全員特殊な服装、腕と脚の間に布を渡したウイングスーツと呼ばれるものを着用していた。

 

 

「これより作戦内容を説明する! 一字一句聞き漏らすな! わかったか、アバズレ共!」

 

 

 小隊長であるトミが整列する他の3人の前で仁王立ちしながら大声を張り上げる。

 これは作戦前のブリーフィングなのだが、彼女の口の悪さのせいで叱責しているようにしか聞こえないのは御愛嬌だ。

 

 

「今回、連邦捜査部シャーレはカイザーローンへの強制捜査を実行する。不正の証拠を掴み、連中が泣いて詫びるようにするのが目的だ! 目標はカイザーローン本社ビル上層階にあるローカルサーバールーム。作戦開始は先生の合図によるものとする」

 

 

 トミは説明しながらタブレットを操作し、カイザーローン本社ビルのホログラムを浮かび上がらせた。周辺ビルも含めて再現されたかなり精密なモデルだ。

 

 

「本作戦は開始までに隠密でカイザーローン本社ビルの屋上にたどり着く必要がある。なので、特殊装備のウイングスーツを使用してヘリより空挺降下、闇に紛れるわけだ。ここが一番難しいからな、気合を入れていけ! そして作戦開始と同時にカイザーローンのセキュリティネットワークを掌握する。ビル内の夜勤者及び警備はセキュリティを掌握し、閉じ込めた後に無力化ガスでおねんねしてもらうことになる。ロボット族もぐっすりの凄いやつだぞ!*1 そして抵抗がなくなったところで悠々と我々はサーバーからデータを抜き出すということだ。ここまでで質問はあるか!?」

 

 

 説明を一旦区切り、不明分がないかとトミは問う。

 それに対し、すっとカズミが手を上げた。

 

 

「HOUND1、外で警備しているセキュリティはどうするつもりだ?」

 

「いい質問だHOUND2、外の連中は一先ず無視する形になる。我々は基本ビルの屋上とその近隣フロアにしか立ち入らん! それとHOUND2、貴様は今回特別に先生とのデートを行う権利をやるぞ。我々が降下した後に貴様はシャーレビルで先生と合流し、アビドス自治区へと向かってもらう。これは先生からのオーダーだ!」

 

「……了解した」

 

「羨ましいねぇ、中々なイケオジな先生と遊覧飛行だなんてさ!」

 

 

 別行動なのは構わないのだが、それをデートなどという妙な表現をされたことに思わず渋い表情を浮かべるカズミに対し、タエコがニヤニヤと笑いながらその背中をバンバンと叩く。

 中々に痛いので思わず顔をしかめたところ、トミがタエコを見咎めて怒鳴りつけた。

 

 

「私語は慎めHOUND3! さて……他はないか!? ないな! よし、それでは愉快なピクニックの始まりだ!」

 

 

 トミの締めと共に、カズミはXAH-12のコックピットに、他のメンバーは胴体キャビンへと乗り込むと、手早くエンジンを始動させ、その巨体に見合わぬ機敏さで闇夜に消えていく。

 

 

「装備に不備がないか最後に確認しろ。一度飛び降りたら、戻れんぞ!」

 

 

 揺れる機内、キャビンでは万全を期すために最後まで機材の確認をする3人。

 ウィングスーツの破れがないか、装備の固定は完璧か、輸送ドローンの装備に漏れはないか、全部確認していくだけで結構な時間が過ぎ、その内に機体は目標ポイント近くまで到達した。

 機内の赤いランプが灯り、ブザーが鳴る。降下準備の合図だ。

 

 

「よし、立て!」

 

 

 トミの号令と共にタエコとアリアが立ち上がる。

 輸送ドローンと共にランプドアの端に並び、下方を流れていくD.U.の夜景を眺める余裕は今の彼女たちにはない。緊張で顔が引き締まっていく。

 次の瞬間にはランプが緑色に切り替わった。ヘリが降下ポイントに到達したのだ。

 

 

「さあ行くぞ、命知らず共!」

 

「お先に行かせてもらうよ!」

 

「あっ、待ってください!」

 

 

 3人が次々にXAH-12から飛び出していき、最後に飛び降りたアリアは仲間を見失わないように目を凝らした。

 まるで翼を得たかのように自らの身体一つで飛ぶ感覚。彼女は僅かに身を捩りながら速度と進路を調整していく。

 目標であるカイザーローン本社ビル屋上は決して余裕があるとはいえず、ほんの少しでも速度超過すれば飛び越えて明後日の方向に流されてしまうし、速度が不足すればビルの外壁にシミを作ることになるのは明らかだ。

 しかし、彼女はキヴォトスにおいても最上級の訓練をうけたSRT特殊学園の生徒。寸分の狂いもなく、想定していた通りの速度、ルートで最終アプローチに入った。

 段々と近づいてくるカイザーローン本社ビルの屋上は航空障害灯でおおよその形はわかるが、細部は暗視ゴーグルがなければわからない。しかし、彼女たちは恐れることなく降りていく。

