METAL WOLF Archive XD   作:W.B.O

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PrologueⅡ

 あれからリンが手配した、というより放置された連邦生徒会の車両に乗り込み、一行はシャーレの部室のあるビルの近く、直線距離にして2kmという地点までやってきた。

 それまでは暴動もなく順調に進めたが、この先は自動車が炎上して黒煙を吹き上げ、街路樹は半ばでへし折れ、瓦礫や適当なバリケードが道を塞ぐ。

 その影にちらほら見えるのは……武装した女子たち。

 彼女達はこちらを見るなり発砲してきて、咄嗟に物陰に飛び込むことでマイケルは助かったが、しかし一瞬遅れたユウカは頭部に被弾して思い切り仰け反った。

 考えられる限り最悪の事態に彼の顔が青くなるが、ユウカは倒れそうになるのをこらえて被弾箇所を左手で抑えながら同じ物陰に飛び込んだ。

 

 

「いったぁい! あいつ等違法JHP弾使ってる! 傷が残るじゃない!」

 

 

 抑えてた所から手を離すと、多少擦り傷にはなっているが貫通創などかけらも見えない。

 なんということか! ヘッドショットを食らって無傷───とまではいかないが、無事───とはこのキヴォトスの住人はスーパーマンの親戚かなにかかと驚きを隠せなかった。

 ハスミが撃ってきた生徒を逆に狙撃し返して昏倒させるが、血しぶきが上がってないのを見るに向こうも致命傷にはなっていないのだろう。

 しかしもう一度顔を出してこないところを見るに、気絶したのだろうと推測する。

 一方で相手方は統率が取れてないのか、射撃の頻度も精度も散漫で低レベルな民兵ほどでしかない。

 

 

「ホローポイント弾は禁止されてませんよユウカ。……先生、此処から先は私達が先行します。先生は安全になってからついてきてください」

 

「うん、それだがね……相手の練度は低い。私の言うことを聞いてもらえるなら、すぐに制圧できるだろう。安心してほしいが、私はこれでも元は陸軍少佐で部隊指揮をしたことはある」

 

「そ、そうなんですか!? ……わかりました。生徒は先生の言う事を聞くもの、ですよね」

 

「その前に確認しておきたい。君たちは銃弾を受けても「痛い」で済むが、攻撃で死亡するということはあるのか?」

 

 

 マイケルの問いを、ハスミは首を横に振って否定する。

 

 

「いいえ、よっぽど長時間銃弾を叩き込むとかしない限り戦闘では死亡することはありません。105mm榴弾砲で撃たれても大丈夫です」

 

「なるほど、それは安心材料だ。うら若き乙女が命を散らすのは心が痛むからな」

 

 

 そう言い、進むべき方向を睨みつけて頭の中に戦術マップを構築する。

 本来であればドローンなどで俯瞰した状態の地図を得たいがそういう機材がない以上は場当たり的でやるしかない。

 市街地戦ほど戦場の霧が濃いものはない。いつ敵が飛び出してくるかわからぬ状況は神経をすり減らすが、当たっても死なないのは安心材料ではあった。

 

 

「では、始めてくれ。ひとまずここから500m先の……あのトレーラー、あそこを目指そう。

 ユウカが先頭、スズミはその後を追い、ハスミは後方で援護をするように。細かいことは適時指示を出すのでそれには従ってくれ。

 チナツはリンの直掩に回っていてくれれば大丈夫だ」

 

 

 戦闘地域に入る前にそれぞれの得意分野と得物以外の武器を聞いていたマイケルはそれぞれの特性に合わせた隊列を組ませて前進させる。

 敵……所謂不良生徒の攻撃はやはり散漫で、先頭を走るユウカは軽やかにそれを躱すと次々に不良生徒に銃弾を叩き込んでいく。

 後方から更に不良生徒の一群が前に出てくるのを確認すると即座にスズミに声を掛けた。

 敵は密集状態で、まさにスズミの得物以外の武器、ある意味こちらのほうが本命ともいえる―――閃光弾が最大の効果を発揮する形だったのだ。当然ながら予想される効果はてきめんだと言える。

 

 

「スズミ、11時方向のバリケード後方に投擲。敵が4名移動している」

 

「はい、天罰の光を!」

 

「ユウカ、前進だ! 投げ込まれたバリケードに取り付いて牽制射撃、スズミはその手前の遮蔽に移動してポジションを取れ」

 

 

 閃光弾が投げ込まれてまもなく、強力な閃光と破裂音とともに悲鳴が4つ。

 現状では見えないが、バリケードの向こうでは不良生徒4名が潰れたカエルのようにひっくり返って目を回していた。

 同時に火線が切れる。

 敵の抵抗が消えたことで、一気に前線を押し上げることに成功し、目的のトレーラーのすぐ近くにまで到達するとトレーラーの裏から数名の不良生徒が飛び出してきたが、ユウカとスズミの射撃の前に瞬く間に沈黙した。

 それを確認する間もなく、遠距離を警戒していたハスミも銃を下ろして声を上げる。

 

 

「クリア、現状見える範囲で敵は確認できません」

 

「よし、ここで一旦弾込めなどを済ませておこう。終わったらこのまま部室へ直行し……!?」

 

 

