METAL WOLF Archive XD   作:W.B.O

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Episode4 ”1 Week Later(1週間後)

 シャーレの先生、マイケル・ウィルソンが七囚人狐坂ワカモと共にヴァルキューレ、SRTの追跡を逃れて姿を消してから1週間。キヴォトスはかつて起きた連邦生徒会長失踪時ほどではないものの、混乱の渦中にあった。

 

 事の始まりはというと、彼とワカモが行方をくらませてから直ぐ、ヴァルキューレによる指名手配がなされたと同時に連邦生徒会防衛室が発表した声明にある。

 

 

『シャーレの先生は密かに自身の破壊欲求を満たすべくワカモと手を組み、襲撃事件を起こした』

 

 

 この一連の出来事は多くの学校にとってまさに晴天の霹靂というものであり、驚きをもって受け止められた。まさか、あのシャーレの先生がと数多の学校が衝撃を受ける中、一番最初に行動を起こしたのはアビドス高等学校であった。

 

 

『うへー、何より正規の手続きを重要視していた先生がそんな事するわけ無いでしょ、何寝ぼけたこと言ってんの連邦生徒会は。私達があれだけ苦しんでる時に助けてくれなかったくせに、こういうときだけ手の早い。本当の暴力ってやつを教えてあげようか?』

 

 

 シャーレが始動してから最初の事件、今ではアビドス事件として知られる一連の騒動の中心であったアビドスでは連邦生徒会に対する不信感が強く、シャーレの先生(マイケル・ウィルソン)への信頼が厚いことから連邦生徒会側の主張に反発、会長代行である小鳥遊ホシノが半ば脅迫めいた声明を発表した。学園の規模が最もキヴォトスで小さいことからこの時点で大きく広まることはなかったが、連邦生徒会に対し学園側が反旗を翻す最初の例となった。

 

 そして続けて三大校(BIG3)たるミレニアムサイエンススクール、トリニティ総合学園、ゲヘナ学園が情報公開を求める声明を連名で発表。しかしヴァルキューレ及び連邦生徒会防衛室は捜査中の案件であり、公開は差し控えると返答したことで事態は急展開を迎える。

 

 

『禄に仕事も出来ないくせに、我々に情報を公開すること無くシャーレの先生を犯罪者扱いする連邦生徒会にどうして従う必要があるのか?』

 

 

 そのような主張が三大校の中核に近い人物から非公式ながらも飛び出し、どういうわけかインターネットの海に広まったのだ。連邦生徒会長失踪以降影響力を低下させ続けていた連邦生徒会にとって、それは無視できるものではない。

 

 しかし、シャーレの先生(マイケル・ウィルソン)に多くの業務を肩代わりさせていた現行体制は彼の指名手配とそれに伴う失踪により完全に麻痺し、反連邦生徒会の動きを強める各学園に対し介入する手立てなど無かった。このままではキヴォトス内戦(Civil War)待ったなしという程にまで緊張が高まっていた。

 

 ここまでシャーレの先生(マイケル・ウィルソン)が消息を絶ってから僅かに3日、この時点でキヴォトスは崩壊寸前に陥っていたのだが、再び事態は急変する。更新が止まっていたSNSのシャーレのアカウントに、シャーレの先生(マイケル・ウィルソン)によるものと思しき新たな書き込みがあったのだ。

 


 おはよう諸君、皆心配していると思うが私は無事だ。少々引っ越し作業が立て込んでいたので報告が遅れてしまったことは申し訳ない。早速本題に入るのだが、今回の件に関して言えば私は無実である。どうやら何者かが私をハメようとして事件を起こし、その罪をなすりつけてきたようだ。だが、どうか心配しないでほしい。私は私の無実を必ず証明するつもりだ。

 

 それと、この件で連邦生徒会やヴァルキューレの子たちを責めないでもらえないだろうか。彼女達だってただ自分に与えられた仕事をしていただけに過ぎないんだ。


 

 自らの無事と無実を訴え、さらには連邦生徒会側への配慮も含まれていた書き込みの効果は絶大で、連邦離脱すら検討されていると噂された三大校の動きはまたたく間に鳴りを潜め、見た目の上ではキヴォトスは平穏を取り戻したように思えた。だが、肝心のシャーレの先生(マイケル・ウィルソン)の行方は分からぬままで、連邦生徒会も業務が麻痺した状態から改善することはなかった。

 

 今回の書き込みから多くの凄腕のハッカー達がシャーレの先生(マイケル・ウィルソン)の居場所を探ろうと画策したが、複雑に迂回し、かつ暗号化されたIPを探るのはかのヴェリタスであっても不可能であった。()()明星ヒマリですら断念したというのだから、今彼がいるであろう隠れ家のセキュリティの高さは異次元レベルといえるだろう。

 

 だが、それでも彼の居場所を探るために数多の学校が人材を投入した。身内に抱え込めば優位に立てるという打算や、純粋に保護したいという善意など様々な思惑が複雑に絡み合い、各校の裏方が暗躍する。このような行いを抑止するのは本来連邦生徒会の仕事だが、もはやあの組織にそのような力は残っておらず、積み重なる書類の山の前に役員達はすり減らされていった。

