機動戦士ガンダム オリオンの軌跡   作:浅片名羽馬

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第138話 情報非対称狂騒曲

宇宙世紀0083年10月24日

 

華星警備 地下拠点・社長執務室

 

あのソウヤ・タカバ大尉の電撃的な特命調査から2日が経過していた。

蛍光灯の冷徹な白光が落とされる室内には、カルロス・ボドリゲス少佐、副官のヤゴ・チエ中尉、そして火力支援担当のロニン・スーウェル軍曹の3人が集まっていた。

デスクの上の広帯域暗号モニターには、2つのウィンドウが分割表示されている。

1つは北米から太平洋を越えて通信を繋ぐボルクとドリス。

そしてもう一つは、宇宙のデラーズ・フリートの動向とアフリカ残党の連動性を探るため、ルオ商会の名目でアフリカ大陸へと飛んだキリー・ギャレットの姿であった。

 

「――よし、全員揃ったな。地球の裏表で同時に爆弾が跳ね回っている状況だ。時間は貴重だぞ。各方面の状況報告と、情報交換を始める。」

 

カルロスが低い声で会議の開始を告げた。

その肉厚な指先が、無意識に腰の日本刀の柄をなぞる。

最初に発言したのは、北米のカスケード山脈にあるティルナノーグへと潜入していた、ボルクとドリスの2人だった。

画面の向こう、応急処置の医療器具が並ぶ木造のセーフハウスから、ドリスが生々しい疲労の滲む声で口を開いた。

 

「連絡が遅くなってごめんなさい。追跡を警戒して、安全なセーフハウスへ辿り着くのが最優先だったの。……まず、カルロス少佐の息がかかっていた北米の技術者だけど、先ほど容態が安定して、一命は取り留めた。安心していいわよ。」

 

「……そうか、生きていたか。」

 

カルロスは浅黒い顔の厳しさを僅かに緩め、小さく息を吐き出した。

隣に立つチエもまた、眼鏡の位置を直す。

技術者の命が繋がったのは、これ以上ない朗報だった。

だが、カルロスはすぐに鋭い眼光を画面へ戻す。

 

「だが、本題はここからだ。北米の状況はどうなっている?」

 

ドリスは一度、隣で技術者を看病しているボルクへ視線をやり、それから冷徹なハッカーの顔に戻って報告を切り出した。

 

「最悪の報告から行くわね。……私たちがティルナノーグ跡地へ到着した時点で、決戦兵器の心臓部である『制御ユニット』は、すでに奴らに奪われていたわ。……工廠を制圧し、少佐の決戦兵器を横取りしたアンシーンの正体――それは2年前の『水天の涙作戦』の生き残り。インビジブル・ナイツの副官、アイロス・バーデ少尉よ。」

 

「……何だと!? アイロス・バーデだと……っ!?」

 

その名を耳にした瞬間、カルロスは恰幅の良い体躯を大きく揺らし、浅黒い顔を驚愕に歪めて机を激しく叩いた。

 

(あの男が、北米に潜っていたというのか。それも、俺たちが完成させた決戦兵器を奪うとは!)

 

カルロスの胸の内に、かつてのインジブル・ナイツの生き残りに対する複雑な感情と、それ以上の凄まじい戦術的危機感が激流となって去来した。

刀の柄を握る肉厚な指先に、ギリ……と恐ろしいほどの力が込められる。

モニターのもう一つのウィンドウ、アフリカの通信拠点にいたキリーの細い眉が跳ね上がった。

 

「アイロス……!エリクの副官だった男!あいつが今回の黒幕だったのね!」

 

キリーの声音に、明らかな戸惑いと、激しい怒りの熱が混ざり合う。

だが、ドリスの報告はそれだけに留まらなかった。

画面の向こうのハッカーは、キリーの顔を真っ直ぐに見据え、さらに残酷な事実を付け足した。

 

「怒るのはまだ早いわよ、キリー。……アイロスたちは、ティルナノーグで、あなたの部下たちの機体を所持していたわ。……『ティターニア』『イフリート・イェーガー』『ドム・ノーミーデス』。あいつら、その3機を利用して、北米の残党たちに『妖精が帰還した』と本気で信じ込ませ、決起を促しているわ。……最悪のフェイクよ。」

 

「――な、何ですって……!?アルマたちの機体を、あの子たちの誇りを、そんなテロの為に使われているというの……ッ!?」

 

