METAL WOLF Archive XD   作:W.B.O

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Episode8 ”Own Justice(己の正義)

 時は少し遡り、先生(マイケル)達がセーフハウスを飛び出し地上へと飛び出した頃、皆の眼前に広がっていたのは火の海となった倉庫群であった。収められていたであろう先進的な製品の数々が灰燼と帰すのを止めることは不可能だろう、それほどまでに火の勢いは凄まじい。

 

 

「そんな、こんな事が……」

 

「ちっ、行くぞアスナ!」

 

「おっけー!」

 

「先生、私の傍を離れないでくださいまし」

 

 

 リオは呆然とした様子でそれを眺める一方、ネルとアスナは犯人が近くに居ないかと探すべく駆け出す。ワカモは先生(マイケル)の側から離れずに周囲を警戒し、RABBIT小隊は外で待機していたはずのSRTのドローンを探すが、それらしい影はなかった。

 

 

「通信が繋がりません……我々のドローンも撃墜されたのでしょうか……」

 

「くそっ、どうするミヤコ!?」

 

 

 先輩たちとの連絡手段を断たれ、眼の前は火の海。果たしてここでどう動くべきか、サキは小隊長であるミヤコの指示を仰ぐ。正式に小隊長として任命されている以上、小隊員の命を預かっているという重責を感じながらも、ミヤコの心はもはや決まっていた。

 

 

「ミレニアムと協力し、我々も犯人を追います。このような行いは許せません!」

 

「ちょ、ちょっと私はどうするのさ! 現場仕事はちょっと専門外なんだけど!?」

 

「丁度いい機会ですRABBIT3、現場仕事を体験しましょう。HOUND1ならきっとそう言います」

 

「マジで言いそうな事言うじゃん……」

 

 

 C&Cの後を追うというミヤコの決断にサキとミユは異論はなかったが、モエは1人反論する。後方支援専門である彼女は最低限のフィジカルこそあれど、前衛に追いつくだけの体力はない。ミユも後衛ではあったが、彼女はスナイパーとして自らの肉体を酷使する術を身につけているし、そのために鍛錬を重ねているのでモエとは違う。

 

 サキとミヤコが前を行き、その後ろをミユが追い、最後にひいひいとモエが走っていくその姿を見送りつつ、先生(マイケル)とワカモは警戒を怠ることはなかった。リオもショックから立ち直り、愛銃をホルスターから抜く。

 

 

「ネットワークが遮断され、通信も不調。そして同時多発的な攻撃……相手はよっぽどミレニアムを叩きたいようね」

 

”恨みを買った覚えはあるか?”

 

「……カタログには、そんなものは無かったと思うのだけれども?」

 

”中々に参るね、そういうのは”

 

 

 先生(マイケル)の軽口に真面目にボケて答えるリオの姿に、彼は小さく肩をすくめる。彼女の天然さはある程度理解していたが、これは中々に()がつくレベルである。そうしていると倉庫群の中から銃声が響き始め、炎のカーテンの向こうからロケット弾を装備した重攻撃タイプのドローンが姿を見せる。

 

 続けて、コンテナを吹き飛ばしながらネルが飛び出し、両手の銃の引き金を引く。放たれた弾丸は空中でドローンの群れを絡め取り、5機程度が機能を停止して落ちていくのが見えた。

 

 

”ネル!”

 

「こいつらが火を付けてやがった、後何機いるんだ!?」

 

「まだまだいるよーっ!」

 

 

 アスナの言葉とともに別方向から現れる無傷のドローン達。倉庫群を焼き払ったとは言え、まだまだ未使用の弾薬を抱えている。このまま放置してはさらに被害をもたらすであろうことは、誰の目からから見ても明白だ。

 

 少し遅れて、RABBIT小隊も銃撃を繰り返しながらこちらへの合流を意図した動きを見せている。敵がまとまっている以上、分散したままでは各個に包囲される危険性があるため理にかなった動きといえるだろう。

 

 

「数は50を超えるものと推定できますが、どこからこんなに……」

 

「RABBIT1、頭を下げろ!」

 

「!」

 

 

 サキが怒鳴り、咄嗟に頭を下げたそのすぐ上を曳光弾が奔ってドローンを撃ち落とす。ミヤコも続けて銃撃し、ロケット弾を発射しようとしたドローンは被弾によって誘爆、複数を巻き込んで火の玉と化した。

 

 

「距離75、風速3ノット……次、距離65……」

 

「こっちにくるなぁ~!」

 

 

 その一方でミユは正確無比な狙いによって一発確殺(ワンショット・ワンキル)を実現していく。一年生とは言え、SRTの隊員である彼女にはこの程度朝飯前だ。しかし、唯一直接戦闘が専門外であるモエは手にした拳銃を乱射するが、命中弾は発生しない。

 

 マシンピストルというものはそもそも至近距離での防御用にフルオートがあるものであって、その状態ではとても狙った所に当たるものではない。もし狙うのであればセミオートで普通の拳銃と同じようにするのだが、それをしないあたりモエの射撃訓練が足りない証といえるだろう。トミがこの体たらくを見たら、近接射撃訓練を2割増やせと言うに違いないとミヤコは思った。

 

 

”まだ増えるか、こいつは少々厄介だな……だったら、こうだ!”

