METAL WOLF Archive XD   作:W.B.O

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ワイルドハントイベント、つい耐えきれずにミヨもフユも引いてしまいました……秋の限定が怖い


ChapterⅠ-Ⅳ ”ARIS's KEY(アリスの鍵)

 日が沈み、闇の中に段々と沈みゆく廃墟の中、ゆっくりと歩みを続ける一団があった。

 4人と1体、ゲーム開発部と『メタルウルフ』は、あちこちに散らばるロボット軍団の残骸を踏み越えて安全第一に進んでいく。

 前方から激しい銃声と爆発音が断続的に響き、そのたびに同行者の1人、花岡ユズが肩を震わせる。

 

 

「ねえユズ、本当によかったの?」

 

「う、うん……みんなゲーム開発部存続のために頑張ってるのに、私だけロッカーで引きこもってるなんてできないよ」

 

「ユズちゃん……」

 

 

 花岡ユズ、ゲーム開発部部長ではあるものの諸事情により対人恐怖症に陥っている彼女は今回、かなり勇気を振り絞って同行することを申し出た。

 理由は本人が述べている通り、ゲーム開発部存続のために奮戦するモモイとミドリ、そしてアリスの力になりたいというもの。

 愛銃であるグレネードランチャー『にゃん's ダッシュ』を抱え、戦う気もあるようだがマイケルは彼女を戦力としては計算に入れていない。

 そもそも、ゲーム開発部の部員はアリスを除いて身体能力は高いとは言えず、最悪の想定である『ケセド』の軍隊の主力との遭遇なんてことがあれば、まともに対応できずに散らされるのが精々だろう。

 

 

”私の後ろから離れないようにな”

 

「は、はい」

 

 

 『メタルウルフ』の背中を追いながら、マイケルの言葉に頷くユズ。

 まだ彼と直接顔を合わせると怯えが先に来てしまうが、パワードスーツ越しであるならばとりあえずは会話できるのは幸いであった。

 再び前方で爆発音、続けて唸り声のような銃声が響いてくる。

 

 

「それにしても、セミナーが廃墟のロボットを掃除してくれるなんてラッキーだね!」

 

”廃墟から溢れて自治区に姿を見せるらしいからな、セミナーも出来れば数を減らしたいんだよ”

 

「それはありがたいんですけど、それでも私達無断侵入だから先にいるセミナーの人達に見つかるのはまずいんですよね」

 

「つまり、今回はスニーキングミッションですね!」

 

 

 意気込むゲーム開発部、既にバレているなどとは露とも思っていないが、ここにゲーム開発部がいることなど当然ながら向こうは知っており、それ前提で作戦は進んでいた。

 彼女たちに嘘を言うのは心苦しいものではあるが、できる限り『デカグラマトン』案件は秘匿しておきたいというあちら側の要望もあり、仕方がないと割り切る他ない。

 そしてある程度進み、目標の工場が見え始めた時、『メタルウルフ』に通信が入る。

 誰かと思いログを見れば、あちらの作戦の補佐しているヒマリからのもの。

 外部マイクをオフにし、彼は直ぐに通信を繋げた。

 

 

『先生、そちらの様子はどうですか?』

 

”問題ない。撃ち漏らしもないようで、ピクニックそのものだ”

 

『それを聞いて安心しました。こちらの方は現在『ケセド』の工場入口に到達、内部への突入を開始しようというところですが、予定通りですね。拍子抜け感はありますが……敵の本丸に突入してからが本番でしょう』

 

”助けは必要か?”

 

『今のところは不要です。では、可愛い後輩たちのことを引き続きお願いしますね」

 

 

 ヒマリからの通信がただの確認のためであったことに安堵しつつ、向こうの様子を聞く。

 向こう側も作戦はこれ以上ないほど順調であるらしく、このまま進行してくれれば言うことは何も無いのだが、それはあまりにも楽観的すぎるだろう。

 戦術マップに視線を向け、再度周囲の状況を確認。

 此処から先が正念場である。

 

 

”セミナーも撃ち漏らしがないとは限らない。目指す工場も近いし、周辺警戒を怠らないように”

 

「はーい!」

 

「わかりました」

 

「アリス、何時でも大丈夫です!」

 

「は、はいっ」

 

 

 先程までピクニック気分であったゲーム開発部であったが、マイケルの一言でわずかに空気が引き締まる。

 それでもどこか余裕さを感じるのは、『メタルウルフ』がいるからだろうか。

 道を塞ぐ車の残骸を押しのけ、ビルの倒壊で通れぬ道を迂回し、『ケセド』攻撃部隊の突入した入口とは違う方向から工場に侵入しようとする一同であるが、そこで『メタルウルフ』の戦術マップに多数の敵性反応が映り込んだ。

 

 

”どうやら他の区域にいたロボットが近づいてきているようだ。接敵まで時間がないが、走れば工場入口にたどり着ける。というわけで、皆走れ!”