キリーは激昂し、ルオ商会のエージェントとしての仮面をかなぐり捨ててモニターのカメラに身を乗り出した。

我が子のように愛した娘たちの名前を騙る不届き者への殺意が、アフリカの通信線を震わせる。

 

「落ち着いて、キリー。話には続きがあるわ。」

 

ドリスはキリーを宥めるように制し、カルロスへと視線を戻した。

 

「生身の私たちじゃ、MSの包囲網からは絶対に脱出できなかった。だから、ティルナノーグに到着するまでに、私がキャリフォルニア・ベースへ『不審なジオンの動きあり』って、タレコミを送っておいたのよ。予想通り、ベースの最精鋭部隊の『ウィッチハント隊』が即座にスクランブルをかけて突入してきたわ。私たちは、そのドサクサに紛れて、技術者を連れて逃げることに成功したわ。」

 

「ほう……連邦を囮に使ったか。流石は凄腕のハッカーだな。」

 

部屋の隅で腕を組んでいた寡黙なロニン軍曹が、無精髭の口元を僅かに緩めて感心したように呟いた。

しかし、ドリスの液晶の光に照らされた瞳は、まだ晴れてはいなかった。

 

「だけど社長、想定外の怪物が1機、あの戦場へ割り込んできたわ。……全身が真っ黒な、見たこともない仕様のザクよ。ノーズ形状が鋭利で、何より、脚部の動力パイプが一切露出していない。……あいつ、ビーム・サーベルを当然のように運用して、ウィッチハント隊の精鋭3人を相手に、単機で互合以上に戦い抜いて、アイロスたちを完全に逃がしてみせたわ。……あの異常な反応速度と動き、あれはただの残党の乗るMSじゃない。」

 

「動力パイプの内装された、黒いザク……。」

 

カルロスは浅黒い顔を険しく歪め、刀の柄に触れる指にギリ、と力を込めた。

 

「――だけど、不幸中の幸いはここからよ。」

 

ドリスは不敵な笑みをその口元に蘇らせ、データパッドのタイムラインを示した。

 

「奴らは制御ユニットと機体本体を手に入れたけれど、それを最適にリンクさせて決戦兵器を完全起動させるための『調整技術』は、私たちが確保したこの技術者の頭の中にしかないわ。彼を確保した以上、アイロスたちがどれだけ急いでシステムの解析とデバッグを行おうと、完全起動までには最低でも『2週間』の準備期間が必要なはずよ。」

 

「2週間、か……。」

 

カルロスは低く呟き、隣のチエを見やった。

チエは超高速で指を動かし、脳内で北米のタイムラインと自分たちの次なる一手への効率を弾き出していた。

 

「奴らの足が止まるその2週間、……宇宙のエギーユ・デラーズが大きな花火を打ち上げる前に、俺たちのやり方で、その偽りの妖精たちの首を締め落とす方法を考える時間には、充分な時間だな。」

 

東南アジアの地下指令室に、カルロス隊の逆撃の意志が静かに、しかし絶対の熱量をもって充填されていく。

 

「――あの子たちの、あの3機を、よりによってアイロスが……ッ!!」

 

キリーは拳を血が滲むほど強く握り締め、怒りでその美しい声を震わせた。

サングラスを外したその切れ長の瞳からは、ルオ商会の冷徹なエージェントとしての光は完全に消え失せ、かつて焦熱の北米で少女たちの命と誇りを背負って戦った「キリー・ギャレット少佐」としての激しい情念が溢れ出していた。

 

「アルマたちがね……。あの子たちがどれほどの想いであのケープカナベラルに立ち、憎しみの連鎖を止めようとしたか! ……あの亡霊どもは、自分たちの狂信的なテロを煽動するための都合の神輿に貶めたのよ。こんな屈辱、断じて許せるはずがないわ!」

 

キリーは激昂のあまりモニターのカメラを射抜くように睨みつけ、はらわたの底から煮えくり返るような苛立ちを吐き捨てた。

理性を失い、今すぐにでも北米へ飛び立とうとするキリーの憤怒。

それを画面越しに受け止めたカルロスは、日本刀の柄を静かに叩き、一軍の将としての重々しい声で彼女を制した。

 

「落ち着け、キリー。奴らの狙いはお前をおびき出すことかも、しれないんだぞ?」

 

「……っ、分かっているわよ、そんなことは……!」

 

