METAL WOLF Archive XD   作:W.B.O

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Vol3.2 ” Treaty of Eden(エデン条約)
Episode1 " One by one(一つ一つ)"


 何度か訪れては居るものの、その度に何処かで激しい銃声や爆発音が聞こえてくるゲヘナ学園の正門をくぐり、マイケル・ウィルソンはネクタイを少し緩める。

 日差しは強く夏が訪れたことを感じさせ、きっちりスーツを着込んでいればあっという間に汗ばんでしまうので彼は上着を肩にかけていた。ミレニアムでもらった防弾スーツは少々生地が厚めなので夏場は不向きであった。対策を考える必要があるだろう。

 そのままのんびりと彼はゲヘナの敷地内を歩いていく。最初に訪れた時と違い、もうすっかり顔が売れているので道行く生徒が声をかけてくる。無論、それに対して手を振って笑顔で応えるのは忘れない。

そうしてゲヘナを散策すること数十分、彼は少し人を避けるように中心部から少し離れたベンチに腰掛け、噴水を眺めながら思案にくれていた。

 

 

(”……まったく、面倒なことになってくれたな”)

 

 

 エデン条約調印式を目前に控え、最後の調整としてゲヘナ・トリニティの両生徒会による会談が本日行われるのだが、その直前にトリニティ自治区において先の事件で逃亡したアリウス分校の生徒が重度の栄養失調状態で自警団のパトロールに発見、保護されたことで事態は急変する。

 保護したアリウス生徒の保有していた情報端末を解析したところ、アリウス分校とゲヘナ生徒会万魔殿(パンデモニウムソサエティー)議長羽沼マコトとの通信ログが発見されてしまったのだ。

 このことは直ちにティーパーティー上層部へと伝えられ、情報を共有。会談を通じてゲヘナの意向とマコトの真意を確認すること最重要目標とし、シャーレの先生に同席を要請。かくして彼も今回の会談に参加する運びとなった。

 アリウス分校がゲヘナを憎んでいるというのは既知の話なのだが、だからこそ何故マコトとアリウスが通じているのかがわからない。考えて考えて、しかしそれに合理的な回答が浮かび上がること無く彼は無為に時間を過ごす。

 

 

「先生、探しましたよ。こんなところで油を売って……」

 

 

 そうしていると、不意に声をかけられて彼は思考を中断させる。見上げた先に居たのは万魔殿(パンデモニウムソサエティー)の戦車長、棗イロハ。

 少し肩で呼吸をしているあたり、自分を探すために駆け回っていたのだろうか。

 

 

”……いや、すまないね、少しゲヘナを見て回りたかったんだ、最近トリニティばかりだったからな”

 

「そうはいっても時計ぐらい確認してください。今日はエデン条約調印前の最後の調整でしたよね? 先生がそんな調子では困ります」

 

”ああ……そうだな、今日の会談は大事なことだ”

 

「分かっているなら早く行きますよ」

 

 

 とぼけた様子の先生(マイケル)にイロハは呆れながらも彼の手を引き、万魔殿の議事堂へと歩いていく。151cmという小柄ながらキヴォトス人らしいパワーで、引かれる側としてはまるでトラクターに引っ張られているような気分になる。

 そのまま正面玄関をくぐり、イロハに導かれるままに応接室へ。以前は執務室で対談したのだが、今回はトリニティも交えての会談なのでこちらなのだろう。部屋には既にイブキを除く万魔殿(パンデモニウムソサエティー)の主要メンバーと、トリニティ側の代表としてティーパーティーの制服をきっちりと着込んだ交渉役、洲根イルミが席についていた。

 万魔殿(パンデモニウムソサエティー)のメンバーは先生(マイケル)が入室するやいなや、ようやく来たかといった様子の表情を浮かべる。いや、その中で唯一マコトだけは不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

「キキキッ……流石だな先生、焦らすことで会議のイニシアチブを握ろうとするテクニック、見事だ。だがこのマコト様にそういう小手先の技術は通用しないぞ」

 

「マコト先輩、先生は普通に時計を見てなかっただけっぽいんですけど」

 

「それも計算ずくだ、イロハ。先生は極めて狡猾な政治家で、そういうテクニックは知り尽くしている。だからこそ私の戦略上のパートナーにふさわしいのだ」

 

「……羽沼マコト議長、そういうのは(トリニティ)の居ないところで言うべきではないでしょうか?」

 

「キシシシッ、細かいことを気にするなトリニティは。気にしすぎるとその羽毛が抜けるのではないか?」

 

 

 別にしたくて遅刻をしたわけではないのだが、彼女はそれを駆け引きのテクニックと勘違いして大いに感心する。イロハが訂正しても、その勘違いを引きずったままだ。

 その一方でマコトの野心を耳にしたイルミは、あえて聞かなかったことにしつつ苦言を呈するのだが、聞く耳など持たないといった様子で逆に挑発する始末。イルミの額に青筋が浮かぶのが見えた。

 

 

”まあまあ、そこまでにしよう。今日は重要な会議だからな、穏便にだ”