 遮蔽にしていたトレーラーの横に回り、牽引していたコンテナを見上げたマイケルは目を丸くした。

 13枚の葉と実を付けたオリーブの枝と13本の矢を掴む鷲のエンブレム、『Seal of the President of the United States』の文字で囲まれたそれは間違いなくアメリカ合衆国大統領の紋章。

 アメリカどころか地球でもないこのキヴォトスに突然として現れた縁のあるものにやや混乱しながらコンテナの扉の前に立つ。

 表面にはいくつもの傷があり、先程の不良生徒はコンテナをこじ開けようとしていたのだろうか、地面にはバールも落ちている。

 見る限りコンテナのロックは電子式であり、認証は生体方式のようだ。

 

 

「先生、どうしたんですか?」

 

「このコンテナ……私の出身地から来たもののようだ。少しいいか、開けられるか試してみたい」

 

 

 認証パネルはトレーラーに載せられている都合高い位置にあるが、よじ登ってパネルに手をかざすことは十分に可能だ。

 静かに触れると、電子音とともにコンテナのロックが解除される。

 ゆっくりと扉を開け……中に入っていたものを目にした瞬間、心臓が跳ね上がる感覚に襲われた。一瞬、視界にノイズが走る。

 濃紺に染められ、差し色で赤の入った単眼の人型機械、アメリカではSpecial Heavy Mobile Armor(特殊機動重装甲)と呼ばれ戦場の主役を戦車や戦闘ヘリから兵士の手に取り戻すこととなったもの。

 アメリカ大統領専用にカスタムされたその名は『メタルウルフ』。

 このキヴォトスの地に於いてマイケル・ウィルソンが戦うために必要な力、弾丸を防ぎあらゆるものを制圧する火力がここにあった。

 ゆっくりと近づき、機体の側面に備えられた開放レバーを引くと胴体が開き、搭乗スペースが主を迎えるべく顕になる。

 これが開くのは、あの時以来か───マイケルは意を決した。

 

 

「皆、私も戦闘に参加できるようになる。少し時間をくれ、スーツを着るのに必要だ」

 

「は!? 先生、スーツって一体何なんですか、それに戦うって───」

 

「待ってください、敵が前進してきます。先生、トレーラーの中は危険です!」

 

 

 生徒たちの制止を振り切り、彼は『スーツ』に袖を通した。

 

 

『先生、聞こえていますか? この地区で騒ぎを起こしている生徒の詳細が判明しました。

 狐坂ワカモ、百鬼夜行連合学院を停学になり連邦矯正局に収監されていた、主に大規模破壊活動を行う凶悪な生徒です。

 周辺の不良を纏め上げてシャーレの部室へ攻撃を───そんな、接近する集団に狐坂ワカモが居ます。先生、気をつけてください!』

 

 

 リンの通信を耳に入れながら起動シーケンスを立ち上げる。

 指紋、虹彩、顔認証、最高級の生体認証をクリアし、機体OSが起動。同時に音声ガイドが主の帰還を告げる───『Welcome back Mr.President(おかえりなさい、大統領)』と。

 脳波同期、神経接続、腕部伸縮動作確認、脚部同期、マスター/スレーブオールグリーン。

 武装展開…スペース不足により保留、コンテナ内にかけられている武器、ショットガンとグレネードランチャーを保持、弾薬はフルロード。

 

───『メタルウルフ』、戦闘モード、起動。

 

 メインカメラが煌めくと同時に背中のブースターを噴かしながら跳躍、コンテナの天井を突き破り宙へと飛び出す。

 突然の事態に不良生徒も、率いてきた生徒たちも呆然と空を見上げているが、マイケルは冷静に状況を俯瞰しようとした。

 不良生徒たちは戦車3両、歩兵としては25名程度がおり、うち1名は戦車の上に立っている。

 あの生徒だけ服装が違うとなると、首謀者の狐坂ワカモは彼女のことだろう。

 

 

「私が敵前衛の出鼻をくじく! 皆、前進して優位ポジションを取るんだ。

 Let's Partyyyyyyy!!!!

 

 

 空中に静止しながらスピーカーを通じて声を張り上げる。

 明らかに自分たちに向けられたものだと認識した4人はそこで正気を取り戻した。

 

 

「あっ、はい! 皆!いくわよ!」

 

「すごい、あれが先生のスーツ……? っ、了解、進みます!」

 

「あれが連邦生徒会長が選んだ先生の力……行きましょう、正義を見せるときです」

 

 

 使用武器は右手のグレネードランチャー、見た目は一般的な人間が使うものと同じだが3mサイズの特殊機動重装甲に拡大されたそれは40mmグレネードより大きな60mmの迫撃砲弾を発射するようになっている。

 狙いは敵前衛集団のやや後方、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()気を使いながら、一発を叩き込んだ。

 跳躍の頂点から放たれ、撃ち降ろされた砲弾は狙い通りの場所に落ちて───炸裂、破片が不良生徒を襲う。

 

 

BINGO!