 

―――第二の事件

 

 シャーレの先生(マイケル・ウィルソン)による書き込みがなされた次の日の夜、D.U.にほど近いブラックマーケットの一つが襲撃されて壊滅する。このブラックマーケットは規模自体はそれほど大きいものではなかったのだが、それなりに強力なマーケットガード(私設軍)を保有しD.U.に決して少なくはない影響を及ぼしていた。

 

 だが、そのマーケットガードも襲撃者に対しては全くの無力であり、またたく間にブラックマーケットは火の海となる。この場所に住み着いていた不良生徒も焼け出され、元々住む場所がない故に流れ着いた彼女達は再び路頭に迷う羽目になった。焼け野原になったブラックマーケット跡地に難民キャンプが生まれ、それに伴う治安の悪化はD.U.へと及ぶ。

 

 D.U.の治安の悪化はヴァルキューレの業務を圧迫し、ただでさえ予算不足に喘ぐ彼女達にさらなる苦労を押し付ける事となった。当然、ヴァルキューレはブラックマーケット襲撃犯の正体を追うべく捜査を行ったのだが―――被害者の証言及び監視カメラの映像から、狐坂ワカモ及びメタルウルフの関与が濃厚とされた。

 

 無論、ヴァルキューレはその事を公表するのだが―――待っていたのは他学園からの反発。既にシャーレの先生(マイケル・ウィルソン)指名手配によって他校からの信頼が地の底に落ちているヴァルキューレの言うことなど誰が信用するというのか。一度は収まった内戦の気配が再び色濃くなっていく。

 

―――第三の事件

 

 それから数日の後、今度はD.U.とトリニティの境界近くでスケバンとヘルメット団が抗争している所に再びワカモとメタルウルフが現れ、周囲の建物ごと叩きのめした。被害は甚大で、D.U.のみならずトリニティ自治区にも戦火が広がり多くの建物が倒壊する。

 

 今回は今までの事件とは違い、鎮圧のために出動していた正義実現委員会とヴァルキューレ双方からも目撃情報が出た。今まで被害者による証言か、あるいは監視カメラの決して鮮明とは言えぬ映像を参考するほか無かったのだが、多くの生徒に目撃されたというのは大きな変化だ。

 

 彼女達に目撃されたのは、3m級の濃紺色の機械の巨人。赤い単眼に背中には巨大なコンテナというその出で立ちは確かにシャーレの先生(マイケル・ウィルソン)が操るメタルウルフの特徴と合致する。夜の闇というカーテン越しであるため細部まではわからないが、形状はほぼ一致しているように思えた。

 

 ここに至り、トリニティもヴァルキューレ及び連邦生徒会が適当にでっち上げて先生(マイケル)を指名手配したわけでもないという事を理解する。対立の緩和が進んだのは不幸中の幸いというべきだろうが、事件の根本が解決したわけではない。結局襲撃犯には逃げられてしまい、その正体を掴むことはできなかった。

 

 

―――そして、シャーレの先生が姿を消してから7日目の朝が訪れる。

 

 

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 穏やかな光が窓から差し込み、外からは鳥の囀りと水が流れる音が聞こえてくる。キヴォトスではたとえ真夜中、早朝であったとしても銃声の一つや二つは聞こえてくるものだが、ここ数日周囲からそのような音は聞こえてこない。何故なら、周囲数キロの範囲で人が居ないからだ。

 

 

”朝か……ふぁぁ、流石に徹夜はするもんじゃないな”

 

 

 タブレット(シッテムの箱)で夜通しの作業を終え、先生(マイケル)は大きなあくびをしながら窓の外へと顔を向ける。植物に侵食される形でひび割れ、崩落寸前な高層ビルが立ち並ぶ区画、その様々なフロアからはまるで滝のように水が流れ落ちていた。

 

 ここはミレニアム自治区にある廃墟と呼ばれる不可侵領域。かつてはデカグラマトンと呼ばれる人工知能(自動販売機)が兵器工場AIを感化することで軍隊を生産しながら潜伏していた危険地帯であったが、既に両者がこの地から去ってから久しい。

 

 今彼が居るのはそんな廃墟の奥、かつて水没地帯と呼ばれた場所に隣接する区画にある廃マンションの一室。訪れた当初は部屋は埃にまみれていたが、ワカモと協力して掃除した結果新築みたい……とは言わないものの、住む分には何ら問題ないレベルとなっていた。電気はメタルウルフから引けば良いし、水そのものは豊富。サバイバルキットに浄水器があるので飲料水にも困らないという、適当に見繕ったにしては中々に優れた物件と言えるだろう。ついでに言えば家賃だって必要ない。

 

 

「先生、朝食の用意ができました」

 

”ン……おお、すまんな”

 

 

 部屋のドアが開き、良い匂いを漂わせながら食事が載せられたお盆を手に入ってくるのはエプロン姿のワカモ。まるで新婚さんのように見えるのだが、実際同棲状態にあるのでそうとられてもおかしくはない。もしこの光景を今は亡きリチャード・ホークに見られたら、果たして一体どんな煽りをしてくるのか。