 最後の一瞬、パラシュートを開いて急減速しながら、しかしそれでも一定の速度がのった状態で屋上に足がついた瞬間にパラシュートを切り離して大きく受け身を取ると、ゴロゴロと速度を殺しながら転がり、停止したところで周囲を見渡せばHOUND1とHOUND3も同様に受け身を取って無事着地を果たしたのを確認できた。

 

 

(作戦開始時刻までいくらかの余裕はある……)

 

 

 難関をクリアしたことにホッとしながらも、HOUND小隊の面々はウィングスーツを脱ぎ捨てて作戦用の装備に切り替えていく。

 部隊に追従していた輸送ドローンが着陸し、そこからガスのボンベや通信ジャマー、タブレットなどの重量、ないし精密な装備を取り出した彼女たちは作戦開始のための配置につくべく各々配置についていった。ドローンは物資の受け渡し後、オートで離脱していく。

 ハッキング担当であるアリアは屋上の配電盤に近づくと、無理矢理その箱をこじ開けて中身を確認する。探しているのはネットワークへのアクセス経路だ

 

 

「HOUND4、これよりネットワークへ侵入します。30秒もあれば十分です」

 

「HOUND3、HOUND4がシステムを掌握次第ガスを投入の準備に入る」

 

 

 配電盤の中にあったハブにコードを差し込みアリアはカイザーローンのセキュリティに正面から挑む。

 ミレニアムの有名なハッカー集団ヴェリタスに決して引けを取らず、そのトップレベルに匹敵するハッキング技能を持つ彼女は、まるで自分が電子世界の住人であるかのように容易くカイザーローンのネットワークへのアクセス経路を拓くと、そこへ特製のワームプログラムを流し込んだ。

 このワームはセキュリティの通信回線を掌握して外部との通信を欺瞞し、また監視カメラの映像もループするように変更し、さらには空調ユニットの制御権を掌握する。

 それを確認してタエコに顔を向けて力強く頷くと、彼女は手早くボンベを配管に接続した。

 

 

「HOUND3了解、ボンベを接続。あとはバルブを開くだけでビル内の連中はぐっすりさ」

 

「了解した。以降、作戦開始までこの場で待機するように。いいな?」

 

「了解」「りょうかーい」

 

 

 ゆっくりと腰を下ろし、彼女たちは星空を見上げながら待つ。

 獲物へ食らいつけという、先生の指示を。

 

 


 

 

 足場にしていたXAH-12のローターヘッドカバーを踏み切り、大空へと跳躍した『メタルウルフ』は先ほど『ドロシー』タイプを撃ち抜いた『RG70』を背面武装コンテナに格納すると、そのかわりに肩に担ぐ箱型の何かを構えた。

 見知らぬ武装に身構えるPMCの兵士たちであったが、彼らの目線の先でその箱型が十字に開くのを見た瞬間、その先に何が起こるのかを理解し我先にと逃げ出そうとする。

 しかし、遅い。既に『メタルウルフ』の火器管制システムは目に見える範囲のロックを終えており、引き金を引くとマルチミサイルランチャー『MML32』はその名が示す通り32発のミサイルを一斉に放ち、文字通りのミサイルの雨を振らせてカイザーの部隊を区画ごと吹き飛ばした。

 

 

『先生、ジャンプするならひと声かけて欲しい。危うくバランスを崩すところだった』

 

”おっと、すまないねカズミ。ついつい何時もの癖で……なっ!”

 

 

 この一撃で数十人の兵士がKOされ、発射機を再び背面のコンテナに格納した『メタルウルフ』は今度は右手に複合型ガトリングガンである『MG200』、左手にはリボルバー型榴弾発射機『GL95』を装備し、混乱状態にあるカイザーPMC部隊の中心に文字通りに飛び込む。

 

 

”Hey Hey Hey!”

 

「ぎゃあ!?」

 

 

 丁度着地点に居た大柄のシールド持ちのオートマタ兵が下敷きになり、周囲の兵士がとっさに銃口を向けるが、まったく構う素振りも見せずにマイケルは手にした武器の引き金を引いた。

 狙いを付ける必要など無い。何故なら、撃てば当たるからだ。

 吹き荒れる鉛玉の嵐は一般オートマタ兵士どころかシールド持ちの兵士すら蜂の巣にし、時折放たれる60mmの砲弾は遮蔽に隠れたつもりの分隊を丸ごと吹き飛ばした。

 

 

「戦車を前に出せッ!」

 

おおっと(Oops)!”

 

 

 カイザーPMCのクルセイダー戦車2両が行進間射撃を繰り返しながら接近してくる。

 それを見た彼は背面ブースターを展開させて接近してくるクルセイダーを飛び越すように跳躍すると、その頂点で1両目の天板めがけてMG200の引き金を引いた。

 決して分厚いとは言えぬクルセイダーの上面装甲は複数の口径のガトリングガンで構成されたMG200の中でも最大口径の20mmのシャワーを浴び、車内が蜂の巣になって搭載弾薬に引火。車体に空いたあらゆる貫通孔から炎を噴き出すと砲塔が天高く舞い上がった。

 2両目は全力で距離を離すべく前進しながら砲塔をまわすが、それに対して『メタルウルフ』は着地した後に左手のGL95を背面コンテナに戻し、今度はTWBZを取り出すと逃げるクルセイダーの砲塔めがけて引き金を引く。

 立て続けに発射される対戦車榴弾は、正確な照準によって2発とも命中。クルセイダーは瞬く間にスクラップとなって燃えながら慣性で少し進んだ後、完全に動きを止めた。

 

 

”さあ、次はどいつかな?”