 

 

 M61バルカンをコンテナから取り出し、ゲーム開発部を守るように『メタルウルフ』は立ちはだかる。

 そして、敵ロボット兵士が路地から現れた瞬間、モーターの唸りとともに銃身が回り始めた。

 

 

******************************************************************

 

 

「アハハハハ! ゴミは掃除しなきゃなぁ!」

 

 

 小さな影から放たれる弾丸の嵐の前に、ロボット兵の集団が叩き伏せられスクラップへと姿を変えた。

 そのまま()()は別のロボット兵の懐に飛び込むと、両手の銃を繋ぐチェーンを器用に首にかけ、その小ささからは想像できぬ膂力によって振り回し、横道のシャッターが開いて出て来たロボット兵士の集団へと投げつける。

 

 

「リーダー、楽しそうだね!」

 

「一々周りを気にしなくてもいいからな!」

 

「リロードするなら前に出るよ、先輩方」

 

 

 獰猛な笑みを浮かべる小さな影、メイド服の上にスカジャンを着たオレンジ髪の生徒の横に滑り込むのはアッシュグレーの髪に蠱惑的な体つきのメイド服の生徒。

 C&Cのエージェント、コールサイン00美甘ネルとコールサイン01一之瀬アスナの2人は、その肩書に恥じぬ実力を以て縦横無尽にロボット軍団の中を駆け回っている。

 そんな彼女たちを支援するように前衛を張るのは、特異現象捜査部の和泉元エイミ。

 全くの軽装備であるが、ロボット兵の攻撃から多少貰ってもびくともしない強靭な身体を持っており、タンクとしての役割を果たす。

 

 

「行け行けAMAS共! そらっ!」

 

 

 そして、武装ドローンAMASを率いるのはセミナー副会長たる鷹乃リツコ。

 『マーク0』の改良型パワードスーツ、両肩に武装ハンガーを増設し、装甲を追加、火器管制用のバイザーを装備した『マークⅠ』を身にまとい、大量に搭載した火器でネル達を支援し続ける。

 また、AMAS達は彼女たちが切り開いた道へ楔を打ち込むように突撃し、わらわらと湧き出るロボット兵やドローンの出撃口を封鎖していく。

 

 

『やはり工場内は敵の伏兵が多いですね。ハッキングして横道のドアを封鎖していきますが、あまり時間を掛けられません。できる限り早期の決着をお願いします』

 

「はっ! あたしがこの程度で手こずると思ってんのかヒマリ!」

 

「そうそう! リーダーと私、それにりっちゃんも居るなら問題ないって!」

 

「りっちゃん呼びは止めろって言ってるだろうがアスナ!」

 

「あははっ! 照れてる照れてる」

 

 

 あまり時間を掛けられないというヒマリからの通信に笑いながら答えるネル。

 既に今いるフロアの敵はすべて殲滅されており、眼の前の装甲シャッターを開けるだけであったのだが、横道から湧き出る敵のペースを考えるとヒマリの言う通り時間を掛けられない。

 しかし、アスナは問題ないと()()()()

 ()()()()()()()彼女がそう言い切るということは、つまりはそういう事だ。

 

 

『装甲シャッター第一層開放。次のフロアを超えると『ケセド』の中枢に到達しますが、大量の『ケセド』の兵士が居ると予想されます。各員、警戒を』

 

「了解、私が先陣を切るね」

 

「おいおい、1年生にそんな無謀なことさせられるかよ」

 

「大丈夫、私は頑丈だから。これが一番効率が良い戦い方だよ先輩」

 

「効率とかじゃないんだよ、あたしのプライドの問題だ。1年を盾にしたなんて言われちゃあ、00の名が泣くってもんよ」

 

「あははは、リーダーは頑固だからね。エイミちゃんだっけ? リーダーよりも前に出たいなら、実力を認めさせないと難しいかな」

 

「おしゃべりはそこまでにしろ。構えろ、来るぞ!」

 

 

 ロックが外れ、ゆっくりと開いていく装甲シャッターの前に並ぶ4人。

 次なる戦いを前に言葉をかわすが、効率を重んじるエイミと実力に自信のあるネルとの間に発生するすれ違い。

 アスナがとりなすものの、エイミはどこか不満顔。

 もっとも、ネルの実力は知っているので強く反論はできないのだが。

 そして、リツコの指示が飛ぶと同時に装甲シャッターは完全に開放され、向こうのフロア一面に広がる『ケセド』の軍隊と目線が交差する。

 

 

「ぶちかませ!」

 

 

 敵が動き出すよりも早く、リツコは左右の腕に装備している3連装ガトリング砲ユニット『トライポッド』のトリガーを引き、普通の生徒には出せぬ火線が敵の前衛を打ち崩していく。

 敵の前衛の兵隊の残骸が床に落ちるよりも早く飛び出すのは、言わずとしれたミレニアム勝利の象徴、コールサイン00である美甘ネル。

 

 

「アッハッハッハッハ!!」

 

 

 彼女にとって、敵の中心で暴れる事ほど容易いことはない。

 本人は怒るだろうが、小柄な身体は敵の僅かな隙間に潜り込むことを容易とし、被断面積の低下をもたらす。

 そして、彼女自身の高い戦闘センス、恵まれたフィジカルによってより効果は高まり、常識では考えられないほどの多対1を可能とするのだ。

 両手に握る愛銃『ツインドラゴン』は小口径の拳銃弾を使うものながら、極めて正確に相手の急所を狙うことでその威力を補っていた。

 ネルを中心として吹き飛ばされる『ケセド』の兵隊、敵の隊列が完全に瓦解する。

 

 

「さっすがリーダー! アスナもいくよー!」

 

 

 あとに続く一之瀬アスナ、彼女も突撃するのが得意な生徒だ。

 動物的感覚と直感によって敵の攻撃を回避し、何となくで狙った攻撃は敵への致命打へと至るその異能は、コールサイン01の名を頂くに相応しい戦闘能力に直結していた。

 ネルが崩した隊列に深く切り込んだ彼女は、愛銃『サプライズパーティー』をさっと上へと向けて放つ。

 出遅れたエイミが何故そんなところをと上を向いた所、アスナが放った弾丸が命中したと思しき場所は、コンテナを吊るすワイヤーロープ。

 弾丸はワイヤーの半分をむしり取ると、僅かな時間を置いて破断し、それは敵のど真ん中に落下した。

 吊り下げられた荷の下に入るなという安全規則が何故あるのか、それを知らしめるように『ケセド』の兵隊はぐしゃりと潰される。

 

