METAL WOLF Archive XD   作:W.B.O

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ブルアカらいぶ、怒涛の百花繚乱水着の追加でやばいですね。
水着キキョウに脳を焼かれそうで石が……石が!やめろアロナ!搾り取るな!


Vol.1 Foreclosure Task Force(対策委員会)
Chapter Ⅰ-Ⅰ ”Welcome to ABYDOS”(アビドスへようこそ)


 照りつける太陽、揺らぐ大気、地平線まで続く砂地がこの砂漠の広大さを物語っている。

 しかしこれはただの砂漠ではない。幾つものコンクリートのビルが砂の中から空へと向かって伸び、高架道路がその間を這うように走っていた。

 それはかつてここが大規模な都市だった痕跡、人が去り十数年経った今でもその姿を残しているのはキヴォトス建築の堅牢さだろうか。

 ここはアビドス自治区、キヴォトス最大の学園自治区であった土地だ。

 

 

”……地図の更新もない。ここはかつての中心部だったはずだが”

 

 

 その中でも最も高いビルの屋上に『メタルウルフ』は居た。

 キヴォトスでも大企業であるセイント・ネスティフ社のシンボルが残るそのビルは、他のビルと比べて頭一つ以上高い。

 そこから見える景色と事前にダウンロードしていたアビドス自治区の地図を見比べ、その乖離っぷりにマイケルは顔をしかめた。

 よくよく見れば、最終更新日時は数年前。連邦生徒会の資料によれば定期的に大規模な砂嵐が襲いかかるこの地で数年も更新がなければ地図と地形が一致しないのは当たり前だった。

 砂に埋もれていないビルと高架道路だけが、唯一地図がアビドス自治区のものであるということを証明していた。

 

 

”アロナ、アビドス高等学校は方角的に向こうであってるだろうか”

 

『ちょっと待ってください……あちらには砂漠が広がっているだけっぽいですね。アビドス高等学校は多くの分校舎があったそうですから、今はそちらに移っているのではないでしょうか』

 

”ふーむ、アビドス高校を探せだな。近くのアビドスの分校舎の位置はどこだ……?”

 

 

 『メタルウルフ』の中でアロナとマイケルが地図をああでもない、こうでもないと眺めていると、彼の耳に僅かに風切音が入り込んできた。

 その特徴的な風切音は小型のドローン特有の飛行音であり、周囲を見回すと一機の武装ドローンが搭載されたカメラを向けていることに気付いた。

 無人ドローンか、と思えばアロナはそれを否定し何者かに操作されているものだと答える。

 生体センサーをONにして戦術マップを確認すると、周囲数百m以内に生命体の反応が一つ浮かび上がる。おそらくドローンの操縦手だ。

 ともすれば後は早い。彼はドローンに向かって手を降ると、屋上から空中に躍り出て重力のままに地表に向かい、直前にブースターを噴射して減速し、ゆっくりと道路を傷つけぬように着地した。

 しかし減速のために噴射した高温のガスは道路に堆積している砂を巻き上げ、周囲に限定的な砂嵐を巻き起こす。

 

 

「な、何……!?」

 

 

 眼の前に『メタルウルフ』が飛び降りてきたドローンの操縦手は巻き上がる砂から目や呼吸器を守りつつ、明らかに困惑の表情を浮かべていた。

 マイケルは彼女の服装に彼は見覚えがあった。アビドス高等学校の制服だ。

 スポーツバイクを支えながらドローンのリモコンを持つセミロングの銀髪の生徒は、頭部には動物の耳が生えており、日差しが厳しく気温が高いにも関わらずマフラーを首に巻いていた。

 

 

”やあお嬢さん、君はアビドス高等学校の生徒だろう? 私はマイケル・ウィルソン。アビドス高校の位置がわからず道に迷っていてね、案内してほしいんだ”

 

 

 舞い上がった砂煙が晴れた時、彼女は視界一杯に鋼の巨人の姿を認め、紅く輝く単眼がまっすぐに見つめているのに気づき、その顔が引きつる。

 アビドス高等学校2年生、砂狼シロコはこうして鋼の狼との邂逅を果たした。

 

 

 

******************************************************************

 

 

 

 

 事の始まりは前日の朝に遡る。

 シャーレ始動から10日ほど経ち、三大校との会談も成功に終わったことでシャーレに様々な手紙やメール、メッセージが舞い込むようになったことで、マイケルの仕事量は爆発的に増え始めていた。

 仕事量が増えてもシャーレの先生たるマイケルは一人なのでタスクの内容、自治区の位置、時間から回る順を決めて行動しなければならない。

 コーヒーを飲みながらパソコンに今日の予定を打ち込んでいく。本日の業務はゲヘナ自治区の生徒からの依頼が多かった。

 

 

”他には……”

 

 

 予定が決まり、当番の生徒を待つ間にシャーレに宛てられたメールを読もうとカバンからシッテムの箱を取り出した。

 生徒のプライバシーに関わる部分もあるので、こういうのは彼一人で読むようにしていた。

 シッテムの箱のホーム画面を開くと、アロナが何やら神妙な面持ちで一枚の紙を手にしていたが、おそらくメッセージを実体化させたものなのだろう。

 

 

『先生、不穏なメッセージが届いていました。いたずらとかそういうのではないのですが、とにかく読んでください』

 

 

 そう言ってアロナがメッセージを表示する。

 その内容に目を通し、読み込む度に彼の眉間のシワがどんどん深くなっていった。

 

 

”アロナ、これは本当に内容に間違いはないのか?”

