V型12気筒のガソリンエンジンが唸りを上げ、虎丸の車体は急速に右旋回を行う。回転数が上がるにつれて砲塔も合わせて回り、主砲は迫る敵へと指向される。
「主砲照準右5°! 照準器に敵を捉え次第発射!」
「撃ちます!」
砲手が照準器に敵を捉えてすかさず引き金を引き、激しいマズルフラッシュと共に放たれた88mmの砲弾は、しかし命中すること無く山肌へと突き刺さる。イロハが忌々しげに空を見上げると、青白いロボットがブースターを噴射するように空を飛んでいた。
「ちょこまかと……! 全速後退、敵の攻撃が来ます!」
「了解!」
イロハの指示によりギアをバックに入れた運転手は全力でアクセルを踏み、履帯が勢い良く逆回転して虎丸は後退を始める。同時にロボットは肩のポッドからミサイルを放ち、青白い光を引いて虎丸を捉えんとしていた。
「スモークディスチャージャー発射、その後左旋回10度! 後退速度はそのまま!」
「うううううっ!!」
猛烈に後進をかけつつ、砲塔に据え付けられている発煙弾発射機から放たれた発煙弾が空中で炸裂し、煙のカーテンが視界を遮る。それによってミサイルの狙いは逸れ、外れたミサイルは大地に突き刺さり新たなクレーターを生む。回避機動の中、砲弾を持ちっぱなしだったために踏ん張るしかなかった装填手が唸り声を上げた。
虎丸は回避に成功。しかし、そこまで見事な回避機動ができたのはその一両だけであり、2両のⅥ号戦車が直撃を受けて爆発に飲み込まれた。また、別のもう1両は狙いから外れていたため無傷だった。
『3号車大破! 脱出!』
『4号車戦闘不能! 申し訳ありません!』
「脱出者は直ちに後退を! ええい……っ! 3次元機動する敵を相手にすればこんなものですか……!」
ぴょんぴょんと軽快に飛び回るロボットの姿をイロハは睨みつける。Ⅵ号戦車はその重量から瞬間的な機動性は悪く、砲塔の旋回速度も決して優れたものではないため、近距離を素早く動き回る相手とは相性が悪い。ゲヘナ最高の戦車クルーが揃っている虎丸でも翻弄されている以上、他の戦車がまともに戦えないのも当然だろう。
今の攻撃によって
「接近戦ではこちらが不利なのは変わりません。しかも敵のほうが素早いときた……」
『こちら2号車、私達が囮になります! その隙に隊長が―――』
「バカな事を言わないでください。相手がそんな事を許すと思いますか?」
2号車は虎丸を後退させるために囮になるつもりであったが、イロハはそれを拒絶する。この状況で1両だけ残ったとしてもそれに果たしてどれだけの意味があるだろうか。ならば2両共後退した方がよいと彼女は考える。
「敵攻撃、更に来ます! 2号車、回避を―――」
『12時の方に履帯を半回転させて前進後、10時方向に緩旋回!』
「いけない、あれでは!」
イロハの視線の先、敵から発射されたミサイルが2号車へと迫る。回避を企図して機動してはいるが、スモークを投射していない状況でそれは望めないだろう。あと1秒にも満たぬうちに直撃を受ける未来が見える中、突如紫色の光弾が空中を薙ぎ払うかのように奔り、絡め取られたミサイルは空中で花を咲かせた。
「今のは!?」
光弾が放たれた方向へと顔を向けると、そこには愛銃である終幕:デストロイヤーを構えるヒナの姿があった。激しい戦いをくぐり抜けてきたからか、制服はボロボロで所々負傷もしているようだが、銃を構える姿はまさに個人でのゲヘナ最強と称される程に堂々としている。
ミサイルを迎撃したヒナは次にロボットへと銃を向けた。先端のマズルブースターが回転を始め、銃口からは光が漏れ出す。ヒナは己の翼を大地に突き刺しアンカーとして自身を固定すると、すぐさまトリガーを引いた。放たれた一撃はまるでレーザービームを思わせるが、しかし敵は大きく跳躍してそれを回避、腰に据え付けられたガトリング砲を逆にヒナへと浴びせかけた。
「くっ……!」
小銃弾程度ならば表皮で弾くヒナだが、撃たれたのは20mmクラスの威力を持つエネルギー弾。被弾した箇所の皮膚は裂け、血が滲む。だが彼女は決して膝をつくことなく敵の移動先を予測し、もう一度引き金を引いた。