 

「これがC&C……」

 

 

 C&Cの2人の活躍に驚嘆するエイミであるが、彼女も高いフィジカルと頑丈な肉体を持っており、決して弱い生徒ではない。

 しかしやはりというか、純粋な戦闘技能で言えば3年生と1年生の間には大きな差があり、それを覆すのは容易ではなかった。

 愛銃『マルチタクティカル』の射撃が正確に、『ケセド』の兵隊を次々に撃ち抜く。

 だが、そこにネルやアスナの様な怒涛の勢いはなく、悪く言えば地味さが目立つ。

 しかしそれはあくまでC&Cの2人を基準に見ればというもの。

 モモイやミドリのような生徒からすれば、十分に彼女も凄腕といえるものだ。

 

 

『敵増援を確認、注意してください』

 

「今度はデカブツとドローンか!」

 

 

 敵の数がある程度減った所でヒマリの警告が入る。

 わずかな時間を置いてフロアに飛び込んできたのは、武装ドローンの集団と大型のパワードスーツ、どこで設計図を手に入れたのかカイザー製であるはずの『ゴリアテ』であった。

 どちらも最初から全力で火力投射を仕掛けてきており、弾幕の勢いは先程の比ではない。

 

 

「チッ、少しは骨があるようだなァ!」

 

「ディフェンスモード転換、前に出るよ!」

 

 

 猛烈な弾幕に流石のネルも突破は厳しいようで、迂回を試みる彼女の後を追うように曳光弾が奔っていく。

 エイミが援護すべく前に出てるが、ドローン集団は3次元機動によって狙いを定めさせず、逆に半包囲の状態に陥り、集中射撃を受けて痛みに顔を歪めた。

 

 

「くそっ、AMAS前進!」

 

 

 一拍遅れで突撃を図るAMAS部隊によって、わずかに『ケセド』側に傾きつつあった戦線は均衡状態へと戻る。

 『ケセド』の兵隊より数は劣るが、単体での性能はリオが手掛けた高性能ドローンであるAMASの方が遥かに高い。

 だが、物量の差を性能によって支えるというものは、決して長持ちするものではないのだ。

 

 

「リーダー、りっちゃん、このままだとちょっとまずいかも!」

 

「リツコ! お前の自慢のオモチャでなんとかしろ!」

 

「オモチャじゃねぇーっての! ああクソ、重くて鈍い! 先生のパワードスーツの半分ぐらいしか武器は積んでないのに!」

 

 

 将来的な戦線の崩壊を察知したアスナの言葉に、ネルはこの集団の中で最大火力を誇るリツコに向けて大声を発した。

 銃声の中、拡声器無しでも通るその声がインカムを通じて耳元で拡大されれば誰であっても耳をふさぎたくなるものだが、戦いの最中はそうはいかない。

 顔をしかめ、ネルのオーダーに応じるべく彼女は肩部武装ハンガーに装備されていたミサイルをアクティブにする。

 重武装を追求しすぎて過積載となった機体は鈍重で、レスポンスの悪さが目立っていたが、それでもミサイルの発射姿勢を取ると、大声で警告を叫んだ。

 

 

「頭下げろ!」

 

「エイミちゃん、これ以上は危ないよっ!」

 

「!」

 

 

 前衛達が姿勢を低くするその瞬間、炎と白煙をなびかせながら4発の大型ミサイルが『ケセド』の軍隊目掛けて飛び立っていった。

 

 

******************************************************************

 

 

 赤熱化した銃身がカラカラと惰性で周り、積み重なった薬莢の山は重みに耐えきれずに音を立てて崩れ去る。

 閉所であるがゆえに滞留していた硝煙が晴れた時、彼の眼前に広がるのは通路に散らばるロボット兵士の残骸の数々。

 追ってきた『ケセド』の軍勢は打ち止めのようで、アイセンサーで見える範囲に動く敵性反応は一切見えず、静かにM61バルカンの銃身を下げて戦闘態勢を解除した。

 

 

”……これで終いだ”

 

「わぁ……先生はただのマシーナリーではありませんね!」

 

「前も見たけど、先生のそのパワードスーツ本当にすごいですね……」

 

「追っ手も居なくなって、G.Bibleも目前! 早く行こうよ!」

 

 

 隠れていた通路からひょっこりと顔を出し、やいのやいのと騒ぎ立てるゲーム開発部の一同。

 先走ろうとするモモイであったが、マイケルはそれを手で静止した。

 

 

”他に敵が居ないとは限らないから気をつけるように。それと―――”

 

「わっ!?」

 

「な、何っ!?」

 

 

 言葉の途中、工場が大きく揺れる。

 天井から降り注ぐ錆や埃に騒ぐ4人であったが、マイケルは1人冷静にこの振動の伝わり方は爆発であると看破した。

 下層で『ケセド』攻撃部隊が派手にやり合っている事はわかるのだが、ヒマリが何も言ってこない以上はゲーム開発部を置いて向かうわけには行かない。

 なんとも言えぬもどかしさの中、視界の端でアリスがふらふらとどこかへと向かおうとしていることに気づいた。

 

 

”待て、何処へ行くんだアリス”

 

「あちらに……行かないといけません。身体が、反応しています」

 

 