 

 

「どうぞ」

 

 

 ワカモが差し出したのはホカホカの白米に豆腐とわかめ、そしてネギが少々乗った味噌汁に、焼いたアジの干物。典型的な百鬼夜行風の朝食だが、先生(アメリカ人)からすればあまり馴染みがないタイプである。とはいえ、7日も彼女お手製の料理を食べ続けていれば慣れたもので、箸を器用に使い食事を口へと運んでいく。

 

 さて、隠れ家で潜伏しているというのに新婚みたいなことをしているのかと言えば―――ワカモがそれをしたがっていたという以外に、一応の理由はあるのだ。

 

 1週間前、隠れ家にたどり着いた二人はこれからの事について話し合い、まずは情報収集を行うという事で双方意見は一致した。シッテムの箱というキヴォトスにおいて無法なデバイスを保有している先生(マイケル)SIGINT(電子的諜報)を行うと決めたのだが―――ハッキングしたり、電子の海から情報を拾い集めたとしたとして、それを整理するにも労力が必要になる。

 

 しかし、この隠れ家にいるのはワカモと先生(マイケル)の二人だけ。大統領職に就いていた時と違い補佐役が居ない以上、彼が全てをやるほか無い。アロナという優秀な秘書こそ居るが、最終判断を下すのは人間の役目である。結果としてシッテムの箱で沢山の情報を収拾すればするだけ、それを整理する時間が増えていき―――それ以外に出来ることが無くなってしまったのだった。

 

 正直な所シャーレ時代のほうがまだ休めたぞと言いたくなる状況であったが、全ては自分の無実を証明するため。故に情報収集作業は手を抜くことはできず、そのために睡眠時間を削る彼の健康のためにせめて食事だけは―――そんな思いから、ワカモは彼の身の回りの世話をしているのだ。しかも、態々ミレニアム自治区の市街地まで降りて聞き込みがてらに食材の購入までしてくるという気の入りようである。

 

 

「どうですか先生、私の料理は」

 

”毎回言うが、君は料理屋やっても大成すると思うよ”

 

 

 食事の度に味はどうかと聞いてくるワカモであるが、百鬼夜行風の食事に不慣れな先生(マイケル)の為にあの手この手の試行錯誤を重ねているので不安なのだ。だがその配慮は決して無駄ではなく、彼はこれまで1度も彼女の料理を残したことはない。

 

 今回も褒められ、嬉しそうに尻尾が揺れるワカモの姿を微笑ましく思いながらも先生(マイケル)はここ1週間、ずっとシッテムの箱を通して行ってきた電子的諜報の結果について考える。

 

 

(”監視カメラの映像はハッキングされて差し替えられていた。連邦生徒会のセントラルネットワークをハッキングできる能力を持つものは多くないが、全く察知されずに潜り込むとなるとヒマリやリオだって無理だろうな……”)

 

 

 まず、自分の関与の証拠とされた監視カメラの映像だが、これは間違いなく捏造されたものであった。カンナはハッキングなど不可能だと言っていたが、交通室の監視カメラのデータ保管用サーバーに明らかに外部からアクセスした痕跡が存在していた。

 

 それはシッテムの箱でなければ気づけぬほど巧妙なもので、ヴァルキューレや連邦生徒会の役員が気づかなかったのも無理はない。とはいえ、そのせいで指名手配された身としてはそのくらいは気づいてくれよと言いたくなる気持ちもある。

 

 

(”S.C.H.A.L.Eのシステムにもハッキングの痕跡があった。あれはチヒロが組んだ相当にガチガチのセキュリティがあったはずだが、まるで合鍵でも持ってるかのようにするりと入り込んでいる。かなりの凄腕ハッカーのようだが、何の目的で?”)

 

 

 シャーレのセキュリティにもハッキングされた後があり、こちらも監視カメラの映像が差し替えられるという被害が生じている。むしろそれ以外の被害が無いのが不気味なのだが、それが逆に犯人の狙いを分からないものとしていた。

 

 連邦捜査部シャーレのメインサーバーには多くの機密情報が収められており、その内容は多種多様。最悪学園がひっくり返るレベルの情報すら入っているが、そちらに手を出した痕跡はない。普通、ハッカーというものはこういう機密情報には飛びつくイメージがあるが―――この犯人はまるで興味がないのか、あるいは()()()()()()()()()()、まるで避けているというレベルでノータッチだ。

 

 

(”まあ、メインサーバーは常時アロナが監視しているから下手に触れば逆に焼かれる危険性がある。それを察知したとみれば、中々勘が良い奴と見て間違いないだろう。他には―――ハッキングと言えば、ミレニアムの基幹システムがオフラインになっていたな。以前はそんな事はなかったはずだが、何時からだ?”)