 

 

 一瞬やり過ぎか?と思ったものの、よく見れば破片を表皮で弾いているようで見た限りでは銃弾で気絶した不良と同じようにヘイローが消えて倒れているだけに見える。

 ひとまず意識を気絶した不良から敵後衛集団、即ち3両の戦車とその随伴歩兵に向けるが、彼女らはまだショックから回復できていないのか、ワカモ以外の動きは鈍い。

 ワカモは躊躇なく銃撃を放つが、厚い装甲に防がれ『メタルウルフ』の致命打には至らない。もっとも、内部のマイケルからすれば”口径の割に着弾音と衝撃が大きい”ことに冷や汗をかいていたが。

 

 

「何なのですかあれは!? 連邦生徒会にあんなロボットがあるなんて聞いておりません!」

 

 

 銃撃を跳ね返されたことにワカモは驚愕しながら、側面から飛び込んでくる銃弾を躱して戦車の上から飛び降りる。

 至近に接近してきた連邦生徒会に協力する3大校の生徒が猛烈な銃撃を浴びせてくるのを確認すると、小さく舌打ちした。

 元々はあのビル、連邦生徒会が保有するその地下に持ち込まれている”ある物”を破壊するための暴動であり、本格的な戦闘を前提としているわけではないのだ。

 せいぜいヴァルキューレの小規模な鎮圧部隊を相手に圧倒できる程度であり、時間を稼ぐ間に目的を達成すればよい、はずだった。

 戦車が3両も手に入ったのは偶然で、本当は1両あれば御の字……だったのだが、あの濃紺のロボットを相手にするには数が足りないとしか感じられなかった。

 

 

「ハスミ、私が戦車をひきつけるから徹甲弾で抜くんだ。スズミは閃光弾で戦車周りの生徒を制圧、私も戦車を潰すからそれで完全制圧といこう。

 タイミングを合わせてくれ、ユウカはスズミを援護!」

 

「わかりました」「了解です!」「はい!」

 

 

 敵の主力は戦車3両とその随伴歩兵だと把握したマイケルは、地上に降り立つと同時に率いる生徒たちに指示を飛ばす。

 生徒たちも即座に指示の意図を理解し、意識を切り替えハスミは腰のポーチから徹甲弾を取り出し、ライフルのボルトを引いてチャンバーにそれを込めた。

 スズミもバッグから予備の閃光弾をすべて取り出し即座に腰のベルトに据える。ユウカは二丁のSMGをリロードして構えて時を待つ。

 

 

「Go!」

 

 

 掛け声とともにメタルウルフは背中のブースターを展開させ、アスファルトを削りながら猛烈な勢いで飛び出した。

 混乱状態から復帰した不良集団は銃撃を始めるが、全ては装甲に弾かれて致命傷には至らない。

 

 

「あのロボットに集中攻撃を!」

 

 

 不良側指揮官であるワカモは浮足立っている不良たちを押し留めようと声を張り上げた。

 先程のロボットが再度攻撃マニューバに移ろうとしている。今相対している生徒と協力して一気に制圧するつもりなのだろう。

 しかしながらワカモは引き際をよく心得ていた。これ以上抵抗するほど愚かではなく、本来の目的を果たすためにドサクサに紛れて身を翻し、物陰に消えるという判断を一瞬で下すとそのとおりに動いた。

 あまりに見事なその逃亡は全員の目に留まること無く、その場から消えたという事実すら認識されなかった。

 

 

「車体も回せぇ!」

 

「チクショウ!追いつかないぞ!」

 

 

 その一方で猛烈な横っ飛びにより回り込もうとするメタルウルフを迎撃しようと、クルセイダーMk1巡航戦車が砲塔旋回と車体旋回を合わせて追随し、照準に捉えようとした瞬間その砲塔側面に小さな穴が空いた。

 もしその穴を内側から見るものがいたのならば、その視点の先には硝煙を上げるハスミのライフルの銃口が見えただろう。

 彼女の持つ小銃用徹甲弾はクルセイダーの側面装甲を貫き、乗員に命中させてその意識を刈り取った。

 続けてもう一発、今度は車体側面に命中すると今度はその小さな穴、更には他の開口部から炎が一瞬吹き上がりそのクルセイダーは二度と動かぬ鉄くずと化す。

 ハッチが開いてあちこち焦げたり髪の毛がチリチリになりながら乗員である不良生徒が飛び出してきたが、すでに至近距離に迫っているユウカの銃撃をうけて車体から転げ落ちていった。

 車内で気絶した不良は仲間に引っ張り出されかけていたため、車長ハッチから半身飛び出ているので中で蒸し焼きになることはないだろう。

 

 

「一両無力化!」

 

「閃光弾投擲します!」

 

「いいぞ! 次は私だ!」

 

 

 戦車が撃破され混乱する歩兵役の不良生徒に閃光弾が続けざまに2回投げ込まれて外にいる全員が気絶、残りは戦車が2両だけになる。

 すかさず、もう一度跳躍したメタルウルフが後方に居る3両目のクルセイダーの直上に到達すると、猛烈な勢いで急降下し車体後部、エンジンの収まっている箇所を踏みつけた。

 反動で車体が”く”の字に曲がり、内部の乗員は滅茶苦茶にシェイクされた結果、頭がたんこぶだらけになって失神、車体もスクラップである。

 

 

「何なんだよあのオートマタはよぉぉぉ!?」

 

「聞いてないよォー!!」

 

 

 もう一度跳躍し、左手に装備されたショットガン───もちろんこれも口径が拡大されたもの───を戦車上面に発砲するが、元々丸球で貫徹力の低い対人散弾では戦車にダメージが通らない。

 しかし2度3度と猛烈に銃弾でドラミングされた乗員はすでに友軍二両が撃破されていることもあり、一気に恐慌状態に陥った。

 パニックのままハッチを開けて逃亡しようとしたところを待ち構えていたユウカとスズミの二人がかりで討ち取られ、暴動集団主力は全滅。

 シャーレ部室棟への道に立ちはだかるものはもはやなかった。

 