キリーは悔しさに唇を噛み、涙の浮かんだ瞳を伏せて深く息を吐き出した。

頭では理解していても、我が子のように愛した部下たちの誇りが泥足で踏みにじられている現状に、感情が耐えられなかったのだ。

 

「落ち着け、キリー。お前が今ここで熱くなってどうする。」

 

画面の向こうで理性を失いかけているかつての戦友を、カルロスは一軍の将としての重々しい声で鋭く制した。

 

「今は各方面で集めた情報を冷静に照らし合わせ、何が事実であるかを調べることが最優先だ。北米のアイロスが仕掛けたチェス盤面の全容が分からんうちに、こちらが先走って歩を進めれば、それこそ奴らの思う壺だぞ。」

 

キリーは悔しげに拳をテーブルに叩きつけ、サングラスを外したその瞳を大きく見開いてカルロスを睨みつけた。

 

「……これが落ち着いていられること!?カルロス、あなたなら分かってくれるはずよ!あの子たちの生きた証が、あんな狂信者の神輿にされているのよ!?」

 

「分かっている。分かっているからこそ言っているんだ、キリー!」

 

カルロスは日本刀の柄にそっと触れ、その瞳に冷徹な指揮官の光を宿らせた。

 

「あの北米戦線で、ノイジー・フェアリー隊を率いて連邦軍を震え上がらせた、あの『キラー・ハーピー』と恐れられたお前がそんな風に感情的になってどうする。お前がそんなザマじゃ、北米で命懸けの潜入をしているボルクやドリスの足元がすくわれるぞ。」

 

自身の二つ名を突きつけられ、キリーは弾かれたように息を呑んだ。

カルロスの静かだが有無を言わせぬ説得の重みが、通信線を越えて彼女の胸へと突き刺さる。

 

「……っ。」

 

キリーは少しの間を置いて、激しく上下していた胸を抑えるようにして、深く、長く深呼吸をした。

昂る激情を戦士の仮面の下へと無理やり押し戻し、涙の浮かんだ瞳を伏せる。

 

「……ごめんなさい、カルロス。取り乱したわ。……ドリス、ボルク。あなたたちにも余計な心配をかけたわね。謝るわ。」

 

「それでこそ、俺が知っている『キラー・ハーピー』のキリー・ギャレットだ。」

 

カルロスはダークスーツのネクタイの位置を軽く直し、不敵な社長の笑みをその褐色の顔に蘇らせた。

 

「さて、北米の『偽物の妖精』たちの足が、調整技術者の確保によって最低2週間は止まることは分かった。……次は宇宙のデラーズと連動している、アフリカ方面の動向はどうなっている。そっちの報告を頼む。」

 

キリーは再び有能なルオ商会のエージェント、アエロの冷徹な顔へと表情を切り替え、手元のデータパッドへと鋭い視線を落とした。

 

「私は直接、アフリカの過激派から情報を引き出すのはリスクが高すぎると判断したわ。」

 

キリーは画面の向こうで、データパッドをスライドさせながら冷徹に報告を続けた。

 

「だから私は、別のルートを頼ったの。……カルロス、あなたも覚えているでしょ。一年戦争の最末期、ジオン公国オーストラリア駐屯軍が実行した、オーストラリア大陸からの奇跡的な大撤退作戦――作戦名『月の階段』を。」

 

「ああ、無論だ。」

 

カルロスはダークスーツのポケットの中で日本刀の柄にそっと触れ、深く頷いた。

 

「連邦の掃討部隊を完璧に分断誘導し、その隙を突いて膨大な兵力と物資をアフリカへとエスケープさせた、戦史に残る見事な戦略だ。」

 

「その『月の階段』を主導し、現在はアフリカ大陸の奥深くに潜伏中だった、元オーストラリア駐屯軍司令官――ウォルター・カーティス大佐。……奇跡的に彼と極秘裏に接触することができたわ。彼から、アフリカのジオン残存戦力の詳細な情報が聞けたのよ。」

 

「なに、あのカーティス大佐が生きており、お前と接触できたというのか……!」

 

カルロスは浅黒い顔に、驚愕の表情を浮かべた。

カーティス大佐といえば、侵略軍の司令官でありながら略奪行為を厳しく排し、正々堂々とした有能さでオーストラリアの民衆をも心服させたほどの高潔な将星。

ザビ家の独裁を問題視する現実主義的な一面もあり、カルロス個人としても、その清廉で類稀なる戦略家としての戦い方には強い好感を抱いていた。

あの知将が生きてアフリカの地で目を光らせているという事実は、カルロスにとっても大きな衝撃だった。

キリーはカルロスの驚きを受け止めながら、カーティス大佐から直々に手渡されたという、アフリカ戦線の情報を通信線へ乗せた。

 

