METAL WOLF Archive XD   作:W.B.O

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Vol3.1 ”Forgotten Paradise(忘れられた楽園)
Episode1 "Troublemakers(問題児たち)"


 つまるところ、エデン条約というのは「もう憎しみ合うのはやめよう」という条約。

 トリニティとゲヘナの間で、長きにわたり存在してきた確執と言えるであろう敵対関係、それに終止符を打つもの。

 互いが互いを信じられぬがゆえに、久遠に重なった憎しみを解消するため、新たな信頼関係を結ぼうとするプロセス―――

 

 

―――人に聞かせるスピーチにしては、随分回りくどい言い回しだな?

 

 

 ……ふむ、君はこの様な言い回しを好まないか。しかし、私としてはあまりに言葉を削ぎ落とし、本質のみを抽出する行為は本来汲み取るべき心情、余韻といった文学的要素を損なうものと思っている。つまり、それは味気ないものだということだね。

 これは一人の生徒が悩みを打ち明けているものと考えてくれたまえ先生。

 

 

―――やれやれ。

 

 

 さて、話を戻そう。エデン条約、それはトリニティとゲヘナの平和条約というものだ。

 連邦生徒会長が主導し、しかし彼女の失踪によってそれは意味を失ってしまった。

 エデンというのは、太古の経典に記された楽園の名だ。何故条約にその名を冠したのか、その意味を知ることは叶わないだろう。まあおそらくは彼女の悪趣味であろうが、それは別に構わない。

 キヴォトスの「七つの古則」というのはご存知かな? その5つ目の質問は、楽園に冠するものだったね。

 

 

―――名前だけだな、中身までは知らない。

 

 

 正直だね先生は。では解説すれば、5つ目の質問はそう……「楽園にたどり着きし者の真実を証明することは出来るのか」というものだ。

 「七つの古則」というものは、このようにその意図を測りかねる様な言葉の羅列によって成り立っている。この場合、この質問はパラドックスに関するものだという意見もあるだろう。

 楽園とは、満ち足りて魅力に溢れ、そこから決して人を離すことはない。

 しかし、そこから離れた人間がいるとするならば、そこは真の楽園とは言えない。

 つまり、楽園の存在を伝えるものは本来存在するはずがないということだ。故に、証明が始めから不可能な「不可解な問い」ということなのだよ。

 

 だが、同時にそのような質問がある意味について想いを馳せることもある。この質問は本来何を問おうとしているのか、証明できぬ真実は無価値なのか……

 エデン、存在を証明できぬ楽園。その名を冠した条約など、最初から不可能な夢想によって成り立つ虚像のように思えないかい?

 

 

―――これは忠告だが、皮肉屋というものはあまり人に好まれないぞ?

 

 

 ……この期に及んで説教をされるとは、私も久々に他人と話せたことに舞い上がりすぎたか。だがこれはそう、私に長年染み付いたクセのようなもので、そのあたりはどうか目を瞑ってもらいたい。一朝一夕で治るようなものではないという自覚はある。

 それに、この場で他人と対話することはめったにないからね、大目に見てもらえないだろうか。

 話しを戻そう。これから先、君が目の当たりにするのは楽園とは程遠いものになるだろう。

 互いに猜疑に揺らぎ、虚偽を塗り固め、歪んだ瞳がせせら笑うそのような物語……しかし、苦く後味の悪いものだとしても、それこそが真実のもの。

 この物語の結末を見届けることが、大人であるあなたの義務だ。

 

 

―――そこまで言うのならば、君も同席するべきだろう。

 

 

 残念ながら、今の私は籠の中の鳥に過ぎない。

 もし、自由に羽ばたけるのなら―――いや、あり得ない仮定を述べるのは止めておこう。

 

 期待とは、おおよそ裏切られるものなのだから―――

 

 

******************************************************************

 

 

 ―――トリニティ学園、校舎のとある教室。

 並べられた5つの机と、そこにつく5人の生徒。それと向き合うように立つのはシャーレの先生であるマイケル・ウィルソン。

 彼の背後にある黒板には、大きくチョークでSupplementary Lessons(補習授業)と書かれており、この場がどういうものかというのを強く主張していた。

 彼の視線の先ではこの補習授業に参加することとなった生徒たちが思い思いの反応を示しているのだが―――

 

 

「こ、これはなにかの間違いよ! 私は正義実現委員会のエリートで……」

 

 

 納得行かない様子で喚いている背の低いピンク髪の少女、彼女の名は下江コハル。

 正義実現委員会に所属する1年生だが、上級生向けのテストを勝手に受けて全教科赤点となり補習授業送りとなった。

 尚、補足すると彼女はこのまま次の試験で赤点を取ると留年が確定する。

 

 

「こうして再挑戦する機会をきちんと得られるのはありがたいことだ」

 

 

 姿勢を正し、堂々とした佇まいでいるのは銀髪で飾り付けた羽を持つ少女。名は白洲アズサ。

 2年生でありながら彼女もまた全教科赤点であり、留年の危機が迫っている。

 

 

「あらあら、こんな素敵なおじさまが勉強を見てくださるなんて♪」

 

 