 

「まったく、誰のせいだと思ってるんですか……」

 

 

 場をとりなそうとする先生(マイケル)だが、そもそもの原因は彼の遅刻であることを忘れてはならない。

 

 

「キキッ、そうだな。風紀委員の方はトリニティの正義実現委員会の副委員長と対談しているそうだが、本当に重要なのは双方の生徒会が行うこちらのほうだ。さて、何から話し合うべきか? まあ、私としてはエデン条約などどうでもいいものなのだが」

 

「……そういう言い方をされると、こちらとしても対応に困りますね」

 

「そもそも、こちらでエデン条約を推進しているのは風紀委員会の方だ。我が万魔殿(パンデモニウムソサエティー)としては、エデン条約などあってもなくても大して変わりはしない。このマコト様が将来的にキヴォトス全土を支配するのだからな!」

 

「マコトちゃん、本当にその計画好きよねぇ……」

 

 

 ティーパーティーの高官がそこにいるにも関わらず、マコトはエデン条約を軽んじる発言を繰り返す。どんどんイルミの表情が険しくなっていくが、一方で薄桃色のウェーブがかったロングヘアーの、極めて扇情的な衣装と肉体の生徒、万魔殿(パンデモニウムソサエティー)情報部長である京極サツキはいつもの事だと言う様子で軽く流した。

 どうやらエデン条約に対する考え方は、マコトと他とで差があるらしいというのがわかる。

 

 

「……あぁ、そういえばトリニティの方では()()()があったそうじゃないか? そちらこそ、エデン条約の調印式にきちんと参加できるのか?」

 

「ええ、それは勿論。()()()()()()()()()()()、おかげでティーパーティーはより強固なものとなりました」

 

「ほぉう……?」

 

 

 どんどん不機嫌さを増すイルミに対し、さらに厭味ったらしくトリニティで起きたアリウスクーデター事件についてマコトは匂わせる。これは自身の持つ情報網を誇示する狙いがあり、何処に居ても自分の目や耳から逃げることは出来ないということを表現したいわけだ。

 だが、イルミは驚く様子も見せず、逆にトリニティの強さをアピール。今度はマコトの表情がピクリと動いた。

 

 

「羽沼マコト議長、あなたの情報網なら()()()()()()()()()()()()、確かにあなたの言うようにトリニティでは一大事が発生しました。アリウス分校と呼ばれる集団による大規模な襲撃が発生し、一時的にティーパーティー校舎が制圧される事態に陥りましたが、すでに事態は解決して再発防止のための新体制に移行しています」

 

「へぇ……?」

 

「アリウス……!?」

 

 

 売り言葉に買い言葉のように見せかけ、ゲヘナ側の出方を見るべくイルミは先のアリウスクーデター事件について語る。あえて全貌を聞かせることで万魔殿(パンデモニウムソサエティー)幹部の反応を確認するつもりなのだったのだが、どうにも反応は芳しくない。

 しかし、唯一イロハだけが劇的に反応し、何時もの彼女からは予想もできないほどに狼狽する様子を見せるが、それは求める反応とは少々性質が違う。彼女は素で驚いているようだ。

 

 

「おや、あなたもアリウスのことを知っているのですか棗イロハ。ゲヘナにもそういう記録が残っていたということでしょうか」

 

「イルミさん、アリウス分校が本当に存在していたんですか? であれば……私たちも気をつけるべきですよマコト先輩」

 

「一体どうしたんだイロハ、そんなに驚くことなのか?」

 

「何そんなにヘラヘラしてるんですか! アリウスといえば()()()()()()()()、その過激さ故にトリニティの統合に反対した集団です! 実在するのならば、ゲヘナにだって攻撃を仕掛けてくるのは間違いありませんよ!」

 

「………」

 

 

 そしてイルミの言葉でアリウスの実在を確信した彼女は、あんまり理解してなさそうな他の万魔殿(パンデモニウムソサエティー)のメンバーに対し、必死にその危険性を訴える。声を荒らげる彼女の姿に周囲の面々は呆気にとられていたのだが―――

 

 

「な、何ィ!? あ、あいつら私を騙していたのか……!?」

 

「……は? マコト先輩、何を言っているんですか……?」

 

「あ、いや、な、なんでもないぞ……」

 

「騙していたのかって、言いましたよね? 言いましたね? 聞きましたよねサツキ先輩、チアキ」

 

「あー、ええ、そうね……言ってたわね……」

 

「言ってましたねー」

 

 

 目を見開き、叫び声を上げるマコトのその内容をイロハは聞き逃さなかった。無論、イルミと先生(マイケル)もだ。

 口を滑らせたことを自覚してなんとか誤魔化そうとするマコトだが、怒髪天を衝くという様子のイロハの詰問は止まらず、突然話を振られたサツキとチアキも今回はイロハの味方となり、マコトは完全に孤立無援。

 どうやらアリウスとの内通はマコトの独断で、万魔殿(パンデモニウムソサエティー)の総意ではなさそうであるということを確認できたイルミはことの成り行きを見守ることとした。ここからゲヘナ内でどうケリをつけるつもりなのか、それを見届けなければならない。

