トリントン基地全体を震わせるブザー音が鳴り響いた瞬間、ルナツー教導隊の3機は同時にスラスター音を爆発させた。
「ヒタチ中尉、すぐに大型レドームを起動! 敵位置の索敵を開始。エイガー中尉のジム・キャノンⅡによるビーム砲撃がいつ飛んできてもおかしくない、警戒を怠るんじゃないよ!」
ボカタの鋭い指示が飛ぶ。
「了解! 索敵レーザー、計測システム起動。敵のパッシブ探知を始めます!」
ヒタチの量産型ガンキャノンⅡは、右背面に装備された大型レドームを旋回させ、乾いた大気に鋭い索敵波を放ち始めた。
「ミコト少尉、Vフォーメーション隊形へ移行! 私とあんたで前衛を張るよ!」
「ミコト、了解しました!」
ミコトのガルバルディが、ゲルググ譲りの力強いスラスター噴射で一歩前に出る。
ボカタのジム・スナイパーⅡとミコトのガルバルディαが、後方の量産型ガンキャノンⅡを庇うようにした陣形――Vフォーメーションを瞬時に形成した。
「目指すは中央の大型コロニー残骸だ! あそこに陣取って迎撃の足場を作る。全機、ウチに続け!」
ボカタがスロットルを押し込むと、ガンダムの二倍以上の推力を誇るジム・スナイパーⅡが、赤い砂塵を巻き上げて突進を開始した。
対するチーム・シリウスは、ルナツー教導隊とは対照的な歩調で進軍していた。
隊長のヴァルターが駆るジム・カスタムは、マグネット・コーティングによる極限の追従性を誇る。
しかし、部隊の総移動速度は、重装甲を纏ったエイガーのジム・キャノンⅡの進軍ペースに合わせざるを得なかった。
「……チッ。重装甲なのは構造上仕方ないが、地上の移動速度がここまで鈍足とはな。これではせっかくの最新鋭機の反応速度が宝の持ち腐れだ。」
コックピットの中で、ヴァルターは不機嫌そうに舌打ちを漏らし、操縦桿を握る手先をピキピキと震わせていた。
「ヴァルター大尉、ホバートラックのソナーが敵影を捕捉しました。ルナツー教導隊、中央エリアにある大型コロニーの残骸へ向けて直進中。あの位置に陣取られると、こちらの射線が遮られます!」
随伴する支援車両のホバートラックから、ノエルの焦りを含んだオペレーションボイスが飛び込んでくる。
「……あそこに陣取られると面倒だな。よし、私が単機で先行する!」
ヴァルターの判断に、すぐさまクリスが反論の通信を入れた。
「大尉、お待ちください! 単機での先行はあまりに危険です。敵のルナツー教導隊は連携に優れたベテラン部隊、各個撃破の餌食になりかねません!」
「はい、クリス中尉の言う通りです! スピードを合わせ、3機で進軍すべきです!」
ノエルもクリスに同調してヴァルターを制止しようとする。しかし、それがかえってヴァルターの傲慢なプライドを刺激した。
「黙れ! コロニー残骸を完全に陣取られる方が、よほど戦術的に不利になる! それに、泥臭い前線の連中の連携ごとき、私の操縦技術とジム・カスタムの性能があれば、深入りせずとも足止めくらい容易にこなしてみせる。撃破されるなど有り得ん!」
ヴァルターの高圧的な怒声に、クリスとノエルが言葉を詰まらせ、困惑の沈黙が回線を支配した。その重苦しい空気を切り裂いたのは、どっしりとしたエイガーの声だった。
「……いや、隊長の言うことにも一理ある。大尉の意見は筋が通っているさ。ここは先行をお願いした方が、戦況を有利に運べるんじゃないか?」
エイガーはあえてヴァルターの言葉を肯定し、二人を庇うように会話に入った。
「俺のジム・キャノンⅡじゃ、どう足掻いてもスピードが足りん。だが、クリスに護衛されながら落ち着いて進軍できれば、俺の砲撃精度も鈍らない。大尉、ここは最新鋭機の性能を信じます。先行して、敵の足止めをお願いします。」
「ふん……実戦経験者にしては、物分かりが良いな。」