 ニコニコと、温和で知的な佇まいのピンク髪の少女が微笑む。彼女は浦和ハナコ。

 2年生の彼女はこんななりをして、()()()()()()()()()()()()はでぶっちぎりの最低得点をキープしているので彼女もまた問題児である。

 

 

「あ、あうぅぅ……どうしてこんな事に……」

 

 

 机に突っ伏し、現実を前に嘆いているのは阿慈谷ヒフミ。

 彼女は試験を無断欠席したのでそもそも受けておらず、前3人と比べて圧倒的に罪深い行いの末に補習授業送りとなった。

 

 

「それで、これは何時終わるんだ? あまり私を退屈させてくれるなよ」

 

 

 最後に、何ら悪びれる様子もなく退屈そうにしている金髪の少女、風路イトハ。

 この中で唯一の3年生でありながら、彼女もまた試験を欠席したために補習授業送りとなったのだが、態度が示すように彼女はそれを何ら悪いとは思っていない様子だ。

 この中で一番の問題児は彼女なのかも知れない。

 

 

”ようこそ、補習授業部へ。知っての通り君たちは先のテストにおいて、全教科赤点という学生として恥ずべき記録を打ち立てたので、ティーパーティーの要請に基づきこの私が君たちの学力向上に当たることとなった”

 

 

 あえて険しい表情を浮かべ、歓迎はしないという意思表示を見せる先生(マイケル)であったが、果たしてこの意図を汲んでくれる生徒がいるであろうか。

 納得していない様子のコハル、一応は真面目に聞いてはいる様子のアズサ、何を考えているのか良くわからない微笑みを浮かべたハナコ、嘆きっぱなしのヒフミ、そして外を見て人の話を聞いてなさそうなイトハ……はっきり言ってため息をつきたくなるが、こらえて彼は言葉を続ける。

 

 

”そしてこの部にはもう一つの顔がある。それは、君たちが素行不良の常習犯ということだ。この機会に君たちの生活態度を更正させる……そういう目的もあるということを良く覚えておきたまえ。君たちの行いは見られているということだな”

 

「う、嘘よ! そんなのでっち上げよ!」

 

 

 ()()()()を隠すカバーストーリーに対し、自身が不良生徒と見られていたということが信じられないのか、コハルが喚く。

 

 

”そうは言うがねコハル、君は勝手に上級生向けの試験を受けての赤点だろう? そういう行いは他人から見ればどう映るか、考えたことは無かったか”

 

「あ、あぅ……し、死にたい……」

 

 

 しかし心当たりのありすぎる実例を突きつけられ、あえなく轟沈。

 へなへなと机に突っ伏し、羞恥心で頭を抱える。

 業務上横領*1というもう一つの罪状もあるが、ここで追い打ちすると泣き出してしまいそうなので彼はそれ以上の言及を止めた。

 

 

”他には、白洲アズサ。君は暴力事件を幾度か起こしているらしいな。それで今日は正義実現委員会相手に籠城戦を展開、備蓄されていた催涙ガスを爆破することで3時間の抵抗の後に弾切れにより捕縛……”

 

「その通りだ。もう少し準備できていれば粘れたんだが」

 

”そこは粘らなくて良い”

 

 

 誇るようなアズサに対し、先生(マイケル)は呆れた表情を浮かべた。

 そんな事に労力を使うよりも、勉学の方に使ってほしいというのが正直な感想である。

 

 

”次に浦和ハナコ……君はその、露出徘徊を繰り返しているようだな。ヌーディズムについてとやかく言うつもりはないが、TPOはわきまえるべきだろう”

 

「あらあら、先生は興味がお有りですか?」

 

”ノーコメントだ。次、ヒフミ”

 

「ひ、ひゃい!」

 

 

 何処か挑発的な物言いをするハナコをスルーし、ヒフミの名を呼べば、彼女は自分の番がきたということに焦り、うわずった声を上げる。

 

 

”……ゲリラライブに参加するためにテストを欠席、どういうことだ?”

 

「ち、違うんです! テストの日程はきちんと確認したはずなのに……」

 

”ヒフミ、私は君が不良生徒だということをよーく知っているんだぞ”

 

「あ、あわわわ……」

 

「これはこれは、阿慈谷さんは見た目によらずワルなんですねぇ」

 

「ち、違いますハナコさん! これは、その、えっと……」

 

 

 自身につけられた不良というレッテルを全力で否定するヒフミだが、ブラックマーケット通いのことを知っている先生(マイケル)は口をへの字に曲げて不満を示す。

 それにより更に慌てる彼女に対し、ハナコがニコニコしながら茶々を入れれば、ヒフミはもうテンパってしまって言葉が上手く繋げられないようであった。

 

 

”それで、最後に……風路(かぜみち)イトハ。君はトリニティ・ゲヘナ境界線上でゲヘナ温泉開発部と戦闘を行い、鎮圧にきた風紀委員に対して越境、攻撃。風紀委員長空崎ヒナと交戦の末鎮圧、捕縛されてテストに参加できず……あぁもう”

 

「空崎ヒナ、あいつは今までで一番戦っててワクワクする相手だった。近頃歯ごたえのない奴らばかりだったからな、楽しめたよ。久々に足腰が立たなくなるまでやられたが、もう一度戦いたいものだ」

 

 

 イトハの罪状を読み上げ、その無茶苦茶っぷりに頭を抱える先生(マイケル)

 当の本人はその時を思い出しながら、少年のように笑う。

 しかし、周囲は完全にドン引きした様子で、まるで珍獣を見るかのような目つきで彼女を見つめていた。

 

 

”今の時期にゲヘナと問題を起こす意味を君は知っているのか?”