この一撃は敵の左肩を撃ち抜き、左腕を吹き飛ばして大きくバランスを崩させる。そのまま空中に留まることなどできなくなった敵はひっくり返るように地面に突き刺さり、上半身の半分近くが火山灰溜まりに埋まった。この瞬間を見逃すイロハではなく、彼女は即座に指示を下す。
「主砲旋回左15°! 目標、擱座している敵!」
「見つけた! 発射!」
直後虎丸の主砲が火を噴き、放たれた砲弾は敵の胴体を貫き炸裂する。撃破されたロボットは空中に溶けるように消え、火山灰溜まりにはそれが確かに存在していたという窪みのみが残された。そして残る2体は後方へと跳躍し、彼女たちから見えぬ位置へと下がっていく。
「……流石ね、イロハ」
敵が1体倒れたとはいえ、まだ2体残っているため気は抜けない。銃をリロードしながらヒナは虎丸の近くに寄ってキューポラから上半身を出しているイロハを見上げ、その手腕を称える。伊達に
「風紀委員長こそ、支援ありがとうございます。あちらの方はどうなっていますか?」
「持ちこたえては居るけれども、あまり戦況は芳しくないわね。ゲヘナとの通信は相変わらず通じないし、そろそろ弾薬も心もとないわ」
「後方に抜けた敵の状況も気にはなりますが……待ってください! 2号車、全力で下がって!」
まだ敵がいるにも関わらず、ヒナと合流できたことで気が緩んでしまったイロハは敵の再攻撃に気づくのが遅れてしまう。一瞬の油断だが、その代償は不意を突く形で強襲してきた2機のミサイルの嵐によって払うこととなる。
『っ!? 後退、後退だ!』
狙われた2号車はイロハの指示に素早く反応して急速に後退を始めるが、たとえ機敏に動いたとしても高速で飛翔するミサイルからは逃げられない。複数発が天板に直撃し、爆発が車内を覆う。そして車内の搭載砲弾に誘爆が生じたことで砲塔が天高く舞い上がり、乗員たちも同時に放り出された。
「2号車が……あとは虎丸と風紀委員長だけですか……」
「イロハ、どちらにせよ私達だけでやるしか無いわ」
黒焦げになった2号車の乗員たちが這々の体で逃げ出し、残された車体を踏みつけるように着地するロボット2体。イロハは思わず顔をしかめるが、それは不利を感じているからではない。まるでゴミのように戦車が踏みにじられていることに彼女は怒りを感じていた。その横ではヒナは傷つきながらもいつものような平静さを保ち、銃口を敵へと向ける。
彼女が引き金を引くと同時に敵は2体別々の方向へと跳躍し、放たれた紫色の光弾を回避する。イロハも車長用キューポラに急遽増設されたマシンガンを発射するが、小銃用の弾薬ではロボットの装甲を抜くことは出来ずに表面で火花を散らすばかりだった。
「くっ……後退、後退です! 少しでも距離をとって!」
「せめてまともに当たりさえすれば……!」
たまらず後退する虎丸。直後、先程まで留まっていた場所にガトリングガンの攻撃が降り注ぐ。ヒナは追撃を防ぐためにトリガーに指をかけながら銃を振り回すが、通常の射撃ではやはり敵の装甲を抜くことは出来ない。
たった2体の敵にこうも手こずってしまう事にヒナは自分の不甲斐なさを感じていた。無論、今戦っている相手を知るマイケルからすれば生身で良く戦っていると評価するだろうが、自分の強さにある程度自負のある彼女からすれば到底認められるものではなかった。
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急速に活動が活発になったヒノム火山の山頂からは噴煙が上がり、火山灰がまるでパウダーシュガーのように降り注いでいく中、タービンの甲高い音が断続的に鳴り、青白い炎が時折灰色の大地に彩りを添える。さらに電気ノコギリのような音が奏でられると同時に赤い光が奔り、続けて爆発の炎が大地を染めた。
先程から妙な音を立てているものの正体はシャーレの先生、マイケル・ウィルソンの操るメタルウルフである。鋼の巨人は荒涼として複雑な地形の火山の斜面をブーストジャンプで登山し、時折現れる敵を排除しているのだ。そして安全を確保した道を5人の生徒が後を追う。