「大佐から聞いた情報をそのまま伝えるわね。……トリントン基地から奪取されたガンダム試作2号機は、やはり奴らの予想通り、東アフリカ・タンザニアのキンバライト鉱山基地へ極秘裏に運び込まれていたわ。そして――」

 

キリーは一度言葉を切り、昨日付けの衛星熱源データを画面に展開した。

 

「昨日の10月23日。キンバライト基地の武闘派どもは、ガンダム2号機を宇宙へ打ち上げるため、隠し持っていたHLVのカウントダウンを強行したわ。2号機を死に物狂いで追ってきた連邦軍のアルビオン隊が基地へ突入し、激しいモビルスーツ戦が勃発。……結果は、キンバライトの守備隊が時間稼ぎをし、ガンダム2号機を載せたHLVは、大気圏を突破して宇宙への打ち上げに成功したわ。……残されたキンバライト基地は、その直後にアルビオンへ降伏したそうよ。」

 

 

沈黙。

 

 

キリーからのあまりにも決定的な報告が地下執務室に響き渡った瞬間、北米セーフハウスのウィンドウから、ボルク・クライの激しい罵声が炸裂した。

 

「――ハッ! ガンダム2号機を宇宙へ取り逃がした、だと……!? おいおい、冗談だろ!」

 

ボルクは憤慨した。

 

「オーストラリアから追撃して、包囲網まで敷いておきながら、HLV1機の打ち上げすら阻止できなかったっていうのか!?連邦軍の追撃部隊は、どこまで間抜けになってんだよ!」

 

「最悪ね……。」

 

隣のドリスも、顔を青ざめさせて心底から呆れ返っていた。

 

「これでガンダム2号機、戦術核を積んだ世界最悪の爆弾が、完全に宇宙のデラーズ・フリートの本隊と合流しちゃうわ。地上の残党を囮にして、1番美味しい果実だけを天に持ち逃げされたのよ。」

 

「……フン、まったくもって、呆れ返った間抜け面だな、連邦の無能どもは。」

 

カルロスは椅子の背もたれに深く身体を預け、はらわたの底から冷めた溜め息を吐き出した。

戦術核を搭載したモビルスーツが、重力の檻を飛び出して広大な宇宙へと解き放たれてしまったのだ。

宇宙での索敵や臨検は、地上以上に困難を極める。

ミノフスキー粒子がさらに濃密に散布される真空の海では、砂漠に落ちたダイヤの指輪を探すようなものだ。

 

「地上の過激派どもは、デラーズの美学の使い捨てにされ、連邦は核を見失った。……だが、俺たちにとっては、これでチェス盤の敵の出方がさらに明確になったな。」

 

「だけど、妙なのよ。」

 

キリーは画面の向こうで端正な眉をひそめ、どこか腑に落ちないといった風に言葉を繋いだ。

 

「何が妙なんだ、キリー?」

 

カルロスが問う。

キリーは手元の端末のデータを弾きながら、カーティス大佐の口から直接明かされたという「デラーズ・フリートの情報統制」について語り始めた。

 

「カーティス大佐からね、アフリカのジオン残存部隊が、あのエギーユ・デラーズから一体どれだけの『作戦内容』を聞かされていたのか、その共有範囲を厳密に調べてもらったのよ。……それで判明したことは、大きく分けて4つ。」

 

キリーは画面に時系列のログを展開する。

 

「1つ目は、トリントン基地で戦術核がガンダム試作2号機に搭載されるため、それを強奪すること。2つ目は、強奪した2号機を地上から宇宙へ上げ、軌道上のデラーズ・フリート本隊へと送り届けること。3つ目は、2号機強奪の実行犯として、デラーズ・フリートはアナベル・ガトー少佐を地上へ派遣したこと。そして4つ目よ。アナベル・ガトーは10月9日にアフリカ南東部のキリマンジャロ民間宇宙空港から極秘裏に地球へ降下。その後、アフリカ戦線のドライゼ中佐が運用するユーコン級潜水艦に乗り換えて太平洋を渡り、オーストラリア大陸へ移動した。……その後の顛末は、さっき言った通りよ。」

 