 

 

 新たなドローンの群れが炎のカーテンをくぐり抜けて姿を現す。ロケット弾をバラ撒き、火の海を広げようとするその一群を先生(マイケル)が睨みつけ、シッテムの箱の戦術支援モードを起動する。

 

 周囲に周辺の立体マップが広がり、敵性の目標は赤い光点として表示されている。相変わらず便利なものだと思いつつ、周囲にいる青い光点―――即ち、味方である生徒―――を選択、ネル、アスナ、ミヤコ、サキ、モエ、そしてミユ。皆、今前線で戦っている生徒達だ。

 

 シッテムの箱には生徒の能力を強化する機能もあるのだが、それは6名までという制約が課せられていた。しかし、先生(マイケル)からすればそういう能力ブーストというのは生徒達が自身の実力を勘違いする恐れがあるため、あまり使いたくないもの。しかし、時としてそれでも使わねばならない事態は訪れる。今がまさにその時であった。

 

 

”ロケット、くるぞ! 迎撃!”

 

「こなくそっ!!」

 

 

 ドローンの群れがロケット弾を一斉発射したまさにその瞬間、生徒達の銃撃がまるで防壁のように次々と全てのロケット弾へと命中し、空中でいくつもの火の玉が生じた。強化された生徒達はどういう理屈か命中力や弾丸の威力が上がるため、こういう芸当も可能なのだ。特に先程一発の命中弾もなかったはずのモエの弾幕でさえ、この迎撃では何発かのロケット弾を撃ち落としている。

 

 そして、この誘爆に巻き込まれて半数程度のドローンが墜落したが、残存数はまだ多い。残弾数を考えればあまり派手な戦い方は出来ないのだが―――彼がそう思った瞬間、このエリアに高速で近づく青い光点。一体何かと思い振り返った彼の視線の先に居たのは―――

 

 

『ンフハハハ! デリバリーの時間だァ!!』

 

 

 巨大なブースターを背負い、ミサイルポッドを懸架した空中機動に対応する高機動タイプのアビ・エシュフ型パワードスーツ、仮称マークⅦを身にまとい、ミサイルやバルカンをバラ撒きながら突撃してくるリツコ。その背後には輸送ドローン4機に吊り下げられたメタルウルフの姿も見える。

 

 彼女が放ったミサイルは次々にドローンを撃ち落とし、残ったものもバルカンの弾幕で絡め取られていく。シッテムの箱の支援がなければ歩兵だけでは難しかった武装ドローンへの対処も、FCSを搭載して多数の武装を備えた()()であれば容易いもの。マークⅦが上空に到達して周辺警戒を行っているが、シッテムの箱は既に敵性反応が消滅したことを知らせていた。

 

 

「いいタイミングで来てくれたわね、リツコ」

 

「とんでもない事になってんな、犯人はどこのどいつだ? ぶっ殺してやる!」

 

 

 敵が居ないことを確認したリツコは機体を着地させ、バイザーを上げて素顔を晒す。リオがそれを迎えるが、彼女は燃え盛る倉庫群の被害を見たこともあり怒りをあらわにしていた。ここはミレニアムの物流拠点の一つであり、被害総額など考えたくもない。ユウカが見たら卒倒すること間違いなしだ。

 

 

”リツコ、良く来てくれた”

 

「ああ、先生……言われた通り持ってきたが、FCSは未調整な上に武器は搭載しないままだ。徒手格闘しかできないが、本当にいいのか?」

 

”それだけあれば十分だ”

 

 

 先生(マイケル)はリツコが持ってきたメタルウルフに手をかけて早速搭乗しようとするが、整備途中のものを持ち出したのが気に入らない彼女は引き留めようとする。自分が手掛けたものが中途半端なまま使われ、それでインシデントが発生するのはエンジニアとして許せなかった。

 

 しかし、先生(マイケル)は素手でも十分に強いというのも事実。エリドゥで同じ性能のパワードスーツを用いた時、リツコ自身相当の猛者であったとはいえ、武器も使わずに軽くあしらわれてしまった事は記憶に新しい。故に、強く反論できない。

 

 

”さて……通信とセキュリティが今ハッキングを受けているんだったよな?”

 

「ええ、ヒマリとチヒロが対応しているけれども―――」

 

”こちらから制御を取り戻す。全部でなくとも、コイツで確認できれば皆に情報を渡すことだって可能だ”

 

 

 彼はシッテムの箱を示し、電子戦で押されている現状を打破する案を提示する。今ミレニアム側が後手に回っているのは、通信が遮断されている上に監視カメラを見ることが出来ないからだ。

 

 もしその制御が一部でも取り返せたのならば、シッテムの箱を通じて生徒達に共有することが可能だ。極めて高い電子戦能力、リアルタイムでの情報共有、そして戦域の把握……シッテムの箱がオーパーツと呼ばれるだけの性能を有しているからこそ、この提案が行える。

 

 

「まじか、出来るのか……?」

 

「出来るのなら、有難いのだけれども……」

 

 