 

「そんな事はどうでもいい。私は、ただ戦いたかっただけだ」

 

”……はぁ、これは困ったな。なるほど、イルミが苦労するわけだ”

 

 

 強敵と戦うことにしか興味がないイトハの言葉に匙を投げたくなるものの、それが出来ないのがシャーレの先生という立場。

 彼女を制御しようと奔走し、時にはやらかしの謝罪のためにあちこちに出向く彼女の幼馴染の顔を思い浮かべ、その苦労っぷりに同情した。

 

 

「この補習授業部の終了条件は全員が追試験に合格すること。そして、素行の改善が見られること……その2つが合わさって初めて君たちは解放される。また、本部活の部長はティーパーティーからの指名により、阿慈谷ヒフミが務めるものとする。では、補習を始めよう」

 

 

 締めとして部活の終了条件及び責任者の任命を終え、先生(マイケル)は用意していた椅子に座った。

 しかし、何故彼はこの様な成績不良、素行不良のメンバーの集団の顧問を担当するに至ったのか―――それは1週間ほど前に遡る。

 

 

******************************************************************

 

 

 トリニティ学園、ティーパーティー専用テラス。そこは部外者が立ち入ることはほぼ無い、厳かな場所であり、ティーパーティーの権威のとも言える場所である。

 自治区の中心部を見渡せるということは、この見える範囲は全て自分たちのものだと主張しているということに等しい。今は違えど、この校舎が作られた当時はそのような意味があったのかもしれない。

 そのような場で長机を挟み、ナギサとミカという2人の生徒会長と向き合う先生(マイケル)は、その上に並べられたいくつもの新聞記事へと視線を落としていた。

 その全てはシャーレの先生が活躍したというもので、全てが1面記事となっている。

 1番目につくのは、付け髭をした小さな少女を肩に乗せ、雪原を爆走するメタルウルフの写真だろう。レッドウィンター連邦学園に招かれた際に、クーデターに巻き込まれた時の一枚だ。

 他にはメガゾード*2もかくやと言うべきロボットの右腕を手にした剣ごと引きちぎる姿や、子供たちに囲まれ記念撮影をしているものもある。

 そのどれもが覚えがあるものだった。

 

 

「お久しぶりです先生。随分、ご活躍のようですね?」

 

”ああ、人気者は辛いよ。トラブルがくっついてきて離してくれないんだ”

 

 

 何処か棘のある物言いのナギサに対し、そんなことなど気にはしないとばかりに軽く答える先生(マイケル)

 

 

「そうだね、先生の噂を聞かない日なんてないくらいだし?」

 

「ミカさん、今私が話している最中なのですが」

 

「あっ、ご、ごめんナギちゃん」

 

 

 ミカとナギサのやり取りを見て、3人いるべきはずのティーパーティーのトップのもう1人が居ないという事実に彼は僅かに眉をひそめる。

 あれから2ヶ月程が過ぎたというのにいまだ顔を見せないとは、どういうことか。

 

 

”そちらからの依頼に関してはおおよそ把握している。補習授業部……成績不良者に対する特別措置の担当顧問になって欲しい、だったな”

 

「ええ、そのとおりです。先日の試験において成績不良者が出たのは、文武両道を掲げる我が校にとって不名誉なこと。本来は校内でどうにかするべき話なのですが……」

 

「今、エデン条約がらみで色々と立て込んでてね。ちょっとそっちにまで手が回らないから、先生の手を借りたいなって」

 

”ふーむ”

 

 

 依頼の概要はおおよそ事前に通知されていたものと同じであったが、その手の回らぬ理由というのは初耳だ。しかし、その名は聞き覚えがある。

 エデン条約―――時折耳にし、ついでに言えばクロノスの出版する週刊誌にも特集が組まれるもの。

 トリニティとゲヘナという対立関係にある学園が、正式に和平を結ぶというその内容、夢の中で少女が語ったものを思い出し、彼は僅かに思案する。

 

 

「対象生徒の名簿はこちらに、5名が補習授業部に入ることになります」

 

”5名……()()()()? これだけしかいないのか?”

 

 

 差し出される補習授業部に放り込まれる生徒の名簿がたったの5人分しか無いことに、先生(マイケル)は流石に疑問を抱いた。

 トリニティの学生数は1000人を遥かに上回る超マンモス校、であるにもかかわらずたったの5人しか該当生徒がいないというのは疑問を抱くのも当然だろう。

 全教科赤点というのであればこの程度かも知れないが、いくらかのテストが赤点の生徒というのであればもっといるはずなのだ。

 

 

「「……」」

 

 

 互いに顔を見合わせ、気まずそうな雰囲気のナギサとミカ。

 よもやその点を指摘されるとは思っていなかったのか、その様子に先生(マイケル)は更に疑問をぶつける。

 

 

”そもそも、今回の件に関してはアビドスの一件における借り分というはずだが、それにしてはあまりにも重みが釣り合っていない。君たちは……私に何をさせたいんだ?”