 しっかりとした足取りながら、しかし何処か上の空のような雰囲気で奥へと進むアリス。

 まるでロボットのようであり、一心不乱に何処かへとただ歩いていく。

 

 

「先生、追いかけないと!」

 

”一体この先に何があるっていうんだ”

 

「アリスの記憶はありませんが……何故でしょうか、ずっと昔にクリアしたゲームをもう一度最初からやったときのような、そんな感覚です……」

 

 

 アリスを追うこと数分、入り組んだ道の先に微かに光が灯っていることに全員が気づく。

 恐る恐る近づいた所、その正体は突き当りにぽつんと設置されていた生きてるコンソール。

 

 

「なにこれ、生きているコンピューター?」

 

「無人の廃墟に、どうして……」

 

「……」

 

 

 ただモニターが点いているだけのコンソールであったが、そこにアリスが近づくと僅かに反応が示される。

 いくつかのノイズの後、モニターに文字が映し出されるが―――

 

 

[Divi:Sion Systemへ、ようこそお越しくださいました。お探しの項目を入力してください]

 

 

 それは、未知との遭遇であった。

 『ケセド』が支配しているはずのこの工場で、『Divi:sion System』を名乗る謎の端末。

 これはリオかヒマリにどうすべきか問うべき案件ではないかとマイケルは考えるが、行動に移すよりも早くモモイがモニターの前に立つ。

 

 

「G.Bibleに関して調べてみようよ! この工場にあるはずなんだし!」

 

「いやお姉ちゃん、このコンピューターの言う事信じるの?」

 

「ここにキーボードがあります」

 

 

 アリスが入力端末を見つけて触れると、再び画面にノイズが走る。

 様々な文字の羅列が現れては消え、10秒ほど経つと画面は再び沈黙した。

 

 

「ちょ、ちょっとアリス、壊れちゃったんじゃないの!?」

 

「さ、触っただけですが……」

 

「待って、また反応が―――」

 

 

 沈黙を保つディスプレイであったが、しかし再び文字が浮かび上がる。

 先程までの無作為な羅列とは異なり、今度は意味のある言葉―――

 

 

[―――あなたは、AL-1Sですか?]

 

”!!”

 

 

 このコンピューターは、アリスの、正しくはAL-1Sを認識している。

 アリスの正体に近づく事ができるかもしれないという事実に、マイケル思わず声を上げそうになるが辛うじてこらえた。

 

 

「アリスは、アリスですが……」

 

[音声照合、確認しました。おかえりなさいませ、AL-1S]

 

「音声認識!? 勝手に話が進むのはまずいんじゃ……」

 

 

 その間に、コンピューターの問いにアリスが答えてしまったことで話が進む。

 処理に時間がかかるのか、次の質問が発生するまでの間にゲーム開発部の4人は互いの顔を見合って話し始める。

 

 

「良くわからないけど、AL-1Sってアリスちゃんのこと?」

 

「うん、ユズちゃんには説明してなかったと思うけど、アリスちゃんは実はロボットで、AL-1Sって言うらしいんだよね。本人に記憶はないんだけど」

 

「はい、そうです。アリスの本当の名前……このコンピューターに聞けば、私が何なのかわかるのかもしれません」

 

「アリスの記憶のことは気になるけど、それよりG.Bibleだよ! そのためにここに来たんだから、手ぶらじゃ帰れないって!」

 

 

 本人含めて全員がアリスのことを気にするが、唯一本来の目的を忘れないでいるモモイ。

 彼女の言葉が無ければ、G.Bibleのことなど吹き飛んでいただろう。

 

 

[――――――]

 

 

 モニターがチカチカと点滅し、何かを出力しようとしたその瞬間、工場全体が大きく振動した。

 

 

「お、大きい!?」

 

「さっきからなんなのこれ!」

 

[―――緊急事態発生、電源をロストしました。UPS電源残量、51秒]

 

 

 同時に失われる電源、無慈悲な時間制限がモモイ達を襲う。

 モモイは焦っていた。ここでG.Bibleを手に入れられなければ、ゲーム開発部の廃部は決定的なものになってしまうのだと。故にコンピューターに向けて彼女は叫ぶ。

 

 

「消えるならG.Bibleの場所ぐらい教えてからにしてよ!」

 

[―――あなたが求めているのはG.Bibleですか? <YES/NO>]

 

「YES!」

 

「お、お姉ちゃん……」

 

 

 鬼気迫る勢いでコンピューターに齧り付く姉の姿に、ミドリは思わずドン引きする。

 なりふり構わぬその姿勢は、しかしこの場において功を奏することとなった。

 

 

[G.Bible確認完了。ライブラリ登録No.193、私の中にG.Bibleは存在します。残り時間35秒]

 

「えっ、どうすればいいの!?」

 

[提案:今私は消失寸前ですが、新たな保存媒体へ私を移行すれば、G.Bibleは手に入ります。残り時間20秒」

 

「ほ、保存媒体なんて、ゲームガールズアドバンスSPのメモリーカードしか―――」

 

 

 モモイが時間制限に慌てながら自分のゲーム機を出した瞬間、その後ろから伸びる機械の腕がそっとコンソールの端子にUSBフラッシュドライブを差し込んだ。

 予期せぬことに振り返るモモイの眼の前には、『メタルウルフ』の赤く輝く単眼。

 思わず腰を抜かしそうになるが、辛うじて持ちこたえた彼女は声を上げた。

 

 

「びっくりさせないでよ先生! それと、このUSBメモリは……」

 

”大人というのは、いざという時のために色々用意しているものだ”

 

 