 リオとリツコはその意味を理解し、目を丸くしながら互いに顔を見合わせた。シッテムの箱の性能に関してはおおよその生徒はオーパーツとしてしか認識しておらず、その実態を知らないのだが、彼女達はそうではない。だが、それでもミレニアムの基幹システムにハッキングできるという事実を前に驚きを隠せなかった。

 

 

”よし、任せろ”

 

 

 副会長と会長の許可を得たことで、先生(マイケル)は早速シッテムの箱をミレニアムの基幹ネットワークへと接続する。ここから先はアロナの仕事なので彼自身が何かをする必要はないため、早速だがメタルウルフの起動準備を始めた。火器管制エラーが出るのは間違いない以上、起動シーケンスは少々変えねばならない。

 

 

『先生、通信プロトコルと監視カメラの掌握を完了しました。保安部、C&Cとの通信が可能になります』

 

”思ったよりも早かったな、流石だアロナ。後で美味しいものをあげよう”

 

『やったぁ!』

 

 

 アロナのハッキングは順調に進み、通信と監視の両方の機能は彼の手に。同時に、メタルウルフは火器管制システムを迂回してシステムが立ち上がる。赤い単眼に光が灯り、その手が力強く握られた。

 

 

『監視カメラの映像を確認中―――出ました、中央地区及び発電区、工場エリアで爆発が発生しています!』

 

”敵戦力を特定しろ、3分以内だ”

 

『わかりました、このスーパーアロナちゃんにお任せください!』

 

 

 監視カメラの映像では燃え盛る街並み、発電所、工場が見える。しかし、襲撃者の姿はなく、周囲の他のカメラの映像に切り替わっていくと、工場ではドローンの群れが飛んでいるのが確認できた。どうやらこの倉庫群と同じタイプの攻撃を受けているらしい。

 

 

「あの工場エリアを焼かれるとミレニアムの収入の3割が消し飛ぶぞ!」

 

「……あの中で一番資産価値が高いのは工場群ね、直ちに対処する必要があるわ。リツコ、ネル、アスナ、やってもらえるかしら? 私も行くわ」

 

「ドローン程度じゃあちと物足りねえが、そういうことなら仕方ねえな」

 

「この4人で一緒に行くのって久しぶりだね!」

 

 

 これに慌てたリオ達ミレニアム組は、直ちに工場地帯への出撃を決めた。リツコの言うようにミレニアムの最先端技術の結晶を生み出し、利益をもたらす工場はミレニアム自治区にとって重要な収入源であり、これが破壊されるのはミレニアムサイエンススクールに致命的な結果をもたらす。

 

 無論、中央地区や発電区も重要な場所ではあるが、直接的な損害額では工場が一番大きい。だが、それは他の場所を蔑ろにしていい理由にはならないため、中央地区や発電区にも人手を送る必要があった。

 

 そうしている内に発電区の映像には一人の生徒らしき姿が映り込んでいた。和装を身にまとい、狐面を被っているその姿はぱっと見狐坂ワカモに見えるのだが、ワカモ当人はすぐ隣りにいるのでこれが偽物であるのは明らかだ。ついでに言えば尻尾もない。

 

 

「……」

 

 

 それを見たワカモの表情は仮面を付けているために確認できないが、周囲の体感温度が10℃位は下がるほどに殺気が漏れ出ている。隣に居るRABBIT小隊は皆顔を引き攣らせているあたり、その怒りは本物だ。

 

 当然と言えば当然であろう。自らの偽物が偽物の先生と一緒に暴れまわり、濡れ衣を着せてきたというのは誰であれ許容できるものではない。そういう輩には然るべき報いを与える―――それが狐坂ワカモのルール。

 

 

「待ってください、狐坂ワカモ」

 

 

 仮面の奥の瞳に強い決意の光が宿り、ワカモその場から即座に駆け出そうとするが―――それに待ったをかける人間が1人。振り向きながら邪魔をするなら殺すと言わんばかりにガンを飛ばす彼女の視線の先に居たのは、同じように強い決意を宿した表情のミヤコであった。

 

 

「私達も行きます。あなたがあの偽物を甚振るのは勝手ですが、その身柄はSRTで確保しなければ先生の冤罪は晴らせません」

 

「……言うようになりましたわね、僅かな日数でよくもまあ」

 

 

 彼女の提案はワカモの復讐心を満たしつつも、SRTの実績を確保し、それによって先生(マイケル)の無実を証明しようとするもの。つい先日までSRTの正義がと喚いていた小娘とは思えぬその内容に、ワカモは小さく息を吐く。

 

 もし先日までのミヤコであれば間違いなくワカモの復讐も認めずに自分達が確保すると強弁したであろうが、今の彼女は市民を苦しめる犯罪者を逮捕するという本来の目的に立ち返っており、先生(マイケル)の保護のもと()()()()()()()()()()ワカモをどうこうするつもりはない。むしろ、犯人の鎮圧に協力的と考えれば両者にとって悪いことではなかった。

 

 

「いいでしょう、ただし邪魔をするならば容赦はしません」

 

「はい、SRTはFOX小隊だけではないということを証明してみせます」

 

 