―――5人、そう5人だ。
黒衣のシロコを先頭に、その背後からついていく4人はゲヘナの生徒たち。しかし彼女たちは
何故、彼女たちが同行しているのか? その理由を語るには少し時計の針を戻す必要がある。
おおよその経緯を簡潔にマコトに説明した後、マイケルは早々にヒノム火山へと向かおうとした。
「先生は一人で……いや、二人で大丈夫なのか?」
しかし、二人だけを救援に行かせるというのは流石のマコトも後ろめたいものを感じており、どうにか出来ないかと考えていた。とはいえ、
他に無いかと彼女が考えていると、市街地の方から数人が歩いてくる音が聞こえて振り向く。その視線の先に居たのは
「黒舘ハルナ、鰐渕アカリ、獅子堂イズミ、赤司ジュンコ……美食研究会が何故ここに居る!?」
「げっ、美食研……」
「風紀委員長居ないのに、また面倒な連中が……」
無論、マコトだけでなく他の
一方、ハルナとアカリはニコニコと微笑みを絶やさない。ただ、イズミはホットドッグ*1を頬張り、ジュンコは場の雰囲気を感じ取って肩身が狭そうにしている。マイケルもその存在に気づいて振り向き、思わず肩を竦めた。
「避難しろと言ったはずだが、何をしに来たんだ。まさかヒノム火山に乗り込むつもりか?」
「ふふ、そのまさかですわ。私共も先生の手伝いをしたいと思いまして」
「……何を企んでいる?」
「あら、先生が生徒の申し出を信じてくださらないので?」
「少しは自分の胸に手を当てて考えてほしいところだが……まあいい」
マイケルとしては人手が増えるのは有難いのだが、先程店舗の防衛の際に裏の目的を持っていたこともあり美食研の参加は少々手放しで喜べるものではなかった。ただ、ヒノム火山に彼女たちが望む美食があるようには思えない。そう考えると、彼女の申し出は本当に善意から来るのではないかという気もしてくる。
「……先生、どうするの?」
「うーん……まあ、正直に言えば人手は欲しい。今から風紀委員と
「ええ、そうさせてもらいます」
最終的にマイケルは彼女たちの同行を許可することとした。人手が足りないという切実な事情と、今回ばかりは彼女たちの良心を信じようと思ったからだ。
こうして美食研とシロコを連れ、マイケルはヒノム火山を制覇するべく動き出す。一応登山道はあるのだが、この灰色の山を短時間で登るには少々遠回り過ぎるため、少々無茶な弾丸登山をすることになるだろう。時間との勝負だ。
そういう経緯でヒノム火山を登る6人であったが、目的地である主戦場はもう近い。銃声と爆発音のみならず、小銃用の曳光弾の軌跡が肉眼で見えるようになっていた。今目の前にある稜線を超えればおそらくたどり着けるだろうか、距離にして100mほど。
「各自、戦闘エリアに突入次第支援に動け。ここは私が先陣を切る!」
「わかった、追いかける」
「ふふっ、ようやくですわね」
シロコと美食研に簡単に指示を出し、ブースターを噴射して短距離飛行を行った彼は稜線を超え、その視界は急激に広がる。見渡す限りの火山灰に覆われた岩場と砂礫地、遮蔽物は所々にある岩と、かつてここには植物が生えていたことを示す枯れ木のみ。何もなければ生命の息吹を感じられぬ死の大地だが、今現在そこでは激しい戦闘が行われていた。
マシンガンを使って敵を近寄らせまいとする風紀委員、弾が切れたライフルをバット代わりにして振り回す
「そうらっ!」
「!」
「まさか、先生!?」
ならば早速介入せねばと彼は戦いのド真ん中へと飛び込み、風紀委員へと襲いかかろうとしていたサソリ型を踏み潰す。その瞬間、ここで戦っていた生徒たちはマイケルの存在に気づき表情が明るくなる。
「先生! 一体どうしてここに!?」
そんな中、イオリが敵をライフルで殴打して倒した後にメタルウルフへと駆け寄る。流石は2年生のエースというべきか、他の生徒と比べて疲労は少ないらしい。
「イオリか、苦戦しているとマコトから聞いてな、大急ぎで駆けつけたんだ。ヒナはどうした?」
