METAL WOLF Archive XD   作:W.B.O

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Chapter Ⅱ-Ⅶ ”Endgame”(大詰め)

 対策委員会が突入した旧アビドス本校舎であったが、外見と違い内部は大幅な改装が施されて軍事基地と見紛うほどのものであった。

 よほど砂漠化による劣化が早かったのか、金属製のプレートが敷き詰められた通路はかつての面影を一切残さず、ここに生徒たちの青春の日々があったという事実を塗りつぶしていると感じたシロコは、その異様な空気に顔をしかめながらも銃を構えながら進んでいく。

 

 

「カイザーの兵士がどこにも居ない……どういうことなの?」

 

「わかりません。ですが、気をつけてください」

 

 

 セリカとノノミもその不穏な空気を感じ取り、逸る気持ちを抑えながらゆっくりと足音を立てぬように、耳を澄ましながらシロコの後を追う。

 階段を降り、自分達の僅かな足音と空調の音が反響する中、彼女たちは少しずつ通路をクリアしていくが、どこまでいってもカイザーの兵士はいない。

 

 

「……先輩、これってもう走っていいんじゃないの?」

 

「待ってセリカ、油断しちゃいけない。ここで待機、前の角をクリアするから」

 

「わかりました、ここでカバーします」

 

 

 セリカとノノミを待機させ、シロコはゆっくりと前のT字路へと近づき、壁に張り付きながら僅かに顔を動かして覗き込む。しかし、どちらにも敵らしき姿はなく、あるのは非常灯の光のみ。

 首を傾げながら2人の方へ向き直ったシロコは、ハンドサインで二人を呼ぶが―――その時、自分達がやってきた方向から足音が響いてきたため、そちらへと銃口を向けた。

 

 

「……っ」

 

 

 段々と近づく足音、銃を握る手に自然と力が入る。

 薄暗い通路の向こう、かすかに見える人影が段々と近づき、ゆっくりとそれに照準を合わせ―――3人は気の抜けた表情を浮かべ、銃を下ろした。

 

 

「う、撃たないでください……!」

 

 

 彼女たちの眼の前に居るのは、先程までヘリで航空支援を行っているはずのアヤネ。

 呼吸は荒く、肩で息をする様子から全力で走ってきたことが伺えるが、何故ここに居るのだろうか?

 

 

「アヤネ、どうしてここに?」

 

「カズミさんが校舎の裏に降ろしてくれました。助けに行くならお前も行け、と」

 

「なるほど、気を利かせてくれたんですね」

 

「あの人って結構気を利かせてくれるのよね」

 

 

 アヤネの話す事情に思わず納得するノノミとセリカ、短い間とはいえ言葉をかわした結果、彼女の人柄の良さというものは対策委員会に十分に伝わっていた。

 ぶっきらぼうながらも思いやりのある人物、本人が聞いたら否定するだろうが、シロコ以外の3人はもう彼女のことをそうとしか見ていない。

 

 

「……まぁ、それなら先に行こう。この先にも兵士は居ない」

 

 

 自分が置いてけぼりになったような気持ちになって少しむくれながらも、シロコは先へ進むべく一歩を踏み出したその瞬間、僅かに軋む音が聞こえたかと思えば構造物全体が震えだした。

 揺れは段々と大きくなり、全員が床にに這いつくばると同時に、補強しきれていない天井からは劣化した構造材が落下して通路を塞ぐ。

 

 

「な、何なのこれ!?」

 

「地震!?」

 

「みんな、走って! 早くしないとホシノ先輩を助けられなくなる!」

 

 

 最早隠密をする事は不可能となり、新たな敵(地震)に翻弄される対策委員会。

 いつ崩壊するかわからぬ状況下、シロコは鍛えた体幹で立ち上がると、アヤネの手を取って引き起こしてそのまま駆け出した。慌ててノノミもセリカを起こすとその後に続いていく。

 

 

「先輩のいる場所は……こっち!」

 

「わかるんですかシロコちゃん!」

 

「なんとなくだけど、感じる!」

 

 

 道はわからず、崩落でいつ脱出不能になるかわからない中、シロコは確信をもって突き進む。

 その背中に一縷の望みをかけて、対策委員会はより深部へと進んでいった。

 

 

******************************************************************

 

 

 噴煙をたなびかせながら迫る多数のミサイル、それに対してリツコが放つ曳光弾のシャワーが横から浴びせかけられ、絡め取られた数発が空中で火の玉と化して空を彩るが、残された10発以上のミサイルはシーカーが捉えた『メタルウルフ』目掛けて飛行を続ける。

 マイケルは眼前に迫るミサイル相手に踏み込み、一発目を屈んで避ければミサイルの旋回限界の内側に入り込めると冷静に判断しながら対処するが、しかしそれでも反応時間からすればギリギリだ。

 実際本体は辛うじて避けきれたものの、肩に担いだTWBZはその長大な砲身が災いしてミサイルの直撃を受けてしまう。

 

 

”ぐ、おぉっ!”