 

 

 そして、シッテムの箱でキヴォトス全体に対してハッキングを敢行していた中、唯一鉄壁の防御を誇っていたのがミレニアムであった。まさかシステムをネットワークから丸ごと切り離しているというのは彼にとっても予想外なのだが、それは不便を強いるということとイコールである。

 

 本来高度なネットワーク化されたシステムに依存しているのを無理やり遮断しているということは、通常の業務処理すら滞っているはず。にも関わらずそうしているというのは、まさにその必要があるからだ。ネットワークに接続していては危険だと認識しているような―――

 

 

(”……もしかしたら、ミレニアムはこのハッカーについて何か知っているのかもしれないな。なんとかして接触できないものか”)

 

「あの、あなた様? もしかして、お口に会いませんでしたか……?」

 

 

 そこまで考えが及んだ所で、食事の手が止まっている先生(マイケル)にワカモが見るからに不安そうな表情を浮かべながら恐る恐るといった様子でワカモが覗き込んできた。どうやら料理の味に問題があったのかと思っているようだが、そんなことはないので安心させるためにニッコリと笑って止まっていた箸を進める。

 

 

”いやいや、考え事をしていただけさ。ただ、そろそろアクションを起こす必要がありそうだな……昨夜も偽物が出たらしい。今度はトリニティとの境界線だそうだ”

 

「またですか……本当に許しがたいですね、私の偽物ならまだしも先生の偽物だなんて」

 

 

 メタルウルフとワカモの偽物が引き起こした第三の事件のことは既に大きく報道されており、インターネットに接続すれば嫌でも目につく。特にクロノスのように煽り立てるような報道機関のニュースを見れば、まるでシャーレの先生(自分)が極悪人であるかのように思えてしまうものだ。

 

 

”この件、関与しているのは今のところ3人は確定している。私の偽物、ワカモの偽物、そして監視カメラを書き換えているハッカー……それでだ、このハッカーについてだが、ミレニアムがなにか知っているのではないかと私は睨んでいる。だから今日は、ここの生徒会(セミナー)に接触しようと思うんだ”

 

「先生が自ら動かれるのですか?」

 

”ああ、公式なアポが取れない現状では機会を見て接触するほかない。ミレニアムの学園敷地に潜入して、ユウカあたりとコンタクトを取れれば最高だが……最悪、特異現象捜査部の部室に行くことも考えている”

 

 

 一週間の潜伏期間を経て、ついに動くという先生(マイケル)の言葉にワカモの顔が引き締まる。今までは敵の狙いが読めぬ以上、下手に痕跡を残すべきではないと対外的な活動を控えていたのだが、それが仇となって悪名が広がるのならばやむを得ない。

 

 食事を終えた二人は片付けの後、ミレニアムへの移動に向けての準備を行う。拠点はまだ引き払わないが、出来る限り痕跡を残さぬようにと丁寧に隠蔽工作を行い―――二人は廃墟を後にした。

 

 

 

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 ミレニアムサイエンススクール生徒会、セミナーの会計である早瀬ユウカは明らかに不機嫌という表情を隠すこと無く、周囲の人々を怯えさせながら歩いていた。ここまで彼女を不機嫌にさせている原因は様々あるが、どれが一番割合が高いかと言えば会計処理業務だろう。

 

 今まで各部活、部署の予算の会計処理はアプリケーションを使えば簡単に行えていたのだが、ここ一週間ずっと紙でのやり取りを強いられていたせいでユウカのストレスはマッハである。ホコリを被っていたFAXを使い、あるいはミレニアムの敷地を駆けずり回り、手に入れた情報もいちいち手動で入力する必要があった。ただでさえセミナーの仕事は大変だと言うのに、前時代的なやり方を強要されているのだから無理もない。

 

 シャーレに助けを求めようにも、例の事件で先生(マイケル)が姿を消しているためどうにもならない。失踪当初は彼のアカウントに鬼電をかけたものだが、一切反応が無いとなればそれ以上続けるのは合理的ではないと諦めていた。諦めていたのだが―――

 

 

「何なんですか、突然メッセージが来たと思えばこんな人気のない公園の座標だなんて……!」

 

 

 つい1時間ほど前、ユウカのアカウント宛に先生(マイケル)からDMが届いたことで事態は急変する。内容はミレニアムの敷地内にある人気のない公園の座標と、一人で来るようにという指示。激務におされて頭が茹だっていたこともあり、彼女は先生(マイケル)からメッセージがきたという事を誰にも言わずにホイホイと乗ってしまったわけである。

 

 

「……誰も居ない。こんなときにいたずらをする人ではないはずだけども」

 

 

 指示された座標に到着したユウカであるが、そもそもミレニアムの隅にひっそりと存在する公園にわざわざ訪れるミレニアム生など殆ど居ないためひっそりとしている。物陰に誰か隠れているのかと探したものの、成果は何も得られなかった。

 

 

「もう! 一体何なんですか!」

 

”ハァイ”

 

「……あれ? 今、先生の声が―――」

 

”ハァイ、ユゥカァ”

 

「きゃあ!?」

 

 

 一体何のつもりなのかと怒りを表すユウカの耳に微かに飛び込んでくるのは、聞き覚えのある男性の声。聞き間違いではないのかと一瞬疑ったが、次の瞬間はっきりとした声が足元から聞こえてきた。