 

『はい、一字一句一切の改竄をしていません。学校が武装集団に襲われるなんて……』

 

 

 学園都市キヴォトスにおいて学校とは一つの国家といえる。

 その学校が武装集団に襲われ、あまつさえ校舎を占領されかねないなどというのは、まるでアフリカで内戦が頻発している小国みたいなものではないか。

 手紙に書かれた内容から重要そうなキーワードをピックアップし、検索にかけその情報を得ようとする。

 ───アビドス高等学校、救援要請を出している学園の名は、インターネットで検索してもポジティブな情報が殆ど無い。

 曰く、廃校寸前。曰く、ゴーストタウン。曰く、在校生5人。

 学校のホームページすらないということは、対外広報する余裕が一切ないということであり、ネット上のネガティブな情報を補強するものだった。

 

 

”パブリックの情報でこれか。連邦生徒会の資料はどうなってるんだ?”

 

 

 連邦生徒会のネットワークに接続してアビドスの情報をダウンロードし、その内容を確認する。

 ファイルの更新日時が去年の春の時点で極めて嫌な予感がしたが、読み込んでいけばその予感が現実だということを突きつけられた。

 自治区の沿革はまだいい。あれは1年2年ではそう変化はしない。

 だが、生徒数、自治区経済力、人口統計、そのどれもが去年のもので今年の数値がない。

 それはつまり、連邦生徒会ですらアビドスの現状を知らぬということだった。

 アビドスを代表するのはアビドス生徒会と資料にはあるが、この手紙を送ってきた奥空アヤネという生徒は送り主として『アビドス廃校対策委員会』と記していた。名前からしてもう滅びかけである。

 生徒会を出し抜く形で手紙を送ってきたのか、あるいはすでに生徒会は機能していないのか、少なくとも手紙と資料を見るだけではわからない。

 ならばと彼は決断した。

 

 

”……OKOK、こいつはヘヴィーな話だが私の出番であるのは間違いなさそうだな”

 

 

 頭の中で組んでたスケジュールを組み替える。

 流石に今日の支援を求める生徒を無視するわけにはいかないが、明日以降の予定はキャンセルする必要があった。

 その中にヒナとの協議も含まれることに気付いたが、流石にアビドスの様子が心配すぎてヒナの優先順位を下げざるを得ない。

 即座にモモトークを起動し、ヒナへ謝罪の言葉を入力する。既読はすぐについた。

 

 

『わかった、先生の予定が空いたら教えて欲しい。それとアビドスに行くのなら色々気をつけて、あそこは準備しないと遭難するから』

 

 

 ヒナの返信を見ながら今日の予定をこなすための準備を進めると、今日の当番であるユウカが執務室の扉をノックした。

 丁度よい、アビドスについてミレニアムの視線も知りたいと思ってたところだとマイケルはニヤリと笑う。

 ドアを開けたユウカはマイケルがニヤついていることに気づき、怪訝な表情を浮かべながら口を開いた。

 

 

「ユウカです。今日も……って先生、なに笑ってるんですか」

 

”ナイスタイミングってことだよユウカ。アビドス高等学校、ミレニアムのほうで知っている情報があれば教えて欲しい。

先程そこから救援要請がきてね、流石に準備とかもあるから明日向かおうと思っているんだが”

 

「アビドスですか……先生は連邦生徒会の資料をご覧になってるなら、それ以上の情報は知らな……あ、でも」

 

 

 マイケルの質問になにか心当たりがあるのか、ユウカは顎に手を当て記憶の引き出しから『それ』を手繰り寄せる。

 

 

「アビドスの砂漠には巨大な機械の蛇が出る……ってリオ会長が言ってたような覚えがあります」

 

”……魔境すぎないかアビドス”

 

 

 地球の常識からかけ離れるその内容に、マイケルは困惑した表情を浮かべていた。

 

 

 

******************************************************************

 

 

 

 アビドスの旧中心街を抜け、シロコとマイケルは肩を並べながら砂の積もった道路を駆けていく。

 シロコは自前のスポーツバイクにまたがりペダルを力強く漕ぎながら、ちらりと並走する『メタルウルフ』の姿を見た。

 ブーストダッシュをすると砂を巻き上げて迷惑になるだろうからと、小ジャンプを繰り返すような動きでそれなりの速度を出しているはずの自転車にぴったりとくっついてくるのは中々にファニーだ。

 もし知る人が見れば、その様子から月面を歩く宇宙飛行士の姿を連想することだろう。

 

 

「その、先生。それって疲れないの?」

 

 

 その姿がパワードスーツだと知ったシロコは、ジャンプを繰り返すマイケルに問いかける。

 もし彼が疲れているようなら速度を緩めたり小休止を挟むつもりであったが、マイケルは堪えた様子もなくジャンプを繰り返しながら答えた。

 

 

”運動負荷を調整できるのさ。ところでシロコ、こっちから聞かせてもらうが学校が武装集団に襲撃されているのは本当なんだな?”