 まさかここでSRTと共闘することになるとはと思いながらも、ワカモはRABBIT小隊がついてくることを容認した。愛しの先生(マイケル)の冤罪を晴らすためにはSRTの協力は不可欠という現実的な問題を無視するほど、彼女は盲目ではない。

 

 

”取り込み中のところ悪いが、ついに()が出たぞ”

 

 

 そして動き出そうとしたまさにその時、先生(マイケル)は中心部に現れた襲撃者を確認した。メタルウルフに酷似した3m程度の人型がビルの上でミサイルを放つ姿、間違いなく偽物である。

 

 

”戦力の分散になるが、ここで一つ一つ当たっていく余裕はないからな。皆、倒したい相手に守りたい場所があるだろう、だから好きに戦ってくれ。私はこの偽物を叩き潰す”

 

 

 彼はそう言い、拳を強く握る。偽物に対する怒りは誰よりも強く、今すぐにでも飛び出していきたい気持ちであるが、それはリオ達ミレニアム組やワカモとRABBIT小隊も同じ。既に各々が何処に行くべきか決めている以上、彼がそこに口を挟むつもりはない。それに、戦力バランス的に考えても彼女達の自主的な提案は合理的なものといえた。

 

 

”さあ、行くぞ! キヴォトスを脅かすテロリストに勝利し、正義とは何かを改めて世に示そう!”

 

 

 そして号令とともにメタルウルフは短距離飛行を繰り返しながら中心市街地へと向かっていき、ワカモとRABBIT小隊、それにミレニアム組はリツコの持ってきた輸送ドローンに掴まる形で発電区、工場地帯へと移動を始める。戦いはもう始まっているのだ。

 

 

 


 

 

 

 文明の光を失い、原始的な明かりである炎によって照らされるミレニアムの路地。火災によって燃え上がるビルを背に、犯人であるメタルウルフ―――否、カイザーインダストリー製戦闘サイボーグC09N-FW、仮称フェイクウルフへとゆっくり近づいていくシャーレの先生(マイケル・ウィルソン)が駆る本物のメタルウルフ。

 

 その左手に握られているのは、先程そこで掴んだばかりのバス停。コンクリートの重りを引きずり、アスファルトの路面に白い傷跡を残しながら彼は歩みを止めない。

 

 

”随分と熱烈なファンもいたもんだ、こんな()()()()()()まで出てくるなんてな”

 

 

 機体の中、怒りに顔を歪めながらも先生(マイケル)の口調は軽い。すぐそこで見ている保安部や、負傷して苦しんでいる生徒や市民を怖がらせないようにという配慮もそうだが、怒りに身を任せてしまえば間違いなく眼の前の偽物を()()()()()()という自信があったからだ。

 

 自分の名誉を傷つけくらいなら、まあ笑ってぶん殴る程度で済ませてもいい。だが、そのために、たとえ不良やマフィアであろうと生徒を傷つけ、その住まいを奪ったのは許せるものではなかった。

 

 

『は、話が違うぞ……!?』

 

 

 フェイクウルフを操るオートマタ兵士は何とか意識を取り戻したものの、眼の前の本物から放たれるオーラに気圧され完全に竦み上がっていた。何せ、眼の前の赤く光る単眼からは機械越しでも判るほどに殺気が漏れていたのだ。もし彼に排泄機能が備わっていれば、間違いなく()()()()()()ことだろう。

 

 しかし、メタルウルフの手には武器がないことに彼は気づく。背中の武装コンテナを開放する気配も無い以上、メタルウルフは無手であると推測できた。ならば、この場で始末してしまえばいいのではないか―――そう思った偽物は銃口を向けようとするが、その両手はメタルウルフと同じく無手。

 

 

(し、しまった!)

 

 

 そう、先程ビルの上から蹴落とされた際に彼は持っていた専用のアサルトライフルとM61バルカンを取り落としてしまっていた。慌てて武器がないか探す兵士は、ほんの少し手を伸ばせば届く位置に専用アサルトライフルが転がっているのを見てほくそ笑んだ。今、自分は幸運の女神がついているのだ、と。

 

 

『死ねよやァ!!』

 

 

 バス停を引きずりながらゆっくりと近づいてくるメタルウルフの射程距離に入るよりも前に、偽物は銃のグリップを掴むべく手を文字通り伸ばす。そしてすかさず銃口を向けるが―――

 

 

”遅い!”

 

『ぐあっ!?』

 

 

 偽物が引き金を引くよりも早く、疾風のように踏み込んだメタルウルフがまるでホームランを打つかのような猛烈な勢いで振り抜いたバス停の一撃は、偽物の顔面に直撃してコンクリートが砕け散り周囲に散乱するという結果をもたらした。バス停そのものの強度などそれほど高いものではなく、重りのコンクリート塊も装甲板と比べれば脆いもの。しかし、全力で叩き込まれたその衝撃は一瞬でオートマタ兵士の意識を半分刈り取るほどのものがあった。

 

 

”弱いな、メタルのクズめ!”