 

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 七神リンは困惑していた。行方不明になった連邦生徒会長が招聘した”先生”、マイケル・ウィルソン。

 彼の保有する機動兵器は戦車数両と数十名の不良、そして脱獄囚狐坂ワカモを相手にして全く歯牙にもかけないほど性能を持っていた。

 外の世界の保有するオーバーテクノロジーの集大成の一つ、そのような危険なものを持つ人物に超法規的組織の顧問を任せるということがどれだけ危険なのか、リンは理解していた。

 圧倒的な力を持つ大人に、絶対的な権力を持たせる、それはこの学園都市キヴォトスの根幹を揺るがすものであるということを。

 ”学生による自治”という前提を失っては、キヴォトスはキヴォトスであり続けることは出来ない。

 しかしサンクトゥムタワーの制御権を取り戻さないことには、キヴォトスの平穏を取り戻すことは不可能だということもまた事実であった。

 

 

「さて、ここが目的地だが……入口が狭いな、このスーツはドレスコードに反するか」

 

 

 彼女は眼の前で圧倒的な武力を持つ”スーツ”を脱ぎ捨て、再び生身の肉体を晒すマイケルの真意を測りかねていた。

 よほど自分を含む生徒の皆を信用しているのか、動きに全くの迷いがない。彼の肉体は恐らく、銃弾一発で致命的な損害を受けるであろうにも関わらず、である。

 ”スーツ”の中から防弾ベストと拳銃を取り出した彼は素早くそれらを身に着けビル内へと踏み込んだ。

 考え込んでいたリンは彼の動きに気づかず、周囲のクリアリングを終えたユウカに声をかけられるまでの数分間の間に決定的な距離を開けられてしまっていた。

 

 

「うーん、これが一体何なのか全くわかりませんね……これでは壊そうにも……」

 

 

 シャーレ部室棟の地下、非常灯のみが点灯している薄暗い廊下を拳銃を構えながら進むマイケル。タクティカルデバイスから照射されている赤色レーザーが壁面を不規則になぞっていく。

 通路の奥から聞こえる声は招かれざる客のもの、これは失敗したかと彼は心のなかで呻いた。

 だが侵入者にこれ以上何かをさせるわけにもいかず、そして気づかれるわけにもいかぬ状況であり、外にいる生徒に声を掛ける事はできない。

 意を決し、通路から飛び出してタクティカルデバイスのライトを点灯、強烈な光を浴びせて目を潰すことを選んだ。

 

 

「動くな!動けば……」

 

「ッ! その程度で私をどうにかできるとでも……ッ!?」

 

 

 しかし侵入者は即座に銃剣を掴んで正確な投擲により拳銃を弾き飛ばす。

 銃口に突き刺さる銃剣、強烈な衝撃に拳銃が手からすっぽ抜けて壁にあたり、床に転がって部屋全体を照らすような形となることでマイケルと侵入者、双方が互いの姿をよく認識できるようになった。

 狐の仮面、黒い和装、スラリとした脚…先程の戦闘で確認できた狐坂ワカモに間違いはない。

 距離は大凡3m、この距離は微妙ではある。組み付こうと思えば組み付けなくもないが、キヴォトスの人間のフィジカルが不明な状況で肉弾戦は賢い選択とは思えなかった。

 父親仕込みの”ジュージュツ”ならあるいは、と考えるが絡むにはもう1歩くらい踏み込みたい所ではあった、それでもやはり未知数相手は危険がすぎる。

 

 

「……」

 

 

 構え、飛び退くにしろ飛び込むにしろ相手の出方次第と思っていたが、どうにもワカモの様子がおかしい。

 投擲した態勢のまま硬直し小刻みに震え―――

 

 

「あ、あぁ……その、し、し……失礼しましたぁ~!!」

 

 

 悲鳴とも歓声ともつかぬ声を上げ、銃剣を拾い上げながらあっという間に入ってきた通路とは別の道に消えてしまった。

 咄嗟のことで反応も出来ず呆然とそれを見送ったが、数秒の後に正気に戻って慌てて後を追えば、破壊されたダクトの通風孔のある行き止まり……つまり、逃げられてしまったということだ。

 ひとまず追い払えたということに安堵しながら部屋へ戻ると、弾き飛ばされた拳銃を拾いマガジンを引き抜きスライドを引いてチャンバーから弾を抜く。

 其の上で損害を見るが、きれいに銃身とスライドに傷がまっすぐ入っており、射撃をすれば爆ぜそうだ。少なくともフレーム以外は廃棄だろう。

 

 

「やれやれ、一発も撃たずに廃棄か。ままならないな」

 

 

 廃棄物同然の拳銃を机の上に置き、周囲を見渡す。

 部屋の真ん中に非常灯に照らされている謎の機械と、その中に浮かぶ……タブレット端末が目についた。

 無意識にそれに手を伸ばそうとした時、1階へとつながる廊下から足音が聞こえてきてその手を引っ込める。

 誰が来るかと身構えるが、警戒する様子一つも見せずに入ってきたのは七神リンであった。

 ということはすでに敵は居ないということに安堵し、肩の力を抜く。リンは怪訝な表情でマイケルの様子をうかがうが、彼はそれを気にすること無く視線をタブレットへと向けた。