 

「うん、本当。あいつら、毎度毎度懲りずに襲いかかってくる……撃退しているけどもう弾薬が底をつきそうだったから、先生がきてくれたのは本当に助かる」

 

”そうか、こっちを優先して正解だった。しかし本当にアビドスは砂だらけだな……ドバイを思い出す”

 

「ドバイ?」

 

 

 聞き慣れぬ地名、キヴォトスにそのような名前の学園はなかったはずだとシロコは考える。

 いや、数千もある学園にはそういう土地もあるかもしれないが、しかし一度も耳にしたことはなかった。

 一方マイケルはおっと口が滑ったと言わんばかりに手を口元に当てる。当然『メタルウルフ』で、だが。

 どう説明するかと一瞬悩んだが、特に隠し立てする必要もないので彼はありのままにぶっちゃけた。どのみち、辿り着くことはできぬ地球の話だ。

 

 

”キヴォトスの外、私の故郷の世界にあった都市だ。石油資源が生み出す莫大な資金で成長し栄華を誇ったが、金のなる木が枯れ、他の産業も失われたことで衰退し砂嵐に飲まれてゴーストタウンと化した……”

 

「……」

 

”人々は散逸し、残るのはその地に古くから根付いていた部族のみ。あまり面白い話ではないな”

 

「……ッ」

 

 

 シロコは顔を歪め、マイケルの、『メタルウルフ』の顔を見た。

 アビドスの歴史をこの大人は知っている。ここに来るにあたり、連邦生徒会の資料でも見たのだろう。

 

 

”残った人々はもう二度とかつての栄華が戻らぬと理解はしていただろうな。だが、それでも生まれ育った地を捨てることはできなかった。───君たちも、そうなのだろう?”

 

「───ッ」

 

 

 脚を止め、息を呑む。

 じっと見つめる赤い単眼に心の中を覗き込まれるような気がして、シロコは胸の前でぎゅっと拳を握った。

 その様子を見てマイケルは肩をすくめながらも、大げさな身振りも交えて言葉を続ける。

 

 

”君たちがアビドスを守ろうとしているなら、私もそれを手伝おう。それがS.C.H.A.L.Eの顧問としての役目だ”

 

「先生って、苦労を背負いたがるの?」

 

”先頭に立つのが役目さ。昔からそういうことをしていたんだから、今更だな”

 

「変わってるね」

 

 

 再び自転車を漕ぎながらシロコは考える。藁にも縋る思いで出した救援要請、その結果やってきた先生、その人となり。

 まだ出会って僅かではあるが、彼女はマイケルが他の大人と違うということを感じ始めていた。

 とはいえ、まだまだ評価するには早い。まずはアビドスに迫る危機をなんとかしなければならない。

 ふと顔を上げると目指すアビドスの校舎が見えてきた。彼女はマイケルの方を見てから前方を指し示す。

 

 

「先生、あれがアビドスの校舎。まだ少し距離があるけど……」

 

”ふむ、あれがか……それでは、急ごう”

 

 

 ペースを上げ、二人は進む。

 アビドスの校門を潜り、バリケードが幾つも築かれた校庭を通り、砂にまみれながらも人の手が入っている校舎の裏手に回りシロコが自転車を置くと、マイケルも『メタルウルフ』をその場で脱いだ。

 隣でシロコが目を剥いていたが、そのような反応は慣れていたので特にさしたる対応もせずに機体のコンテナを開放する。

 ガコンと音を立ててコンテナが開き、アームに固定されている武器の中に混ざっているアモカンを下ろしていく。途中からシロコもそれを手伝った。

 地面に並べられたアモカンは二人で持ちきれる量ではなかったが、一先ず複数抱えて二人はアビドスの校舎へと入り、シロコの案内に従いある部屋の前に立つ。

 部屋の名を示すプレートには手書きで「アビドス廃校対策委員会」と書かれた紙が貼り付けられていた。

 

 

「ただいま」

 

「おかえりシロコせんぱ……何その荷物!? それと、後ろの大人は誰!?」

 

「わあ、お客さんですかー?」

 

「えっ!? もしかして……」

 

 

 猫耳で黒髪ツインテールの生徒と、ベージュのロングヘアの生徒、赤いメガネをかけた黒髪ボブカット、それと長耳の生徒が入室したシロコを迎え入れた。

 同時にマイケルに対して各々反応し、その様子を見ながら彼は手紙を送った生徒に当たりをつける。

 