 

『うぎっ!? がっ!』

 

 

 怯んだその隙を逃すことなく、ひしゃげ、折れ曲がったバス停を何度も何度も偽物の顔面へと叩きつける。強度が低いとは言え、何度も叩きつけられれば装甲板ではなく接合部が悲鳴を上げ、メタルウルフ(本物)を模した耳のようなアンテナの片方が宙を舞った。

 

 中々にバイオレンスな絵面であるが、無理もない話である。何故なら今は夜も更けてくる時間帯、既に紳士的な時間は過ぎ去っているのだ。

 

 

”ブリキの、オモチャが!”

 

『うぎゃああっ!』

 

 

 目一杯力を込めて振り落とされる一撃が脳天を揺らし、偽物は大きく悲鳴を上げる。だが、叩き込まれている側もただ為すすべなく打ち据えられているわけではなく、何とか抵抗しようとゼロ距離で発砲するのだが、狙いも付けずに放たれる専用アサルトライフルから放たれる.50口径程度の弾丸では大統領専用機であるメタルウルフの装甲板は抜けやしないのだ。

 

 

”……おっと”

 

 

 とはいえ、この抵抗が全くの無駄というわけではなかった。乱射したうちの一発が原型を留めぬほどに変形していたバス停に命中して千切れ飛んだことで顔面狙いの連撃が止まり、フェイクウルフの兵士は辛うじて顔面を破壊される事なく距離を取る事に成功する。しかし、先生(マイケル)が踏み込めば一瞬で詰められる程度だ。

 

 

『な、なんで、こんな……に、逃げっ……』

 

 

 フェイクウルフの兵士は事前に聞かされていた話とは全く異なる状況下に置かれ、息も絶え絶えといった様子。話が違うと大声で叫びたくなるのを必死にこらえながら、何とかこの場を切り抜けようと知恵を巡らす。彼は元カイザーPMCの兵士であり、アビドス事件でシャーレの先生(マイケル・ウィルソンに)コテンパンに叩きのめされたこともある。

 

 事件の後、カイザーPMCの規模縮小に伴い尻尾を切られるようにアビドス事件に関わった社員は解雇された。しかし、ジェネラルが裏で手を回し、アビドス事件を無事に生き延びた社員の中で腕の立つものを密かに再雇用する。当然、彼もその1人だ。

 

 ジェネラルは対シャーレを想定し、規模が縮小されたPMCとは異なる性質の部隊を生み出した。その名はシャドウ・カンパニー……その名の通り、影に潜む非正規用の部隊。シャーレの評判を落とし、シャーレの先生(マイケル・ウィルソン)を貶めるというカイザーグループが報復のためだけに用意した悪意の塊。これこそが、一連の襲撃事件の真犯人なのだ。

 

 

”ほう?”

 

 

 故に、先生(マイケル)は眼の前の偽物を逃がすつもりはなかった。いまだシャドウ・カンパニーの実態を知らぬ彼であるが、これほどの事を起こすものが単独犯であるはずがないというのは誰から見ても明らかであり、その背後関係を知るのに一番手っ取り早いのは関係者を締め上げることだ。

 

 

”逃げられると思うなよ!”

 

 

 武器はなく、FCSも働かない。ならばメタルウルフは戦えないのかと聞かれれば、それは明らかにNOだ。既に見せているように、両手が使えるのならば即ちそれは戦えるということ。特殊機動重装甲とは()()()()()()なのだから。

 

 

『く、くるなあっ!』

 

”無駄だ、たとえゼロ距離だろうともそんな豆鉄砲でコイツの装甲は抜けない”

 

 

 迫りくる死神(メタルウルフ)の姿に恐慌状態に陥った偽物は、もはや知恵を巡らせる余裕もなく、なんとかこの場から逃げ出すべく手当たり次第に銃を乱射するが、メタルウルフは装甲表面に火花を散らしながら何事も無かったかのように近づき、右手で偽物の顔面を握るとギリギリと締め上げる。もしもこれを実況しているものがいれば、完璧なアイアンクローが決まったと大声を上げたことだろう。

 

 

『あがっ、あガガッ!』

 

”襲った場所が悪かったな、顔を剥いでその面を拝んでやる!”

 

 

 ミレニアムを襲うにあたり、シャドウ・カンパニーは部隊を複数に分けていた。白兎(コユキ)で目と耳を奪った後、ドローンでまずは派手な攻撃―――物流倉庫などよく燃える場所を狙う―――を行い、動ける保安部を誘引。すかさず本命のフェイクウルフと偽ワカモが中心部に近い場所を襲撃し、人目につきつつ暴れまわる。そうすればミレニアムへの打撃を与えつつ、シャーレの先生(マイケル・ウィルソン)にさらに濡れ衣をなすりつけられるという良く練られたプランだ。

 

 コンピューターで計算したところ作戦成功率は8割を超えるという予想のもと、彼らは予定通りに攻撃を開始したのだが―――先生(マイケル)の言葉の通り、襲った場所が悪かった。本物がミレニアムに潜んでいるのは彼らにとって予想外のこと。この時点ですでに彼らの計画は破綻していた。

 

 

『な、ぜだァ……何故、まっすぐ、ここに……!』

 

”まだ喋る元気があるのか”

 

 

 偽物の頭部からはスパークが発せられ、その視界には時折砂嵐が走るなど限界が近しいながらも、激しい痛みによって逆に恐慌状態から脱した彼は何故本物のシャーレの先生がまっすぐ自分を狙ってきたのかを知ろうとする。その根性に呆れながらも、冥土の土産と言わんばかりに先生(マイケル)はあえて答えた。

 

 

”お前たちは目と耳を奪ったつもりだろうがな……”

 

 

 彼は左手を偽物のマスクに添え、まさに顔面を剥ぎ取らんとする。

 

 

”もう取り返しているんだ、私がな!”