 

 

「……どうかしましたか、先生」

 

「いや何、ワカモが居たが逃げられてね……それで、これがそうなのかい」

 

「ワカモが!? ……良く無事でしたね先生。はい、これが連邦生徒会長が先生に残したもの……『シッテムの箱』です。

 あらゆる点で解析不能なオーパーツ、私達には起動すら出来ませんでした。

 これを使えばタワーの制御権を回復させられるということでしたが……先生、あとはすべて貴方にかかっています」

 

 

 リンはタブレットを手に取り、マイケルに渡す。

 それを受け取りまじまじと眺めるが、見た目は一般的なタブレット端末にしか見えない。

 

 

「私は邪魔にならぬよう1階に戻ります。先生、どうか……お願いします」

 

 

 部屋を去るリンの背中を見送り、椅子に座ったマイケルはタブレットのメインスイッチを探り……それっぽいボタンを押した。

 タブレットの画面がぱっと明るくなり、Sのシンボルが現れる。OSの名前だろうか。

 

 

───Connecting To ”Crate of Shittim”

 

───システム接続パスワードを入力してください

 

 

「ふむ、パスワードか……!?」

 

 

 タブレットの画面に触れると一瞬思考にノイズが混ざる。思わず一瞬手を離す……が、意を決して再び画面に触れる。

 先程のノイズとともに浮かび上がってきた言葉が、自然と指を通じて出力されていた。

 

 

 

───我々は望む、七つの嘆きを(We thirst for the seven wailings.)

 

───我々は覚えている、ジェリコの古則を(We bear the koan of Jericho.)

 

 

 画面が切り替わる。ログにパスワードが承認された旨のメッセージが流れ、接続者情報は「マイケル・ウィルソン・Jr」ということも確認できた。

 やはり、このタブレットには自分の情報が入力されているらしい。連邦生徒会長、本当に一体何者なのかという疑問を抱かざるを得ないが、居ない人間のことを考えても仕方がない。

 

 

───シッテムの箱へようこそ、マイケル・ウィルソン・Jr先生

 

───生体認証及び認証書作成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します

 

 

 次の瞬間、眼の前が光に包まれた。

 

 

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 ……光が収まり、気づくとそこは壁の崩れた教室だった。

 崩落した壁の向こうにはまるで山のように積まれた学習机、そして遮るもののないパノラマに広がる水平線と済んだ青空。

 そんな荒れた教室に、一人の幼子が机に突っ伏して寝息を立てていた。

 手を伸ばす。視界に入る己の腕は濃紺の鋼の腕、そのデザインは間違いなくメタルウルフのもの。

 全身を見れば、己の体がメタルウルフそのものになっている。サイズこそ、人間サイズではあるが……触ってみると触感すらある。

 不思議なものだが、ここまで来るともう”そういうものか”と受け入れてしまうようになっていた。

 単純に言えば、驚くのに慣れてしまったとも言える。

 

 

「むにゃむにゃ……カステラにはぁ、イチゴミルクより……バナナミルクのほうが……」

 

 

 幼子は無邪気に寝言を言っているが、しかしこの状況をどうにかするにはやはり起こすしかなさそうで、罪悪感を覚えながらも幼子の肩を掴んで揺する。

 だが起きない。流石にそれは困るので、もっと力を入れて揺さぶる。

 がっくんがっくんと頭が揺れて、これには流石に起きたようで「あうあう」と声を上げたのでその時点で手を離した。

 寝起きで頭を揺さぶられて少し目を回しているようだが、少し経つとようやく自分を認識したようで、文字通り目を丸くして飛び跳ねるように席を立つ。

 

 

「わ、わあ、先生……マイケル・ウィルソン先生ですよね? なんだかメカメカしいですけど…」

 

「そうだが、君は誰だい? あとこの姿は気がついたらなっていてね、本当は違うんだが」

 

「あ、はい! 私はアロナ、このシッテムの箱に常駐しているシステム管理者でありメインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」

 

「メインOS、ということは君は仮想の存在で……ここは仮想空間なのか?まるで映画だな……いや、本当にすごい技術だよ」

 

「ふふん、そうでしょうそうでしょう! でもまだバージョンが低くて、この体も調整が必要なのですが……

 あぁ、先生、生体認証と……その体の調整を行いましょう。多分、初期認証時の不具合だと思いますので」

 

 

 幼子、アロナはそう言うとマイケルを見上げて右手の人差し指を差し出してきた。

 曰く、この指に触れて指紋を読み込み登録するとのことだが、この体で指紋とかあるのだろうかと疑問に思う。

 しかしやってみないことにはわからないというわけで、素直にその指に触れた。これも昔の映画っぽいなという感想が出てきたが。

 触れて数秒、視界に写るものすべてに突然ノイズが走り、気づくとメカメカしかった腕は人間の腕に戻り、アロナはどうだと言わんばかりのドヤ顔を見せていた。

 そして不思議と晴れやかな気持ちになり、頭がクリアになっていく。

 

 

「はい、完了です! それが先生の素顔なのですね、素敵なおじさまだと思います!」

 

”ありがとう。ところで、私はこのシッテムの箱でサンクトゥムタワーの制御権を回復するために来ているんだ、君はそれができるのだろう?