 

 

 ミサイルの起爆とTWBZの誘爆のダブルパンチで吹き飛ばされる『メタルウルフ』。

 施設の壁に叩きつけられ、機体のダメージを示すアラームがコックピットに反響する。

 

 

『先生、このままではやられてしまいます! 隠れてください!』

 

”今隠れたらあの火力が便利屋に向けられる……それはできん!”

 

『ですが!』

 

 

 アロナの悲鳴にも似た叫びを無視しながら、マイケルは機体を立ち直らせると失ったTWBZの替わりに武装コンテナからMG200を取り出し、右手に握らせた。

 発掘兵器(Excavation Weapon)が追い打ちをかけるようにグレネードを乱射するが、それは辛うじて跳躍して回避した『メタルウルフ』が負けじとGL95に装填された対戦車砲弾6発を叩き込む。

 しかし、装甲表面で起爆したそれらは貫徹するに至らず、爆発の煙が収まると多少焦げ付いた銀色の装甲を露わに、発掘兵器(Excavation Weapon)は大きく踏み込みながらグレネードの乱射を続けた。

 

 

”チッ、威力が足りないか!”

 

「上からくるぞ先生、気をつけろ!」

 

 

 威力不足に歯噛みするマイケルに警告を発しつつ、後ろから突き飛ばすリツコ。

 つんのめったその背後にグレネードの雨が降り注ぎ、マイケルはその爆風によって前のめりに倒れた。

 

 

「ぐあぁぁっ!」

 

”ぐっ……リツコ!”

 

 

 その一方で、マイケルを突き飛ばしたがために至近で爆発を受けたリツコは、破片を全身に浴びながら後ろに吹き飛ばされ、鈍い音を立てながら地面を転がる。

 距離にして20m程度、ようやく止まった彼女の纏う『マーク0』はあちこちスパークを発し、フレームを覆う装甲は大半が剥がれ落ちていた。

 リツコ本人は気絶はしていないもののダメージは大きいようで、覚束ない様子で立ち上がろうとするが、まるで生まれたての子鹿のようにプルプルと震えている。

 これが普通の迫撃砲弾程度であればまだ彼女のダメージは少なかったであろう、しかし発掘兵器(Excavation Weapon)の武装はその全てがヘビー級、受ければキヴォトスの猛者であっても大ダメージは不可避であった。

 

 

「ぐうっ……眼の前がチカチカする……」

 

『クククク、やはりコイツを動かして正解だったな! 最初からこうしていればよかったのだ!』

 

 

 発掘兵器(Excavation Weapon)のコックピットの中で理事は声高らかに笑う。

 もはや『メタルウルフ』など恐れるに足らずと言わんばかりであったが、事実発掘兵器(Excavation Weapon)の猛攻の前にマイケルは成すすべもなく翻弄されているように見えるのだから当然といえた。

 実際、マイケルが発掘兵器(Excavation Weapon)に苦戦しているのは事実である。元々究極兵器(Ultimate Weapon)自体の性能がでたらめに高いというのもあるが、選定した武装との相性が悪いのだ。

 

 

『貴様はカイザーの未来に不要な存在なのだ! 消えろ、マイケル・ウィルソン(イレギュラー)!』

 

 

 とどめを刺すべく狙いを定めてトリガーを引く理事、しかし砲塔から放たれるはずのミサイルやグレネードは放たれず、かわりに『No Ammo』のアラームランプが点灯する。

 

 

『弾切れか! 再装填……チッ、30秒も待ってられるか!』

 

 

 再装填の時間が表示されると、その長さに理事はしびれを切らして4本の脚を使い、『メタルウルフ』を踏み潰さんと機体を動かす。

 発掘兵器(Excavation Weapon)は起き上がろうとしている『メタルウルフ』を目掛け、その脚を振り上げるが―――

 

 

”ムツキ! アル!”

 

「くふふ、ようやく出番! さあアルちゃん、ガンガン撃っちゃって~!」

 

「任せなさい!」

 

 

 しかし、マイケルもただ無策でいいようにされていたわけではない。

 発掘兵器(Excavation Weapon)の攻撃を誘導しながら狙っていたのは、便利屋68達が展開する時間を稼ぐというもの。生身である彼女たちが発掘兵器(Excavation Weapon)に近づくには、兎に角注意を逸らさねば危険なのだ。

 そしてつい今しがた、便利屋達は発掘兵器(Excavation Weapon)をついに射程に捉えた。

 ムツキは愛銃の『トリックオアトリック』ではなく、ずっしりと重そうなバッグを両手で持ち上げると、それを全身を使いながらハンマー投の姿勢で振り回し、4回ほど回った後に遠心力を活かして勢いよくバッグを発掘兵器(Excavation Weapon)の土手っ腹目掛けて放り投げる。

 すかさず、アルはそのバッグ目掛けて『ワインレッド・アドマイアー』を構えると、バッグが最も発掘兵器(Excavation Weapon)に近づく瞬間を狙ってトリガーを引いた。

 放たれた赤く輝く銃弾(ハードボイルドショット)は狙い通りにバッグに突き刺さり、その中身―――バッグいっぱいの対戦車地雷―――のど真ん中で、数瞬の後に破壊のエネルギーを周囲にぶちまけると、それに連鎖して全ての対戦車地雷が―――爆ぜた。