 

 公園の隅の隅、雨水が流れ込む排水溝の隙間、その闇の向こうから覗き込む双眸。思わず悲鳴を上げて尻もちをつくユウカであるが、それが先生(マイケル)のものと気づくと目を丸くしてスカートを押さえる。一応中は見えない角度であったのだが、恥ずかしさに顔を赤らめながらも姿勢を変えて排水溝を覗き込んだ。

 

 

「先生……ですよね?」

 

”そうだな、お探しの通りの連邦捜査部S.C.H.A.L.E顧問のマイケル・ウィルソンだ。そして君は早瀬ユウカ。ちょーっとばかり諸事情によって太陽の下を歩けない身になってるのでこんな形で失礼させてもらうが―――”

 

 

 少々おどけた感じで挨拶する先生(マイケル)であったが、それに対してユウカはというと、排水溝に腕を突っ込みその襟首を掴むという行為をもってその返答とした。

 

 

”ぐえっ!?”

 

「先生! 今まで一体何処に居たんですか!? 私達、ものすごく心配で心配で……!」

 

 

 キヴォトス人の膂力で襟首を掴まれ、思わずカエルが潰れたような声を出してしまう先生(マイケル)。後ろに控えていたワカモは一瞬銃口を向けたが、ポロポロと涙を零しながら思いの丈を吐き出すユウカの姿に何も言わずにそっと下ろす。

 

 以前の彼女であれば問答無用で発砲したであろうが、多少は他人を慮る事ができるようになったのは成長と言えるだろう。あるいは、7日間の同棲生活を経てただ正妻面しているだけなのかもしれないが。

 

 

”……あー、まあ、そのだな。つまり、キヴォトスで鳴らした私は濡れ衣を着せられ当局に逮捕されたが、拘置所を脱出して地下に潜った。だが、地下で燻っているような私ではない。見えざる敵を探るためにここ1週間ずっと情報収集を行っていたわけだ。今まで連絡ができなかったのは……居場所が露見する可能性を出来る限り下げたかったからだな”

 

「見えざる敵……ですか?」

 

”ああ、そうだ。例の事件が私の姿を騙る偽物の手によって行われているんだが、その正体と目的はいまだに不明。ただ、収穫が何も無かったわけではない……証拠を捏造し、ヴァルキューレを動かした謎のハッカーの存在は掴んだ。今日君を呼んだのは他でもなく、そのことについてミレニアムに聞きたいことがあったからだ”

 

「そうだったんですね」

 

 

 ユウカとしては、先生(マイケル)の口からはっきりと暴れているものの正体が偽物であるとはっきり明言されたことにホッとする思いであった。SNSアカウントでの声明は乗っ取りの可能性があるためはっきりと断定できなかったのだが、こうして直接聞けたことの安心感たるや。

 

 しかし、同時に彼の語る犯人グループについての説明を聞き、彼女は思わず薄ら寒い気分となる。まさか、まさかという思いがだんだんと強くなっていくが―――

 

 

”……相手のハッカーはだな、連邦生徒会のセントラルネットワークやチヒロ謹製のS.C.H.A.L.Eセキュリティに軽々と侵入する能力を持っている。まるで()()()()()()()()かのような鮮やかさ故に後手に回っているというのが正直なところだ”

 

「………」

 

”……ユウカ?”

 

 

 ()()()という思いが()()()()()に変わり、思わず天を仰ぐユウカ。その様子に先生(マイケル)も怪訝な表情を見せ、恐る恐るといった様子で問いかける。

 

 

「……そのことについて、実はシャーレのというか先生とお話したいことがありまして」

 

”あー、まあ、そのだな、とりあえずリオやリツコ、それにヴェリタスのヒマリとチヒロも呼んで話し合おうじゃないか、な?”

 

 

 半ば死んだ魚のような目をして協議を持ちかける彼女の姿に、先生(マイケル)は若干顔を引きつらせながらそれを受諾した。どうやらハッカーはミレニアムと関係があるのではという予想は的外れでは無かったようだが、それにしたって彼女の憔悴っぷりはひどいものだ。

 

 

「わかりました……大至急連絡を取るので、先生はそこから動かないでくださいね? また居なくなるだなんて、私……嫌ですから」

 

”……やれやれ”

 

 

 そこに居ろと強く念を押し、この場を去るユウカの背中を見送った先生(マイケル)は、まるで肺の中の空気を全て吐き出すのではと思えるほどの大きくため息を付くと、排水口の中で肩をすくめる。後ろで控えているワカモの視線が突き刺さるが、それはあえて無視することとして彼はユウカが戻ってくるのを言われたとおりに待ち続けた。

 

 

 

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 ミレニアムの地下は多数のトンネルが走っている。送電線、通信ケーブル、ガス、上水道、下水道など様々な生活インフラがまるでクモの巣のように張り巡らされているのだ。特に通信ケーブル網はかつてHub、そして今ではホドと呼ばれている巨大なメカが整備していたこともあり、直径にして10メートルは超える巨大なトンネルとなっていた。