 これを残した連邦生徒会長はそう言っていたと聞いている……連邦生徒会長がどういう人物なのか私は一切知らないが、すごい権力を持っていたようだな”

 

「……私はキヴォトスについて多くの情報を持っていますが、連邦生徒会長がどういう人物なのかについては知りません。

 失踪した理由も……ですが、タワーの制御権を回復することは可能です! 少しお待ち下さい!」

 

 

 アロナが目を閉じ、待つこと体感時間にして10秒ほど、ニコニコしながら目を開けたアロナは自信満々な様子であった。

 この空間に意識を飛ばしていたため彼は気づいていないが、シャーレ部室棟地下室は非常灯から通常の照明が灯り、空調システムが回復したことでダクトからファンの音が聞こえ始めた。

 離れていたリンも変化に気づき、スマホを取り出すとサンクトゥムタワーに待機している同僚へと通話を始め、状況の確認を行っている。

 

 

「admin権限の修復完了、サンクトゥムタワーは私、アロナが掌握しました。先生が今やキヴォトスの支配者も同然です!」

 

”そうか、それは良かった。だが、私は支配者になるつもりはない。

 選挙を経ていない人物が行政のトップになるべきではないからな、連邦生徒会に権限を戻しておいてくれないか”

 

「……しかし先生、連邦生徒会長が行方不明となったことで現在のトップは選挙を経ていない代行者となっています。

 先生が仰る理由であるならば、現在の連邦生徒会に権限を戻す必要はないのでは」

 

 

 アロナは不満げに言う。”先生”としての資質を試しているのかと一瞬考えたが、どちらにせよ結論は変わらない。

 会長代行を任命するプロトコルがあるのならば、それに疑義を挟む余地など無いのだ。

 

 

”たとえ能力的に不足でも手続き上に問題はない。サンクトゥムタワーの管理権限が本来連邦生徒会にあるならば、元の場所に戻すのが道理だろう”

 

「……わかりました! 先生の要請に従いサンクトゥムタワーの権限を連邦生徒会に移管します!」

 

 

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 意識が遠のき、気づくと地下室でシッテムの箱を手にした状態で立ち尽くしていた。

 部屋は明るく様々な機器の電源も回復しているようで、どんよりとしていた地下室の空気も新鮮なものに入れ替わっている。

 先ほどからどれだけの時間が経ったのかよくわからないが、状況の確認をしようとした瞬間にリンが部屋に戻ってきたことで意識を切り替えた。

 

 

「権限の回復を確認しました。先生、キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします」

 

”構わんよ、それが仕事というものだ”

 

「先生にシッテムの箱を渡したことで私のとりあえずの仕事は終わりました。

 ああ、いえ、もう一つありましたね……連邦捜査部シャーレの部室……先生のための執務室に案内します。どうぞ、こちらのエレベーターに」

 

 

 エレベーターに乗り込み、リンは高層階のボタンを押して扉が閉まる。

 外から見ていたがシャーレの部室棟であるこのビルは結構な高層建築であり、ボタンの数を見ても20は越えていた。

 エレベーター内に使用感はあまりなく、このビルはすべてシャーレのためのものであるというリンの説明からオフィス以外にも様々な施設が併設されているということがわかる。

 目的階に到着しエレベーターのドアが開くと、そこは使用感を感じぬオフィスであり、シャーレのエンブレムの描かれた扉と「空室 近々始業予定」の張り紙があった。

 

 

「ここがシャーレのメインロビーになります。長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎えることになりましたね」

 

 

 扉を開け、中に入る。そこそこ広い部屋に、すぐにでも業務を始められるのではないかと思える程度には備品が用意されていた。

 しかしそれはただ用意された以上のものを感じられず、ようやく人を迎えたという話は真だと理解した。

 

 

「こちらで、仕事をしていただくことになります。とはいえ、シャーレという組織は何かしらの目的があるわけではなく、その割には権限が強いもの……

 つまり、先生がしたいことをやっても良い、ということです。

 様々な学園に出入りし、希望する生徒をどのような立場であれ加入させることができる……」

 

”何をしても良い、というのはまた困ったものだな”

 

 

 何をしても良い、自由度の高さはそれ自体が枷と言えるものである。自由な存在であることは、常にそれに付きまとう責任から免れることはできない。

 超法規的な権限を持つ組織が動く、その意味をわからぬ彼ではない。なにせ、強大な権限を持つアメリカ合衆国大統領で”あった”のだから。

 少し悩む彼を見たリンはその生来の頭の良さを働かせ、この”超法規的組織”を少しでもコントロールしようと知恵を働かせる。

 膨大な連邦生徒会の仕事の一部を割り振り、仕事量で圧倒することでこの大人を制御できるのではないか……そんな考えが浮かび、実行することに決めた。

 

 

「……でしたら、連邦生徒会に寄せられる苦情や要請を代わりにこなすと良いでしょう。

 こちらは連邦生徒会長が失踪したことで業務が大幅に滞っています。

 生徒会長捜索で人手も減りますし、シャーレが業務の一部を代行してもらえれば非常に助かります」

 

”体よく仕事を押し付けてくるな……まあ、ある程度方向性がわかるまではそのほうが良いかもしれないが”

 

「最低限必要な書類はこちらに、あと必要なものがあれば連絡してもらえれば送りますので、よろしくおねがいしますね先生」

 

 