エイガーの言葉に満足したヴァルターは、鼻で笑うと同時にペダルを強く踏み込んだ。
ヴァルターの操作に瞬時に反応し、ジム・カスタムのメインスラスターがまばゆい閃光を放つ。
機体は恐るべき加速力で赤い大地を蹴り、単機で中央のコロニー残骸へと突っ走っていった。
その直後、ヴァルターの耳に入らない秘匿通信回線で、2つのため息が重なった。
「エイガー中尉……フォロー、ありがとうございました。本当に助かりました。」
「すみません、エイガー中尉。私たちが大尉を怒らせてしまって……。」
ノエルとクリスが、ホッとしたような、申し訳なさそうな声で感謝を告げる。
「気にするな。あの頑固な隊長をまともに説得しようとしたら、試合が終わっちまうからな。……さあ、俺たちも急ごう。あのお坊ちゃんが前線で無様に撃破判定を食らう前に、俺の自慢の大砲を届けてやらなきゃならんからな。」
エイガーは苦笑混じりに答え、重装甲のジム・キャノンⅡの出力を引き上げた。
クリスのジム・カスタムがその側面にピタリと寄り添い、2機はヴァルターの後を追って赤い砂煙の中へと消えていった。
ルナツー教導隊が目指す大型コロニーの残骸は、もう目前にまで迫っていた。
地に突き刺さった巨大な隔壁が、演習場に巨大な影を落としている。
「このまま一気に滑り込めば、私たちの勝ちパターンですね! 完全に陣地化できます!」
ミコトがガルバルディの機体を滑らせながら、勝利を確信したような弾んだ声を通信に乗せる。
だが、その後方を追うヒタチのコンソールで、アラートの赤ランプが激しく明滅した。
「待ってください! レドームに急速接近する単一の熱源を捕捉! ――速いっ! このスピード、新型のジム・カスタムです!」
ヒタチの切迫した報告が回線に響く。
「なんだって……? 後続のガンキャノンⅡに歩調を合わせず、単機で突っ込んできたっていうのか。」
ボカタは眉をひそめ、即座に敵隊長の意図――こちらの陣地形成を阻止するための強行突破であることを見抜いた。
「ヒタチ中尉はそのままコロニー残骸の内部を目指せ! 陣地の確保が最優先だ。ミコト少尉とウチで、あの突撃馬鹿をここで迎撃するよ!」
「了解! 内部へ滑り込みます!」
「ミコト、了解! 迎撃行動に移ります!」
ヒタチの量産型ガンキャノンⅡが推力を上げ、コロニーの割れ目へと滑り込んでいく。
それと交差するように、ボカタのジム・スナイパーⅡとミコトのガルバルディが急制動をかけ、迫り来る砂煙の主へ向けて、それぞれのビーム・ライフルを真っ直ぐに突き付けた。
その頃、驚異的な加速で赤い大地を滑走するヴァルターのジム・カスタム。
そのコックピットのメインモニターに、こちらを迎撃せんとする2機の機影が鮮明にクローズアップされた。
「……見つけたぞ、教導隊の馬鹿どもが。」
ヴァルターの細い目が、冷酷な嫌悪感に細められる。
特に、彼の視線が真っ向から捉えたのは、ミコトの駆るガルバルディの、あの特徴的な丸みを帯びたジオン特有の装甲ラインだった。
「連邦の最高技術を競う神聖な競技会に、そんな忌まわしいジオンのモビルスーツを持ち込むとは……。無神経にもほどがある。技術の進歩を理解できず、敗北者の遺産に縋る愚か者どもめ。その歪んだ認識ごと、ここで叩き潰してやる!」
ヴァルターは激しい嫌悪感を言葉に乗せながら、実弾兵器であるジム・ライフルを滑らかに構えた。
マグネット・コーティングが施された腕部駆動系は、彼の思考と完全に同調するかのように、一切のブレなく標的をセンターに捉える。
「まずは足止めだ。ジャブローの最新鋭機の性能、その身に刻め!」
ヴァルターはセレクターを単発射撃モードへと切り替え、人差し指でトリガーを冷酷に引き絞った。
――ガガァン! ガガァン!