「アナベル・ガトーか……。確か、ドズル中将の配下にいた男だな。あの男がわざわざ宇宙から降ってきたのか。」

 

カルロスはかつての同胞の名を思い返し、腕を組み直した。

ドズル配下のエースが動いたとなれば、デラーズの本気度が伺える。

 

「ええ。そこまではアフリカのキンバライト基地やドライゼの潜水艦部隊も完全に共有していたわ。連携としては完璧よ。……だけどね、カルロス。本当に妙なのは、ここからなのよ。」

 

キリーはふっと声を一段と落とし、冷徹な目を画面に向けた。

 

「アフリカのジオン残存戦力は、そのガンダム強奪計画はすべて聞かされていた。……なのに、彼らは誰1人として、北米でアイロスが発動したあの『リターン・オブ・フェアリー』の存在を、露ほども聞かされていなかったのよ。」

 

その事実が地下執務室に落とされた瞬間、会議に参加していた全員が、文字通り息を呑んで硬直した。

東南アジアのカルロス、チエ、ロニン。

そして北米のセーフハウスにいるボルクとドリス。

誰もが、その情報の非対称性が意味する「不気味な歪み」に、背筋が冷たくなるほどの衝撃を覚えていた。

 

「……待て。それは明らかにおかしいぞ…。」

 

カルロスの浅黒い顔に皺が刻まれる。

 

「宇宙のデラーズは、地上での二面作戦を予定していると北米のアイロスに通信で告げていたはずだ。ジオンの健在を世界に示すためにな。……だが、当のアフリカの過激派どもがその作戦を何も知らされていないというのは、どういうことだ?」

 

「論理的に矛盾してますね、少佐。」

 

副官のヤゴ・チエ中尉が、眼鏡の奥の切れ長の瞳を禍々しく光らせながら、暗算でデータの辻褄を合わせようとするが、弾き出される予測はどれも不穏なものばかりだった。

 

「アフリカの部隊は、命を捨ててガンダム2号機を宇宙へ打ち上げました。彼らはデラーズの片棒を担いでいます。それほど信頼されている実戦部隊に、北米の二面作戦が伏せられている。……非効率極まりない情報統制です。」

 

モニターの向こう、北米のセーフハウスからドリスがモニターを睨みながら、ハッカーとしての見解を割り込ませた。

 

「ねえ、これって、宇宙のデラーズ・フリートが情報をコントロールしているっていうより……。北米のアイロス・バーデが、デラーズの名前を騙って『嘘』をついているんじゃない?」

 

「嘘、だと?」

 

ボルク・クライが私服の襟元を正しながら画面に顔を寄せた。

 

「どういう意味だ、ドリス。あのアイロスって男は、デラーズ本隊から直々に地上で暴れろと命令されたから、作戦を発動したんじゃないのか?」

 

「いいえ。キリーから聞いたアフリカのタイムラインが本物なら、デラーズ・フリートの地上計画は『ガトーによる2号機強奪と、アフリカからのHLV打ち上げ』、それだけで完全に完結しているわ。」

 

ドリスは高速でキーボードを叩き、北米とアフリカの情報格差をグラフ化して見せた。

 

「アイロスはカルロス少佐の決戦兵器を奪う際、技術者に対して『デラーズ・フリートと呼応して合同戦線を張る』と言っていた。でも、宇宙のデラーズが地上の残党にそんな大規模な二面作戦を命じているなら、一番の武闘派であるアフリカ残党に情報を伝えない訳がない。……つまり、アイロスはデラーズのガンダム強奪という特大の暴動を『利用』して、まるで自分たちもその本隊の一部であるかのように周囲の残党を騙し、兵力を巻き込んで、勝手に強奪したのよ!」

 

「なるほどな……。あのバカども、デラーズという神輿を勝手に担ぎやがったか。」

 

部屋の隅で無精髭をなでていたロニン軍曹が、落ちくぼんだ目を細めて忌々しそうに呟いた。

 

「身の丈に合わない兵器を起動させるために、大義という名の嘘で北米の残党を糾合した。それが『リターン・オブ・フェアリー』の正体か。」

 

「ああ、そういうことだ。あの傲慢な亡霊め、よくも俺の切り札を、そんなことで奪ってくれたな…。」

 