 

 

「マコト先輩、知ってることを全部話してもらいますよ。今回企んでいることを全て……さもなくば、風紀委員長にこのことを持ち込みます」

 

「わ、わかった、イロハ……私が悪かったからそれは許してくれ……」

 

 

 完全にキレているイロハの圧は凄まじく、マコトは情けなく怯えている。その様子を見ていると誰が万魔殿(パンデモニウムソサエティー)のトップなのか分かったものではない。

 風紀委員長、つまりヒナへの告げ口という脅しはマコトには有効であった。少し前に彼女が風紀委員の予算をいちゃもんを付けるように削減、ゼロにしたところ直ちに報復され、執務室の半壊と共に病院送りにされた記憶が蘇ってくる。あんな痛い思いはコリゴリだ。

 かくしてエデン条約前のゲヘナ・トリニティ間の最終調整は、万魔殿(パンデモニウムソサエティー)議長羽沼マコトの聴聞会へと変貌するのだった。

 

 

******************************************************************

 

 

「それではマコト先輩、知っていることを全て話してください。隠し事を残しているとこちらが判断したら風紀委員長を呼びます」

 

「う……く……っ」

 

 

 聴聞会開始早々、イロハの死刑宣告に近い言葉にマコトは苦悶の表情を浮かべてみせた。保身に走ればヒナに蜂の巣にされ、全部を話せば議長の威厳が吹き飛ぶというジレンマである。

 そもそもマコトに威厳があるかと言えば多分無いのだが、本人はあると思っているので脅しが効くというわけだ。

 

 

「では最初に、何故アリウスと内通していたのですか?」

 

「………」

 

「……はぁ、ここの話はとりあえず公表することはないので、どうか安心してください羽沼マコト議長」

 

 

 最初の質問に対し、マコトは答えにくそうにイルミを見る。それだけでトリニティ絡みだというのが明らかなので、彼女はため息を付きながらこの場はオフレコということにした。世間には黙ってやるからさっさと吐けということである。

 

 

「……うむ、そうだな。エデン条約調印式ともなれば、いつもは表に出てこないティーパーティーのホストが出てくるだろうからな、それを一網打尽にしてトリニティを地図から消すつもりだった」

 

「つまり、先輩はエデン条約を始めから結ぶ気が無かったと」

 

「キキキッ……当たり前だろう。私の目的はキヴォトス全土の支配、エデン条約を結べばトリニティをどうこうできなくなるだろうが!」

 

「偉そうに言える立場ですか、今の先輩は」

 

「そもそもプランが杜撰すぎますね」

 

 

 ならばと安心して本音を語るマコトだが、その壮大というには雑な野望にイロハだけでなく、サツキやチアキも呆れ顔を浮かべるばかり。あまりのバカバカしさに、マコトの計画においては消される側のイルミとて呆れ果てるほどだ。

 

 

「では次に……アリウスが何を企み、どこまで情報を共有しているのか、ここで全部吐き出してくださいね」

 

「ぐぬぬ……」

 

「別に黙秘するなら黙秘するで良いんですよ? 結果どうなるかは分かっているとは思いますが」

 

「うーん、これは本当に怒ってるわね……ごめんなさいねマコトちゃん、こうなった以上もう私にはどうにも出来ないわ」

 

 

 もはや万魔殿(パンデモニウムソサエティー)のトップが誰なのかさっぱりわからない状況で、マコトは冷や汗をダラダラと流しながらイロハの質問、もとい詰問に答えていく。

 様々なノイズを除外してその内容を纏めると、アリウスはエデン条約調印式を狙って攻撃を起こすつもりがあるということと、そのために情報提供と調印式の会場の指定をマコトに要請して彼女がそれに応えたということであった。さらには先のクーデター事件のことも事前に聞かされていたし、多少の情報提供も行ったという。

 その中でアリウスに対する彼女の認識は、()()()()()()()()()()()()()()というものしか無かったというのも発覚する。これはどういうことかと更に詰めたところ、マコトはそもそも古い時代の情報など一切興味がなく、アリウス側からの申し出を鵜呑みにしたということも発覚した。

 彼女にとって過去のことなど「終わった話」であり、省みるに値しない。今トリニティに恨みを抱いているというのならば、それを利用してやろう―――そういう安易な考えが逆に利用されたのだということである。

 その代価として飛行船を提供してもらったということまで白状した段階でイロハは直ちに万魔殿(パンデモニウムソサエティー)の整備部門に連絡し、飛行船の隅々まで調べるように指示を飛ばした。アリウスがゲヘナに害意を持っているのであれば、絶対何かを仕掛けているはずだ。

 

 

「……はぁ、本当にうちのバカ、もといマコト先輩が大変なことをしたようで申し訳ありません」

 

「ゲヘナの総意とかであればこちらにも考えがあるところですが、まあ議長の軽挙妄動というのであれば棗イロハ、あなたの顔を立てるためにゲヘナ側の責任は問わない形にしておきましょう。ですが、調印式会場がアリウスの狙い通りなのは問題ですね」