 

『うがああああっ!!』

 

 

 メリメリと音を立てて顔面の装甲が引きちぎられんとしたその時、偽物は最後の手段に打って出た。背部に搭載されているミサイルポッドを展開し、ゼロ距離での接射を試みたのだ。

 

 当然この距離では普通は信管は作動しないのだが、フェイクウルフの装甲ならば大丈夫なはずだと安全距離を無視した調整がなされており、1mも飛べばそれだけで信管が作動するという代物である。弾頭は成形炸薬弾(HEAT)、貫通力ならばM1A2エイブラムスすら一発で正面装甲を貫通出来るほどのもの。

 

 先生(マイケル)は咄嗟に距離を離そうとするが、メタルウルフの後退速度よりもミサイルが迫る速度のほうが早い。赤い単眼のレンズの表面にミサイルのシーカーが迫るのが映り込み、そして周囲は爆炎に包まれた。

 

 

 

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 ミレニアム自治区は最先端技術を広く使用する事もあり、その運用には莫大な電力を必要とする。故に、電力確保のために自前で発電所を持つことは何らおかしくはない話だ。そしてその発電所も最先端技術の結晶であり、周囲に公害を撒き散らさないような物になっている。キヴォトスの空が青く透き通っているのは決して伊達や酔狂によるものではなく、こうした努力によって成り立っていた。

 

 そのうち、所謂再生可能エネルギーと呼ばれる風力、太陽光発電は全体の3割程度である。残るは水素を活用した発電施設で、そのために敷地には水素を備蓄するタンクが多数存在していた。これが破壊されれば大規模な水素爆発が発生する恐れがあり、周囲は火気厳禁。だが、それ故にこのような場所は狙われるのだ。

 

 

「うふふ、これを使えば……」

 

 

 その水素タンクに、誰から見ても爆弾であると思わせるものを手に近づくのは和装と狐面を身に着けた生徒。ただしその臀部から尻尾は伸びておらず、何処か不自然さが感じられた。もし注意深く観察するものがいれば、頭部に生える狐耳の違和感にも気づいただろう。彼女の狐耳はカチューシャに付属している付け耳だったのだ。

 

 彼女もまた、フェイクウルフの兵士と同様に元はカイザーPMCの兵士であった。それ以前は小規模な学校に属していたが、廃校に伴い路頭に迷った末の決断。同じような境遇の生徒は少なくなく、彼女の他にも数十人の生徒がカイザーの傭兵に身をやつしていた。

 

 そしてアビドス事件において切り捨てられた彼女は再び路頭に迷うところをジェネラルに拾われ、シャドウ・カンパニーの一員となる。工作員として優秀な成績を収めていた故、今回のような計画には役に立つと思われたのだ。実際、彼女の活動があってこそ破壊活動は順調に進み、うまく冤罪を仕立て上げられたとも言える。

 

 だが、そんな彼女の優秀さもあくまで工作員としてのもの。直接的な戦闘においては特筆すべき華々しさなどなく―――

 

 

「……私の姿を騙り、先生の名誉を穢す愚か者。このワカモの手で始末してさしあげます」

 

「へっ……!?」

 

 

 水素タンクの前に飛び降りてきた本物の狐坂ワカモを前に、彼女の思考はフリーズしてしまう。

 

 

「SRTです、大人しく武装を解除して投降しなさい!」

 

 

 さらに続けて現れるRABBIT小隊の姿に偽ワカモの思考はもはやパニック状態であった。どうして七囚人の1人であるワカモと、SRT特殊学園の生徒が肩を並べているのか。そんな彼女の混乱を気にかける様子もなく、5つの銃口が向けられる。

 

 

「武器を捨てろ! 捨てろと言っているだろ!」

 

「と、投降してください……」

 

「痛い目に遭いたくなければ言うとおりにした方がいいと思うけどな~」

 

 

 サキ、ミユ、モエの順で降伏勧告を続けるが、それに偽ワカモが回答することはなかった。何故なら―――

 

 

「はあっ!」

 

「あっ!」

 

 

 ―――思考が戻るよりも早く、復讐に燃えるワカモが躍りかかったからだ。

 

 

「遅いっ!」

 

「あがっ!」

 

 

 ミヤコが止める間もなく、銃床を振り回して偽ワカモの顔面を殴り飛ばす本物のワカモ。殴られた方は仮面を吹き飛ばされてたまらず大地に転がる。何が起きたのか理解が追いつかない中、何とか起き上がろうとする偽物であったが、それを本物は許さない。

 

 

「このっ、小娘がっ! 身の程を知りなさい!」

 

「いぎっ! がっ!」

 

 