 彼の差し込んだUSBメモリは、元々はシャーレの業務で使うために用意していたもの。

 高性能タブレットであるシッテムの箱を持つ彼には必要ないと思われるかもしれないが、『メタルウルフ』の立ち上げにシッテムの箱を用いている都合上、不明なファイルは入れたくないと購入したものだった。

 もし変なものを入れてエラーでも出した日には、『メタルウルフ』起動不能の可能性すらあるので油断できるものではない。

 そしてモモイに先んじてUSBメモリを差し込んだのは、これをリオかヒマリに解析に出すためである。

 モモイは喜んではいたものの、G.Bibleが本当に入っているかどうかは疑わしいものであり、その確認と解析のためには彼女たちの力が必要であった。

 

 

[……容量確認、問題ありません。転送を開始します]

 

 

 対話中のAIはUSBメモリの容量に満足し、自らの存在を移していく。

 モニターに映る残時間が徐々に減っていき、残るは数秒。

 マイケルは、最後に一つ質問をぶつけることにした。

 

 

”……君は『ケセド』か?”

 

[……否定します。私は『ケセド』()()という存在ではありません。残り2秒]

 

 

 回答は簡潔、しかしそれに込められた意味を彼は直ちに理解する。

 そして、次の瞬間にはタイマーがゼロとなり―――

 

 

[転送完了]

 

 

 ―――AIはただ一言だけ残し、ブラックアウトする。

 最早コンソールはただの置物となり、その中身は小さなUSBメモリの中に。

 メモリを引き抜き、収納ポケットに仕舞い込むと、彼はゲーム開発部の4人へと振り向いた。

 

 

”これで目的を達成したな。あとは帰るだけだが―――”

 

 

 その瞬間、激しいコールがマイケルの耳を貫く。

 顔をしかめ、コール主を見ればそれはヒマリによるものであり、先程の爆発を考えると何かが起きたのは明白。

 直ぐに通信を繋げた所、先ほどとは違いかなり泡を食った様子でまくし立ててきた。

 

 

『先生、今すぐに救援をお願いします。敵の数が予想を遥かに超え、このままでは……!』

 

”分かった、すぐに行く。こっちの目的は今完了した所だ”

 

「……えっ?」

 

 

 突然のことに呆然とする4人。

 まさかバレていたなどとはつゆとも思って居なかった彼女たちは、現実を飲み込むのにいささか時間を要した。

 

 

”すまんね、実は―――”

 

 

 仕方がないとここでネタバラシ。

 『デカグラマトン』周りのことは伏せ、廃墟の間引き作戦と置き換えての説明にゲーム開発部は手のひらの上で踊らされてたことを悟って憤慨するものの、おかげでG.Bibleが手に入ったのもまた事実。

 釈然としない様子ながらも、結果はオーライ。そういう風に飲み込む他なかった。

 そして、下層での戦闘にマイケルが呼ばれているということも。

 

 

”このあたりは安全だと思うから、しばらく待っててくれ。それじゃあ行ってくる”

 

 

 ドタドタと足音を立てながら走っていく『メタルウルフ』の背中を見送り、4人は手持ち無沙汰となって顔を見合わせる。

 

 

「……とりあえず、どうしよっか?」

 

「先生を待つしかないでしょ? この爆発、下では大変な事になってるだろうし」

 

「……」

 

「あ、アリスちゃん……?」

 

 

 相談する双子の横でアリスは何処か覚悟を決めたような表情を浮かべ、それに気づいたユズは怖ず怖ずと問いかけた。

 

 

「助けを求められたと先生は言っていました。勇者とは、助けを求める声を無視しないものです。ならば、勇者であるアリスも応じなければいけません」

 

「えっ、ちょ、ちょっとアリス、それは危険だって!」

 

「追いかけよう!」

 

「ま、待って……!」

 

 

 マイケルの足跡をなぞるように駆け出すアリスを、3人は慌てて追いかける。

 勇気あるものこそ勇者と呼ばれるのであれば、アリスのために待機指示を破る彼女たちもまた、勇者であるといえるだろう。

 

 

******************************************************************

 

 

 積み重なるロボットの残骸、最早丘と呼べるのではないかというほどにまで成長したその向こうに、装甲シェルの玉座に鎮座するのは工場の主である管理AI。

 否、『デカグラマトン』の第四の預言者にして「慈悲深き苦痛を持って断罪する裁定者」の異名を持つかの者の名は『ケセド』

 工場を領地とし、その産物である兵器を国民とするこの王国に挑む4人の生徒は、今や『ケセド』の軍勢を前に膝をつこうとしていた。

 

 

「クソッ、倒しても倒しても次々に湧いて出てきやがる! もう弾が残り少ないぞ、そっちはどうだアスナ!」

 

「私ももうあんまり残ってないかなー、りっちゃんとエイミちゃんはどう?」

 

「私はまだ大丈夫、だけど―――」

 

 

 大破したゴリアテを遮蔽に、同じく隠れているアスナに問うネル。

 彼女の持つ『ツインドラゴン』の予備マガジンは残り2セットのみであり、『ケセド』までの距離と残敵数から考えると、突破は望めそうにない。

 アスナの方も残弾は少なく、これ以上の前進はやはり無理そうである。

 エイミの方は消費弾薬の少ないショットガンであることが幸いし、ある程度の残弾は残っているものの、やはり大軍を相手にするには厳しい。

 そしてリツコはと言えば―――

 

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! 『ケセド』めぇ……こいつに幾ら掛けたと思ってるんだ!」

 

 