 

「そうしてもらえると助かります、イルミさん。調印式の会場はトリニティの通功の古聖堂でしたか、確か大昔に第一回公会議が行われたという……アリウスからすれば意趣返しのつもりなんでしょうかね、そこでの式典を襲撃するというのは」

 

「確か地下にはカタコンベが広がっている筈ですから、そこを通って襲撃を仕掛けるつもりなのでしょう。あまり日はありませんが、事前にこの話を聞けて助かりました。調印式の会場を今更変更するのは不可能ですが、至急対策を取るように手配するのでご安心を」

 

「ぐぬ……ぬぬ……」

 

 

 自分を抜きにしてイロハとイルミの間で当初の目的である調印式の最終調整が行われているのを、マコトは忌々しげに眺めていた。正座を強制されてしばらくが経ち、既に足が痺れて動けないがとにかく自分抜きで話が進むのが気に入らない。

 今回のことは自分が悪いという考えが一切ないあたり、自身の行いを省みない彼女の性格がうかがえる。

 

 

”………”

 

「な、なんだ、先生、急にどうしたんだ」

 

 

 そんな彼女の眼の前に先生(マイケル)が立ち、影が落ちる。見上げたマコトは彼の厳しい表情と漏れ出す怒気に戸惑いを隠せず、声が僅かに震えていた。

 

 

”マコト……君がそういうやつだったとは思わなかったな。そんな卑怯な騙し討ちを狙っていたとは……君のことはそれなりに評価していたんだが”

 

「キ……キキッ、なんだ先生、そんなことを気にしているのか。キヴォトス征服のために効率良く勝利するに外面を気にする必要がどこにあるんだ? このマコト様が他人の評価を気にしていると思ったら大間違いだ」

 

 

 マコトが企んでいたものは間違いなく卑怯な騙し討ちであり、彼からすれば到底許せるものではなかった。アメリカ人でいうところのリメンバー・パールハーバーというものだ。

 そして、そんなことをして戦争など始めた日には間違いなくキヴォトス全土がゲヘナと敵対関係になるのは間違いない。和平合意の場で後ろから刺すような相手と、誰が交渉ができると信じるのだろうか?

 だが、支配することのみを重要視するマコトはそんなことなど気にはしない。彼の失望と説教を受けたところで馬耳東風といった様子で開き直る彼女に、イロハは再び目を吊り上げた。

 

 

「はぁ……反省の色が見えませんね、マコト先輩。イブキを前にしてもその言い訳ができるかどうか、試してみましょうか」

 

「な、何ぃっ!? 私は知っていることを全部話したぞイロハ! そんな横暴が許されて良いのか!?」

 

「たとえ私が許したとしても、果たしてイブキが許しますかね?」

 

 

 イブキをこの場に連れてくるぞというイロハの言葉に、マコトは先ほどとは違って本気の動揺を見せる。自分の行いがイブキに嫌われるものであるという自覚がある辺り、たちが悪いのは間違いないだろう。

 そしてマコトが止める間もなくイロハは応接室を飛び出し、僅か数分後にはイブキの手を引いて戻ってきた。

 

 

「あれ? どうしてマコト先輩は正座しているの?」

 

「それはですねイブキ、マコト先輩が悪いことを企んでいたからです」

 

「悪いこと?」

 

「ええ、実は――――」

 

 

 部屋に入って早々、正座させられているマコトを見てイブキは首を傾げる。そんな彼女にイロハはマコトの企みを聞いた限り教えていった。

 すると、無邪気な笑顔を振りまいていたイブキの表情が固まり、同時にマコトの顔が絶望に沈んでいく。とはいえ、これは彼女には自業自得でしかない。

 

 

「マコト先輩、どうしてそんな酷い事しようとするの?」

 

「う、うぐっ……」

 

「みんなが仲良くしようとしているところを邪魔するなんて、いけないことなんだよ!」

 

「い、いや、しかしだな……」

 

「言い訳するマコト先輩なんて大嫌い!」

 

「うわぁぁぁぁ! 許してくれイブキィィィィィ!!」

 

 

 マコトの所業にイブキは大変ご立腹の様子で、なんとか取り繕おうとするものの、その態度は余計に彼女の機嫌を損ねていく。

 そして大嫌いとまで言われ、マコトはこの世の終わりのような顔をしてイブキにすがりつこうとするが、正座しっぱなしであったので足が痺れて動けない。結果として情けなく這いつくばるだけだ。

 

 

「……ふ、ふふふっ、これは凄い光景ですね」

 

「マコト先輩はイブキに言われなければ反省しませんからね、これもいい薬ですよ」

 

”なんとまぁ”

 

 

 その有り様を見て、イルミは思わず吹き出してしまう。とはいえ、チアキやサツキも苦笑しているあたり、笑ってはいけない万魔殿24時というわけではないので大きな問題はない。