 

 

 そう、今回のティーパーティーからの依頼というものは、アビドスに一件おける援軍要請という貸しに対するものであった。

 あえて貸しを作ることで依頼のハードルを下げようというのが彼の狙いであったのだが、それに見合うだけのものは赤点生徒の補習という目的からは感じることが出来ない。

 問いかける彼の言葉に対し、ナギサとミカの2人の表情はどんどん厳しいものになっていく。

 

 

”やらないというつもりはないが、本当にやってほしいことはきちんと取り決めを交わすべきだろう。そうでなければ君たちが望む通りに私が動かないこともあるだろう?”

 

「……どういうおつもりでしょうか」

 

”どうもこうもないよ、君たちが何を望み、何をしてほしいのか、それをはっきりとさせて欲しい”

 

 

 名簿の一番上に阿慈谷ヒフミの名を認めた彼は、だからこそナギサとミカに問う。

 これがもし本当に普通の赤点生徒に対する救済措置的なものならばそれで良し。

 だが、そうでないのならば―――その意図を聞き出すべく、もう一つ疑問をぶつけることにした。

 

 

”この件は、百合園セイアは承認しているのか?”

 

「「!!」」

 

 返ってきた反応は、ある意味では彼の想定通りのものであった。

 明らかに動揺している二人の様子でわかるのは、第一に補習授業部という枠組みに百合園セイアはノータッチであるということ。

 第二に、百合園セイアの名をここで出されるのは想定外であるということだ。

 

 

”セイアの名を出されるとは思ってなかったという顔をしているな。私は連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの顧問だ、それくらいの情報を手に入れる伝手はいくらでもある”

 

「……そこまで調べられているのであれば、隠すのは無理ですね。先生がどのように考えているのかはわかりませんが、セイアさんは諸事情によりトリニティにいません」

 

「……」

 

”前回訪れた時には既に?”

 

「はい、その時から既に体調を崩されて入院しています。本来の持ち回りはセイアさんがホストなのですが、そういった事情で私がホストの任を代行している形となりますね」

 

 

 セイアは入院しているというナギサの言葉であったが、横に控えているミカの僅かな表情の変化を先生(マイケル)は見逃さない。

 それにより、ナギサの言葉は嘘だという直感を彼は感じ取る。

 魑魅魍魎跋扈する地球の外交という戦場に立っていた彼にとって、子供というのはあまりにも感情が表に出すぎなのだ。

 しかしティーカップに口をつけているナギサは、為政者としての振る舞いをある程度はこなせている。見事なものだと彼は感心した。

 

 

”なるほど、わかった。では改めて聞くが、君たちは私に何をさせたい?”

 

「……本題に入る前に、先生に一つ質問があります。先生は平和というものについてどうお考えですか?」

 

 

 そんなナギサは、いまだにマイケル・ウィルソンという人間を試そうとする。

 かつてトリニティに挨拶に訪れたときからずっと、桐藤ナギサはこの大人を脅威に思っていた。

 強大な力を持ち、大企業の私設軍隊すらものともしないただ1人の人間……そんな彼がもたらす変化が恐ろしい。

 その銃口がいつ自分に向けられるか。とある事情から疑心暗鬼に陥っている彼女は極僅かな例外を除き、全てを信用していないのだ。

 

 

”平和か……素晴らしいものだと思うよ。家族で食卓を囲み、団欒の中明日の平穏を祈る。そんな日々が続くことは金銀財宝なんかよりもずっと価値がある”

 

「へぇ~、先生って案外平凡なことに価値を見出すんだね」

 

「ミカさん、そうやって茶化すのはお行儀が悪いですよ」

 

「あはは、ごめんね」

 

 

 母と妹を失った寄生虫災害(アルファワーム)による混乱、石油資源の枯渇による経済の低迷、それに伴う国際テロで父や妻子を失い、さらに紛争が続く世に生きていたマイケル・ウィルソンにとって、平和とは求めてやまなかった概念だ。

 遠い目で戦いの中失われた者たちへの思いを馳せた後、彼はナギサと視線を合わせる。

 先生(マイケル)の回答に対して横から茶化すミカ。しかし、その目は言葉とは裏腹にどこか暗く濁っていた。

 たしなめるナギサの言葉で笑って引っ込むものの、その態度に彼は僅かに聖園ミカという生徒に対し引っかかるものを感じたが、今の本題はナギサが先生(マイケル)へ何を依頼したいのか、だ。

 

 

”………なるほど、エデン条約絡みといったところか”

 

「先生が聡明で本当に助かります。平和を愛するならば、この条約がどれほど重要なものかおわかりいただけるでしょう。長年に渡って対立を続けてきたトリニティとゲヘナの紛争の終結のためにも、この条約は確実に締結させなければいけません。ですが―――」

 

 

 呼吸を整え、ナギサは言葉を続ける。

 

 

「トリニティ学園内部に、この条約の締結を妨害しようとするものが居ます。この補習授業部というものは、その容疑者の隔離部屋というのが実態なのです」

 

”ようやく話してくれたか。そして今のでだいたい理解したが、私に頼みたいのはこの生徒の監視及び、妨害者の捜索ということでいいんだな?”