 ゴリアテと取っ組み合うような形で大破擱座した『マークⅠ』から這々の体で這い出た彼女は、なんとか愛銃を引っ張り出すと、自らの愛機の残骸を遮蔽にした。

 怒りに燃える彼女ではあったが、予備マガジンは搭載していなかったこともあり積極的に打って出ることは出来ない。

 全員が弾薬不足あるいは制圧力不足ということは、撤退すら覚束ないというもの。

 逃げるにも、敵の足を止めるために弾薬は必要なのだ。

 そして、進むも退くも出来ぬ中、場の全員のインカムに新たな声が飛び込んでくる。 

 

 

『”―――あー、聞こえるか? こちらは連邦捜査部S.C.H.A.L.E顧問、マイケル・ウィルソン。先ほどヒマリから指揮権を委譲された。そちらの状況は把握した。こちらの指揮に従ってくれ”』

 

「あ゙? あぁー……噂のシャーレの先生か。この状態からやれるのか?」

 

 

 全力で向かいながら、到着までの時間を稼ぐべくシッテムの箱の戦術指揮モードを起動させたマイケルの声に対し、面識のないネルは懸念を示す。

 無い無い尽くしの中でどう戦えばいいのか、その疑問は当然だろう。

 

 

『”問題ない。あと30秒耐えられれば、それで()()()()”』

 

「ハッ! 面白いじゃねえか、乗ってやるよ!」

 

「リーダーもノリノリみたいだし、よろしくね、御主人様!」

 

 

 だが、マイケルは本人、正しくは『メタルウルフ』こそが戦局打開の切り札である。

 故に、到着予想時間まで耐えてくれれば勝機は十分。

 力強く断言する彼の声に、ネルとアスナも納得した様子で従うことにした。

 

 

『”戦線を縮小させる。後ろのゴリアテの残骸まで後退し、ドローンもそれに合わせるんだ。そうでないと()()()()()()()。後退順はネル、アスナ、エイミだ”』

 

「チッ、一番先に下がるのは癪だが……先生が言うなら仕方ねぇ」

 

「殿は任せて、ネル先輩」

 

 

 マイケルの指示通りに部隊は戦線を縮小させ、それに合わせて『ケセド』の軍隊も前進圧をかけてくるが、残存AMASが身を挺してそれを阻止。

 代償はAMAS部隊の全滅であったが、彼らの献身は生徒4名を無事にラインを一つ下げることに成功した。

 

 

『”よし、そこから前には出ないでくれよ。後10秒(10 seconds)!”』

 

 

 AMASの残骸を乗り越え、前進する『ケセド』の軍隊。

 しかし、その歩みは勝利を確信しているのか、まるでじわじわと真綿で締め付けるようにゆっくりとしており、残る10秒という時間をただ無為に消費するのみとなる。

 それが『ケセド』の命運を分けることとなった。

 

 ガコンと音を立てて、天井から落ちる1枚のハッチ。

 重力に引かれて落ちていくその最中、天井に空いた穴から飛び降りる濃紺色の影を直接見ることが出来たのは4人の生徒のみ。

 『ケセド』の玉座の直上、舞い降りるのは絶対君主を否定する民主主義の使者たる鋼鉄の狼(メタルウルフ)

 

 

”Let's Partyyyyyyyyy!!!”

 

 

 武装コンテナを開放し、取り出すのはマルチミサイルランチャー。

 地を覆う『ケセド』の軍勢を狙い、マルチロックすると同時に十字に開くカバー。

 その裏にぎっしりと詰め込まれたマルチミサイル32発は、そのすべてが意思を持つかのように適切な目標に突き進んでいく。

 瞬間、一面に花開く炎が『ケセド』の軍隊を根こそぎ飲み込んだ。

 

 

「すっげぇ……」

 

「一撃で敵の全軍を焼き払う……確かに効率的だけど、これは予想以上」

 

「御主人様、すっごーい!」

 

「待て、『ケセド』の様子が……」

 

 

 敵が一掃されたことに湧く一同であったが、唯一その場に残る『ケセド』の玉座が動き出す。

 何の意図かは不明であるが、分厚い装甲シェルが開くとその中に収められていたAIユニットの中枢、すなわち『ケセド』本体がついにその姿を露わにしたのだ。

 

 

”こいつはとんだシャイボーイだな!”

 

 

 すかさず『メタルウルフ』はマルチミサイルを収納し、代わりにM61バルカンを右手に、左手にはMIM-204ミサイルを構えて『ケセド』に向けてトリガーを引く。

 個人携行では発揮し得ぬ圧倒的な火力、それは間違いなく『ケセド』を粉砕する―――はずであった。

 

 

「あっ、残念~、恥ずかしがり屋さんなのかな? 引きこもっちゃった」

 

 

 アスナの言葉の通り、『ケセド』は再び装甲シェルを閉じて防御の姿勢に入った。

 放たれたミサイルや20mmのAPDSは装甲を貫徹できずに表面を傷つけ、焦がしたのみ。

 そして、横道やエレベーターから生産された『ケセド』の兵士が再び現れ始める。

 このままでは『ケセド』の物量に、今度こそ敗北を喫することになるだろう。

 だが―――

 

 

”そういう時はこうするのさ、もしもし(Knock-Knock)ってな!”