 機嫌を取ろうと必死なマコトの姿を見ながら、イロハはこれがマコトを御す方法だと先生(マイケル)に伝授する。先程の自分に対する態度とはえらい違うことに彼は呆れながらも、その情報を脳の片隅に放り込んだ。

 

 

「……もうやらないって約束できる?」

 

「ああ、約束する! 絶対だ!」

 

「それじゃあ、指切りげんまん、嘘ついたら針千本だよ!」

 

 

 そうしている内にイブキはマコトに対し、二度とそのような真似をしないようにと約束させる。

 小指を引っ掛け合い誓いの言葉を述べるという一連の儀式を経て、ようやくイブキの許しを得られたマコトは情けない表情から一転して先程までの傲岸な顔つきに戻った。その変わり身の速さは、演劇女優としても食っていけるのではないだろうかという感想を抱くほどだ。

 

 

「キ、キキ……」

 

”……まあ、君がキヴォトスの支配者になりたいという夢を持つことは否定はしない。1番になりたいというのは誰もが持つ欲求だからな”

 

「う、うむ、そうか」

 

 

 すっかりボロボロになってはいるものの、最低限の面子を保たせるためにマコトの野心自体はあえて否定はしない。野心もまた、競争社会に置いては必要になるものだ。

 卑怯なやり方をせずに真っ向勝負で挑むのならば、彼はそれを応援するだろう。夢というものは結果ではなく、過程にこそ意味があるものだってあるのだから。

 

 

”そしてイブキ、そうやって誰かのために怒れる君は立派だ。きっと素敵な大人になれるだろう”

 

「えへへ、ありがとう先生」

 

 

 腰をかがめて視線を合わせ、イブキの頭を撫でる先生(マイケル)。彼女の笑顔はまさに天使のようで、万魔殿(パンデモニウムソサエティー)の一同だけでなくイルミも思わず表情を緩ませた。

 

 

”さて、今回の会談の目的は確か……色々横道に逸れたが、エデン条約調印式における段取りの確認だったな。もう一度最初からやり直すが、いいな?”

 

「ええ、問題ありません」

 

「はい、先生」

 

 

 そして少しの休憩の後、当初の名目に沿った形で会談が行われることとなり、警備部隊の配置や式典のスケジュールなど、必要な確認を終えて無事に終了する。

 風紀委員会と会談していたハスミもエデン条約機構(ETO)の実務者協議は順調に進んだようで、アコに対しての文句は言いつつも話はまとまり、あとは当日を迎えるばかりとなった。

 尚、飛行船に関しては調査の結果機体各部に爆薬と発火装置が隠されていた事が判明。マコトの証言によれば襲撃時は万魔殿(パンデモニウムソサエティー)の主要メンバーは飛行船で空中退避するということとなっており、これとあわせてアリウス分校は万魔殿(パンデモニウムソサエティー)も纏めて始末するだったという事が明らかとなり、ここに至ってマコトはようやく自身の選択の愚かさを認めることとなる。

 もしも気づかぬまま調印式を迎えていれば万魔殿(パンデモニウムソサエティー)はその主要メンバーを喪失したであろうという事実は、彼女にとっても許せぬものだ。イブキに危害を加えられるのは特に。

 

 

「キキキ……先生、私はキヴォトスの支配者となる夢を諦めたわけではない。いつの日か必ず、先生が自発的に私に協力するような、そんな支配者になって見せる」

 

”その時が来るのを楽しみにしておこう”

 

 

 ゲヘナを離れる前、マコトは先生(マイケル)に変わらずの野望を語る。イブキに怒られたことで卑怯な手段を封印してくれれば良いのだがと思いながら、彼はそれに応えるのだった。

 

 

******************************************************************

 

 

 既に述べられた通り、エデン条約調印式の式場となる通功の古聖堂というのはトリニティとしての統合が決定された第一回公会議の会場であり、歴史的価値の高い古い建造物である。

 しかしその実態は管理が放棄され、すっかり荒れ果てたただの廃墟でしかない。だが、それも一月前のことだ。エデン条約調印式の式場として指定された以上、ただの廃墟で居られるわけがなかった。

 直ちに修復作業が始まり、ここがかつてはユスティナ聖徒会のものであったということから、修復作業はシスターフッドが監督するという話になり、工事が始まる。

 急ピッチで修復作業が進められているものの、古聖堂そのものは巨大建築で全てを修復するのは1ヶ月では不可能であり、ひとまずは式典で使うエリアのみを修復することで工期を間に合わせるらしい。

 

 

「それで、()()()()()()()()()()()アリウスはこの古聖堂を襲うつもりだと?」

 

「ええ、羽沼マコト議長がアリウスにそのような動きがあると通報してくれましたよ。お陰で我々はそれに対応する時間を得られたということです」

 

「……一体どこから情報を手に入れているのでしょうかね、あの議長は」

 

「他の万魔殿(パンデモニウムソサエティー)の方々も知らないようですからね、独自のルートがあるのでしょう。()()()()()()()ということは相応に信憑性が高いものと私は見ています」

 

 