銃口から撃ち出されたのは、演習用の90mmペイント弾だ。
実戦さながらの猛烈な硝煙を吹き上げながら、鋭い金属音と共に放たれたダミー弾頭が、オーストラリアの赤い大地を激しく穿ち始めた。
ヴァルターのジム・カスタムが放った90mmペイント弾の鋭い斉射に対し、ボカタとミコトは瞬時に機体を左右へとスライドさせた。赤い大地に次々とペイント弾が着弾し、激しい土煙と鮮やかな模擬染料が飛び散る。
「ミコト少尉、左右から挟むよ! 撃ちな!」
ボカタのジム・スナイパーⅡが、ボウワ社製ビーム・ライフルから演習用の減衰フラッシュビームを放つ。
それと同時に、ミコトのガルバルディαもゲルググ譲りの大型ビーム・ライフルを正確に追従させ、十字の射線を形成した。
交差する二条の光条。それは確実にジム・カスタムの五体を捉える軌道だった。
――だが。
「……ッ!? なんだ、あの動きは!」
ボカタは思わず目を見張った。
バックパックと脚部のスラスターを激しく明滅させたジム・カスタムは、まるで物理法則を無視したかのように、トップスピードのままカクンと軌道を横へ滑らせたのだ。
駆動系の摩擦抵抗を極限までゼロに近づけた「マグネット・コーティング」。
パイロットの操縦桿の入力に対し、機体が寸分の遅延もなく『即座に』反応する。
ボカタたちの百戦錬磨の偏差射撃すら、その圧倒的な追従性の前には、ただの虚空を切り裂く光に過ぎなかった。
「チッ、マグネット・コーティングの反応速度だけじゃない……! あのパイロット、偉そうな割には機体のポテンシャルを完全に引き出していやがる!」
ボカタがコックピットの中で悪態をつく。
ヴァルターの傲慢さは、確かな操縦技術に裏打ちされたものだった。
「ハハハ! 遅い、遅いぞ! ジム・カスタムのレスポンスに、そんな一年戦争の機体がついてこれていないのが分からないのか!」
ヴァルターは高笑いしながら、ペダルをリズミカルに踏み分けた。
ジム・カスタムは脚部の跳躍とスラスターの噴射を見事に同期させ、赤い大地を三次元的にバウンドするように跳ね回る。
そのアクロバティックな跳躍移動の最中にも、ジム・ライフルから正確な牽制弾をバラ撒き、ボカタたちの動きを巧妙に制限していく。
「……流石にジャブローの代表だ、単機だからって無理に突っ込んでくるような間抜けじゃないね。」
ボカタは敵の猛攻をシールドで防ぎながら、冷静に戦況を見極めた。
ヴァルターの狙いは、あくまで自分たちをここに釘付けにし、後続のエイガーたちを追いつかせることだ。
「ミコト少尉! 牽制射撃を維持しつつ、後退してコロニー残骸のヒタチ中尉と合流するよ! 懐に滑り込まれなけりゃ、こっちの連携でハメ殺せる!」
「ミコト、了解です! 殿は任せてください!」
2機はジム・カスタムの跳躍に合わせてビームを撃ち返し、牽制の網を張りながら、背後のコロニー残骸へと向かって急速にバックステップを開始した。
しかし、ヴァルターはその意図を即座に察知した。
メインモニターに映る2機の不自然な推力ベクトルを、彼の冷徹な目が捉える。
「逃がすか……! コロニーの穴ぐらに逃げ込もうなど、浅知恵もいいところだ!」
ヴァルターは操縦桿を鋭く押し込んだ。ジム・カスタムは着地の衝撃をマグネット・コーティングの関節駆動で完璧に吸収し、即座に次の爆発的なダッシュへと移行する。
教導隊の2機が距離を離そうとする、その絶妙な隙間。
ヴァルターはそのラインを正確に見極め、ジリジリと、しかし確実に間合いを詰めながら追撃の牙を剥いた。
つかず離れず、それでいて決定的な退路を断つような、あまりにも嫌らしい距離感だった。
「ヒタチ中尉! コロニー残骸へは入れそうかい!?」
ボカタはジム・カスタムの猛烈な追撃をシールドで捌きつつ、叫ぶように通信を入れた。
「あと少し……あと少しで滑り込めます!」
ヒタチの焦燥の混じった声が返る。
コックピットの中で、ボカタは迫り来る実弾の弾道を機体を傾けて躱しながら、急速に思考を巡らせていた。
(手堅く歩調を合わせて、隊形を組んで進軍してくる――そう踏んでいたんだけどね。)
ジャブロー直属のテストパイロットチームという肩書から、セオリー通りの堅実な集団運用をしてくると予測していた。
だからこそ、鈍重なジム・キャノンⅡの進軍スピードを逆算し、自分たちが余裕を持ってコロニー残骸を完全要塞化できると確信していたのだ。
だが、現実は違った。
相手はジム・キャノンⅡの鈍足さに付き合うことなく、驚異的な推力を持つジム・カスタム単機で、強引にこちらの足止めに突っ込んできた。
(あの割り切ったスタンドプレー……情報にある、穏健で堅実そうなクリスチーナ・マッケンジー中尉の動きじゃない。なら、プライドの塊――ヴァルター大尉の方か!)