 

 それほど巨大なトンネルともなれば、その一角にほんの小さな部屋を接続させたとしても誰も気づくことはないだろう。ミレニアムサイエンススクール生徒会、セミナーの会長を務める調月リオもそのつもりでここにセーフハウスを作ったのだ。

 

 

「こんなセーフハウスがいくつもミレニアムの各地に存在するらしいんですよね、リオ会長の私費で作っているらしいとはいえ、ミレニアムの資産を勝手に使っているのには変わりませんけど」

 

”ハハハ、手厳しいなユウカは”

 

 

 セーフハウスに到着早々、彼をここまで案内してきたユウカは秘密裏に作られているセーフハウスに対する不満を口にする。先の事件でリオがやらかした横領の件は根深く、その処理に忙殺されていた彼女としてはその痕跡を見る度に小言の一つでも口にしたくなるものであった 

 

 

「……」

 

「ンフフ、久しぶりだなぁ先生。ああ、怪我については痕も残さず完治したから安心してくれよ」

 

 

 そして、ユウカの小言を耳にして苦悶の表情を浮かべるリオと、相変わらず何処かで見たような笑みを浮かべるリツコのセミナーの2トップに―――

 

 

「お久しぶりです、先生。この誰もが認めるミレニアム最高の天才清楚系病弱美少女ハッカーである私の力が必要なのですね?」

 

「はぁ……そういうの、一々言わなきゃ気がすまないの? ほら、お客さんがびっくりしてるじゃない」

 

 

 ヒマリとチヒロ、反セミナーを掲げるヴェリタスのトップが肩を並べているという本来であれば異常とも言える状況も、先生(マイケル)が呼んだという点を差し引いたとして今回の件がどれほどミレニアムにとって危機的なものであるかと言うことを示していた。

 

 

”久しぶりだな諸君、こうして顔を見ることができて私は嬉しいよ。さて、既にユウカからある程度は聞いているとは思うが、こうして皆に集まってもらった理由は他でもない。今私は何者かから攻撃を受け、指名手配というレッテルを張られるに至った。その原因の一つに、連邦生徒会交通室が保有する監視カメラの映像が差し替えられたというのがある”

 

 

 先生(マイケル)が早々に今回の話し合いの場を設けた理由を話すと、リオとリツコ、そしてヒマリとチヒロがお互いの顔を見合わせる。それがどれほど難易度の高いものであるのか、この場にいる全員が理解している証だ。

 

 連邦生徒会は仮にもキヴォトス全土を統治する行政機関であり、その保有する機材はキヴォトスの中でも劣るものではない。特に中枢であるサンクトゥムタワーはオーパーツといっても差し支えなく、それに付随する各種行政システムはミレニアムであっても手を出せるものではなかった。

 

 監視カメラの映像を記録しているサーバーはサンクトゥムタワーの機能によるものではなく一般的なものだとしても、セントラルネットワークに繋がっているのであればそのセキュリティは最高レベルのもの。ヒマリは天才ハッカ―、もとい天才清楚系病弱美少女ハッカーを自称しており、実際にキヴォトスでも最高レベルの能力を保持しているが、セントラルネットワークへのアクセスは中々に骨が折れる仕事となる。

 

 それを成し遂げ、かつヴァルキューレにも露呈させないほどの実力を持つハッカーとなると、彼女達の中で思い当たるのは一人しか居ない。

 

 

「あー……やっぱあいつかねぇ、そんな事が出来るのは」

 

「可能性は高いわね、でも……」

 

”可能性レベルでも、思い至れるのなら私は知りたいものだがね”

 

 

 セミナーの二人が意味深に小声で話すのを先生(マイケル)は聞き逃さない。机に身を乗り出して見た所、リオはやや言いにくそうにしていたが、リツコの方はかなり頭にきているのか、全てをぶちまけるように話し始めた。

 

 

「先生が言うようなレベルのハッキングが出来るやつは、確かにミレニアムの生徒に居る。いや、正しくは居たというべきかねぇ……」

 

”その生徒は、チヒロの組んだセキュリティも突破できるのか?”

 

「私のセキュリティって……シャーレもハッキングされたの? まさか、あれを?」

 

 

 先生のために特別に用意した強力なはずのセキュリティを突破されたという話に、チヒロは驚きを隠せないでいた。ヒマリがハッキングしようとしてもかなり困難なレベルの防壁を作ったつもりだが、それを突破されたと言うのは到底信じられるものではない。しかし、リツコは当然だろうといった様子で話を続ける。

 

 

「あいつの手にかかればパスワードなんてあって無いようなもんだ。しっかし、散々問題引き起こした挙句に行方をくらまし、今回の件に関わってるとなれば擁護できるわきゃねえなぁ。退学処分も考えたほうがいいんじゃねえのか?」

 

「リツコ、まだそうだと確定していない事をそうだと話すのは良くないことよ。何かしらの理由があるかもしれないわ」

 