 

 

『ぐおおおおおっ!?』

 

 

 まるで至近距離で火山が噴火したかのような状況に、コックピットの中でシェイクされる理事。

 爆発の勢いは凄まじく、その黒煙は発掘兵器(Excavation Weapon)を覆い尽くすほどで、様々な破片が周囲に飛び散っている。

 

 

「やったわ!」

 

「アルちゃん、それフラグだよー!」

 

 

 発掘兵器(Excavation Weapon)の姿が爆発に消え、撃破を確信するアルだが、ムツキはそれにツッコむ。

 事実、彼女の指摘の直後に煙の中から装甲が更に剥がれ落ちた脚が現れ、2人を踏み潰さんと猛烈な勢いで迫ってきた。

 

 

『負けん! 負けん! 負けぇん!!』

 

「ほらいわんこっちゃなーい!」

 

「私のせいなのこれ!?」

 

 

 踏み付けを寸でのところで躱し、白目を剥きながらハルカとカヨコのいる場所まで走って逃げる2人。

 それを追って黒煙から飛び出す発掘兵器(Excavation Weapon)の姿は、先程までその威容を誇っていた銀色に輝く装甲が黒く煤け、元より欠落していた部位が更に拡大し、更には機体の上下に据え付けられた回転砲塔もスパークを発して不規則に動いている。

 それはまるでゾンビのようであり、リチャードの妄執が世界を超えて理事に乗り移っているように思えた。

 だからこそ、それを終わらせるのは自分の仕事なのだ。

 

 

さっさと失せろ、ベイビー(Hasta la vista, baby.)!”

 

 

 右手に装備しているMG200を向け、そのトリガーを静かに、しかし力強く引く。

 吐き出された暴力的なまでの弾幕は、装甲がほとんど脱落した発掘兵器(Excavation Weapon)の機体フレーム、駆動系への致命的ダメージをもたらした。

 機体を機関砲弾が叩く音がリズミカルに響く中、コックピットモニターを埋め尽くす警告、だが、理事は目を血走らせながら機体を操り、止まることはない。

 

 

『まだだ! まだ終わらん!』

 

 

 砲塔は破損し、駆動系も最早長くは持たないであろう中、しかし理事には切り札があった。

 

 

『私は……私がカイザーPMCだぞ!』

 

 

 発掘兵器(Excavation Weapon)の頭部と言える部位、コックピットブロックとセンサーユニットが一体化したそこに搭載されている超高エネルギー砲、まさしく切り札といえる威力を持つそれは、命中すれば『メタルウルフ』といえど蒸発してしまうだろう。

 火花を放ち、軋む音を立てながら理事は己に向かって射撃を続ける『メタルウルフ』へと顔を向け―――

 

 

 ―――瞬間、その結末を拒絶するかのように大地が鳴動した。

 

 

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 基地の北端ゲート、連合部隊の主攻方向の対局に位置するがためにいまだ平穏無事*1であるこの場所であったが、実を言えば最初の一撃の直後はこのエリアは最も騒がしかった場所でもあった。

 その理由としては、ゲート前の広場を塞いでいる傷らだけの超大型強襲重攻撃ヘリ『オメガワン』の姿を見れば理解はできるだろう。

 初手、遠距離からレールガンでエンジンを狙撃された当該機体は不時着を余儀なくされたものの、機体の堅牢さが功を奏して原型をとどめている。

 空を舞う猛禽から地を這うナメクジに成り果てた『オメガワン』であったが、しかしその位置取りのお陰で基地を襲うロケット弾攻撃や榴弾砲による弾幕射撃から免れ、最終防衛線として機能しているのだから物事はわからないものだ。

 

 

「第一ゴリアテ小隊、理事をお救いしろ!」

 

「司令部との連絡は回復しないのか?」

 

「敵の砲撃で基地内の通信ケーブルが破断しています。掌握出来ているのは全軍の2割にすぎません」

 

 

 『オメガワン』は持ち前の通信指揮機能を活かし、混乱状況にあるPMC部隊の統制を取りながら基地の奪還を目指すものの、掌握できた部隊は僅かで、ほとんどの部隊は初期の内に無力化されたり、混乱の中で逃亡を図っていた。

 そんな中、唯一統制された機甲兵力である量産型の『ゴリアテ』部隊が理事救出のために基地中心へと向かおうと編成作業を進めていたのだが―――

 

 

「ん? おい、なんか揺れてないか?」

 

「揺れてるって、あんだけ爆発があれば―――っておい、本当に揺れているぞ!」

 

 

 積み上げられた弾薬の入った木箱がガタガタと音を立て、崩れ落ちる。

 一杯に詰め込まれた弾丸が床一面に散らばるが、それを気にするほどの余裕のある者はその場に居なかった。

 何故ならば、激しい大地の鳴動と共に防壁の外側で砂が吹き上がり、その砂塵の中から顔を見せる白い機械の大蛇に見下され―――文字通り、蛇に睨まれた蛙となっていたのだから。