敵隊長の予想外の攻撃性にボカタが歯噛みしたその時、ヒタチから歓喜の通信が飛び込んだ。
「少佐! 量産型ガンキャノンⅡ、コロニー残骸の内部へ到達しました!」
「よくやった! ヒタチ中尉、すぐにそこから援護射撃を開始! あの鬱陶しいカスタムの足を止めるんだ!」
「了解! 左肩ビーム・キャノン、チャージ! 隙間から狙いま……っ!?」
ヒタチが引き金を引く直前、突如としてコロニーの外壁が激しく爆ぜた。
ドォン! ドォン!
演習用の減衰フラッシュビームが二筋、凄まじい精度でコロニーの割れ目を直撃し、強烈な閃光がヒタチの光学モニターを真っ白に染め上げる。
『うわああっ!?』
ヒタチは咄嗟にレバーを引いて機体を物陰に引き込み、直撃を凌いだ。
心臓をバクバクと高鳴らせながら、彼はセンサーのログを確認して驚愕の声を上げる。
「ば、馬鹿な……! まだ敵のジム・キャノンⅡは、ロックオンシステムの射程外のはずです! なのに、どうしてこれほど正確に……っ!?」
ヒタチの悲鳴に近い報告を聞いた瞬間、ボカタの脳裏に、敵前衛の「もう一人のエース」の経歴が鮮烈にフラッシュバックした。
「エイガー中尉……! そういうことか!」
ボカタは苦り切った顔で叫んだ。
エイガーはモビルスーツのパイロットになる前、地球連邦軍の伝統的な「戦車乗り」だった男だ。
その卓越した砲撃技術を買われ、ガンダム6号機マドロックの乗り手に大抜擢された経歴を持つ。
「2人とも気をつけな! 相手は機体のロックオン機能なんて頼っちゃいない! 砲撃手としての『勘』で、マニュアルで砲撃してきてるんだよ!」
それは、最新鋭の電子戦すら凌駕する、鍛え上げられた人間の超絶技巧だった。
「全機、ジム・キャノンⅡの『射程』に入った! 警戒しな!」
ボカタが警告を飛ばしたのと同時だった。
背後からの恐るべき超長距離砲撃に教導隊の意識が一瞬削がれた隙を、ヴァルターが逃すはずもなかった。
「余所見とは余裕だな、ジオンの骨董品がァ!」
ヴァルターのジム・カスタムが、マグネット・コーティングによる凄まじい追従性で一気に急加速。
ミコトのガルバルディとの間合いを、一息にゼロへと詰め寄ってきた。
(マズいね……!)
ボカタの顔に冷や汗が伝わる。
ヒタチをコロニー残骸に滑り込ませることには成功した。
しかし、自分とミコトの2機は、遮蔽物のない平原に取り残されたまま、エイガーの超長距離砲撃のデッドラインに引きずり込まれてしまったのだ。
機動戦では化け物じみたジム・カスタムに張り付かれ、遠距離からはガンダム6号機の乗り手による精密砲撃が降り注ぐ。
(はっきり言って、最悪の形だよ。……来るね、チーム・シリウスの本当の猛攻が……!)