 リンが一礼し、部屋を出ていく。

 一先ず着ていた防弾ベストを脱ぎ、デスクの上に放って窓から外を眺めた。

 治安組織のものと思しきヘリが飛び回り、今回のパーティはお開きの時間といったところだろう。それと外に放置している『メタルウルフ』の格納のことも考える必要がある。

 ため息を一つ、彼はエレベーターに向かい、1階へのボタンを押した。

 

 

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「お疲れ様でした先生、ミレニアムでもサンクトゥムタワーの制御権が回復したことを確認できました」

 

「ワカモは……D.U外の自治区に逃げてしまいました。これ以上は手のうちようがないので、私達はここまでです」

 

 

 外に放置した『メタルウルフ』の周りにはすでに生徒が集まり、マイケルの姿を見るなりユウカとハスミが駆け寄ってきて周囲を囲んできた。

 彼女らも色々と話したいことがあったのだろう、年頃の娘らしいテンションと、それなりの役職を背負っている責任感が混ざりあった様子で、彼はそれを微笑ましく眺めながらもちらりと視線を『メタルウルフ』に向ける。

 スズミが正面から興味深そうに、チナツは全体を見ようと少し下がりながら周囲をまわって見上げているようだ。

 マイケルの視線が『メタルウルフ』のほうに向けられたのにユウカとハスミも気づいたのか、「このことも聞きたかった」とばかりに話題を変えた。

 

 

「ところで、先生。あれは一体なんですか? 先生の持ち物……というにはかなり物騒ですが」

 

”あれは私の祖国で開発された……まあ、パワードスーツだ。

 人が人の形で地上での戦いを支配するためのツール、それを私専用にカスタムした自由の守護者。それがこの『メタルウルフ』だ”

 

「戦いのための……ですか、先生のいたところも争いが絶えない場所だったのですね。先生はこれからもこれを使うのですか?」

 

 

 少しの畏れを含んだ視線を向けられる。

 派手に暴れたが故に少し怖がらせたのかもしれないが、メタルウルフがなければ物陰にコソコソ隠れて、子どもたちを盾にするという情けないことになっていただろう。

 それはマイケルにとって許せるものではない。だからこそ、マイケルはハスミの問いに対して首肯した。

 

 

”うん、とりあえず武器を搭載しなくても弾除けには使えるだろうからね。生身の私では流石に撃たれたら最悪死んでしまうよ。

 それに、子供を盾にするのは私の趣味じゃない。安心してほしいが、必要以上に暴力を振るうつもりはない。できる限り自衛の範囲に留めるさ”

 

 

 ハスミは少し考え込み、先程の戦闘での彼の戦い方を思い出す。

 大胆に動きながらもできる限り大火力の直撃を避ける戦い方であり、戦車への踏みつけもキャビンを潰さないようにという配慮があった。

 潰され、圧迫状態で呼吸ができなくなれば如何にキヴォトスの人間といえど死に至るということを考えると、彼の説明には納得できるものがある。

 であるならば、今自分が抱いた恐怖は取り越し苦労で終わるだろうとマイケルに笑みを向け、それを見たユウカは次は自分の番だとばかりに口を開いた。

 

 

「先生、もし『メタルウルフ』の整備が必要でしたらミレニアムサイエンススクールへお越しください。技術力ではキヴォトスでもトップだという自負がありますので」

 

”そうだな、近い内、数日以内に君たちの学校に寄らせてもらおう。

 挨拶回りは大事だから……あぁ、無論そちらの都合によるが、予定がついたら連絡を入れてほしい”

 

「そう、ですね……先生がそのつもりであれば、トリニティ総合学園の生徒会…ティーパーティーに話を回しておきます」

 

「連絡といえば、先生はモモトークは登録していますか?キヴォトスではメジャーな通信アプリで、ほとんどの生徒はこれを使ってやり取りしています。

 もしもまだ入れてないのなら、インストールからアカウント登録まで手伝います」

 

”ああ、頼むよ”

 

 

 手持ちのスマホ……持ち込んだ地球産だが、どういうわけかこちらでも使えるそれに、ユウカの説明のもとモモトークをインストールし、アカウントの登録をする。

 その場に居た四人のアカウントをフォローしてメッセージのテストを行い、ユウカは満足そうに頷いた。

 

 

「これでOKです。あ、SNSもアカウント作ったほうがいいかもしれませんね。

 先生が活動するのに知名度は必須でしょうし、今回の活躍できっとSNSでは話題になってるので一気にフォロワー数が増えると思います。

 今メッセージでURLを送りますので、そちらは先生がご自分でやられたほうが良いと思います」

 

「先生が伺うことは風紀委員と……一応、万魔殿に伝えておきます。では先生、お疲れ様でした」

 

 

 生徒たちが一礼し、各々の学園へと戻っていく。

 その後姿を見えなくなるまで眺め……ようやく、メタルウルフを動かすべく再び袖を通した。

 しかし、先程と違い認証システムが立ち上がらない……何度もスイッチを押すが、うんともすんとも動かぬことに冷や汗が流れる。

 これはまずいと思った瞬間、シッテムの箱が振動したのでその画面を見ると、アロナが画面から浮かび上がっていた。

 

 

『先生、それ、動かないんですか?』

 

”困ったことにな。さっきまでは動いていたんだが”

 

『……このスーパーアロナちゃんに任せてください!不具合があればチョチョイのチョイで直してみせます!』

 

 