 

”連邦捜査部顧問、マイケル・ウィルソンだ。要請に基づき補給物資を持ってきた。外にまだ幾つかあるから持っていってくれ”

 

 

 ドン、と机の上にアモカンを置く。M80と書き込まれているそれにはいっぱいの.308口径弾が入っており、それが一番補給物資の中で多い。

 ちらりと壁に立てかけられた白いミニガンに視線を送る。あんなものを使っているのならそれはそれは消費も激しくなるだろう。

 閑話休題(それはともかく)、彼はメガネをかけた生徒に納品書を手渡した。

 

 

”君が奥空アヤネだね。聞きたいことは幾つかあるが───”

 

「あッ、ホシノ先輩に伝えなきゃ……ちょっと私、呼んでくる」

 

 

 猫耳の生徒が部屋を飛び出る。名前を聞いていなかったが、後でも別に構わないと一先ずは部屋に残っている生徒への対応を続けた。

 

 

”───一先ず自己紹介をお願いしようか。連邦生徒会の資料が去年までのものしかなくて新入生とかがわからないんだ”

 

「そういうことでしたか~。私は十六夜ノノミ、2年生です~」

 

「先生が仰ったように私が奥空アヤネ、1年生です。さっき部屋を出たのが同級生の黒見セリカさんで……」

 

「ん、私はもう自己紹介している。後は、今セリカが呼びに行ったホシノ先輩」

 

”なるほど、それがアビドスの全生徒というわけか。それじゃあ―――”

 

 

 突如鳴り響く銃声、アビドスの乾いた空気を貫くそれはあまりにも音源が近く感じる。

 全員で窓から校庭のほうを見れば、正門から複数のヘルメットを被った生徒が銃を乱射しながらなだれ込んできていた。間違いなくヘルメット団の手合だ。

 

 

「あいつら性懲りもなく……!」

 

「ホシノ先輩を連れてきたよ! 先輩! 寝ぼけてないで起きて!」

 

「むにゃ……」

 

 

 怒りに震えるシロコの横に、ホシノを抱えたセリカが駆けつける。ホシノは寝ていたのか、その頬をペチペチと叩かれながらもいまだ微睡みの中にいるようだ。

 

 

「ホシノ先輩、ヘルメット団の襲撃です。それと、シャーレの先生が支援に来てくれました。予備弾薬もたっぷりありますよ!」

 

「むにゃむにゃ……うへぇ、まだ眠いのにぃ……んぇ、ぁあ、あ、よろしくぅ先生~」

 

 

 僅かに目を開き、ちらりとマイケルの顔を見るホシノ。その様子に彼は、彼女の態度に作為的なものを感じた。

 しかし今はそれを問うべきではないことは明らかだ。彼の後ろでアヤネとノノミが武器を抱えてシロコやセリカ、ホシノに渡していく。

 戦いの準備は終わり、アビドスの全生徒は今まさに襲撃者を返り討ちにせんと構えていた。

 

 

”君たちを支援しよう。少しの間ヘルメット団を校舎に入れないでおいてくれれば十分だ”

 

「まさか先生、あれで戦うの?」

 

 

 マイケルの宣言にシロコが顔を引き攣らせる。あのパワードスーツに装備されていた武器の数々を見た彼女からすれば、その後に起きる惨劇が容易に想像できたのだ。

 もちろん彼はシロコの言葉に頷き、懐からシッテムの箱を取り出して画面の操作を行った。

 

 

”君たちの戦術指揮も当然やる。パーティーの時間といこうじゃないか”

 

 

 

******************************************************************

 

 

 

 校庭に築かれたバリケードは土嚢やコンクリートブロックだけではなく、学校の備品である机やロッカーすらも使用されていた。

 もちろんそんなものに防弾性はないのだが、侵入者の行動を阻害する目的であるならば最低限の効果を発揮する。

 校門の近くにはそういった防弾性のない障害物を設置し、校舎の近くには土嚢などの防弾性のある遮蔽を配置してあるのは理にかなっていた。

 しかも、もし侵入者が土嚢に取り付いたとしても校舎からの射線が通っているという徹底ぶりであり、これを攻略するにはそれこそ火砲を持ち込まねばならないだろう。

 

 

『”セリカ、君は校舎から狙撃して敵の足を止めろ。その隙にシロコとホシノが距離を詰める。ノノミは校舎屋上から制圧射撃だ”』

 

 

 学校の階段を駆け下りながらシッテムの箱に映る戦術マップを見てマイケルは指示を出す。

 個人個人の動きすら指定するのはマイクロマネジメントと取られかねないが、俯瞰的に指示を出せる人間は彼しか居ない。

 生徒たちは彼の指示に疑いや反感を抱くことなく素直にそれに従い、動き出した。

 

 

「本当にッ、しつこい!」

 

 