 

 

 見栄を切りながら歩兵部隊の方向へと向き直す『メタルウルフ』の単眼が赤く輝く。

 それを見たカイザーPMCの兵士たちは恐怖した。一般歩兵では、この濃紺の特殊機動重装甲に全く歯が立たないのは明らかだ。

 

 

「に、逃げろぉ!」

 

「う、うわああ!」

 

 

 恐怖に駆られた兵士達が背を向けて逃げ出すが、彼らが路地に駆け込んだ瞬間に盛大な爆発が起きて大通りへと逆戻りさせられる。

 倒れて動かない兵士の中、辛うじて意識を保っていた一人が身体を軋ませながら顔を上げると、先程の路地から悠然と歩いてくる複数の人影。それが便利屋68だと気づいた瞬間、彼は頭を撃ち抜かれて昏倒した。

 

 

「ふふっ、これで残存部隊の半分は始末できたかしら?」

 

「ハルカちゃんのすんごいトラップで粗方ふっ飛ばしたし、残りは多くないでしょー」

 

「え、えへへ……」

 

 

 銃口から硝煙を上げながら、陸八間アルは愉快そうに笑う。その横ではムツキに褒められ、ハルカが照れくさそうにしていた。

 便利屋たちはそのまま路地から出てくると、マイケルに対して軽く手を振り先導を始める。カイザーPMC理事が居る本隊はもう目の前だ。

 

 

「それじゃあ、敵の本丸に行きましょ」

 

”そうだな、ではカイザーPMC理事と顔合わせに行こうじゃないか?”

 

「ええ、吠え面を見るのが楽しみだわ!」

 

 

 最早彼と便利屋を止められる戦力はなく、唯一現場で残った『ドロシー』タイプも片割れが一撃で破壊されてしまった以上、PMC理事にとってその巨体はあまりにも心もとないものでしか無い。

 そして、あまりにも急いで進軍したこともあり、理事の本隊は対策委員会と便利屋、マイケルに挟み撃ち状態になってしまったことに気づいた時には後の祭りだ。しかも、重攻撃ヘリであるXAH-12が空から睨みを効かせているので逃げることもできない。

 

 

やあ(Hello)カイザーPMC理事、はじめましてかな? 私がマイケル・ウィルソンだ。どうした、驚いて言葉も出ないのか?”

 

 

 包囲網は完成し、前後で挟まれた理事の車両に向けて『メタルウルフ』が手を振って挑発込みの挨拶をすると、サンルーフからPMC理事が顔を出した。

 肩をワナワナと震わせる彼は、怒りと恐怖がないまぜとなったような声を絞り出す。

 

 

「貴様……入院したはずじゃなかったのか!」

 

”残念だったな、トリックさ。それとも、私の演技がアカデミー賞主演男優賞を狙えるレベルだったかな?”

 

「訳のわからないことを!」

 

 

 キヴォトス人にはわからないジョークに苛立ちを隠さず、理事は乗っていた車の天板を

がつんと叩く。

 

 

「そもそも、貴様が介入する権限はないはずだ! アビドス高校は生徒会が消滅し、学園としての機能を完全に喪失した! 廃校対策委員会などという非公認部活が一つあったところで―――」

 

”おっと、その対策委員会は本日0時をもって正式に生徒会機能の引き継ぎを承認されたぞ。つまり、お前はアビドス高校への明確な自治侵害行為を行ったということであり……対策委員会顧問である私には、介入する権利がきちんと存在しているんだよ”

 

「んなっ!?」

 

 

 数日前に提出した引き継ぎ手続きのための申請書類、その承認が降りたのは前日のこと。

 多忙により業務が滞っている連邦生徒会であったが、マイケルが()()()()して提出したこともあり、他の書類よりやや優先的に処理されたのでこの程度の時間で済んでいる。

 もし彼の()()()()がなければ、まだ書類の山に埋まっていたかもしれないが、何にせよ通ったのであればこちらのもの、ということだ。

 そしてカイザー理事はその事実を認識できずにいた。(CPU)が理解を拒否していたのだ。

 彼のプランは既に根底から覆されている。最早、それを挽回する手段はない。

 

 

「お、おのれぇ……!」

 

「ホシノ先輩とシロコちゃんは返してもらいます!」

 

「年貢の納めどきね、カイザーPMC理事!」

 

 

 前から対策委員会が、後ろから便利屋68が近づいてくるが、兵士たちは混乱状況にあり、『ドロシー』タイプもどうすればよいのかわからず誰も発砲をしない。

 ここで撃てばどうなってしまうのか、先に壊滅させられた部隊の末路を見ている彼らはそれを想像してしまい、引き金を引くことができないのだ。

 

 

”大人しく降伏すれば痛い目に遭わずに済むぞ。さあ、どうする?”