 

 

「で、デカグラマトン……!」

 

 

 『オメガワン』コックピット内、キャプテンシートから腰を浮かべながら慄く機長。

 しかしながら、それでも一部の兵士たちは勇気を振り絞って眼の前の大蛇―――デカグラマトン第三の預言者、『違いを痛感する静観の理解者』である『ビナー』へと銃を向け、抵抗する。

 だがそれはあまりにも無力であり、ビナーはその白亜の装甲でことごとくを受け切ると、PMC部隊の中心に位置する『オメガワン』に向かって大きく口を開いた。

 

 

「そ、そ……総員退避! 急げぇ!」

 

 

 口腔内で徐々に大きくなる光球、それを見た機長は顔を青くして機を捨てる決断をすると、窓を破って機外へと飛び降り、その直後に『ビナー』から吐き出されるオレンジ色のレーザー(アツィルトの光)が『オメガワン』をきれいに両断、搭載燃料や弾薬が誘爆したことによりカイザーPMCの最終兵器はあっけなくその最期を迎えることとなった。

 

 

「もう終わりだ! 逃げろ!」

 

「どこへ逃げろっていうんだよ!?」

 

 

 爆発炎上する『オメガワン』の残骸を前に、PMC部隊の残余は完全に士気崩壊を起こしてバラバラに逃げ出し始めた。

 しかし、そのような状況下においても生き残りの『ゴリアテ』が4機、『オメガワン』の敵を討つべく『ビナー』目掛けて火力を集中させる。

 純白の装甲を彩るオレンジ色の曳光弾、大口径であるが故に『ビナー』の堅牢な装甲を抜いてダメージを与えたものの、それに対して『ビナー』は頭部の後方に存在するミサイル発射口を開放し、4機の『ゴリアテ』目掛けてそれぞれ2発のミサイル(大道の劫火)を叩き込んだ。

 

 

「ぎゃああ!」

 

「だ、脱出を!」

 

 

 直撃を受けて崩れ落ちる『ゴリアテ』の群れ、これをもってこの基地におけるカイザー部隊の実働戦力は完全に壊滅したのである。

 燃え盛る残骸を一瞥した『ビナー』は周囲を見渡し、基地のある一点へ視線を送ると、自身の高性能カメラを最大望遠にして()()()()()()()をじっと見つめた。

 その視線の先にあるもの、それは濃紺色の人型。

 

 

 

―――大キスギル、修正ガ必要ダ。

 

 

 

 大地が揺らぎ、盛大に砂煙を巻き上げながら『ビナー』が姿を消すと、かの大蛇は基地中心部にある旧アビドス高校本校舎目掛けて猛烈な速度で地中を進んでいった。

 

 

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「ねぇ、ホシノちゃん。私ね、ホシノちゃんと初めて出会った時、これは夢なんじゃないかって思って、何度も頬をつねったの。今、こうしてホシノちゃんと居られるのがまるで奇跡みたいなものだって、私はずっと思ってる」

 

 

 これは夢だ、と最初にホシノは断じた。

 懐かしい、しかし二度と聞くことは出来ぬ優しい声、いつか聞いたその言葉は果たして何時のものであったか。

 

 

「そんなの大げさすぎますよ先輩、毎日毎日顔を合わせてるのに」

 

(あの時の私は、本当にバカで……あの日々が本当に、何時までも続くものだと思っていた)

 

 

 生意気で我慢弱く、そんな昔の自分を思い出して自己嫌悪に陥るホシノ。

 夢の中の自分はこれから起こることなど知る由もなく、あの人の言葉に辛辣に返すばかりだ。

 

 

「それに、奇跡っていうのはもっと珍しいものなんです。こんなありふれたことに使うものじゃ……」

 

(どうして私は……何時も間違えてしまうのか)

 

 

 あの時も、今も、選択を間違えた結果取り返しのつかない事になってしまった。

 そんな自分はもう、アビドスにいる資格なんて―――

 

 

「うぅん、そんなことないよ、ホシノちゃん」

 

 

 夢の中のあの人は言う。

 まるで、自分の心を見透かしているかのように。

 

 

「出会いというのは何時だって奇跡みたいなものなのなんだから」

 

 

 自分に向けるその顔は昔見た時と同じように眩しくて。

 

 

「将来、ホシノちゃんにも可愛い後輩が出来たその時、きっと―――」

 

 

 

 

 

 不意に大地が鳴り、激しい揺れによってホシノは夢の中から現実へと引き戻される。

 建物が崩れるのではないかというレベルのそれは、彼女を拘束している装置の電源供給を停止させ、意図せず身体の自由を取り戻した彼女はその場に倒れ込んだ。

 

 

(……このまま建物が崩れて、私も死んじゃうのかな)

 

 

 床に横たわったまま、身動ぎせずにホシノは目を瞑って己の運命を悟る。

 きっとぺちゃんこになって、誰にも見つかること無くこの世から消えてしまうのだろう。

 自分にふさわしい罰だと、ホシノはすべてを受け入れた。

 

 