 

「はい。可能であればその生徒を退学に追い込みたいものですが、トリニティの規約において煩雑な手続きが必要になり……」

 

”そのためにシャーレの権限を利用したい……か。まったく、こういうのは権力の濫用で後に遺恨を残すことになるからあまり好ましい手段ではないな。それとも、()()()()()のか?”

 

「……ッ!」

 

 

 ナギサの表情が僅かに歪む。

 図星を突かれたと、それが明らかになるだけで彼には十分だった。

 

 

”ナギサ、君が手を下すまでもない。私が、私の判断と裁量をもって処置しよう。連邦捜査部S.C.H.A.L.E顧問、マイケル・ウィルソンの名のもとにな”

 

「貸しはあまり作りたくありませんが……」

 

”そこは気にするな、ノーカウントだ、ノーカウント。私が子供相手に強請るような人間に見えるか? 君はそんなことまで気にしなくて良い”

 

「あはは、先生太っ腹だね。トリニティじゃそういうのあんまり流行らないから珍しいかな?」

 

「……先生の好意に、今回は甘えさせてもらいます」

 

 

 自分の手を汚さなくて済むという先生(マイケル)の提案は、つい手を伸ばしたくなるほどに魅力的だった。

 為政者として様々な重圧に押しつぶされそうになっている彼女にとって、そのような抜け道を用意されるとつい頼りたくなってしまう……だが、同時に彼女の責任感がそれを拒否すべきだと警鐘を鳴らす。

 しかし、どれだけ責任ある立場にあったとしても、結局のところ彼女は17歳の少女でしかない。

 退学という決断を下すストレスを肩代わりしてくれるというのならば、それに逃避したとしても何ら不思議ではないのだ。

 それに、もしもヒフミがそう(妨害者)だった場合のことを考えると―――とてもではないが、心が穏やかでは居られない。

 目の前の大人は確かに、しっかりと自分の口で責任を取ると明言したのだ。であるならば、その通りに責任を取ってもらおう。

 そのような言い訳を心の中でしながら、かくしてナギサと先生(マイケル)は契約をかわし、ここに補習授業部は成立することとなった。

 

 

「では、改めて……補習授業部、その対象生徒について説明しましょう」

 

 

 ナギサが名簿を順に並べ、まず1枚を差し出す。

 テストの点数と、いかに問題行動を起こしているかというのが記されたものだ。

 

 

「1年生、下江コハル。正義実現委員会所属。彼女は問題行動もそうですが、それ以上にゲヘナ嫌いで知られる羽川ハスミ副委員長に対する人質としての意味が大きいですね」

 

”それは……穏やかじゃないな”

 

「仕方ありません……ハスミ副委員長はゲヘナ由来のものにすら嫌悪感を示すので、エデン条約に反対の姿勢を示されると些か面倒なことになりますから」

 

”テストの点数は……ひどいなこれは。しかもこれ、上級生用? 問題行動の方は……横領? 未確認とはいえ、正義実現委員会は問題視するべきだろう”

 

「ハスミ副委員長が目をかけているというのが大きい、ということです。ですから、彼女は人質としての価値がある」

 

「ハスミちゃん、何時もは厳しいんだけどお気に入りに対しては甘いからねぇ」

 

 

 コハルの問題点と、彼女の価値。

 それを語るナギサは感情を見せず、淡々と事実だけを述べていく。

 最後にミカの補足が入り、それでコハルの話は終わりだ。

 続けて差し出された名簿に記された名は、白洲アズサ。

 

 

「2年生、白洲アズサ。彼女は転校生で、今学期の途中にトリニティに入りました。見ての通りテストの点数が悪く、さらに幾度か暴力事件を起こしているとのことです。また、転校の際に提出された書類もいくらか不審な点があり、良くこれで通ったなというのが正直な感想でしょうか」

 

「あはは……」

 

”彼女が工作員だとしたら杜撰すぎるなこれは……”

 

 

 謎の転校生、それもこの時期の……それだけで怪しさがマッハなのだが、提出された書類にも不備があるとなればもう、「こいつがそうなのでは?」と言いたくなるのもわかる話だ。

 続けてナギサは、ハナコの名簿を差し出す。

 

 

「2年生、浦和ハナコ。入学試験において最高得点をマークし、3年生用のテストを受けても満点を取るなど才女として知られていましたが、2年になってからは真面目にテストも受けず、1桁の得点ばかり……それに飽き足らず、トリニティの敷地内で露出徘徊を繰り返しています」

 

”……Pardon(なんて)?”