 校舎の窓に『シンシアリティ』の銃身を委託し、セリカはスコープを覗き込む。

 侵入してきたヘルメット団の数は40程度、アビドス生徒の8倍の数で攻めてきている。数の暴力で攻め落とそうとしているのは明らかだ。

 むやみに乱射しているのは戦闘員としての練度が低い証、セリカは遮蔽に隠れようとしたヘルメット団の一人に照準を合わせ、引き金を引く。

 単射で3発、その全てが狙ったヘルメット団員に当たり、そのうち1発がヘルメットのバイザーを突き破って顔面に突き刺さった。

 その衝撃でもんどり打つように倒れる団員、周囲のヘルメット団がそれに気を取られている間にホシノとシロコは窓から飛び降り、土嚢の影に滑り込んだ。

 

 

「さっすがぁ、セリカちゃんの狙いは正確だねぇ」

 

「先輩、あとライン2つ分あげないと」

 

「わかってるよぉシロコちゃん。さあ先生、お次はどうするの?」

 

 

 チャンバーに弾薬の装填がちゃんとなされているかを確認しながらホシノは問う。

 その横でシロコが手榴弾を懐から取り出し、ピンを引き抜いてから大きく放物線を描くように投げた。

 遅れて聞こえる爆発音に紛れてヘルメット団の悲鳴が聞こえてくる。

 

 

『”突撃はノノミの制圧射撃にタイミングを合わせろ。ノノミ、準備はいいな?”』

 

「今配置につきました~、いつでもいけますよ~」

 

『”この際目標選定は個別に任せる。危険度が高い目標については都度指示を出す。アヤネは前衛への給弾サポートをよろしく”』

 

「はいっ」

 

『”5カウント後に行動だ。5…4…3…”』

 

 

 ヘルメット団の射撃が土嚢やコンクリートに突き刺さる音、しかしただの小銃弾ではそれを突き破ることは不可能だ。

 二人はグリップを握りしめ、セレクターを最終確認。マイケルのカウントダウンに耳を傾け、至近を通り過ぎる銃弾の風切音に動じずにじっとタイミングを伺っていた。

 

 

『”2…1…今だ!”』

 

「お仕置きの時間ですよ~」

 

 

 ヘルメット団の賑やかしのような銃撃、突撃するにしても中途半端な腰の据わっていないそれを嘲笑うかのように屋上にその姿を表したノノミが、手にしたミニガン『リトルマシンガンV』をヘルメット団に向ける。

 地上に降りたシロコとホシノに注意を向けていたヘルメット団は屋上に現れたノノミに気づくのが遅れた。

 狙撃しているセリカを警戒していた団員が居なければ、撃たれるまで気づくこともなかったかも知れない。

 そして、モーターの回転音と僅かに遅れてそれをかき消す連続した銃声が戦場を引き裂いた。

 

 

「うぎゃあ!」

 

「何でこんなにバカスカ撃ってくるんだ! もう弾薬は切れたはずじゃ……!」

 

「おいバカ! 目を離すな!」

 

 

 ベルトリンク給弾なので制限がかけられているとはいえ、通常のマシンガンよりも遥かに高い発射レートで放たれる.308口径のシャワーは強烈だ。

 直撃を受けた二人は全身を打ち据えられて四肢が踊り、崩れ落ちる。

 慌てて遮蔽に隠れた他のヘルメット団員はそこがロッカーであることを忘れており、貫通した銃弾に叩きのめされて吹き飛んだ。

 その瞬間を逃さずホシノとシロコは土嚢の裏から飛び出し、一気にヘルメット団の前衛に向かって全力で走り込む。

 

 

「いいよ~ノノミちゃん、そおれぃ!」

 

「ぐぎゃ!」

 

「遅いっ!」

 

「ぐはっ!?」

 

 

 ホシノは折りたたまれたバリスティックシールドをスリングで振り回し、ヘルメット団の頭部を思いっきり打ち据えた。

 突入の際に銃を使わず近接打撃を行ったのはノノミに注意が向いているのを利用しているためだ。銃声を出せば敵の注意が地上組に向いてしまう。

 特段打ち合わせもせずに合わせられるあたり、ホシノ達対策委員会は戦い慣れしているのがよくわかる。

 意識外から叩き込まれた一撃は簡単に意識を刈り取り、あらぬ方向に向いたヘルメットに隣のヘルメット団員が見えぬ顔を引き攣らせるが、その動揺は致命的な隙でしかない。

 同時に回り込んできたシロコがその腹に強烈な蹴りを叩き込んで吹き飛ばし、倒れたところに銃弾を叩き込んだ。もう隠密は必要ない。

 当然ながら身構える事もできずに全身を打ち据えられたヘルメット団員は意識を失い、それを確認したシロコはリロード動作に入る。

 

 

「先輩危ない!」

 

「あぐっ! ……ぎゃっ!?」

 

 

 突入に対して反応こそ遅れたもののホシノに銃口を向けたヘルメット団が居たが、3階から見張っているセリカを前にその行動は無謀すぎた。

 直ちにセリカの銃撃がヘルメット団の腕を打ち据え、痛みに負けて銃を手放したことを彼女が認識した瞬間、眼の前で己に向けられる黒い穴が視界に入り、それに対してリアクションをする間もなく閃光と共に彼女の意識は途絶えた。