(シロコちゃん、無事ならいいんだけど……)

 

 

 心残りがあるとすれば、シロコの安否が不明なこと。

 あれから彼女はずっと閉じ込められ、外の情報を得る機会はなかったのだ。

 

 

(……そうだ、先生にも謝らないと、それに……だめだなぁ、まだ全然未練があるや)

 

 

 次々に浮かんでくる心残りに、ホシノは自身の未練がましさを自嘲する。

 だが、今更―――

 

 

「ここ、ここにホシノ先輩がいる」

「頑丈そうな扉、こんなの壊せる装備持ってないわよ!」

「こんなこともあろうかと、カズミさんからブリーチング用の爆薬を借りています!」

「さすがです、アヤネちゃん!」

 

 

 ―――轟音、室内に煙と埃が広がり、焦げた臭いが鼻につく。

 突然のことに理由もわからず呆然とするホシノ、彼女の視線の先にあるのは煙に包まれたドアであったもの、うっすらとその中に浮かび上がる4つの人影。

 

 

「ケホッ、ケホッ……流石SRTの装備、火力が高い」

 

「ホシノ先輩! 先輩はどこ!?」

 

 

 今となっては一番聞きたかったその声は、彼女が聞き間違えるはずもない。

 

 

「み、みんな……」

 

「居ました! あそこです!」

 

 

 顔だけ上げたホシノを見つけた対策委員会の4人は、揺れにもかかわらず全力で駆け寄り彼女を抱き起こす。

 まだ事情を飲み込めず呆然と座り込むホシノであったが、視界いっぱいに広がる4人の顔を見ていると段々とその存在を実感し始め―――その双眸から涙が溢れた。

 とめどなく流れる涙に戸惑うホシノ、それを見て力強くその小さな身体を抱擁するのはノノミ。

 

 

「大丈夫ですよホシノ先輩、先生が全部やってくれました。シロコちゃんも無事で、あとは先輩を連れ帰るだけです」

 

 

 ぽんぽんと幼子をあやすように背中を数回叩き、ノノミは言う。

 その御蔭か、ホシノもなんとか落ち着きを取り戻して自分の涙を拭った。

 

 

「その、良くわからないんだけど、今一体どうなって―――」

 

 

 ホシノがなんとか状況を理解しようと口を開いた瞬間、再び建物が軋みを上げ、激しく揺れ動く。

 先程の地震で既に限界を迎えている旧アビドス高校本校舎は、この揺れでもはや構造を保つことが出来ずに崩れ落ち、通路の大半を瓦礫が埋め尽くした。

 

 

「マズい……みんな、走って!」

 

 

 シロコの切羽詰まった声につられ、全員で走り出す。

 拘束されていた部屋を出る直前、ホシノは壁に固定されている自分の盾(IRON HORUS)ショットガン(Eye of Horus)を見出して回収すると、少し遅れた分の距離をあっという間に取り戻してシロコに並んだ。

 

 

「シロコちゃん、何があったのかは後で聞くけど……!」

 

「……その、ごめんなさい」

 

「そういうのは後でいいって!」

 

 

 途端に泣きそうな顔をするシロコに困惑しながらも、ホシノは走る。

 闇の中、崩れ落ちるアビドスのかつての栄光の残滓、対策委員会の5人は外の光を目指してひたすらに進んでいった。

 

 

******************************************************************

 

 

『ぐわああああああっ!!!』

 

”何っ!?”

 

 

 今まさに超高エネルギー砲を発射しようとしていた発掘兵器(Excavation Weapon)は、その直下の舗装をかち割って現れた大蛇(ビナー)によって腹を突き上げられ、部品を周囲にぶちまけながら宙を舞う。

 コックピットの中で理由もわからず悲鳴を上げる理事の声がスピーカーを通じて周囲に木霊するが、周囲の人間たちはそれよりも現れた『ビナー』の姿に度肝を抜かれ、言葉を失っていた。

 そんな中、唯一この大蛇の正体に気づいたのは、ダメージの回復のために物陰に転がり込んでいたリツコ。

 ミレニアムサイエンススクール副会長として多くの機密に触れている彼女は、大蛇の頭部に刻まれたエンブレムを見て顔を青くした。

 

 

「こいつは……デカグラマトン!? 先生、気をつけてくれ!」

 

”デカグラマトンってなんだ!?”

 

「あー……簡単に言えば敵対的なAIだ!」

 

 

 リツコの警告に思わず声を荒げながら聞き返すマイケル、しかし以前ユウカから聞いた『砂漠に出没する機械の大蛇』のことを思い出す。

 だが、それと同時にリツコが発する警告に意識を引き戻され、『ビナー』が背面から放つミサイルに反応した接近警報がコックピット内に鳴り響いた。

 

 

”ミサイルッ!”

 

 

 『メタルウルフ』のFCSは一度上空に放たれたミサイルをしっかりと捕捉し、照準を合わせるが、ミサイルの初速が早くリアクションタイムは短い。

 MG200の弾幕が数発のミサイルを絡め取って迎撃したものの、空気を引き裂くような連射音が途絶えて銃身が空回りを始める。『No Ammo』の警告が画面端に浮かんだ。

 

 

クソッ(Shit)!”