 何度も何度銃床で殴りつけられ、偽ワカモはうめき声と悲鳴が混ざったような声をあげ、頭を抱えて身体を縮こまらせるが、ワカモの怒りは収まる気配を見せない。これ以上は絵面が……ではなく、普通に生命の危機に繋がりかねないため、ミヤコは間に入って止めようとする。

 

 

「これ以上はやりすぎです、先生だってそんなことは望んでいません!」

 

「邪魔をするなと言ったはずです、私の邪魔を!」

 

「狐坂ワカモ!」

 

「そこをどきなさい、子ウサギ風情が!」

 

 

 ここに至り、ワカモの怒りの炎は荒れ狂うばかりでとどまるところを知らない。これを止めるとなれば、もはや実力行使しか無いだろう。先の敗北の記憶が頭を過ぎるが、偽ワカモと本物のワカモを()()()()にはこの場で引き下がるわけにはいかなかった。

 

 

(放っておけば偽ワカモは死んでしまう。そうしたらワカモ本人だってただでは済まない)

 

 

 キヴォトスではよっぽどのことがなければ死ぬことはないが、本気でキレているワカモに袋叩きにされればその可能性はありうるとミヤコは考えていた。もうしそうなれば偽物はともかく、死に至らしめたワカモに対する罰も相当なものになるだろう。そしてそれは、シャーレの先生(マイケル・ウィルソン)が望むものではない。

 

 私刑の先にあるその未来を阻止するためにはワカモを実力行使で止める以外になく、ミヤコは覚悟を決める。それこそが彼女の信念、正義なのだから。

 

 

(今度こそ、負けない……!)

 

「やるのか、ミヤコ!」

 

 

 ミヤコが銃口をワカモに向けるのを見たRABBIT小隊のメンバーは彼女の覚悟を汲み取り、同じように臨戦態勢に入る。以前は先生(マイケル)の指揮、それによる奇襲があって完敗したが、今度はそうはいかないと言わんばかりだ。

 

 その一方、ミヤコの介入で生命の危機を脱した偽ワカモであったが、彼女は恐慌状態に陥り正常な思考が出来なくなっていた。結果、生物としての本能の一つである死からの逃避、即ち生存本能に支配され、この場を脱することだけしか考えられなくなる。

 

 

「へ、へへ……へへへぇ」

 

「……!」

 

「一体何を!?」

 

 

 焦点の合わぬ目で虚ろな表情を浮かべつつ、にやけるように笑う偽ワカモの異常な様子にワカモとミヤコ気づくころには既に遅く、偽物は懐に手を伸ばすと内ポケットにしまわれていたスイッチに指をかけた。

 

 スイッチがONに切り替わった途端、水素タンクの破壊後に被害を拡大させるために用意していた重攻撃型のドローンが20機程度飛び上がり、懸架されたロケット弾の照準を向ける。あまりにも一瞬の出来事であり、ワカモ達は咄嗟に対応できなかった、が―――

 

 

 複数の銃声が夜の発電所の敷地に響き渡り、ドローンの群れは次々に被弾して制御を失い墜落していく。

 

 

「くっ、今のは……!?」

 

 

 咄嗟に偽物の顎を銃床で殴打し昏倒させた後、ミヤコは銃声のした方向へと顔を向ける。ワカモやサキ達も同じように動くと、その視線の先に居たのはセーラー服と装具を身に纏った8人の少女達。

 

 

「探したぞ、RABBIT小隊」

 

「ゆ、ユキノ先輩!? それに、トミ先輩も……」

 

「ドローンを撃墜されて探すのに手間取ったが、間一髪間に合ったようだ! それに()()()を見つけてくるとは、お前たちもツキが回ってきたようだなRABBIT小隊!」

 

 

 SRT特殊学園、FOX小隊とHOUND小隊のフルメンバーが揃い踏みで歩いてくる。その光景にワカモは心底嫌そうに表情を歪めたが、ここで逃げ出すのは難しいだろう。FOX小隊のオトギ、そしてHOUND小隊のアリアは視線をワカモに向けたままだ。

 

 そのまま後数歩も歩けば握手が出来るほどの距離まで近づいたSRTの隊員たちは、倒れて動かなくなっている偽物へと視線を向けた。吹き飛ばされた仮面、カチューシャについた狐耳、服装と順々に眺めた後、ユキノは一旦目を瞑って状況を把握する。

 

 

「……なるほど、確かに狐坂ワカモだな」

 

「いやー、お手柄だねぇRABBIT1? それに、()()()()()さん?」

 

「……っ」

 

 

 タエコはニヤついた顔をしながらワカモを見つつ、あくまで彼女を()()()()()()と呼んだ。その意図を察し、緊張した表情が緩む。

 

 

「被疑者を逮捕しろRABBIT1、ここの後始末はミレニアムに任せればいい」

 

「……はい!」

 

 

 ユキノの指示のもと、ミヤコは気絶した偽物を後ろ手に拘束する。これで発電区の騒動は終わりだと安堵し、ワカモは中央市街地の方向に振り向いた。ここからでは状況を確認することは出来ず、今の彼女に出来るのは先生(マイケル)の安全を祈ることのみ。

 

 