赤い大地の激風の中、ボカタはジム・スナイパーⅡの操縦桿を握り直し、これから始まるであろう地獄のような波状攻撃に対し、奥歯を噛み締めて覚悟を決めた。
「これ以上、好き勝手に撃たれてたまるか……っ!」
コロニー残骸の陰で、ヒタチは歯を食いしばりながらコンソールを叩いた。
量産型ガンキャノンⅡの右背面に据えられた大型レドームが超高速で旋回し、目に見えない索敵波を幾重にも放って赤い大地の死角を抉り出す。
『キャッチしました! 少佐、ミコト少尉! お2人の位置から見て2時の方角、距離4200に機影が2機!』
「エイガー中尉に、もう一機のジム・カスタムが追いついてきたか……!」
ボカタが叫ぶのとほぼ同時に、2時の方向から陽炎を切り裂いて二筋のまばゆい光条が殺到した。
演習用の減衰フラッシュビームが、ジム・スナイパーⅡの五体を消し去らんと鋭く伸びる。
しかし、ヒタチの警告によってあらかじめ意識を2時方向へ割いていたボカタの反応は一瞬早かった。
ジム・スナイパーⅡはバックパックのスラスター音を響かせ、ステップを踏むように機体を真横へとスライドさせる。
ビームは装甲をかすめることもなく、赤い大地を激しく穿った。
(同時に二筋のビーム……! 間違いない、ジム・キャノンⅡの『ビーム・キャノン』だね!)
ジム・キャノンのような単装砲ではない、最新のジム・キャノンⅡならではのビーム連装砲。
その圧倒的な瞬間火力を瞬時に察知したボカタは、すかさずコロニー内の愛弟子へ鋭い怒声を飛ばした。
「ヒタチ中尉! あいつにこれ以上自由に砲撃させるんじゃない! 私達の連携を、チーム・シリウスに叩き込んでやりな!」
「了解! 大型レドーム、火器管制システムへ完全同調。標的、ジム・キャノンⅡ……コンペの勝者を引きずり下ろしてやる!」
ヒタチの量産型ガンキャノンⅡが、コロニーの隙間からどっしりとした巨躯を現した。
精密射撃用レーザー・センサーがエイガーの機体を射程外から強引にハッキングするように捉える。
「ファイヤーッ!」
ヒタチが引き金を引き絞ると同時に、左肩のビーム・キャノン、そして両腕のシールド一体型二連ビーム・キャノンが同時に文字通りの火を噴いた。
Eパック方式の恩恵による、間髪を入れない苛烈な連続砲撃が、砂塵の向こうのエイガーへと襲いかかる。
「この砲は…、量産型ガンキャノンⅡか……!まさか、競技会でもう一度、競り合うとはな!!」
迫り来るビームの嵐を察知したエイガーのジム・キャノンⅡもまた、重装甲の機体を斜めに滑らせながらビーム・キャノンを撃ち返した。
――ドゴォン! ズガァン!
遮蔽物のない赤い平原と、コロニー残骸の隙間の間で、二条、三条のビームが行き交う。
かつて連邦軍再建計画のコンペティションで採用を争い、コンペに負けて消えていった幻の機体「量産型ガンキャノンⅡ」と、そのコンペの勝者として歴史に名を刻んだ「ジム・キャノンⅡ」。
オーストラリアの赤い大地で、時代に翻弄された二つの砲撃仕様モビルスーツによる、意地とプライドを懸けた激しい砲撃の応酬がここに幕を開けた。
砲撃の轟音がオーストラリアの赤い大地を揺らす中、前線ではヴァルターのジム・カスタムが、凄まじい推力でミコトのガルバルディαの懐へと滑り込んでいた。
「ジオンの遺物め、そこをどけェ!」
ヴァルターはジム・ライフルを突き付け、容赦のない至近距離射撃を放つ。
対するミコトも鋭い反射神経でガルバルディαの楕円形シールドを滑らせ、ペイント弾を火花とともに弾き返した。
直後、ミコトのコックピットに、割り込むような大音量で接触回線の通信が繋がった。
「おい、ルナツーの教導隊! 聞いているか!」
スピーカーから響いてきたのは、ヴァルターの怒りと激しい嫌悪感に満ちた声だった。
「地球連邦軍の最高技術と兵の練度を競う、この神聖な競技会において! あろうことか、かつて我が連邦を脅かしたジオン公国軍のモビルスーツを持ち込むとは、一体どういう神経をしている! 配慮というものがまるでない、無神経極まる行いだ!」
「え……っ!?」
あまりにも想定外の方向からの激しい糾弾に、ミコトは操縦桿を握ったまま思わず困惑の声を漏らした。
彼女にとって、このガルバルディαはジオンへの嫌悪などではなく、連邦の技術陣が接収・改修を重ね、自分たち教導隊が命を吹き込んできた「最高の教材であり相棒」だ。
戦う前から機体の出自そのものを全否定されるようなヴァルターの狂気的な固執は、彼女の理解の範疇を完全に超えていた。
「ジオンの残光どもが未だ各地で燻るこのご時世に、そんな忌まわしい呪縛の遺産を乗り回すなど、連邦軍の威光を冒涜する行為だ! その悪趣味な機体ごと、ここで徹底的に叩き潰してやる!」