「リオ……貴女本当に成長しましたねぇ。最初からそういう姿勢でいてくれれば、私達だってもっと別の関係性でいられたでしょうに」

 

「その点についてはヒマリと同意見。でも、それほどの能力を持つ生徒が居ただなんて初耳なんだけど」

 

 

 問題の生徒に対して強硬な発言をするリツコを諌めるようにリオが口を挟むが、その内容にヒマリとチヒロは感慨深そうにしていた。ほんの数ヶ月前までビッグシスターとして冷酷な独裁者気質で取り仕切っていたはずなのに、すっかり個別の事情まで勘案するようになっているだなんて、どれもこれもシャーレの先生(マイケル・ウィルソン)が来てからだ。

 

 ゲーム開発部、そしてデカグラマトン、AL-1Sもといアリスを巡る一連の騒動を経てセミナーも随分と風通しが良くなったものだが、しかしチヒロの作ったセキュリティや連邦生徒会のセントラルネットワークにハッキング出来る生徒というのは初耳である。その事を問い質した所、リオはバツが悪そうにそれに答えた。

 

 

「……以前、セミナーの業務に役立つ能力を持つ1年生がいたのよ。だからスカウトしたのだけれども―――」

 

「そいつがとんでもない奴でな、早々にミレニアムの予算ぶっこ抜きやがった。保安部長として看過することはできないから速攻ボコボコにしてセミナーをクビにしたが……」

 

「仮にもセミナーの機密情報を扱った生徒である以上、矯正局に収監するわけにもいかないのでミレニアム内部で勾留していたんです。ですが、時折脱走しては周囲に色々な被害をもたらして……」

 

「……すごい問題児が居たものだね、うちの子たちよりタチが悪いなんて」

 

 

 セミナーの3人が語る対象生徒の実態にチヒロは驚いたというか、呆れたと言うか、何ともいえぬ表情を浮かべた。問題児というレベルを遥かに超越しているその内容は、彼女としても呆れるほか無い。それに比べたら音瀬コタマの盗聴趣味や小塗マキの落書き趣味なんて可愛いものだ。

 

 

「それで、その子の名前は? ヒマリは知っているかもしれないけど、私は勿論、先生だって知らないだろうし、そこのところの情報は開示してもらわないと」

 

「そうね……」

 

 

 せめて名前ぐらいは出せ―――そういうチヒロの指摘に、リオは確かにと納得した様子で口を開く。

 

 

「その生徒の名前は、黒崎コユキ。セミナーでは”白兎”というコードネームで呼んでいるわ」

 

 

 

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 D.U.外郭地区、連邦捜査部シャーレのビルは今やかつての賑わいは鳴りを潜め、全フロアをヴァルキューレの生徒が闊歩している。カフェも訪れる生徒がなくなり閑古鳥が鳴き、かつての自由な空気が失われ、居住区に住まう元不良は追い出されこそはしなかったものの、何とも肩身が狭そうにしていた。

 

 そんなシャーレのビルの前に一台の車がやってくる。連邦生徒会のマークが付けられたその車から降りるのは、防衛室長である不知火カヤ。正面入口前に並ぶヴァルキューレ生が敬礼して迎えると、彼女は答礼してビルへと入る。

 

 

「お待ちしていました、防衛室長」

 

 

 ロビーで出迎えるのはヴァルキューレ公安局長の尾刀カンナ。ヴァルキューレ警察学校は防衛室の直下の組織であるため、カヤとカンナは上司と部下の関係といえるだろう。カヤはニコニコとした顔を崩す事無くカンナを見上げた。

 

 

「シャーレの捜査の方はどうなっていますか?」

 

 

 防衛室長という立場にあるカヤがシャーレを訪れたのは、シャーレの先生とワカモによる連続襲撃事件の捜査状況の進捗確認と指導という名目。早々に目的を果たすべく彼女は問うのだが、カンナは進みがあまり良くないのか、浮かぬ顔をして答えた。

 

 

「監視カメラの映像は既に回収していますが、メインサーバーは完全にロックされていてアクセスできません。一応、残された物理的な書類は押収していますが、まあ……殆どは連邦生徒会が出している仕事関係の書類でしたね」

 

「なるほど、その書類の進捗状況はいかほどでしたか?」

 

「逮捕当日に提出するべき書類は殆どが終わっていました。先生は戦闘のみならず、事務処理についても高い能力を持っているようですね、羨ましいものです」

 

「リンが結構な量を押し付けていると聞いていましたが、それを捌き切るとは……あの人も一種の()()と呼ぶべき人種なのかもしれませんね」

 

 

 ヴァルキューレはシャーレを占拠し、ワカモと先生(マイケル)が共謀していたという証拠を探すべくシャーレに残されたあらゆるものを押収していた。監視カメラの映像、連邦生徒会から送りつけられていた各種書類、普通に考えればそんなところには無いだろうと言いたくなるような些細なものでさえ彼女達は差し押さえていたが、()()()()()()()()()()には彼がワカモと共謀していたという事実は見つけられないでいた。

 