「あの議長がそんな事を? ヒナ委員長ならあっちで
「なるほど、わかった。そっちに向かう前に一旦ここを掃除するぞ!」
「先生、何を!?」
イオリからヒナの居場所を聞いた後、彼はヒナ達の支援を行うためにまずはこの場を制圧しようと試みる。垂直にジャンプした後、コンテナからマイクロミサイルコンテナである
「皆、気をつけろ! 爆撃するぞ!」
スピーカーで響くマイケルの声に顔を上げた生徒たちは、次に彼が行う事を予想し慌てて敵から距離を取る。同時にメタルウルフが引き金を引き、32発のミサイルが雨のように降り注いで周囲に破壊を振りまいた。
爆発により巻き上げられた火山灰によって視界が悪くなるが、それでも多くの敵がこの攻撃に寄って吹き飛ばされたのは理解できる。生徒たちは「おお」と声を上げてその結果を喜ぶと、乱戦状態であった配置を整理して隊列を組み直していく。さらにそこへ美食研とシロコが合流した。
「美食研究会!? 先生、アレは一体どういう事なんだ!」
「うふふ、ごきげんようイオリさん」
「まあ……あまり聞かないでくれ、背に腹は代えられないと言うやつだ」
「むむっ……」
美食研の姿を見てイオリは着地したマイケルへと詰め寄るが、彼としてはあまりツッコんでもらいたくない話であるため目線を合わせずに言葉を返す。そんな彼の態度に彼女は唸るが、望むような答えは返ってこないというのだけはわかった。
とはいえ、実際の所救援が欲しかったのは事実である。それが美食研というのは引っかかるところはあるが、まあ仕方がないだろう。ここで拒絶するほどイオリも器量が小さいわけではない。そして気になるのがもう一人、美食研どころかゲヘナの生徒でもない一人の少女。シロコに似ているが、少し大人びた姿はもしや姉なのだろうか。
「それで、そっちは? もしかしてシロコのお姉さんか?」
「…………」
その疑問をつい口にするイオリに対し、シロコは何とも言い難いという表情を見せた。実のところ、黒衣のシロコは元のキヴォトスにおいてそれほどイオリと交流があったわけではない。だというのに、こちらのイオリはかなり気安く声をかけてくる。こっちのシロコは一体どんな交友関係を持っているのだろうか、それを知る術は今のシロコには無かった。
「イオリ、今は説明している時間はないんだ。だから詳細を省くが、結論から言うと彼女もシロコだ、いいな?」
「は? えっ? いや、全然意味わからないんだけど!?」
「詳しくは後で、だ! 皆、これだけ倒せば後は大丈夫だろう。私は少しばかり
「うわっ……げほっ、げほっ! あ、ちょっと!」
困惑するシロコをアシストするべく口を挟んだマイケルは、一旦イオリの疑問を先送りにすることにした。このシロコの事を説明するのはかなり骨が折れる以上、このような状況下で説明が出来るものではない。それに、これ以上時間を掛けてはヒナと戦車隊が危険に晒されてしまう。
そういう事もあり、この場を生徒たちに任せる事とした彼は大声で指示を出すとブースターを作動させ、青い炎を引きながら空高く舞う。巻き上げられた火山灰を喰らってたまらず咳込んだイオリは引き止める事が出来ず、飛び去るメタルウルフの背中を見送ることしか出来なかった。
「……まあ、一先ずはこの場を掃除しましょうか。私共もそのつもりでここに居るわけですから」
「はぁ……仕方ないな。先生が粗方減らしてくれたし、邪魔はするなよ美食研究会!」
「ん……私も忘れないで欲しいな」
気を取り直し、彼女たちは再集結を始めた守護者への攻撃を始める。敵の数的有利は消え、士気も旺盛、ここまでくれば負ける要素などどこにもない。2つの集団が激突し、灰に覆われた大地を再び激しい銃声が支配することとなった。
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青白いエネルギー弾が連続して放たれ、虎丸の上部装甲を叩く。一旦頭を引っ込めてやり過ごしたイロハは