 硝煙が上るショットガン『Eye of Horus』の銃口を下げながら、ホシノは振り返りセリカに手を振って微笑んだ。

 

 

「助かったよセリカちゃん、あとでナデナデしてあげる」

 

「そ、そういうつもりで助けたんじゃないんだから!」

 

「ホシノ先輩、まだ来る」

 

 

 愛銃『WHITE FANG 465』を撃ちながらシロコは冷静に盤面を見据えていた。

 今の射撃と突撃でヘルメット団はその数を半分ほどに減らしてこそいるが、その数はまだまだアビドス生徒の4倍はある。

 アヤネのドローンが投下したマガジンをキャッチして制服のポケットに突っ込みながら、彼女はあることに思い至った。

 

 

「先生、そっちの調子はどう?」

 

『”シロコか、今起動した。そっちもヘルメット団は浮足立っているからその場で足止めをしてくれれば十分だ”』

 

「わかった。ホシノ先輩、今の聞いてた?」

 

「先生がどうにかするって話? でも、あの大人にまだまだ結構いるヘルメット団をなんとかできるとは───」

 

 

 刹那、校舎の裏に巨大な砂柱が立ち上がる。

 ノノミにセリカ、アヤネとホシノ、そしてヘルメット団は思いもよらぬ自体に呆然としながらも、ただシロコだけはその隙を逃さずに駆け出し、眼の前で隙を晒すヘルメット団の鳩尾に飛び蹴りを放ち意識を刈り取った。

 吹き飛ぶヘルメット団のむこうに、直線に並ぶヘルメット団3名。そのヘッドラインに向けてマガジン一本分全弾流し込んでいく。

 

 

「おごっ!?」

 

「がっ!」

 

「あぐっ!」

 

 

 ドミノ倒しのごとく倒れる3名、シロコはマガジンを交換しながら眼の前の土嚢の陰へと向けて駆け込んだ。

 ヘルメット団がそれに対処しようとするが、同時にアビドス校舎の裏から濃紺色の巨体が飛び出し、校庭を飛び越えて正門の前に降り立つ。

 シロコ以外の全員が唖然とする中、着地で巻き上がった砂の中に赤い光が灯り、浮かび上がる人型は一歩前へと踏み出した。

 

 

「な、なんだよこいつは……」

 

 

 リーダー格である赤いヘルメットをした団員がたじろぐ。

 ただでさえ既に半数の団員を撃破されているというのに、アビドス高校から現れた謎の敵に校門を塞がれたという事実は、彼女の中の冷静さを失わせるのに十分であった。

 巻き上がった砂が収まり、その姿が露わになると彼女の抑え込んでいた恐怖心がぞわっと溢れ、体の制御を支配する。

 赤い単眼に睨まれ手足に力が入らず、その場にへたり込む。歯の根が合わなくなり、言葉を発することもできずただ荒い呼吸を繰り返すだけになった。

 

 

アビドスへようこそ(Welcome to ABYDOS)、お嬢さん”

 

 

 その言葉を聞いたのが最後、僅かに繋ぎ止められていた彼女の意識は完全に裏返り、その場に身を投げ出すように失神した。

 まさか目の前で少し驚かしただけで気絶するとは思わなかったマイケルはわずかに肩を竦めると、背部の武装コンテナを開放し拳銃とショットガンをそれぞれ引き出す。

 ヘルメット団は完全に混乱状態にあり、前門のアビドス後門の『メタルウルフ』と言った状況に右往左往するばかりで、隙を見逃さないシロコと正気に戻ったアビドスの生徒たちの猛攻の前にもうその数を10名程度までに減じていた。

 その機を逃さず、マイケルは外部スピーカーを入れたまま口を開く。

 

 

”ヘルメット団の諸君、君たちは包囲された。大人しく武器を捨てて降伏すれば悪いようにはしない”

 

「うるせー! 大人がなんだー!」

 

「そう言っていつも大人は裏切ってきた!」

 

「あたしらは情けなんかうけねーぞ!」

 

 

 それは明確な降伏勧告。しかし明らかに舐められていると感じたヘルメット団達は、それに反発して銃を向ける。

 やはりか、と彼は外からは見えぬが悲しげな表情を浮かべた。

 半ば自棄っぱちになっている彼女たちは、崩壊寸前の士気を無理やり押し留めながら銃を構える。

 

 

「リーダーもひっくり返ってもうダメだ、あいつぶちのめして撤退するぞ!」

 

「うわあああっ!」

 

「あっ、先生!?」

 

 

 退路を開くためにヘルメット団の残存10名は『メタルウルフ』めがけて引き金を引いた。

シロコが叫ぶがマイケルは身動ぎせずにそれを受ける。

 何発もの弾丸が装甲に当たり火花が表面に散るが、僅かに表面に傷をつける程度のダメージしか与えていないことにヘルメット団達が驚愕して引き金から指を離した時、『メタルウルフ』の右手に保持された拳銃が火を吹いた。