 マイケル・ウィルソンと洲根イルミ、そして羽川ハスミの3人はゲヘナでの会談の後、トリニティの校舎に戻るのではなく古聖堂へと足を運んでいた。マコトから聞き出したアリウスの襲撃計画への対応のために、まずは現場の下見が必要だというのが3人の共通した見解である。

 ちなみに、ハスミにはマコトがアリウスと通じていたということは伝えていない。言えば怒り狂って面倒なことにしかならないのが明らかだからだ。

 

 

「む、あそこに居るのは先生と正義実現委員会の副委員長、それとティーパーティーの次官殿じゃあないか」

 

「貴女方は……」

 

 

 そんな3人が古聖堂を見上げていると、少し離れた所から声をかけられ全員の顔がそちらへと向く。視線の先に居たのは、トリニティではないセーラー服を着た4人の少女たち。

 ハスミ、そしてイルミはその制服を着ている生徒に覚えがあった。シャーレ直属として活動しているSRT特殊学園のHOUND小隊、その小隊長である岸洲トミ。ハスミは当番で何度か顔を合わせたりするなどそれなりに交流もあるし、イルミはアビドスでの作戦で支援した縁もある。

 

 

「トミさん、ここに居るのは……先生の指示ですか?」

 

「いや、古巣(SRT)からの指示だ。先日、エデン条約に関して連邦生徒会がオブザーバーで参加することが伝えられたとおもうが……」

 

「あぁ、そう言えばそんな事がありましたね。今更どういうつもりかと桐藤ナギサが少々お冠でしたが、元々エデン条約自体が連邦生徒会、というよりも連邦生徒会長の発案。最終的には認められていましたね」

 

 

 トミの説明を聞き、イルミは記憶の中から該当するものを引っ張りだして補足する。

 本来連邦生徒会はこういった学園間の条約に対して何かしらの関与をしてくるものだが、連邦生徒会長失踪以降はそういった動きが見られなかった。だというのに、突然の再介入……どういうつもりかとナギサが怒るのも無理はない。

 

 

「ココだけの話、連邦生徒会内で保守派と改革派の主導権争いが起きている最中で、リン首席行政官率いる保守派とカヤ防衛室長率いる改革派がしのぎを削っているそうだ。それで、この件はカヤ防衛室長の主導で行われている」

 

”こちらは一切そういう話を聞いていないんだが、良いのかそれで?”

 

「我々は基本、言われたとおりにしか動かんよ先生。保守派であれ改革派であれ、正当な議決をもって命令するのならば従うのが筋というものだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()文民統制に反する」

 

”まあ……そうだな、その通りだ”

 

 

 シャーレが動いている裏で、連邦生徒会内部でそのような権力闘争が起きていたとは。

 連邦生徒会から連絡がこないのは、そういう主導権争いが起きているからなのだろうか。彼の中に連邦生徒会に対して僅かに不満が湧き上がる中、トミは話を続ける。

 

 

「それで、だ。カヤ防衛室長はSRTの活動再開を決議案として提出、僅差ながらも可決されたのでエデン条約調印式の警備という名目でキヴォトス全土にアピールするつもりらしい。各学年から1個小隊を出してお披露目だそうだ、我々は2年生の枠だな」

 

「SRTが活動を再開するのはまあわかりますが、そんなに急に動いたら予算の都合がつくのでしょうか?」

 

「それはお偉方の考えることだ、次官殿。だがまあ、急に羽振りのよいことで、とは思わなくもない」

 

”……一応、保有資産の有効活用みたいなことをしてはいるそうだ。この間リン、アオイの両者と話をした”

 

「なるほど、浅ましくも涙ぐましい努力はしているということですか」

 

 

 急に対外介入を再開する連邦生徒会に微かに不信感を滲ませつつ、しかしそのために必要な措置を取っているというのであれば彼女としてもこれ以上述べるものはない。

 

 

「ところで、我々は警備のための下見を行っているわけだが、そちらは何故今ここに?」

 

「あぁ、それは……」

 

 

 トミの質問を受けてハスミはちらりと先生(マイケル)を見る。()()()()()()()()()アリウスによる襲撃計画をここで教えて良いものかと悩む素振りを見せた。

 

 

”……先程、とある筋からある集団がエデン条約調印式へ襲撃をしかけるという計画を入手した。それに対応するために我々は現場の確認をしようと思っている”

 

「襲撃だって? 笑えないね、ゲヘナにトリニティ、そしてSRTが警備するここになんて」

 

「ええ、正気ではありませんね」

 

 

 一応、HOUND小隊はシャーレの身内という判定なので情報を流すことに決めたマイケル・ウィルソンであるが、その話を聞いたHOUND小隊の美路タエコ、そして礼文アリアの2人は信じられぬといった様子。

 ()()空崎ヒナを擁するゲヘナ風紀委員と()()剣先ツルギを擁する正義実現委員会、そして自分たちSRT特殊学園の3個小隊が警備する場に攻撃するなど、自殺以外に考えられないという考えが彼女たちにはあった。