 

 

 『メタルウルフ』は『ケセド』の軍隊が再展開するよりも早くその玉座に取り付くと、装甲シェルの境界、僅かな段差に指と足をかけてこじ開けようと試みる。

 まさかの事態に、『ケセド』は自身が『デカグラマトン』の預言者として感化されるよりもずっと前、製造されてから一度も発生することのなかった演算のエラー、人間で言うところの『恐怖』を抱き、震えた。

 『ケセド』には己の身を守るための武装は何一つなく、玉座たる装甲シェルが唯一その代替となるものであったのだが、今目の前に居るこいつはそれを力付くでこじ開けようとしているのだ。

 軋みを上げる装甲、ほんの少しであったが、隙間ができるのを見た『ケセド』は助けを求める信号を手当たり次第に飛ばす。

 それは人間で言うならば、悲鳴を上げたと言うに相応しい。

 

 

『これは……『ケセド』が怯えている?』

 

「なんだか知らないが、あたしも最後に一発ぶちかまさないと気が済まねぇんだよな」

 

「御主人様の背中、守ってあげないとね!」

 

 

 身を捩り、振り払おうとする『ケセド』とこじ開けようとする『メタルウルフ』、そして王を守ろうと銃を向ける『ケセド』の軍隊。

 残された弾丸は僅かながらも、C&Cの2人は無防備となっている『メタルウルフ』の背中を守るべく、銃を握り立ち上がる。

 

 

「私も混ぜろ、ネル!」

 

「チャンスはこれが最後、だったら……!」

 

 

 続けてエイミとリツコも、マイケルの背中を守るべく2人の後を追う。

 わらわらと湧いて出てくる『ケセド』の軍隊、しかし4人は臆することなく引き金を引いた。

 

 

”引きこもってばかりじゃ、身体に毒だぜ『ケセド』!”

 

 

 段々と広がる隙間に指をしっかりと突っ込み、アクチュエータが猛烈に唸りを上げながら少しずつ、少しずつ『ケセド』の玉座が引き剥がされていく。

 気が狂わんばかりに叫ぶ『ケセド』に呼応し、生産が完了したばかりの『ゴリアテ』が王の元へ向かわんと走り寄るが、生徒たちの残弾であれを破壊することは難しい。

 

 

「あいつはマズい!」

 

「先生、気を付けて!」

 

 

 警告虚しく、『ゴリアテ』は頭部の主砲を『メタルウルフ』へと向けて発射態勢を取る。

 分かっているのに手が出せぬ現実に、歯噛みするをする思いであったが―――

 

 

 

「―――光よ!」

 

 

 

 闇を照らす一条の閃光、プラズマ化した弾体が『ゴリアテ』の胴体を貫通し、床に突き刺さるとその保有するエネルギーを周囲に熱という形で解き放った。

 吹き飛ばされる『ケセド』の兵士たち、続けて銃弾と擲弾が雨のように降り注ぐ。

 

 

「何だ……?」

 

 

 ネルが見上げるその先、壁面にかかるキャットウォークに4人の生徒の姿があった。

 

 

「勇者アリス、参上です!」

 

「ミドリ! 先生を守らないとG.Bibleが!」

 

「お姉ちゃんも休まないで撃ってよ! ユズちゃんも撃ち続けて!」

 

「ひっ、ひぃ……」

 

『そんな、どうしてあの4人が……!?』

 

 

 ゲーム開発部の4人が、ついにこの混沌の戦場にたどり着いたのだ。

 タイミング、登場場所、すべてが噛み合う最高の助っ人であり、彼女たちの支援射撃は次々に『ケセド』の軍隊を切り崩していく。

 

 

「あいつら……先生、今しかない!」

 

Open sesame(開けゴマ)!!”

 

 

 この機を逃さず、とうとう王の玉座は暴かれる。

 『ケセド』のオレンジのセンサーアイと『メタルウルフ』の赤く輝くモノアイの視線が交差し、見つめ合うこと数瞬、『メタルウルフ』の武装コンテナが開放され、中の武装がハンガーにマウントされたままの状態であったが、収納状態から展開させると彼は全武装をアクティブにした。

 フルバーストモード、『メタルウルフ』の必殺の構えだ。

 

 

”おしまいだ、目玉野郎(AI Ball)!”

 

 

 『ケセド』がこの場で最後に見たのは光輪を背負う『メタルウルフ』、そして奏でられる多彩な武器による交響曲、それが戦いの幕引きとなった。

 

 

******************************************************************

 

 

 翌朝、ミレニアムサイエンススクールのとある一角、監視カメラもなく人目にもつきにくいその場所で、マイケルは1人何かを待つ。

 しばらくすると小さなドローンがふよふよと近づいてきたが、それは一般的なドローンではなくリオ謹製のAMASの一種、周囲に誰もいないことを確認したドローンは自らの直下にリオのホログラムを投影させた。

 特異現象捜査部を通じてではなく個人的に接触してくるとはどういうことかと考えたものの、投影されたリオが手するUSBメモリを見ておおよその事情を察する。

 

 

『……あのメモリの中に確かにG.Bibleは存在したわ。それと、アリスのことをAL-1Sと呼んだAIと思しき『key』というファイルもあったけれど、()()()()未知のシステムね』

 

”ふーむ、なるほど。とりあえずG.Bibleだけはくれないか? あの子達へご褒美はきちんと用意しておかないといけないからな。それと睡眠を忘れないように、美容と健康に悪い”

 

 

 ヒマリとは別口で監視していたのか、『ケセド』との戦いの後、何処からともなくリオのドローンが現れると彼女はUSBメモリを要求してきた。

 一刻も早く解析に回しておきたかったマイケルはこれ幸いとばかりに彼はUSBメモリを託すことにしたのだが、ちゃんと解析をしてくれたらしい。

 やんわりと無理をしないようにと伝えるが、ホログラムのリオは軽く頭を横に振った。

 

 

『心配は不要よ先生、これは必要なことなの。それで、G.BibleのデータはUSBメモリに入れてあるから、AMASから取り出してもらえるかしら』

 

”あー……これか、確認した”

 

 

 AMASから取り出したメモリは、彼女が用意したもののようだ。

 軽く確認した後、懐のポケットに仕舞い込む。

 

 

『データの作成日時、ハッシュ値、どれもG.Bibleのデータと一致している以上、それはG.Bibleに間違いないはずよ。ウィルスチェックなども済ませたから、安心して起動させていいわ』

 

”ありがとうリオ、ところで『ケセド』のほうはどうだ?”