 

 

 迎撃しきれずに自身に近づくミサイルが2発、咄嗟にMG200を放り投げることで直撃を防いだものの、降り注いだ破片が装甲を叩く。

 そして、他の目標をロックしていたミサイルもまた同時に着弾し、周囲に爆発の炎が広がった。

 

 

”アル! ムルキ! カヨコ! ハルカ! リツコ! 大丈夫か!?”

 

「し、死ぬかと思った……」

 

 

 近くにいる生徒の名を呼ぶマイケル、それに真っ先に反応して爆発の煙の中から咳き込みながら出てきたのは便利屋68のアルだ。

 着ていたコートはボロボロになり、本人も所々煤けているものの致命打は受けてない様子ではある。

 しかし、それに続いて出てきたのはぐったりとした様子のカヨコと、それを両側から支えるムツキとハルカであった。

 

 

「私は放っておいていいから……」

 

「ちょっと、まだみんなで楽しいことやりたいのに、そういうのは無しでしょカヨコちゃん!」

 

「ど、どうしたらいいんでしょうか」

 

 

 カヨコの状態はあまり良くないようで、意識はあるが重傷といった様子。

 ムツキが意識をつなぎとめるために呼びかけながら、ハルカは対応指示を求めてきた。

 爆発の煙が収まらぬ中、マイケルはほんの一瞬だけ意識を『ビナー』から外し、状況を確認するべく戦術マップを見た。

 

 

”カヨコは正門ゲートに下げるべきだ、奴の攻撃の種類がわからないことには近くにおいておく訳にはいかない”

 

「だったら、私に運搬を任せてくれ」

 

”リツコ、無事だったか!”

 

 

 話に割り込むように便利屋たちの前に姿を見せるリツコ。

 着込んでいる『マーク0』はミサイルの直撃を受けて左腕が根本から脱落し、各所からスパークを発して今にも爆発しそうであるが、脱がない辺り大丈夫なのだろう。

 しかし、当人は頭部の傷から血が滴り落ちていて、左目は閉じられている。戦闘継続は困難に見えた

 

 

”リツコも後方に下がってていてくれ、それでは戦えないだろう”

 

「……カヨコのこと、お願いするわ」

 

「まかされた、と」

 

 

 残された右腕と本人の腕でカヨコを抱きかかえ、ローラーダッシュで下がるリツコの姿を視界の端で見送りながら、煙が晴れたことで再び『ビナー』と対峙するマイケル。

 目を赤く光らせ、鋭い牙をむき出しに噛みつかんとする大蛇の動きを軽やかなステップで躱しながら、左手に保持しているGL95で反撃するが、6発撃ち込んだ後にこちらも『No Ammo』の警告がモニターに表示される。

 全武装の半分以上が弾切れ、ないし喪失したことに顔をしかめるものの、『ビナー』は攻撃の勢いを緩めること無く何度も何度も噛みつきを仕掛けて来るので、GL95も投げ捨てて無手でそれらをいなしていった。

 

 

”どうしたどうした、デカグラマトンってのもその程度か!”

 

 

 カウンターで『ビナー』の顔面にパンチを叩き込みながらマイケルは挑発し、言葉が通じるのか攻撃の頻度が激しくなるものの、怒りに任せた直線的な攻撃は全く彼に掠る様子はない。

 彼が攻撃をすべて引き受けているため、残った便利屋の3人は自由に『ビナー』への攻撃を仕掛ける事ができている。

 

 

「とはいっても、あれに銃弾がまともに通ってるように思えないのよ、ねっ!」

 

「爆弾はPMC理事に使っちゃったから火力不足だよ~」

 

「うわああああっ!!」

 

 

 全員が対装甲用の弾丸を使って激しく銃撃を仕掛けるものの、アルの言葉の通り『ビナー』の装甲は生半可な銃撃を通すことはない。

 しかし、長大な蛇のような身体をしている以上は可動のために装甲に隙間が発生することは避けられず、そこへ飛び込んだ弾丸は着実に『ビナー』の内部構造へのダメージを蓄積させていく。

 

 

『先生、デカグラマトンの狙いが、これは……発掘兵器(Excavation Weapon)の残骸を狙っています』

 

 

 何度も噛みつき攻撃をいなされ、カウンターで顔面にパンチを食らっているためか、ビナーはとうとう『メタルウルフ』を狙うのを止め、鎌首をもたげるとあらぬ方向を向いた。

 アロナがその先にあるものを報告するが、次の瞬間血相を変える。

 

 

『待ってください、残骸に……カイザーPMC理事が取り残されています!』

 

”何だと!?”