 

「……露出徘徊です。ただし、スクール水着でですが」

 

「変態だよね、見られて喜んでるのかな?」

 

「……ミカさん?」

 

「あ、いや、えっと……はい、黙ります……」

 

 

 先の2人と明らかに毛色が違う理由に思わず言葉を失うが、余計な情報を削ぎ落として考えれば、これは浦和ハナコという天才がバカのふりをして理由のわからないことをしているのが怖いという事だろう。

 補習授業部に放り込んで監視したいというナギサの懸念はまあ、わからなくはない。

 だが、正直なところ補習授業部という枠組みで別件逮捕みたいな形にしているのはあまり好ましくないと彼は思っており、しかし立場上それを押し付けるのは好ましくないというのも理解しているため、その事に口出しすることは控えていた。

 

 

「そして―――はい、ヒフミさんです。先生はご存知でしょう」

 

 

 次に出されたのはヒフミの名簿。

 テストの点数の欄には「欠席」の文字があり、問題行動の欄にはモモフレンズゲリラライブ参加のため試験を無断欠席(本人談)、及びブラックマーケットへの定期的な出入りという罪名がはっきりと書かれていた。

 

 

”……何もいうことはないな。というか、把握していたのか”

 

「ええ、ヒフミさんがその、モモフレンズに熱烈に入れ込んでいるのは知っていましたが、グッズ入手という名目でブラックマーケットへの出入りをしているというのは見過ごせません。しかもヒフミさんは尾行を振り切り、その足取りは追いきれませんでした」

 

”そうか、疑う理由には十分だなぁ……”

 

 

 何をしているんだ君はと心のなかでツッコミを入れながら、ナギサの懸念には理解を示す。

 恐らくヒフミとしてはナギサにバレたくないの一心だったのだろう。だが、そういう理性があるならもう少しやりようはあったのではないだろうか。

 ここに居ないヒフミへの愚痴を内心吐き出しながら、最後の名簿へと視線を落とす。

 

 

「最後に、3年生。風路イトハ……非公認部活の自警団に属しますが、彼女はよりによってゲヘナ風紀委員とトラブルを起こしました。詳細はこちらに」

 

”……はぁ”

 

「……心中お察しします、先生。私も初期報告を受けた段階で頭を抱えてしまいましたから」

 

「イトハちゃんってさ、戦うことに対して見境がないっていうか、私やツルギちゃんにも良く突っかかってくるんだよね。だからいつかこういうことが起きるかなって思ってたんだけど」

 

 

 テストに欠席、その理由が自警団活動の結果ゲヘナへと越境し風紀委員のヒナと交戦の末捕縛されたからだと知り、盛大に溜息をつく先生(マイケル)

 正直な所彼自身無茶苦茶なことは慣れっこだし、良くやるという自覚はあるものの、彼女ほど見境はなかったという自信はある。

 しかもよりによってエデン条約締結が近づいている時期にこのような問題を起こすとは、ナギサが頭を抱えるのもさもありなん。

 呆れた様子でイトハについて語るミカもまた、彼女の被害者なのだろう。

 

 

「以上、5名が補習授業部の対象となります。先生にはこの中に居る妨害者を特定してもらい、()()()()処理をしてもらう……例え特定できずとも、エデン条約の調印式まで封じてもらうだけで十分ですが、流石にそれは時間がかかりすぎでしょう」

 

”エデン条約の調印式の日付は?”

 

「はい、7月4日を予定しています」

 

”!!”

 

 

 ナギサがエデン条約の予定について説明すると、その日付を聞いた途端にマイケル・ウィルソンの目が見開かれた。

 7月4日(Fourth of July)、それはアメリカ人にとって特別な日である。

 イギリスの植民地であった北米13州が独立を宣言した記念すべき日、まさかそれと同じ日にこのような平和条約の締結がなされるとは……彼が運命的なものを感じるのは無理もないことだろう。

 

 

”なるほど、絶対に成功させる必要があるな”

 

「ご、ご理解いただけたようで何よりです」

 

「……ふぅーん、先生はナギちゃんの味方なんだね」

 

 

 日付を聞いた途端、やけに精力的になった先生(マイケル)に困惑するナギサ。

 それを頬杖をつきながら眺め、拗ねたようにミカは言う。

 

 

”今回はナギサの依頼だからな、我慢してくれ。君個人の依頼があれば、その時は君の味方になれるだろう”

 

「あはは、期待しないで待ってるよ先生」

 

「さて、では話が纏ったところで先生に2つ伝えることがあります」

 

 

 そんなミカをなだめていれば、困惑から抜け出したナギサが横から声を掛ける。

 視線を戻し、向き合う2人。

 ほんの僅かに間をおいて、彼女は要件を話し始めた。

 

 

「まず一つ、本件においてティーパーティーから一名、監視役として補習授業部に送り込みます。それとヒフミさんにはある程度の事情を話し、対象者側からも探ってもらうこととします。彼女たちと協力し、目的を果たしてください。そしてもう一つは―――」

 

 

 ナギサはすっと目を細め、それに対し身構える先生(マイケル)

 

 

「―――先生のパワードスーツですが、トリニティの学園敷地内であれを常用するのはお控えください。以前*3騒ぎを起こした後に色々と修繕にお金がかかりましたので、ご理解のほどを」

 

な、なんだって(What the hell)!?”