 

 

 銃口は向けず、ただ言葉のみでの降伏勧告。圧倒的優位で攻め込んだはずが、立場が逆転してしまったことで兵士たちの動揺は収まる様子がない。

 

 

「便利屋……! 銀行を襲った上にアビドスと手を組み我々に噛みつくとは……!」

 

「冤罪だって言ってるでしょ! それに、あなた達のように直ぐ脅しかけるような小悪党に下げる頭なんてこちとら持ち合わせていないわ! そんなことよりも、アビドスの子達と一緒に戦うほうがまだ気分がいいもの!」

 

「あははっ! アルちゃん怒らせちゃったからにはタダじゃすまないからね!」

 

 

 理事の恨み節を真っ向から切り捨て、真正面から正々堂々と敵対を宣言するアル。

 電話での叱責や銀行における扱いで相当にストレスが溜まっていたこともあり、宣言を終えたアルは非常にスッキリとした様子であった。

 そして、それと入れ替わりで対策委員会側からはノノミが一歩前に踏み出した。

 

 

「私達に生徒会の権限がある以上、ここに宣言します! 我々はカイザーPMCからの攻撃に対し、連邦捜査部シャーレに正式に救援を要請します!」

 

”連邦捜査部S.C.H.A.L.Eはアビドス高等学校の支援要請を受諾した。さあ、終わりだカイザーPMC理事。S.C.H.A.L.Eビルを襲うという企みも、カイザーローンのマネーロンダリングも、我々は全て把握している”

 

 

 理事の眼の前でアビドスは生徒会としての権限を行使し、シャーレはそれを受諾するというパフォーマンスだが、正当性を示すにはこれ以上のものはない。

 その中でカイザーコーポレーションが対アビドス工作でとっていた非合法活動も暴露されたことで、理事はあからさまに動揺する。

 

 

「な、なにィ……!? か、カイザーローンだと、適当なことを……!」

 

”ハッ、無実の振りをするには遅すぎるな。今頃、カイザーローン本社は強制捜査が執行されていることだろうよ”

 

 

******************************************************************

 

 作戦開始コード『Let's Party』を受け取ったHOUND小隊は即座にカイザーローン本社ビルの全セキュリティドアを封鎖し、無力化ガスを流し込んでビル内部の人員を無力化すると携帯電話及び無線機の使用を阻止するためにジャマーを作動させ、ビルへの突入を果たした。

 内部に漂う無力化ガスから身を守るためにガスマスクをつけ、手持ちの銃に消音器(サプレッサー)を装着させた彼女たちは流石はSRTと呼ぶべき速度でビル内部を進み、あっという間に目標階へと到達する。

 ここはカイザーローン本社ビルのサーバーフロア。本来であれば警備ドローンが巡回しているはずの場所だが、警備システムが既に乗っ取られているので床の隅で転がっているのが見えた。

 

 

「こちらHOUND4、現在敵との接触はなし。目標端末を発見しました」

 

「HOUND3、現在非常階段を警戒中。敵の気配はなし」

 

「了解した。HOUND4、お宝の捜索は貴様に任せる! さっさと見つけて、帰って一杯やるぞ」

 

 

 目的のサーバー端末を見つけたアリアはトミの指示のもと、直ちにサーバーへの直接アクセスを開始してデータを抜き出していく。

 手持ちの端末へデータを移しながら、完了予想を見ればおおよそ5分かかるようだ。

 

 

「こちらHOUND4、完了まで5分です。それまで敵をサーバールームに入れないでください。敵が来ればの話ですが」

 

「こういう時はアリアは本当に大活躍だね、それに愛嬌もある。カズミも少しは見習えばいいのに」

 

「無駄口を叩くなHOUND3、そのよく回る舌を縫い合わされたいか!」

 

 

 ビル棟内を完全に無力化していることもあり、カイザーの警備はやってくる気配はないのでHOUNDの3人はダウンロードが終わるまでの5分をゆったりと過ごしていく。

 別の端末でビル内の監視カメラを確認するアリアは、ビルの外の警備が一切気づく様子がないのを確認すると、ビル内の映像から起きているものがいないか探したが、カメラに映る限りはそのような人物は居ない。

 結局、何事もなく5分が経過しサーバーからのデータ吸い出しを完了したことで第一目標は完遂。あとは脱出してシャーレビルへと到着するだけとなった。

 しかし、そこでとうとう外の警備がビルの異常を知る。不真面目な警備員がスマホをいじってジャミングされていることに気づいたのだ。

 

 

「HOUND1、警備が気づきました」

 

「よし、潮時だ。屋上へ移動し、脱出するぞ」

 

 

 外の警備が完全にロックされた扉に悪戦苦闘している最中、HOUND小隊は速やかに屋上へと退避し設置してあるジャマーとボンベに時限爆弾を仕掛ける。証拠隠滅だ。

 そして、ウィングスーツをもう一度着込むと最後にトミは屋上から地上を覗き込んだ。

 地上の警備は応援を呼ぶために自分の足で外に向かうチームとビル内部に突入するチームに別れているようで、少なくとも空を警戒しているものは居ない。

 