 

 

”まあ、普通ならな。だが相手は多分そうじゃない……万全を期する必要はあるだろう。後でそちらにも正式に情報を伝達するから、対策はその時にきっちり練ろう”

 

 

 アリウス分校の異常性を考えればそれは決してない話ではない。洗脳された兵士は恐怖を感じず、常識外からの攻撃を行えるのだと彼は警告を発する。

 彼女たちはその警告を受け、僅かに表情が強張る。基本的にSRTが相手をするのは凶悪犯罪者ではあっても理性的な相手であり、洗脳された戦闘集団を相手にしたことはない。理解が及ばぬ相手というのは恐ろしいものだ。

 

 

「……了解した、先生。ではHOUND小隊はこれより偵察任務に戻る」

 

 

 顔を強張らせたままHOUND小隊の面々は一礼し、その場を去る。SRTが警備につくという予想外の事態と、それに対する事前告知がなかったということにほんの僅かな不満を抱えつつ、3人は古聖堂の中へと踏み込んだ。

 

 

******************************************************************

 

 

 正門をくぐり、拝廊へ。このあたりは修復が完了しており、往時のままを思わせるような厳かな空間が広がっている。そのまま正面の祭壇へと視線を送れば、そちらは修復の途上で足場が組まれ、職人たちが作業をしている様子が確認できた。

 その足場の下ではシスターフッドに属する生徒たちが同様に修復作業を手伝い、あるいは休憩している職人への差し入れを渡すなどしているようだ。

 その中に彼女たちの長である歌住サクラコの姿を認め、3人は作業の邪魔にならぬように身廊へと進んでいく。

 

 

「歌住サクラコ、少々よろしいでしょうか」

 

「これはこれは、イルミさん。それに先生とハスミさんも、本日はどのようなご要件でしょうか」

 

 

 クラスメイトであるイルミが声をかければ、サクラコはにこやかに対応する。勝手知る相手ゆえに無意識に凄みを感じてしまうような笑みをしてしまっても、彼女はそれに引っ張られることはない。

 先生(マイケル)もまた、彼女の善性をよく知っていた。唯一ハスミだけが思わず身構えてしまったのだが、2人が自然体なのを見て慌てて自らも姿勢を正す。

 

 

「作業の進捗状況を確認しに来ました。修復作業はどの程度まで完了しているのでしょうか」

 

「そうですね……見ての通り、調印式で使われるエリアの修復は8割ほど完了しているといったところです。調印式を通じてこの古聖堂の価値が見直され、全体修復の予算が付けば私個人としては喜ばしいのですが……」

 

”トリニティのような学校でも、こういう史跡の修復は予算がつかないものなのか?”

 

「お恥ずかしながら、自治区の予算というものは他に優先するものも多く……それに、シスターフッドは政治から距離をおいていたのと、清貧を是としているのでこのような大規模なことはとても出来ないのです。寄付を募ろうにも、現代では大聖堂の価値というものはそれ程……」

 

 

 シスターフッドの長として奔走している彼女は資金集めの苦労を思い出し、思わず苦悶の表情を浮かべた。

 

 

「……まあ、予算についての話は今は置いておきましょう。歌住サクラコ、少し耳に入れてもらいたいことがあるので、どこか人目のつかぬ場所に」

 

「? ええ、わかりました。シスターヒナタ、私は少々席を外すのでこの場をお願いします」

 

「わかりましたサクラコ様」

 

 

 いつまでも世間話をしているわけにもいかず、本題を切り出す。サクラコは事情を知らないので深刻さがよく分かっていない様子だったが、3人の表情からある程度察して一人のシスターを呼び、この場を任せることとした。

 シスター服というには少々刺激の強い衣装を身にまとっている彼女の名は若葉ヒナタ。大きな金属製の装飾品を抱えたまま近づいてくるが、見ていて危なっかしい。というよりも、今抱えているものの重量は明らかに人が運べる重さではなさそうに見える。

 

 

「ええっと……シャーレの先生、ですよね? はじめまして、若葉ヒナタと申します。マリーさんから先生のことについてはある程度お聞きしていますが……」

 

”わかった、ヒナタ。とりあえずソレは置いてくれ、見ていて危なっかしい”

 

「あっ、はい。すいません、私ったら少々そそっかしくて……」

 

 

 ヒナタが抱えていた装飾を置くと、その音は決して軽いものが発するものではなかった。3桁kgは軽くあるだろうとあたりをつけるが、そうすると彼女はとんでもない怪力の持ち主といえるだろう。

 軽々と持っているあたり、トリニティで1番の怪力かも知れない。メタルウルフと力比べできるのではないだろうか? そんな感想を抱きつつも、彼女とは軽く挨拶を交わすのみで済ませる。今の優先はサクラコにアリウスの襲撃計画についての話をすることだ。

 

 

「ここなら大丈夫なはずです」

 

 

 サクラコに連れられ、たどり着いたのは地下への入口。修復されていないエリアなので埃っぽく、建材にも痛みが見えるが崩落する気配はない。階段を降りれば地下聖堂を通じてカタコンベにいけるだろうが、そこは立入禁止のロープが張られていて侵入者を拒んでいた。