 逆に、シャーレの先生(マイケル・ウィルソン)が真っ当に仕事をしている証拠だけが積み重なっていくことにヴァルキューレの生徒達は戸惑うばかり。監視カメラの映像と、実際の彼の痕跡に乖離が大きすぎるのだ。

 

 

「……防衛室長、本当にこの事件はシャーレの先生が関与しているのでしょうか?」

 

 

 執務室のあるフロアに向かうべく外付け式エレベーターに乗り込み、二人きりとなったところでカンナは問う。元より彼の関与に懐疑的であった彼女としては、あまりにも腑に落ちない所が多すぎたのだ。

 

 

「カンナ、そう思うのは当然だと私だって思いますよ。ですが……世の中は正しさだけで回るものではありません」

 

「……っ!」

 

「どれだけ気高い理想を掲げようとも、結局のところ最後にものを言うのは権力とお金です。そして一度でもそれに屈してしまえば、もはや理想というのは形骸に成り果てる……それくらい、貴女も良く分かっているでしょう?」

 

 

 対し、カヤは先程までのニコニコとした表情を一変させ、僅かに目を開くと横に長い瞳でカンナを睨みつけるように見上げた。エレベーター内の雰囲気が一変し、冷たい汗がカンナの背中を伝う。彼女の言葉は、明らかにこの件が何者か―――そして、それが誰なのか大凡予想がつく―――の手によって仕組まれていたことを匂わせるものであった。

 

 

「私とて現状に思う所はありますが―――結局、世の中を動かすのであれば、まずは権力の座につかねばどうしようもありません。しかし、その地位におさまるために誰かの手を借りれば、最終的には見返りを求められてしまう。私も、貴女も、そういう立場にありますからね」

 

 

 そう言い、カヤは上昇するエレベーターの中からD.U.の街並みを見下ろす。遠目には平穏に見えるものの、どこかで銃声が鳴り響き、爆弾が爆発するのがキヴォトスの日常風景だ。

 

 

()()()()、私達は自由に動く事ができません。ですが―――もし先生が本当の超人ならば、この状況をひっくり返して面白いことになるかもしれませんね」

 

 

 カヤは小さく笑い、肩を震わせる。彼女自身、現状は決して面白いものではない。カイザーからは早くシャーレの先生(マイケル・ウィルソン)を捕らえろと急かされつつ、その罪状をより重くするための偽旗作戦によって市民への被害が生じているのは正直な所容認できるものでは無かった。

 

 だが、今までの()()()()を盾にゴリ押しされては告発することもできず、かといって言われた通りに捜査を進めれば、現場からは”自分たちは正しいのか”と疑問を呈されるという苦しい立場に置かれているわけであり、どうせなら先生(マイケル)が自力で何とかしてくれはしないかなという願望を抱くに至ったのだが―――それはともかくとして、この一件をうまく利用して連邦生徒会長、あるいは代行としての地位につきたいという野心もある。

 

 

「まあ、ですが言われた通りのことはしておきましょう、()()()()()()。この後に正しいことをしたいのならば、今の地位から引きずり降ろされるわけにはいかないので」

 

「……っ、わかりました」

 

 

 振り向き、何時ものようなニコニコとした表情に戻ったカヤはカンナに対して釘を差す。余計なことを考えず、()()()()言われた通りに事を進めろという言葉に彼女はただ応じるほか無かった。

 

 

「ふふっ、物わかりの良い人は好きですよ……と、到着ですか。さて―――」

 

 

 そんなカンナの態度を褒めた所でエレベーターは目標フロアに到着し、到着チャイムが鳴ってドアが開く。降りた先、エレベーターホールで待っていたのはSRTの制服に身を包んだ12人の生徒達。先頭に居るのはFOX小隊の七度ユキノ、彼女は一歩前に出てカヤとカンナを出迎えた。

 

 

「お待ちしていました不知火室長、そして尾刀局長。FOX、HOUND、RABBIT各小隊、全員が既に待機しています」

 

「……では、早速始めましょうか。ヴァルキューレ警察学校とSRT特殊学園が共同して行う初の合同捜査、ウルフハント作戦を」

 

 

 ニコニコとした仮面の奥でカヤの瞳に野心の炎が燃え盛る。その先に待つのは栄光か、破滅か……学園都市であるこのキヴォトスに、再び嵐が吹き荒れようとしていた。

 

 

To be Continued in Episode5 ”RABBIT's(兎たち)




 潜伏して調査している都合上、メタルウルフで大暴れというのはできませんがこれはメタルウルフカオスとのクロス作品です。誰がなんと言おうとそのつもりで書いています。
 ワカモが同棲生活で新妻面してるのは……まあ、本人もまんざらではなさそうなので何も言わないでおきましょう。何故この章でヒロイン的な立場にいるんでしょうか、私にはわかりません。

 最後に、次回から投稿時間を月曜日の朝の7時から夕方の18時に変更します。決して間に合わないとかそういうわけではなく、平均15000文字の本作を朝っぱらから読んでもらうのは少々しんどいのではないか思いましたので、そのような決定をしました。
 次回からもMETAL WOLF Archive XDをよろしくお願いします。
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