 

「今なら大丈夫だな。よし、飛び降りろ!」

 

「スリルがあるね、こういう任務も!」

 

「やあっ!」

 

 

 全員が躊躇なくビルの屋上から飛び出し、オフィス街の間を飛び抜けていく。

 朝の通勤時刻には少しだけ早いとはいえ、それでもいくらかの民間人が街中を往来しているのが見えたが、ほとんどの人間は空を見上げることはしないので彼女たちを目撃した人間はほとんど居なかった。

 結果として彼女たちはその存在をほぼ秘匿したままカイザーローンから1kmは離れた人気のない公園に予備のパラシュートを使って着地する。

 

 

「……っふぅ、いやあ楽しかったよ」

 

「HOUND3、家に帰るまでがピクニックだぞ? 最後まで気を抜くな!」

 

 

 着地した彼女たちは再びウイングスーツを脱ぎ去ると、その場でパラシュートごとまとめて打ち捨てた。

 特別なものが使われていない市販品のものであるため、回収する時間もない中では適当に捨てても問題はない。今回の作戦は完全なステルスを目的としてはいないのだ。

 

 

「……端末も無事です。あとは、シャーレビルへですね」

 

「あぁ、ところで所持金は大丈夫か? ここからは公共交通機関で帰ることになるが」

 

「わかりました」

 

 

 ウイングスーツを脱ぎ去った彼女たちは、SRTの制服としてのセーラー服と軽量なリグを装備しただけの学生の見た目である。

 故に、堂々としていればバレることもない。なにせ、カイザーにはその姿を一度も見せていないのだ。

 だから正面から公共交通機関を使うと提案する。ここはアドリブだ。

 アリアは真っ当にトミの提案に頷いたが、タエコは自分の財布を取り出そうとしてそれを忘れていたことに気づく。

 顔を青くし、即座にトミに頭を下げながらそのうえで両手を合わせた。

 

 

「……トミ、悪いんだけどさ、財布忘れちゃった。お金、貸して!」

 

「貴様ァ、こういうときのために財布は持っておけと言っただろう! この馬鹿者がッ!」

 

 

 彼女のこの叱責がこの作戦最後のものとなった。

 

 

******************************************************************

 

 

 カイザーPMC部隊は壊滅寸前、カイザーローンはシャーレの手のものに襲われたということで、PMC理事はもう完全に追い詰められていた。降伏しても、抵抗しても、どちらにせよ待っているのは破滅しかない。

 もし万が一にでもこの場を切り抜けられたとしても、カイザーコーポレーションにおける出世街道からは完全に脱落してしまうだろう。

 人は追い詰められた時、後先考えない選択肢を選ぶことがある。

 

 

「く、くくく……くく、くはははは!」

 

「り、理事……!?」

 

 

 突然狂ったように笑う理事。側近の兵士が気でも狂ったのかと言わんばかりの様子を見せたが彼の笑いは10秒以上続いた。

 対策委員会も、便利屋も、その異常さに顔を引き攣らせる。

 

 

「どうせ私はおしまいだ。なら、貴様らも道連れにしてやる!」

 

「理事、何をッ!?」

 

「こい! カイザーPMCの最終兵器……『オメガワン』!」

 

『ミサイルアラート!? くそっ、何だ……ッ!』

 

 

 理事の声とともに長距離ミサイルの雨が叩き込まれ、アビドス高校の近隣区画を炎の海に沈めていく。それは、PMC部隊も巻き込むほどの規模であった。

 また、警戒監視を強めていたカズミのXAH-12も同様に狙われ、辛うじて回避したものの戦場からの一時的な離脱を余儀なくされ、空からの目が途絶えてしまう。

 そして、地に巨大な影が落ちる。重低音が周囲の音を支配し、強烈なダウンウォッシュが街に堆積していた砂を巻き上げた。

 

 

「な、何よ、あれ……」

 

「嘘でしょ……!?」

 

「うわぁ……おっきぃ……」

 

 

 空を見上げる対策委員会と便利屋は思わず言葉を失う。

 影の主、それは全長100mを超える巨大なヘリコプターの一種であった。

 4つの巨大なメインローターで浮遊し、大口径榴弾砲や機関砲、多種のミサイルを装備する空飛ぶ要塞と形容されるレベルの異形。

 カイザーPMCの最終兵器であるその名は超大型強襲重攻撃ヘリコプター『オメガワン』。

 XAH-12を製造した会社がカイザーに買収された後に開発した拡大発展型だ。

 

 

”やれやれ、今度はこいつか”

 

 

 もはやここまで続くと偶然とは言えないな、とマイケルは『オメガワン』を見上げる。

 彼の記憶の中にある超大型強襲重攻撃ヘリコプターXH34 『OLAJIWON(オラジワン)』と比べると確かに形状の差異はあれど、機体の構成要件はほとんど変わらないのだ。

 誰かが意図をもってアメリカの兵器の設計図をカイザーに流している。彼はそう確信した。

 