 

 

 慌ててカメラをその方向に向けると、バラバラになってひっくり返った発掘兵器(Excavation Weapon)のコックピットブロックから上半身がはみ出している理事の姿。

 気を失って身動ぎ一つしない彼目掛け、『ビナー』は大口を開け口腔内にある発射口を開放する。

 

 

―――あなたは彼女を死から遠ざける必要があるのですよ

 

 

 刹那、頭に過るのは黒服の言葉。

 口腔内に形成される光球、おそらくは超強力なエネルギー兵器の手合だと瞬時に判断したマイケルは、考えるよりも先に飛び出すと、理事を救うべく残骸に手をかけた。

 

 

「先生、何をしてるの!? 早く逃げて!」

 

「ちょっともーっ! たじろぐぐらいしてもいいじゃない!」

 

 

 そんなマイケルの行動に泡を食ったのは便利屋68の3人、『ビナー』への火力を集中させてレーザーの発射を阻止しようとするものの、大蛇はそんな豆鉄砲など効かぬと言わんばかりに発射態勢を崩さない。

 光球が一定の大きさに達し、まるで吐息のように放たれるオレンジ色のレーザー(アツィルトの光)がその先にあるものを消し飛ばさんとし―――

 

 ―――その瞬間、崩れ行く旧アビドス高校本校舎から飛び出した影がその間に割り込んだ。

 

 

「間に合っ……たぁっ!」

 

 

 放たれる光線を盾で受け止める後ろ姿、レーザーの圧で後ろにたなびく桃色の髪は身間違えるはずもない。

 

 

”ホシノ、無事だったか!”

 

「なんだか良くわからないけど、凄いお祭り騒ぎになってるじゃない? おじさんも混ぜてもらおうって、ね!」

 

 

 オレンジ色のレーザー《アツィルトの光》を受け止めるホシノの大盾(IRON HORUS)、表面から発せられる光の幕は岩をも溶かすその攻撃を完全に受けきり、彼女は『ビナー』と対峙する。

 

 

「よりによって『ビナー』が来るなんて、タイミング悪いねホント……だけど!」

 

 

 新たな敵に警戒を強める『ビナー』、しかしその背後から銃撃と小型ミサイルが浴びせかけられ、その巨体が僅かに揺らいだ。

 振り向く『ビナー』の視線の先には対策委員会の4人(シロコとノノミとセリカとアヤネ)の姿。

 硝煙を上げる彼女たちの武装を見て、『ビナー』は脅威と感じたのか再び背部のミサイル発射口を開き、弾頭がせり上がる。

 自身の銃のスコープでそれを目視したアルは、仲間を(ムツキとハルカ)連れて物陰へと走り込みながら大声で警告を発した。だが―――

 

 

「気をつけなさいアビドス! ミサイルが―――」

 

『―――聞こえますか!? 蛇の近くに居るものは伏せなさい!』

 

 

 突然割り込む無線通信、聞き覚えのない声に対策委員会は一瞬戸惑ったが、それがデンジャークロース(巻き込み上等の砲撃)を知らせるものだと理解するのは早かった。

 対策委員会の全員が直ちに『ビナー』とは反対方向に飛び退き頭を下げたその瞬間、降り注ぐ105mm榴弾の雨に曝されて身悶えする『ビナー』

 3斉射ほど続いた砲撃の中、飛び出たミサイルの弾頭が直撃を受けて誘爆し、ついにその巨体はぐったりと大地に横たわった。

 

 

******************************************************************

 

 

 相変わらずトリニティ砲兵隊の観測手として丘陵の稜線上に位置するヒフミとイルミ。

 『ビナー』が砲撃に曝され、大爆発を起こすまでを確認したイルミは震える手で双眼鏡を降ろし、眼鏡をギラリと光らせた後、隣で怯えるヒフミ目掛けて拳を振り上げた。

 

 

「このおバカ!」

 

「はぁうっ!?」

 

 

 ゴチンと鈍い音を立ててヒフミの頭に突き刺さる拳、キャラをかなぐり捨てたその拳骨は相当痛かったのか、ヒフミは殴られた場所を押さえながら涙目である。

 

 

「警告もせずに砲撃して、巻き込みが発生したらどうするつもりですか阿慈谷ヒフミ!」

 

「う、撃つならあのタイミングしかありませんでしたので……」

 

「撃つのはいいが警告を出せと言ってるのです私は!」

 

 

 イルミの叱りに対し、どこかズレた答えをするヒフミ。

 それに余計ヒートアップするイルミであったが、二発目が飛び出す前に辛うじて冷静さを取り戻すことに成功すると、眼鏡の位置を直しながらヒフミについて考える。

 

 

(阿慈谷ヒフミ、思い切りはよいが周囲を全然見ていない……後でやらかしますね、多分)

 

 

 イルミのその評価が後に現実のものとなるとは、この時の彼女は知る由もなかった。

 

 

******************************************************************

 

 

 ぐったりと横たわる『ビナー』、それを目掛けて持てる限りの火力を叩き込んでいく対策委員会のメンバーと便利屋達。

 背中のミサイルが誘爆した破孔に銃弾が飛び込むたび、大蛇の身体はビクンビクンと震えて効果があることを周囲に示していた。

 その一方で使い勝手の良いメイン武装を全喪失した『メタルウルフ』は、残された武装の中からマルチミサイルランチャーを選択して構えたが、流石にそれは弱点に食らうわけには行かぬと言わんばかりに『ビナー』はゆっくりと巨体を起こす。

 

 

「もう少しだったのに……!」

 

「でも、もう少しで倒せそうです!」

 

 

 仕留めきれなかったことを悔しがるシロコ。

 ノノミが宥めながら『ビナー』の開口部への銃撃を続けるが、起きてしまえば下から狙うことはできない。

 だが―――

 

 

”熱々のKABAYAKIにしてやるよ!”