「な、何を言っているんですか、この人は……!?」
ミコトは困惑しつつも、相手の敵意の言葉に呑まれるわけにはいかなかった。
「この機体は、私たちが教導隊で血の滲むような訓練を重ねて、信頼してきた大切なモビルスーツです! 趣味や過去の呪縛なんかで動かしていません!」
ミコトは叫び返すと同時に、ギャン直系の優れた運動性を爆発させた。
ガルバルディαは右腰からギャンと同型のビーム・サーベルを滑らかに引き抜き、低出力のセンサー感知モードの刃を起動。
ヴァルターのジム・カスタムの胸元へと突き出す。
「ハハハ! 遅い、遅いぞ!」
ヴァルターは嘲笑しながら、マグネット・コーティングの超反応でジム・カスタムを真後ろへとバックステップさせた。
サーベルの光条が虚空を切り裂く。
すぐさまヴァルターも実弾の牽制を放ち、ミコトがそれをシールドで防ぐ。
互いに一歩も引かない、至近距離での息をもつかせぬ機動格闘戦。
ヴァルターの最新鋭機による化け物じみた追従性と、ミコトの教導隊仕込みの正確な機体コントロールが、赤い大地の砂塵の中で激しく火花を散らし合っていた。
「ミコト少尉、今援護するよ!」
ガルバルディがジム・カスタムの猛攻に晒されているのを見たボカタは、即座にジム・スナイパーⅡのなビーム・ライフルをヴァルターへと向けた。
射線確保、トリガーに指がかかるまであとコンマ数秒。
――だが、その熟練の射撃を許さない影が、滑り込むようにボカタのスコープを遮った。
「そこまでです、ポワチエ少佐! 大尉の邪魔はさせません!」
上品でおっとりとした、しかし芯の通った女性の声。
クリスチーナ・マッケンジー中尉のジム・カスタムが、凄まじい制動能力でボカタの斜め前方に立ち塞がったのだ。
「クリスチーナ中尉……ッ! 抜かりがないね!」
ボカタは咄嗟に銃口をクリス機へと切り替え、減衰フラッシュビームを放つ。
しかし、クリスはかつてガンダムNT-1アレックスという怪物的な高機動テスト機を扱っていた、超一級の技量の持ち主だ。
マグネット・コーティングを施されたジム・カスタムをまるで自分の手足のように滑らかに操り、最小限のステップでボカタの射線をいなしていく。
「ヴァルター大尉のやり方には、私も思うところがあります。……でも、私たちはテストパイロットとして、この機体の性能を証明しにここへ来ているんです。簡単にそちらの連携を許すわけにはいきません!」
クリスは一年戦争を戦い抜いたエースとしての鋭い眼光を覗かせ、手にしたジム・ライフルからペイント弾の鋭い3連射を放った。
「へえ、言うじゃない。お上品なお嬢さんだと思っていたけど、流石はガンダムのパイロットだね!」
ボカタはジム・スナイパーⅡのシールドで実弾を弾きながら、クリスの隙のない機動に舌を巻いていた。
ヴァルターがミコトを縛り付け、クリスが自分を完璧にマークする。
教導隊の連携は、最新鋭機の圧倒的なスペックと、それを乗りこなす元ガンダムパイロットたちの技量によって、完全に分断されようとしていた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
ガルバルディVSジム・カスタム
量産型ガンキャノンⅡVSジム・キャノンⅡ
などの因縁のバトルが始まりました!
今回のクリスのジム・カスタムは彼女用にちゃんとセッティングされているので、アレックスみたいに振り回されないので、彼女の実力が発揮出来るようになっています。
ではでは、次の話も楽しみにしてください。
【機動戦士ガンダム オリオンの軌跡】に登場するオリジナル機体で好きな機体はなんですか?
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陸戦型ジム改
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バイアリーターク
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ペイルライダー・ヴァンガード
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ペイルライダー・マスケッティア
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ヴァルキリー
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グフ・ノクターン