 高度なFCS(火器管制システム)で制御された照準による銃撃は違わずヘルメット団の顔面に突き刺さり、その弾殻を破砕して青い染料がヘルメットのバイザーを染め上げ、飛沫が服も汚す。

 当然ながら高速で飛来したためペイント弾といえど衝撃は大きく、ヘルメット団たちは揃って天を仰ぎながら尻もちをつき、何が起きたのかと思考が止まる。

 

 

”君たちに勝ち目はない、降伏するんだ”

 

 

 二度目の勧告、辛うじて動くことができたヘルメット団の一人はバイザーを上げ、自らの状態を確認した。

 銃に破損は見えず、眼の前にはペイント弾を発射した拳銃とショットガンを手にした『メタルウルフ』の姿。

 睨みつける赤い単眼の巨人は、彼女たち威勢の良さが消えた今となってはまさに悪鬼羅刹の如き威圧感を放っており、それに向き合うことに精神的に耐えられるものではなかったのだ。

 

 

「うわああああん!」

 

「もうやだぁぁぁ!」

 

”あっ、おい”

 

 

 全員が泣き喚きながら駆け出す事態にもしかしてとんでもなく酷いことをしてしまったのではと思わず良心が軽く痛み、引き金を引くことも忘れてその背中を見送る事となった。

 その隙をつくかのように先程まで伸びていたヘルメット団員も意識を取り戻すと、まだ倒れている仲間を抱えてアビドスの校門を抜けて全員が引き上げていく。

 

 

『敵性勢力の撤退を確認、泣き虫さんたちはお家に帰っていきます』

 

”……やれやれだ”

 

 

 アロナによる報告を聞きながら、逃げ出す背中を最後まで見送った彼は武器をコンテナへしまうと肩を竦めた。

 

******************************************************************

 

 

 戦いが終わり校庭の片付けを終えたアビドス廃校対策委員会の面々とマイケルは部室に集まり、渡しきれなかった弾薬の引き渡し作業を行っていた。

 アヤネは受け取った弾薬を帳簿に記し、ノノミはお菓子を取り出して皿の上に積み上げ、シロコとセリカは興奮冷めやらぬ様子で先の戦闘を振り返っているようであり、ホシノは再び眠そうに椅子に座って机の上に上半身を投げ出していた。

 全補給物資のチェックを終え一段落したところで、ホシノが積み上げられたお菓子の頂上に手を伸ばしながら口を開く。

 

 

「いやぁ~、今回ヘルメット団も本気で攻めてきたみたいだったけどなんとか勝てたねぇ。先生様々かなぁ?」

 

「そうですね、弾薬の補充があったことで制限なく戦えましたし、あのパワードスーツの登場が決定打になりました」

 

「うん、戦術指揮もよかったし、大人ってすごい」

 

「そうね、いつもと比べて射的みたいな感じだったわ!」

 

「久々に全力射撃できて気持ちよかったですよ~」

 

 

 口々に先の戦闘の感想を述べる彼女たちの言葉を、マイケルは腕を組みながら聞いていた。

 その内容を整理すると、やはりと言うべきか対策委員会の戦闘力の高さが浮かび上がってくる。

 先程の戦闘をシッテムの箱越しに観測していたが、シロコの脚力と思いっきりの良さ、ノノミの凄まじい体幹によるミニガンの立射、セリカの目の良さ、そしてホシノの総合的な戦闘力の高さが目についたものだ。

 もちろんそれを下支えするアヤネも忘れてはならない。

 

 

”君たちの実力あってのことだ。さて、これで全員揃って落ち着いたことだし改めて挨拶をしよう。私は連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの顧問、マイケル・ウィルソンだ”

 

 

 そう言い、取り出したのは5枚の名刺。

 マイケルの顔写真と『メタルウルフ』が印刷され、シャーレのSNS公式アカウントやモモトークの連絡先などが書かれている。

 それを受け取り、対策委員の面々は物珍しそうに眺め、ひとまずはポケットにしまい込んだ。

 

 

「ん、私とノノミ、アヤネはもう先生に挨拶した」

 

「うへぇ~、じゃあ私達も挨拶しないとね~セリカちゃん。委員長やらせてもらってる小鳥遊ホシノだよ先生ー」

 

「うっ……黒見セリカよ。よろしく」

 

”うむ、よろしく。ところで先ほどアヤネに聞こうとしたが、廃校対策委員会について聞かせてもらおうか”

 

 

 マイケルの言葉にアヤネが姿勢を正し、表情を引き締めた。

 

 

「はい、廃校対策委員会とはアビドス復興を目指して有志が集まった部活です。

全校生徒5名が参加する、アビドス唯一の部活でもあります」

 