先程から小ジャンプを繰り返し射撃してくるロボット2体によってヒナと虎丸は完全に身動きが取れずに居た。敵の機動は不規則かつ素早いもので、ヒナは集中射撃体勢から撃墜を狙うが直撃を与えることが出来ずにおり、その度に敵の集中砲火を受けて傷が増えていた。さすがのヒナもこれ以上のダメージの蓄積は許容できず、膝が笑い始め銃口も震えている。
「くっ……」
「これは……まずいですね。車体右旋回20度、少しでも敵に正面を―――うっ!?」
「こ、これは……スタック!スタックしました!」
「しまった……!」
何とか防御姿勢を取ろうとする虎丸であったが、その場で超信地旋回をした所急にがくんと動きが止まる。履帯が空回りし、押しても引いても動かない。火山灰溜まりに踏み込んでしまい、完全にスタックしてしまったのだ。
「……撃ってこない? 何のつもりでしょうか」
もはや虎丸は身動きを取ることが出来ない。それなのに敵は撃破するためのミサイルを撃ってこないのは甚振るつもりなのか、それとも弾切れなのか、イロハには判断がつかない。
「はぁ、いっそのこと楽にしてくれればいいものを」
「でも、おかげで脱出した子たちは離脱できたわ」
マシンガンをリロードしながらぼやくイロハに対し、ヒナが合いの手を入れる。脱出した3号車と4号車の乗員、そして爆発で吹き飛ばされた2号車の乗員は何とかこの場から離脱することが出来ており、残るは彼女たちだけだった。
虎丸を捨てればイロハ達も逃げ出すことが出来るかも知れないが、それは彼女にとって出来ない相談だ。持ち込んだ蔵書、イブキがプレゼントしてくれた絵、どれも捨てることが出来ないもの。それに、虎丸そのものに対する愛着も彼女にはあった。
「……まあ、最後まで足掻かせてもらいますか」
「ええ、そうしましょう」
故に、彼女たちは逃げはしない。最期の瞬間まで戦い抜くのだとグリップを握る手に力がこもる。自分たちを見下す2体のロボットは腰のガトリングガンをきっちりと構え、ヒナ達にとどめを刺さんとしていたが――――
「
次の瞬間、青い閃光が片方のロボットの胴体を貫き、四肢が糸の切れた人形のようにだらりと垂れ下がったと思ったらそのまま大地に墜ち、溶けるようにその姿は消えていく。それを見た後、二人は先程閃光が飛んできた方向へと顔を向けた。
「あれは……!」
火山灰が降り注ぎ灰色に染まる景色を切り裂くように飛んでくる濃紺色の巨人、メタルウルフ。右手に構えていたレールガンを背部の武装コンテナへと収納した後、まるで己を砲弾に見立てたかのように猛烈な勢いで敵へと向かう。
最後のロボットは迎撃をするべく向きを変えるが、それよりも早くメタルウルフのドロップキックがその頭部を打ち抜き、もげた頭が放物線を描いて飛んでいく。メタルウルフはその勢いのままに大地を滑って静止すると、制御を失ったロボットは重力に従い火山灰の上に墜落し、他の2体と同じ末路を辿った。
「……やれやれ、何とか間に合ったな」
まるで額の汗を拭うかのようなモーションを見せ、メタルウルフはヒナ達へと顔を向ける。何が起きたのか理解が追いつかなかった二人は、しかし眼の前の光景が現実のものであると理解すると、緊張の糸がキレたのかヒナはその場に崩れ落ち、イロハも砲塔の中へと消える。力が抜け、立つことができなくなったのだ。
「おーい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫……ちょっと気が抜けただけだから」
心配そうに声をかけるマイケルに、ヒナは恥ずかしそうに顔を隠して答えるのだった。
解説
青白いロボット
ミメシスによって出現した謎のロボット。PMCのパワーローダーと誤認されているが、その実態は特殊機動重装甲の特殊モデルをベースとしている。
かつての部下が操ったものと同じ見た目をしていたが、今のマイケルにとって生徒を守ることが第一であったために情け容赦なく撃破された。尚、ステルス機能は再現されていない。
何故こんなものがミメシスによって出現したのか、M1エイブラムスを含め不明である。