 

『今日、確認のために特異現象捜査部共々再び廃墟に行くつもりよ。件の工場にもう『ケセド』の部隊は居ないようだから、先生の助けは要らないわ』

 

”なるほど、それは良かった。『デカグラマトン』の件もこれで落ち着いてくれればいいが”

 

 

 話を変え、『ケセド』の件について聞けばもうあの工場にはロボット兵も何も居ないという。

 確かにかなりの数の『ケセド』の軍隊を倒したが、綺麗サッパリ居ないとは妙な話で、まるで新しい根拠地に引っ越したかのようである。

 引っかかるものはあるが、リオが少なくとも確認のための手助けは不要というならばそれは信じる他ないわけで、マイケルはその場を後にした。

 

 

”ん、あの後ろ姿はユウカか。Hey ユウカ!”

 

「……あっ、先生? どうなされたんですか、朝から部室棟だなんて」

 

 

 そしてゲーム開発部へG.Bibleを届けるべく向かった彼であったが、部室棟内でユウカを見つけて声を掛ける。

 手には紙袋、何かを届けるつもりなのか、しかしこの先には―――

 

 

”それはこちらも同じセリフを言う他ないな、この先はゲーム開発部の部室だろう?”

 

「……はぁ、そうですね、隠し事なんて出来ませんね。ゲーム開発部の子たちに差し入れでもと思いまして、最近真面目にやってるようですし*1、アリスちゃんが入ったお祝いも兼ねて」

 

 

 紙袋を広げるユウカ。中にはお菓子が入っている。

 それを確認し、わざとらしく肩をすくめて彼はユウカへと悪戯な笑みを浮かべた。

 

 

”おや、廃部を突きつけたセミナー会計の言葉とは思えないな?”

 

「立場上、本心ではないことを言わざるを得ない事があるということは、先生ならご存知だと思いますが」

 

”まあな、そんな事は何度もあるさ。つまり、ユウカはセミナー会計としては規則に則るが、個人的にはゲーム開発部を廃部にしたくないってことだな”

 

 

 マイケルの言葉に、ユウカはため息を一つ。

 少し呆れたような目をし、一々言葉にしないでくださいと思いながら彼女は言葉を続ける。

 

 

「ええまあ、そうです。知っていますか、先生? 部長のユズですけれど、何故彼女がああいう風になったのか……それはあの『テイルズ・サガ・クロニクル』のせいなんです」

 

”ふむ、クソゲーというやつか? やってはいないから私個人としての評価は避けるが”

 

「ええ、一番最初に公開されたプロトタイプは低評価の嵐でした……しかも、多くの誹謗中傷が含まれていたんです。ユズはそのせいでああいう風になってしまい、ずっと寮にも戻れていません。あの部室が、彼女の唯一の居場所なんです。モモイとミドリはそれを守ろうとしている……」

 

 

 沈痛な面持ちで語るユウカの言葉を、マイケルは腕を組みながら静かに聞く。

 モモイが話さなかったゲーム開発部を守りたい理由、必死になるのもわかるのだが、それにしたってもう少し危機感を持って欲しいものだと思ってしまう。

 

 

「モモイたちが問題児なのは事実ですが、それでもあの子達には頑張ってもらいたい。私は個人としてそう思っています」

 

”なるほどな、厳しいことを言うのはモモイが調子に乗るからか。まあ、目的地が同じなら一緒にいこう”

 

「そうですね、行きましょう」

 

 

 歩調を合わせ、2人並んで部室棟の通路を歩く。

 迷うこともなく目的地であるゲーム開発部の前についた2人、ユウカがドアをノックする。

 

 

「入るわよ」

 

 

 声をかけながらノブに手をかけ、ドアを開けるが―――

 

 

「あぁ! アリスそれはハメ技だから禁止だって!」

 

「ハメではありません。入力をミスればワンチャン失敗するのでこれは違います!」

 

「そうだよモモイ、諦めなければきっと相手もミスるから」

 

「アリスにそれは望めないってー! うわあああ!!」

 

「お、お姉ちゃん……」

 

 

 ―――部屋の中、対戦ゲームに熱中するモモイとアリス、それを観戦するユズとミドリ。

 とても真面目にミレニアムプライスに向けた活動をしてるとは言えぬその姿に一瞬呆気にとられたユウカであったが、状況を理解するのに十分な時間の後に再起動すると、まるで鬼のような表情を浮かべた。

 

 

 

「あ~ん~た~た~ち~~~~!!!」

 

 

 

To be Continued in ChapterⅠ-Ⅴ ”Do you like Games(ゲームは好きか)?”

*1
廃墟への不法侵入などは知らないのだ




アリスの戦闘データなどを手に入れたこともあり、リオがすんなりとG.Bibleを渡してくれたのでゲーム開発部によるセミナー襲撃はありません。
それと、リツ実装…リツコの初期案は名前がリツでした。
愛称かぶっちゃったけど、まぁいいか…
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