 

「私の『ゴリアテ』を投下しろ!」

 

『ハッ!』

 

 

 強烈なダウンウォッシュで対策委員会と便利屋の目を潰しながら上空に到達した『オメガワン』は理事の要請に従い、機体後部のランプドアを開けてそこから黒い人型兵器を投下した。

 全高にして6mほどか、両腕は武器腕で頭部はなく大砲を1門背負っている少々奇抜なデザインと言える。

 それが理事の後ろに着地すると、彼は車のサンルーフから勢いよく抜け出し、存在しない頭部のスペースに滑り込んだ。

 

 

「ははは、はははははは!」

 

 

 そして、理事は手当たり次第に撃ちまくった。自分の部下も含めて。

 彼の目は最早正気ではなく、完全に狂気に飲まれていたのだ。

 

 

「うわあああっ!」

 

「ぎゃあ!」

 

「やめてくれぇっ!」

 

 

 地上にいる対策委員会と便利屋の数は6*2、それに対してPMC部隊は100名は居る。理事が手当たり次第に撃っていくと誰に一番当たるかと言えば、当然ではあるがPMC部隊に命中する確立が一番高い。

 兵士たちは悲鳴を上げながら『ゴリアテ』の攻撃を受け、逃げ惑うばかりであった。それこそ、対策委員会が哀れに思ってしまうほどには。

 

 

「これ以上撃たれたら学校まで被害が出ちゃうわ! 先生! ノノミ先輩! アヤネ! それと便利屋! あいつを止めないと!」

 

”分かった、やるぞ”

 

「もちろん、止めましょう!」

 

「ええ、ぶっ飛ばしてやるわ!」

 

 

 セリカの言葉に場に居たアビドス勢力の全員が頷く。あのままでは高校も吹き飛ばされかねないのは事実だ。

 その言葉の裏に秘められたPMCの兵士を助けるという思いも(一部を除いて)汲み、彼女らは銃を握る手に力を込めた。

 

 

”おおっ!”

 

「貴様がっ! 貴様が居なければッ!」

 

 

 まず真っ先に飛び出すのは『メタルウルフ』。体格で2倍程度の差があるが、機体出力はそれを補って余りあるので『ゴリアテ』の動きを抑えるために飛びかかった。

 当然理事の『ゴリアテ』は迎撃に移るが、『メタルウルフ』が懐に飛び込む飛び込むほうが早い。故に、理事はゴリアテの腕部で殴りかかることを選んだ。

 『メタルウルフ』の全長に匹敵する巨大な腕部が振り下ろされるが、マイケルはそれを巧みにいなすと『ゴリアテ』の腕を抱え込み、投げ飛ばそうと試みた。

 

 

「甘いわっ! 12860馬力の『ゴリアテ』を舐めるなァァ!」

 

”何ッ!?”

 

 

 だが、狂気に走る理事は逆に腕を振り上げ、『メタルウルフ』すら持ち上げてみせる。

 空中に投げ出され、姿勢制御をする暇もなく『メタルウルフ』は廃屋に叩きつけられ、倒壊した家屋の下敷きとなってしまった。

 もちろん、この程度で撃破されてしまうようなヤワな特殊機動重装甲ではないのだが、それでも『ゴリアテ』がフリーになってしまったのはマズい。

 

 

「はははは! このままアビドス高校を破壊してくれる!」

 

「させないわ!」

 

 

 頭頂部にあるキャノン砲にエネルギーをチャージし、砲身を高校校舎に向ける『ゴリアテ』に対しセリカが銃撃をしかけるが、小銃程度の攻撃では『ゴリアテ』の装甲は破れない。

 

 

「ああもう、威力が足りない……!」

 

「次は私達がっ!」

 

「止めて見せるッ!」

 

 

 続けてノノミとアルが射撃を仕掛けるが、7.62mmの徹甲弾を用いても『ゴリアテ』は全くの無傷で見向きもしない。

 ならばとアルは気合を入れ、むき出しの理事を狙って引き金を引く。

 放たれる赤く輝く銃弾(ハードボイルドショット)は理事の頭部めがけて飛んでいったが、流石にそれは危険だと感じたのか左腕を盾にして防いだ。

 だが、左腕に突き刺さった赤く輝く銃弾はそれに内包されたエネルギーを僅かに間をあけて解き放つ。

 爆発。左腕の装甲が大きくひしゃげ、腕部の固定武装の半分が使えなくなったが、それでも撃破には程遠い。

 

 

「貴様ァ、便利屋めぇっ!」

 

「アル様!」

 

 

 この攻撃でアルが脅威であると認識した理事は、残る右腕の武装をアルへと向けた。

 回転式銃身をカバーで覆い、それを三基並べた複合型ガトリングガンの銃口を向けられ、アルの表情が青ざめると同時にその間にハルカが割り込む。

 閃光が奔り、弾丸のシャワーが浴びせかけられ、アルの盾となったハルカは全身を打ち据えられて四肢が踊った。

 

 

「ハルカッ!」

 

「ハルカちゃん!」

 

 