(先生、どうかご無事で……)

 

 

 彼女の祈りは、果たして届くのだろうか。

 

 

 

******************************************************************

 

 

 

 偽物のゼロ距離ミサイルの直撃を受け、爆発に包まれたメタルウルフ。その結果を確認する事もせず、フェイクウルフは逃げの一手であった。顔面が半ば剥がれかけ、その下にあるオートマタ兵士の素顔が曝け出される寸前であり、これ以上何かをすることは出来る状況ではない。

 

 だが、その代わりに残っていたミサイルの全部をシャーレの先生(マイケル・ウィルソン)に叩き込んでやった。あのミサイルはドロシー級の重戦車でさえ撃破出来る重対戦車ミサイルであり、ただでは済まないはず。

 

 ブースターを噴射しミレニアムから離れていく彼は、ひしゃげて視界の20%が機能しないセンサーを最大限ズームさせ、いまだ炎に包まれている爆心地を見続ける。だが―――

 

 

”……まったく、とんだ置土産だ”

 

『な、何ぃっ!?』

 

 

 五体満足のメタルウルフの姿が炎の中から現れ、偽物は驚愕する。あの距離では躱しきれるはずもなかったはずだし、命中したのならばただでは済まないはず。だというのに、四肢も胴体も、そして頭部だって煤で汚れただけのように見えた。

 

 しかし、その背部にある武装コンテナがベコベコにへこんでいるということに偽物は気付かない。あの時、先生(マイケル)はミサイルが命中する寸前、中身が空の武装コンテナの外殻を前に回し、直撃に耐えたのだ。大気圏突入にも耐える装甲板にはそういう使い方もある。

 

 とはいえ、このせいでまた修理送りになるだろうか。彼は小さくなっていく偽物をじっと睨みつけ、完全に見えなくなるまで目で追い続けた。

 

 

『先生、聞こえてるかしら?』

 

”聞こえているよ、リオ”

 

 

 そうして姿が見えなくなったと同時に、リオからの通信が入ってくる。彼女達は工場地帯のドローンを撃墜しに行ったはずだが、果たしてどうなったのだろうか。声に焦りが乗っていない以上、うまく行ったのだと推測は出来るのだが。

 

 

『工場に来たドローンは全機撃墜に成功したわ、トキ達が先んじて到着して迎撃に当たってくれたおかげか、被害も最小限で済んだみたい』

 

 

 実際、工場に襲いかかってきたドローンの迎撃は簡単に済んでいた。トキの他、アカネやカリンというC&Cのコールサイン持ちが工場近辺で活動しており、彼女達と合流したことであっという間に掃討が終わったのだ。

 

 

”そいつはよかった、こっちは逃げられたよ。偽物の面を拝んでやりたがったんだが……”

 

『先生、そちらは大丈夫なの?』

 

”怪我はない。ただ……少し板金コースといったところか、はぁ”

 

『そう、修理が必要なら言ってもらえれば対応するわ』

 

 

 一方、偽物を取り逃がしてしまった先生(マイケル)はミサイルの直撃を受けて少々歪んでしまったコンテナの外殻を見てため息を漏らす。メンテナンス中のものを無理に持ち出してこれなので、リツコがキレる未来が予想できてしまった。

 

 そういう訳で憂鬱な彼であったが、襲撃そのものを撃退できたのは事実。あとは偽ワカモの方へと向かったワカモとRABBIT小隊の方であるが、そちらへと連絡を入れようとした所にヒマリからの通信が割り込んでくる。一体何事かと思って繋いでみれば―――

 

 

『先生、ちょっとお時間よろしいでしょうか!』

 

”落ち着けヒマリ、私は逃げないから落ち着いて話してくれ”

 

 

 随分と焦っているような、興奮しているような、そんな様子のヒマリの顔がドアップでモニターの中央に表示される。そんな彼女をなんとか落ち着かせて話を聞こうとすると、チヒロの顔が横から割り込んだ。

 

 

『ヒマリのことは置いといて結果だけを述べると、ミレニアムをハッキングしてきた発信源が判明したって事』

 

”なんだって、それは本当か!?”

 

『キヴォトスのあらゆる情報を観測できるこの天才美少女ハッカーの手にかかれば、たとえ複数のプロキシやVPNを経由していたとしても探し出す事は造作もありません! ですが―――』

 

 

 先程までの興奮っぷりはどこへやら、急に落ち着いた様子を見せるヒマリはそう言い、一つのデータを送りつけてくる。それは発信元のIPアドレス、その番号が示す所は――――

 

 

”ヴァルキューレ警察学校の第三分校!? どういうことだ……”

 

 

 新たに明かされる事実を前に、先生(マイケル)はただただ困惑するのであった。

 

 

To be Continued in Episode9 ”Distorted Justice(歪められた正義)




 工場地帯でのミレニアム組の戦いは本文中にあるように過剰戦力かつ、特にドラマの無いドローン相手なのでスキップしましたが、本作リオは一般C&C並には動けるのでサポートしながらガンアクションを見せていたことでしょう。それ以上にアビ・エシュフ級パワードスーツが2機もいれば並大抵の敵はボロクズになりますが。
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