 

 

「まあ、確かに都合のいい場所でしょう」

 

「ええ、そうですね。サクラコさん、実は―――」

 

 

 人目がつかず、さらには地下への入口という都合のいい場所に案内されたことでイルミとハスミの2人は安堵して話を始めることが出来る。そして実際にアリウスの襲撃計画について話をすると、最初こそサクラコは驚いた様子であったのだが、しかし段々と物悲しさを滲ませる表情に変わっていった。

 保護したアリウスのカウンセリングをシスターフッドが担当していたことと、アリウス分校をかつて追いやったのが前身であるユスティナ聖徒会であるということを知っていた故に、ここまでして自分たちに復讐したいのかと、そういう思いに駆られたのだ。

 

 

「……ですから、アリウスの襲撃を阻止するために我々は手を打とうとしているわけですよ歌住サクラコ。そうしなければ我々がやられるだけです」

 

「この聖堂の地下が侵入路として想定される以上、正義実現委員会としても警戒を強める必要があります。地下への立ち入りを許可してもらいたい……そういうことですね」

 

「そちらの事情はわかりました。ですが1つ、カタコンベは地下の構造が定期的に変化するという性質を持っており、下手に踏み込むと二度と地上に出られないとも伝えられています。この聖堂の地下エリアからは決して踏み出さないこと、それが条件になります。あとは今回に限りますが、私も同行しましょう」

 

”そうか、では行こう”

 

 

 話が纏まり、サクラコが地下への階段の入口に張られたロープを解いて4人は地下へと降りていく。進むにつれてカビ臭さが鼻につき、不快さに顔を歪ませるがそれは仕方のないことだ。地下なので通気性が悪く、夏場になれば悪臭が漂うのは避けられない。

 顔をしかめつつ地下聖堂に踏み込んだ4人はフラッシュライトを懐中電灯の代わりとし、周囲を見渡した。カビた壁面に傷んだ建材、蜘蛛の巣も張っていて荒れ果てたままの空間は、この聖堂が放棄されから一度も手が入っていないということを予想させるものであった。

 

 

「……埃っぽいですね、ハンカチで口を覆った方がいいでしょうか」

 

「修繕前は地上部も似たようなものでしたが、ここは本当に最近人が入ったのが1度くらいなので全然何も手を付けていません。足元には気をつけてください、転べば間違いなく怪我をしますので」

 

「そうですね……一先ずカタコンベへの入口をマークしましょう。この地下聖堂も相応に広いようですが、手分けして探せばすぐの筈です」

 

 

 そうして4人は別れ、手分けしてのカタコンベ入口の捜索を始めるのだが、先生(マイケル)は誰かの視線を感じて周囲を見渡す。明らかに誰かが自分を見ている―――そんな確信を抱き、彼はホルスターから拳銃を抜いて気配の出どころを探っていく。

 他の3人が向かった先とは真反対へと、正直な所誘い込まれているような気がしなくもないのだが、しかしこの気配はもしや。

 

 

”……出てこい、隠れていても臭いでわかるぞ黒服”

 

「クククッ……流石ですねマイケル・ウィルソン閣下、お久しぶりです」

 

 

 先生(マイケル)に存在を看破されて物陰から出てくる黒い人型の異形、ゲマトリアの黒服。

 アビドスにおいて小鳥遊ホシノを手に入れようとあの手この手で策を巡らせた怪人がそこにいるという事実に、先生(マイケル)は銃を握る手に力を込めつつ、実弾を薬室への装填はしないままに銃口を向けた。

 

 

「見ての通り私は武器の1つも持ち合わせていませんよ、先生。そうやって銃を向けられては落ち着いて話もできません」

 

”お前の武器はその減らず口だろうが、あるいは二枚舌か”

 

「ククッ、クククッ……口や舌というのは数が増えたり減ったりしないものです」

 

”そういうところだ、お前は”

 

 

 銃口を向けられながらも、黒服はそこに実弾が装填されていないのを見抜いてか不敵な笑いを浮かべ続けている。

 

 

「さて、冗談はここまでにしておきましょう。私があなたに会いに来た理由はただ1つ―――」

 

 

 一瞬の沈黙。ここで大声を上げて生徒たちを呼べばこの男を捕らえることができるだろうが、それをするべきではないと直感が告げていた。

 

 

「―――私どもゲマトリアのメンバーが起こした騒動について、謝罪を行いに来たのです」

 

”……何だと?”

 

 

To be Continued in Episode2 ”Behind the scenes(舞台裏)




 エデン条約調印式を前に何やら連邦生徒会で何かが起きている様子ですが、シャーレには何も伝わってきていません。原作でもそうでしたが反シャーレ派役員もいるので全面的な味方でもないんですよね、連邦生徒会は。
 そしてマコトの内通が露呈、SRT警備増強などでエデン条約調印式の準備は整いつつありますが、何か見落としているような……
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