 それを見て即座にムツキが爆弾の詰まったダッフルバッグを投げ、宙を舞うそれを『ゴリアテ』の眼前でカヨコが狙撃し、大爆発を引き起こす。

 並の戦車であれば撃破できるだけの威力があるはずであったが、『ゴリアテ』は僅かに怯んだだけで見かけ上大きな損傷は見られない。だが、それでも攻撃は止んだ。

 

 

「……ッ! ハルカ!」

 

「援護します、アルさん!」

 

 

 崩れ落ち、動かなくなったハルカをアルは抱きかかえてノノミの援護の下『ゴリアテ』から距離を取る。

 ハルカは意識を失っておりヘイローが消失していたが、耳をすませば呼吸はしていることにアルは安堵し、一先ずは物陰に彼女を横にさせ、『ゴリアテ』を睨みつけた。

 

 

「よくもハルカを……絶対に許さないわ!」

 

「させるかぁっ!」

 

”それはこっちのセリフだッ!”

 

 

 再度アルを狙う理事の『ゴリアテ』であったが、そこに横合いから『メタルウルフ』が殴りかかり、腕部の伸縮機能を用いた打撃(アームパンチ)で右腕の砲身を一つへし折る。

 衝撃でたたらを踏む『ゴリアテ』。その隙を逃さず、マイケルは頭頂部のキャノン砲めがけて飛び上がると、脚を大きく振り上げて踵落としを決め、『ゴリアテ』は前のめりに倒れ込んだ。

 

 

「ぐぅっ! 『オメガワン』ッ!」

 

 

 理事の叫びと共に、上空で待機していた『オメガワン』は機体各部に搭載されていた40mm機関砲を大地に向け、一斉に解き放つ。

 舗装路面を抉り、小さなクレーターを生み出す砲弾のシャワーを回避すべく『メタルウルフ』は飛び退くが、それを目掛けて弾幕射撃が追従していく。しかし―――

 

 

『こちらHOUND2、戦線に復帰。ライフル(空対地ミサイル発射)ライフル(空対地ミサイル発射)!』

 

 

 最初の『オメガワン』の攻撃で戦場からの離脱を余儀なくされていたカズミのXAH-12が大きく迂回し、戻ってきたうえで『オメガワン』へのミサイル(ヘルファイア)攻撃を行ったことで均衡が崩れた。*3

 ミサイル(ヘルファイア)を欺瞞するためにチャフやフレアをばら撒きながら回避運動を行う『オメガワン』はそのために機関砲による対地掃射を中断せざるを得なくなり、余裕を取り戻したマイケルは背面コンテナからRG70を取り出し、空へと向ける。

 こいつの威力であるならば、あの機を撃墜することは十分可能だ。

 

 

「マイケル・ウィルソォォォン!!」

 

”欲しがりさんめ!”

 

 

 『オメガワン』を狙っていると察した理事は強引に機体を起こし、『メタルウルフ』へと殴りかかってくる。しかし、それはマイケルにとってその程度は予想の範囲内。ただちに狙いを『ゴリアテ』に変え、低充填率ながらも引き金を引く。

 40%程度の出力であったが、肩の関節を見事に撃ち抜いたことで『ゴリアテ』は右腕の全てを喪失し、仰向けに倒れた衝撃で理事の身体が『ゴリアテ』からすっぽ抜けてアスファルトの路面に転がった。

 

 

「何故だ! 何故奴に勝てない! 私は何年もかけてカイザーの今の地位に上り詰めた! そのためには何だってやってきた! 同期を蹴落とし続け、なのに……あんなぽっと出の男になど!」

 

 

 狂気に塗れながらも、その根底にあるのは自らの実力に対する自負。だからこそ、一方的な敗北を喫している現状に彼は耐えられない。謀略でも、実力行使でも敗北したというのは彼のプライドをズタズタにするには十分すぎた。

 拳で何度も何度も路面を叩き、恨み節を吐き捨てる彼の姿は周りの生徒からすればあまりにも惨めなものに映った。

 しかし、理事は敵の総大将であり、ホシノとシロコの身柄を取り戻すためにもこの男は拘束する必要があるので、セリカとノノミ、そしてカヨコは理事の周囲を取り囲む。

 

 

「他人を蹴落としてばっかりじゃ、先生の足元にも及ばないわよアンタ」

 

「大人しくしていてください。もう戦いは終わりです」

 

「両手を頭の後ろで組んで。そうでなきゃ、撃つから」

 

 

 これでチェックメイト。誰もがそう思ったが―――

 

 

『理事をお助けしろ!』

 

”危ない、避けろ!”