「他の生徒は全員2年前に去っていった。学校がこの有り様だし、先生が言ってたドバイって街みたいな状況になってるのは事実。

結果としてああいうカタカタヘルメット団みたいなゴロツキが住み着き、学校を襲ってくるようになったの」

 

「連中、定期的に襲撃仕掛けてくるのよ。本ッ当にしつこいぐらいに、何度撃退してもいつの間にか戦力回復してる。

さっきの連中だって、数日前にボコボコにしたはずなのに……」

 

 

 アヤネに続き、シロコ、セリカの話を聞きながらマイケルは思考を走らせる。

 本来ヘルメット団は常に金を稼ぐ為に犯罪行為に手を染めている集団であり、よほど酷くやられでもしない限りは何かしらの金策───誘拐、窃盗、占拠による通行料徴収───をしているはずなのだ。

 もちろんある程度の備蓄があればその頻度は低下し、ヘルメット団の縄張りでも一時的に平穏なこともある。

 しかし話を聞く限りではカタカタヘルメット団は常に損害を被り、戦力回復のために出費を重ねているはずなのだ。

 にも関わらず、アビドス自治区現市街地からの治安維持の要望は今まで連邦生徒会やヴァルキューレ警察学校に届いていなかったようであり、これははっきり言って異常だ。

 そうなってくると浮かび上がる可能性は少ない。その一つはヘルメット団に資金提供者がいるということになる。

 もう一つは独自の安定財源を保有しているというものだが、これはほぼありえないだろう。

 このアビドス高校を狙うヘルメット団ではない誰かが存在するということに思い至り、彼の表情が険しくなった。

 

 

「あの、先生……ちょっとお顔が怖いんですけど……」

 

”ん、あぁ、すまない。アビドスの状況の厳しさを改めて認識したところだ”

 

 

 アヤネが少し引き気味に声をかけ、マイケルは思考を中断した。

 疑惑は深まったとはいえ、まだ確定できるだけの材料がないなら、あえて口にする必要はないと彼は考えたので意図して言葉を濁す。

 

 

「でも、このままだとまた数日したらまたヘルメット団が襲撃してくる。弾薬の不足はなくなったとはいえ、ずっと防戦ばっかりは色々としんどい」

 

「負ける気はしませんけどね~、でも確かにシロコちゃんの言う通りこのままだと襲撃を撃退するの繰り返しになっちゃいそうです」

 

 

 シロコとノノミがこれからのことを考え、あまりにも光明の見えぬ展望に頭を捻る中、ホシノが相変わらずの眠そうな顔をしながら挙手をした。

 

 

「まあまあ、そこで私が考えた作戦があるんだけども」

 

「えっ、ホシノ先輩が!?」

 

「えぇ……」

 

「その反応は傷つくなぁ、おじさんだってやる時はやるんだよ~」

 

 

 先輩のまさかの積極性に思わず声を上げる一年組に不貞腐れながらも、ホシノは対策委員会の全員を見てから言葉を続ける。

 

 

「話は単純で、ヘルメット団は数日周期で再襲撃仕掛けてくるじゃない? だからさ、今このタイミングで私達がヘルメット団の拠点を逆に襲撃するの。

向こうもこっちが襲撃してくるとは思ってないだろうし、補給も先生のお陰でばっちりだし?」

 

 

 そう語るホシノの案は、確かに理にかなっているとマイケルは考える。

 敵の前哨拠点を破壊できれば、アビドスにおけるカタカタヘルメット団の圧は相当軽減できるだろう。

 先ほど想像した通りにパトロンがいるのであれば完全根絶は不可能だろうが、リターンは大きい。

 

 

”悪くないプランだ。兵は神速を貴ぶという言葉もあるし、やるなら早く動くべきだろう”

 

「ほら、先生も乗り気だしさ~、さくっと終わらせて祝杯をあげようよ~」

 

 

 かくして休息もそこそこに、対策委員会とマイケルは反転攻勢のために動き出した。

 対策委員会の士気は高まっており、おそらくこの作戦そのものは成功するだろうと彼は考える。

 だが、問題はその後だということも理解していた。おそらくヘルメット団を倒したところでアビドスを取り巻く状況は改善しないのは明白だった。

 その問題の根幹を調べる必要がある。彼はこの時既に以降の介入の決心を固めていた。

 

 

To be Continued in Chapter Ⅰ-Ⅱ”Drowning in debt”

 

 




パワードスーツで一方的に生身の生徒をしばき倒す展開は好みではないので戦闘描写には割と苦労しています。
相手が戦車やオートマタ兵だったらしばき倒せるのにね、不思議!

用語解説
ドバイ
地球のアラブ首長国連邦(UAE)のかつての最大都市。
オイルマネーで栄えていたが石油資源の枯渇により中東地域全体が衰退、金融センターとしての機能も世界的な経済の混乱により失われ、度重なる砂嵐から復旧する予算に事欠くようになり都市は砂に埋れ、人々は去った。
現在では現地の部族が細々と暮らしており、かつての栄光は見る影もない。
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