 

 

 圧倒的な火力をもってすれば、多少の装甲などないも同然。

 発射の隙が大きく、また武器そのものが大きかったがために今まで使えなかったマルチミサイルランチャーは、動きが鈍くなり攻撃頻度が低下した今こそ最大の効果を発揮する。

 放たれる32発もの小型ミサイルはまっすぐに『ビナー』へと飛翔し、次々に装甲を破砕して内部機構へのダメージをもたらした。

 

 

「もうひと息よ!」

 

「言われずとも!」

 

 

 スコープ付きの銃を持つ者同士、アルとセリカは弱点である装甲内部を狙い精密に射撃を続け、ここに至ってようやく『ビナー』の内部機構は臨界点を越え、身体のあちこちから炎を噴き出し始めた。

 苦悶するように咆哮を上げる大蛇は、天へ向かって口を開いたままアツィルトの光のチャージを始める。

 どんどん口腔内で巨大化する光球、今までのものより大きくなったそれの威力は、今度こそ全てを消し飛ばすほどのものであろう。

 

 

「発射を止めてください!」

 

「そうは言っても、ここからじゃ発射口狙えないよ~アヤネちゃん!」

 

 

 後数秒で発射する、そんな時に『ビナー』の顔面に落ちる影。

 一体何がとカメラを太陽の方に向けた『ビナー』は、そこに待っていたものと目が合った。

 太陽を背に浮かぶ強襲重攻撃ヘリコプターXAH-12、そのコックピットに座るカズミは、『ビナー』と目が合ったと感じ取った瞬間トリガーを引く。

 スタブウィングに残されたハイドラロケットの最後の斉射が顔面に突き刺さり、そのダメージは『ビナー』の判断力を奪うものであった。

 

 

「こっちにもあるんだよ、大蛇さんよ!」

 

「さあやってください、タエコ」

 

「デカいのをぶっ食らわせてやれ!」

 

 

 ロケット弾攻撃を終えたXAH-12が横を向き、キャビンのドアが開いたかと思えばそこに居たのはHOUND小隊のフルメンバー。

 その中で肩に本来携行用ではない対戦車ミサイルをかついだタエコが、トミやアリアに支えられながら口腔内にある発射口へと狙いを定めると、躊躇なくトリガーを引いた。

 発射筒から飛び出したそれは、彼女の狙い通りに『ビナー』の口の奥へと突き刺さる。

 

 

「……やった!」

 

 

 『ビナー』の身体のあちこちから炎が噴き出す見て、ホシノは勝利を確信した。

 今まで散々アビドスを苦しめてきた機械の大蛇の最期がついに訪れるのかと思えば、極めて喜ばしいものであるが、しかし―――

 

 

「……ねぇムツキ」

 

「言わなくてもわかるよアルちゃん、フラグだって」

 

 

 便利屋の2人の予想通り、あちこちから炎を噴き出しながらも『ビナー』は止まらない。

 その巨体は道連れを求めてがむしゃらに暴れ、周囲のビルを崩しながら近づいてくる。

 

 

「に、逃げなきゃ!」

 

「どうしてこうなるのよ!」

 

 

 降り注ぐ瓦礫、場にいる全員はそれを避けるために攻撃の手を止めざるを得ない。

 

 

”しつこい蛇は嫌われるぞ!”

 

 

 地上の生徒たちが巻き添えを免れようと走る中、装甲があるがゆえに瓦礫を気にせず対峙する『メタルウルフ』の手にはRG70レールガンがいつの間にか握られていた。

 エネルギーのチャージも完了し、まばゆい光が銃口から溢れているその照準を『ビナー』の顔面へと向け―――

 

 

”こいつでフィナーレだ!”

 

 

 閃光が、『ビナー』の頭部を貫いた。

 

 

 

 

To be Continued in Epilogue "Day by Day"

*1
相対的に




次回、エピローグで対策委員会編2章が終わりです

メカニック名鑑
名前:発掘兵器(Excavation Weapon)
分類:古代兵器(推定)
製造:不明
カイザーが砂漠で古代の地層から発掘した機動兵器。
所々破損しているものの、この兵器の解析によってカイザーは『ドロシー』や『ワグナー』、『オメガワン』などの巨大兵器の開発に成功した。
カイザーとしては戦闘に投入するつもりはなかったが、打倒『メタルウルフ』に燃えるPMC理事の手により実戦に投入された。
極めて強力な兵器であったが、理事が戦闘の素人であったこともあり大破、喪失。
その正体はかつてアメリカのクーデター軍が開発した究極兵器(Ultimate Weapon)であるが、何故キヴォトスの古代地層に埋まっていたのだろうか?
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