 そう言うとアロナは何かを念じるように目を瞑り、何かブツブツと呟く。

 10秒ほど待機していると、突然メタルウルフの各種システムが動き始め、認証が始まった。

 メインモニターには認証が完了した通知が表示され、『Welcome back ”Sensei”(おかえりなさい、先生)』というメッセージが表示されている。大統領という認証ではないことには直ぐに気付いた。

 

 

『通信ユニットからアクセスしてメインOSをハッキングしました。

 認証周りが壊れているので……シッテムの箱の認証と同期させています。これで、先生以外にこのマシンは使えないはずです!』

 

 

 まさか、メタルウルフのシステムをハッキングするとは。マイケルはシッテムの箱の性能に驚愕を禁じ得ない。驚くのに慣れてきたにも関わらず、である。

 このユニットのシステムは極めてセキュリティが高く作られており、地球でも最高クラスの防護がなされていたにも関わらず、10秒程度で乗っ取られたのだ。

 しかもシステムの隅々まで調査しながらである。もし純粋にシステムを乗っ取るだけなら、もっと早く事が済んでいただろう。

 これが地球にあったらと考えると、本当に恐ろしいものだと先ほどとは違う方向で冷や汗をかくが、なんとか鋼の意思で内心の動揺を抑えながらアロナの言葉に耳を傾けた。

 

 

『これで先生も一段落しましたね。さあ、これからが大変ですよ!

 キヴォトスの生徒たちが直面している問題を解決していくのです!

 先生、キヴォトスを、シャーレをよろしくお願いします!』

 

 

 ここからアメリカ合衆国大統領マイケル・ウィルソン・Jrは学園都市キヴォトスの先生としての道を歩み始める。

 その歩みの先に何があるのか……それはまだ、誰にもわからぬことであった。

 

 




キャラクター名鑑
名前:マイケル・ウィルソン・Jr
所属:連邦捜査部S.C.H.A.L.E
年齢:40代
好きなもの:自由
嫌いなもの:テロ、クーデター
本作の主人公。METAL WOLF CHAOSの主役であった大統領その人。
本編でクーデターを鎮圧後、もう1期大統領としての任を勤め上げた後キヴォトスに呼ばれた。
クーデターで多くの犠牲を出したことを悔やんでおり、クーデター話は割とNGワード。レッドウィンターと相性くっそ悪いことに。
リチャードの心の闇に気付けなかったことを気に病み往年ほどの熱さは失われているが、その分冷静に物事を考えるようになっている。
自由を愛する心は今なお健在。
アメリカ人なのでヤーポン法を使うがキヴォトスライズされた結果国際単位系に変換されている。
レッドウィンターや美食研、温泉開発部と相性が悪いが彼は初手拒絶はしないだろう。

メカニック名鑑
名前:メタルウルフ
分類:特殊機動重装甲
製造:アメリカ合衆国
全高:3m(本編描写より推測)
アメリカ合衆国が開発した大統領専用パワードスーツ。本編通りにサイズに見合わぬパワーと武装搭載量を持つ。
本編から数年を経たことで改良を重ねており、当時よりも高性能に仕上がっている。
何故か生体認証機能が壊れたためシッテムの箱とOSを同期させたため、先生以外に起動させることは不可能。


用語解説
アメリカ合衆国
第47代大統領マイケル・ウィルソンの祖国。地球における最大の経済力と軍隊を持つ国家。
石油資源の枯渇と世界的経済混乱、紛争、テロ、寄生虫生物災害など我々の知る歴史とは異なる道を歩んでおり、宇宙開発もコロニーや月面基地を置くなど非常に先進的。
クーデター事件で大きなダメージを受けたが、その後の復興もあり世界第一位の座を守り抜いている。


紛争
2009年頃に発生したアリゾナ紛争と呼ばれるアリゾナ州を戦場とした紛争。
メタルウルフカオス作中においてアリゾナ紛争についての詳細な情報はないが、アメリカ軍はサイボーグ兵士や自律兵器を多数実用化し多大な戦果を上げたという。
マイケル・ウィルソンはこの戦いで名誉勲章を受賞し、リチャードは「アリゾナの英雄」と呼ばれるほど戦果こそ上げたが名誉勲章の受賞を逃したとされる。
アリゾナ紛争の相手は恐らくメキシコ。化石燃料の枯渇に伴う世界の混乱が見て取れる。


クーデター
2025年頃に発生した副大統領リチャード・ホークによる全米クーデター事件。メタルウルフカオス本編の出来事。
一時は北アメリカ大陸の48州(アラスカとハワイはステージにないため)を制圧したが、マイケルが西へ東へと駆け回り全土を解放、宇宙を決戦の地とし激突した結果宇宙ステーションは崩壊、大量のデブリが発生した。
本編は地球帰還後の演説で締めくくられているが、作中アメリカは都市に毒ガスが撒かれるわ街中爆弾だらけになるわ富裕層の財産引っ剥がされるわ人身売買で国民が流出するわNYでは全市民が自動兵器の標的になる等国内はボロボロなのは間違いない。
その復興については語られていないが、本作では第二期マイケル政権は国内を取りまとめるために連邦政府の権限を強化し社会主義的と本来叫ばれる社会保障の強化を実施、戦災孤児などの支援にあたった。
結果として内戦でアメリカの古き自由は死に、新しい自由が誕生したのだ。
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