 

 

 XAH-12の攻撃を回避しきった『オメガワン』がUターンして40mm機関砲をばら撒きながら突っ込んできたことで、完璧なはずの包囲網が崩れ去った。

 生徒たちは40mm機関砲の雨の中を逃げ回る必要に迫られ、『メタルウルフ』もまた回避のためにブースターを使用するとRG70へのエネルギーチャージが不可能になってしまう。

 その隙を見逃さずに理事は再び『ゴリアテ』に乗り込むと、機体を起こして弾幕の中、上空に到達した『オメガワン』の開いたランプドア目掛けてジャンプし、すっと機内へと消えていった。

 

 

「ははは! ははははは! 私はまだ負けていない! まだだ!」

 

 

 相変わらずの狂ったような笑い声を残し、『オメガワン』と共に砂漠の方向へと消えていくカイザーPMC理事。

 カズミがミサイルでの追撃を試みたが、迎撃を受けて不発に終わる。

 

 

『すまない先生、逃げられた』

 

”いや、構わない。それとアビドスの校庭に着陸してくれ、色々説明したいことがある”

 

『了解した。HOUND2、以上(OUT)

 

 

 『オメガワン』よりは小さいものの、それでもヘリコプターとしては巨大なXAH-12はゆっくりと高度を下げながらアビドス高校の校庭へと向かっていく。

 それを見届けてから、マイケルはRG70を背面コンテナに戻して生徒たちへと向き直った。

 

 

”さて、と……積もる話もあるだろうし、ハルカの治療もする必要がある。一先ずはアビドス高校へと行こうじゃないか”

 

 

 戦いは一先ず終わった。それを実感した対策委員会と便利屋の生徒たちはここに至ってようやく肩の力を抜くことができた。

 そして、疲労と寝不足で重い足取りのまま、彼女たちはアビドス高校へと向かっていった。

 

 

******************************************************************

 

 

 薄暗い無機質な部屋の一角、モニターを眺める人影が一人分。

 映し出されているのはアビドス高校前での戦闘の映像であり、画面の中には『メタルウルフ』の攻撃を受け、右腕を失った『ゴリアテ』と投げ出された理事の姿があった。

 

 

「……なるほど、理事も中々に手ひどくやられたようですね。やはりシャーレの先生、マイケル・ウィルソン氏は只者ではない」

 

 

 映像を止め、座っていた椅子から立ち上がった彼は何度か部屋を往復しながら考え込む。

 彼は何者で、どういった存在なのか。どのような理屈で物事を考えているのか。知りたい事は山のようにあった。

 

 

「あの狼の神もまた、先生の影響を受けているのでしょうか。当初観測していたよりも神秘に変質が見られる……これは興味深い話です」

 

 

 部屋にある鉄扉、その格子窓から中を覗けば、ベッドの上で横になったまま動かないシロコの姿があった。意識もないのか、ヘイローは浮かび上がっていない。

 

 

「暁のホルスの確保こそできましたが……ふむ、狼の神の方は経過観察にしておいたほうがいいでしょう。彼女の持つ神秘は危うい」

 

 

 再び黒服は部屋の中を歩き回る。

 その様子はまるで檻の中の熊のようであったが、彼の頭の中ではどのようにしてマイケルと接触を図るべきかというその一点のみが重要であった。

 そして、何かを思いついたのか彼は特徴的な便箋を用意し、それに文字を書き記した。

 

 

「……砂狼シロコのことは彼に任せておきましょう。小鳥遊ホシノとの契約は、やはり守らなければいけませんね」

 

 

 彼はシロコの居る独房の金属扉のドアノブに手をかけ―――

 

 

To be Continued in Chapter Ⅱ-Ⅴ ”I'm the Sensei” 

*1
一般キヴォトス人に限定

*2
アヤネは高校敷地内にいる

*3
ヘルファイアミサイルはヘリ程度ならばロック可能




メタルウルフ大暴れ、これでこそ大統領でしょう。
それと、お気に入り登録250到達ありがとうございます。


メカニック名鑑
名前:XAH-12
分類:試作強襲重攻撃ヘリコプター
製造:バーレル・エアクラフト(現カイザーインダストリー)
SRTの主力ヘリコプターとして製造された高性能ヘリコプター。
しかしながら高性能であるがゆえのコストが問題視され、正式採用を逃してしまう。
このヘリに社運をかけていたバーレル社はその後カイザーに買収され、行き場を失った本機はSRT特殊学園に放置されていたが、HOUND小隊が本機を使用することとなった。
20名程度の兵員を輸送できるサイズのキャビンと、多数のミサイルを運用できる大型のスタブウイングの両方を兼ね備えているので機体サイズは大型で、CH-53K(キングスタリオン)に匹敵する。
メインローターヘッドのカバーが大型で、『メタルウルフ』が立つとちょうどよい大きさだ。
アーマード・コアⅥの惑星封鎖機構大型戦闘ヘリとAH-93『CASTINA』が混ざったようなデザインをしている。

名前:『オメガワン』
分類:超大型強襲重攻撃ヘリコプター
製造:バーレル・エアクラフト(現カイザーインダストリー)
カイザーコーポレーションに買収されたバーレル社の設計チームがカイザーPMCからの要請で設計した空飛ぶ要塞と呼称される巨大ヘリコプター。
多数の大口径機関砲と機首には203mmの榴弾砲を備えたガンシップとしての能力と、ミサイルキャリアーとしての搭載能力、そして100名を超える人員を輸送できる。
カイザーPMCのフラッグシップとして運用され、現在は砂漠の基地の配備となっている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。