 

 

 まさかのメタルウルフ禁止令に、彼は思わず腰を浮かしてしまう。

 以前、電車の時間に間に合わないからとアサルトブーストで移動した際、その余波で芝生や石畳に被害が生じたのが悪かったのだ。

 ナギサの物言いはあくまで要請レベルのものでしかないが、しかし生徒からのお願いというものは、余程のものではない限り聞き届けるべきもの。

 一体何故こうなってしまったのか、一体誰が悪いのか、誰かのせいにしたいが自分の顔しか思い浮かばない先生(マイケル)は気落ちして椅子へと崩れ落ちた。

 

 

******************************************************************

 

 

 ―――時は戻り、補習授業の教室。

 授業とはいっても、キヴォトスにおいてはほとんどが自習のようなものであり、先生といえどやることはあまりない。

 一応、直接指導するという方法もあるが、正規の教職員としての訓練を受けたわけではないマイケル・ウィルソンという人間はその辺の経験が乏しい。

 やれることと言えば、わからなさそうにしている生徒がいればその様子を見てやることぐらいであった。

 

 

「……ほら、ここは倍数判定法を用いてこのように解けば」

 

「なるほど、そういうことか。ハナコの教え方は理解しやすくて助かる」

 

「うふふ、アズサちゃんは素直ですね」

 

「……」

 

 

 アズサはハナコに幾度となく質問を繰り返し、そのたびにハナコが親身に回答する様子を眺めるのはヒフミ。

 少なくともこの2人は順調に試験勉強をしているのだが――――

 

 

「………?」

 

 

 教科書を開き、首を傾げているコハルは、恐らく試験範囲外のページを読んでいる。

 基礎が出来てないくせに、その先その先をやろうとするのはそのプライド故か。

 

 

「……暇だな。ふあぁ」

 

 

 そしてイトハに至っては、教科書を開くまでもなくぼんやりと空を眺めてあくびを一つ。

 一番やる気を感じられないが、資料によれば彼女は何時もはテストで90点位は余裕で取ることが出来るそうである。

 勉強が出来るくせに生活態度の方面で問題児というのは厄介だ。

 

 

「あ、あぅぅ……大丈夫なのでしょうか」

 

”そういう君はどうなんだ?”

 

「あ、はい。私はその、一応赤点を取ったことはないので……自信は、あります」

 

”だったら、そもそもこの部に入らないようにするべきだったな”

 

「そ、それは言わないでください……」

 

 

 部の雰囲気を把握したヒフミは、いまだに不安そうにしながら先生(マイケル)に問うものの、返された言葉は些か冷淡であった。

 原因としては、以前咎めた筈のブラックマーケット通いを繰り返しているというその自業自得っぷりなのだが、しかしそれでも指導すべき生徒の一人。

 小言を言った後に改めて向き直り、正面からその顔を見る。

 

 

”さて、大丈夫かどうかだが……まあ、改善する意思があればなんとかなるだろう。意思さえあれば”

 

「うぅ、それって意思がなければ無理ってことですよね」

 

”問題はそれなんだよ”

 

 

 二人して視線を向けるのは、やはりと言うべきか最大の問題児である3年生。*4

 明るい展望が見えず、不安そうにするヒフミであったが、その時彼女の耳にこの教室に近づく足音が聞こえてきた。

 放課後である今の時間帯に誰がきたのか、教室のドアに視線を向ければ、ガラスの向こうに白い人影が一つ。

 そのまま間を置かずに勢い良くドアを開け、部屋へと踏み込んでくる一人の少女。

 その音にコハルは肩を震わせ、アズサは銃に手を伸ばし、ハナコは先程までのニコニコとした表情を一変させた。

 

 

「まったく、正義実現委員会の恥さらしに問題ばかりの転校生、浦和ハナコに桐藤ナギサの子飼い……そして何より、何をやっているのですかイトハ……!」

 

 

 やってきたのは、ティーパーティーフィリウス派閥の次官であるはずの少女、洲根(しまね)イルミ。

 以前あった時と変わらず、神経質そうななりをした彼女は早速額に青筋を浮かべていた。

 その原因が彼女の幼馴染であることは確定的に明らかだ。

 

 

「……失礼、先生。桐藤ナギサより、補習授業部の監督生として任命された洲根イルミです。改めてよろしくお願いします」

 

”ああ、よろしく。しかし君が来るとは……”

 

「ええ、まあ……私としても不本意ですが、イトハがあんな事をしたとなれば私が出る他ないと桐藤ナギサに指示されまして」

 

「イルミ、お前が私の監視役か。ご苦労なことだな」

 

「誰のせいだと思っているのですか、誰の! まったく……」

 

 

 先生(マイケル)への挨拶もそこそこに、反省の色などないイトハへの怒りを爆発させるイルミであったが、言っても聞かないということは良く理解しているため、すぐに怒りを沈静化させる。

 

 

「……なるほど」

 

「? どうしたんだ、ハナコ」

 

「いえいえ、何でもありませんよアズサちゃん。それより、コハルちゃんの手が止まってるみたいなのでお手伝いをしにいってきます」

 

「わかった。またわからないことがあったら声を掛ける」

 

 

 シャーレの先生、ティーパーティーの次官、そしてホストである桐藤ナギサの指示。

 この補習授業部というものが()()()()集まりであるという予想を立て、ハナコは目を細める。

 その不穏な態度にアズサが感づく様子を見せると、一転して仮面をつけたかのようにニコニコとした表情に戻り、コハルを指差した。

 彼女はイルミの登場に萎縮しているようで、縮こまりながら教科書に顔を隠しているものの、ページは一つたりとも進んでいない。

 だからこそ、ハナコはここであえてコハルの後ろに回って覗き込んだ。

 

 

「ひゃあ!? な、なによ!」

 

「あらあら、コハルちゃん、そこはテストの範囲じゃありませんよ?」

 

「えっ……あっ、いやっ、知ってるし!」

 

「うふふ、そうでしたか。では私はまたアズサちゃんのところに行きますね」

 

 

 突然のハナコの接触に声を上げるコハルと、ニコニコとした表情を崩さないままのハナコ。

 おっかない3年生を前に怯えるコハルであったが、変な声を上げてもイルミが怒らないのですっかりとその存在が頭から抜け落ち、ハナコの指摘に対し虚勢を張る。

 自分はエリートであるという見栄を捨てられず、人見知りであるが故に攻撃的になる彼女は結局この場で誰かの助けを求める事ができずに、ハナコはあえてこの場は引き下がった。

 その様子を視界の端で追っていたイルミは、そういう動きが収まるのを待ってから一歩前へと踏み出して皆の視線を集める。

 

 

「……まあ()()()()()()真面目にやっているのはいいでしょう。さて、これからの予定について各種準備が整ったので伝達します。よろしいですか、先生?」

 

”ああ、構わない”

 

「では……今日から全員で合宿になります。合宿会場の清掃は完了しているので、18時に会場である別館へと集合しなさい。また、第一回となる特別学力試験は明後日行われるので、寄せ集め各位、気を引き締めるように」

 

 

 一旦言葉を区切り、5人の反応を確認した後、彼女は言葉を続ける。

 

 

「また、この合宿は素行不良生徒の更正のためという目的もあるため、規則正しい生活を心がけなさい。起床時間及び消灯時間は絶対遵守となっており、また持ち込み品についてもこちらでチェックします」

 

「えぇっ!? も、モモフレンズグッズはダメですか!?」

 

「正当な理由があれば許可はしますが、そもそもそういう態度が原因ということをいい加減理解しなさい阿慈谷ヒフミ」

 

「あうぅぅ……わ、わかりました……正当な理由があれば良いんですね」

 

 

 愛すべきモモフレンズのグッズ持ち込みを規制されそうな気配に気落ちするヒフミ。

 そこで持ち込みをやめようではなく、どのようにして正当な理由を仕立て上げようかと考えるあたり、彼女が補習授業部を抜け出すのは遠い未来の話になりそうだ。

 

 

(”さて、ひとまずはスタート自体は無難に切れたか。ナギサが望むような妨害者がこの中にいるとは考えにくいが、しかし―――”)

 

 

 イルミが話すその背後で、先生(マイケル)は腕を組みながら思案する。

 ナギサが補習授業部の顧問として先生(マイケル)に求めるのは妨害者の特定、そして排除。

 しかし、マイケル・ウィルソンには狙いがあった。

 

 

(”そもそも、居たとしてもそれは末端部に過ぎない。本当に狙うべき妨害者は他にいるはずだ。そのためには()()を探し出す必要がある”)

 

 

 彼が狙うのは、()()の真相解明。

 それさえ出来れば、この補習授業部も必要無くなるだろう。

 

 

(”君は今何処に居るんだ?”)

 

 

 だからこそ、見つけ出す必要がある。

 

 

(”―――蒼森ミネ”)

 

 

To be Continued in Episode2 ”Detective Michael(名探偵マイケル)

*1
押収物のエッチな本を勝手に持ち帰る

*2
アメリカ版スーパー戦隊である「パワーレンジャー」における戦隊ロボの名称

*3
InterludeⅠ-Ⅱ

*4
とはいえヒフミ自身も改善の意思があるかと問われれば疑問符がつく




 エデン条約編が始まり、早速補習授業部の顧問としてナギサの意向を汲みマイケル・ウィルソンは活動を始めます。
 ヒフミに対してちょっと塩対応してるのは、まあブラックマーケット通いのせいです。

 ブラックマーケットの事件は、最終的にワグナーの爆発で大きな被害を出したことから、銀行強盗事件の扱いが相対的に小さくなっています。
 そのため、覆面水着団(本作では覆面水着隊)及びファウストの噂話が広がっておらず、ナギサはあくまでヒフミがブラックマーケットに出入りしているだけだと考えており、原作よりちょっとだけヒフミのことをまだ少し信じているため、シャーレの権限で処置するというマイケルの提案に乗りました。(処置するといったが退学させるとは言っていない)
 もしファウストの噂が耳に入ってたら覚悟ガンギマリになって提案を拒否したかも知れませんね。

 それにしても、初手セイアやハナコといったエミュが難しいキャラぶちこまれるエデン条約編ってかなり難易度高いですね。
 それでもエタることなく終わりまで突っ走れたらなって思ってますので、次回以降もお楽しみください。

 最後に、12/15で本作METAL WOLF Archive XDは連載開始から半年となります。
 ここまで良く続けられたなと自分でも驚きますが、これも読者の皆様のおかげです。
 月並みになはりますが、感想、評価を貰えると励みになりますのでよろしくお願いします。
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