カルロスは椅子の背もたれに深く身体を預け、はらわたの底から冷たい怒りを絞り出すように笑った。

アイロスは「大義」という甘い毒を煽り立て、エリク・ブランケの無念に狂ったインビジブル・ナイツの生き残りや北米の残党を煽動したのだ。

本物のティターニアに乗って「妖精が帰ってきた」と演じてみせれば、北米の残党どもは簡単に騙せる。

 

「エギーユ・デラーズは地上の残党を己の美学の生贄としか見ていない。だが、北米のアイロスは、そのデラーズの生贄にすらなれなかった、ただの誇大妄想のコソ泥だ。奴らはデラーズが世界に火を放つドサクサに紛れて、自分たちがジオンの主導権を握ろうとしている。……まったく、滑稽な盤面だな。」

 

「カルロス……。」

 

アフリカの画面から、キリーが痛切な眼光を投げかける。

 

「奴らの大義がどれだけフェイクだろうと、アルマたちのティターニアが奴らの手にある事実に変わりはないわ。それに、あの『決戦兵器』が起動すれば、北米の連邦軍だって黙ってはいない。あの娘たちが、本当の反乱分子として歴史に刻まれてしまうわ。」

 

「分かっている。奴らの狂言に、これ以上使わせるわけにはいかん。」

 

カルロスは日本刀の柄をトントンと規則的に指先で叩いた。

しかし、その顔には先ほどまでの不敵な笑みはない。

濃い眉を不快そうに寄せ、鋭い目つきのまま、深く、重い沈黙の海へと沈んでいった。

 

(……チッ、盤面が複雑に絡み合いすぎやがる。)

 

アイロスたちの欺瞞は見抜いた。

だが、だからといって今すぐ北米のアイロス達を強襲できるほどの兵力は、自分達にはない。

何より、下手に動けば、2日前にブレックス准将の特命でここを嗅ぎ回っていったあのソウヤ・タカバの鋭い直感に、今度こそこちらの「正体」を完全に掴まれる危険がある。

北米のアイロス一派、それを追う連邦のウィッチハント隊、そして宇宙へ上がったデラーズ・フリート。

同時に回り出した激流のなかで、一体どう動くのが、自分たちの完成させた「城」を守り、かつ最善のルートなのか。

カルロスは思案に暮れていた。

 

「……少佐、完全にフリーズしていますよ。状況が複雑すぎて、流石の社長でもショートしましたか?」

 

チエが眼鏡の位置を直し、あえていつもの冷たい皮肉を投げかける。

しかし、その切れ長の瞳には、カルロスと同じように深い警戒の光が宿っていた。

 

「チエ、軽口を叩いている場合じゃないわ。」

 

アフリカの画面からキリーが鋭い声を割り込ませる。

 

「起動までに残された時間は、あの技術者が弾き出した『2週間』の猶予だけよ。アイロスたちがシステムに四苦八苦しているこの隙に、何とかして倒す手段を考えないと、本当に手遅れになる!」

 

「……分かっているさ、キリー。」

 

カルロスは低く呻くように答え、椅子の背もたれに身体を深く預けた。

 

「技術者を確保したおかげで、敵の足は止まった。だが、こちらも迂闊に牙を剥けば、連邦の網に引っかかる。……どうやって奴らを叩くかを知恵を絞れ。これは俺たちの存在を懸けた、最悪の化かし合いだぞ。」

 

東南アジアの地下指令室、そして地球の裏側の通信線。

誰もが、盤面の上に現れた「見えない敵」の影を睨みつけながら、必死に反撃の手段を模索し始めるのだった。

 

 

 

 

蛍光灯の冷たい電子音がジジ……と鳴るだけの、重苦しい沈黙がその場を支配していた。

その静寂を破ったのは、北米のセーフハウスの画面の向こうで、負傷した技術者を看病していた男だった。

 

「――だったらよ。いっそのこと、連邦軍にアイロスたちを丸ごと叩き潰してもらうのはどうだ?」

 

ボルク・クライの投げやりとも取れる冷めた提案に、モニターを挟んだ一同の視線が一斉に彼へと集中した。

 

「おいおい、そんな怖い顔で俺を見るなよ。現実を見ろって話をしてるんだ。現在の俺たちの立場や、北米にいる俺とドリスだけの戦力からして、お前さんたちが言っているその『決戦兵器の奪還』なんてのは、はなから不可能だと思うぜ。東南アジアの『華星警備』から大部隊を北米に極秘輸送してアイロスと全面戦争をやるなんて、それこそ非現実的だ。戦力もなければ、そんな移動手段も無いだろ?」

 

ボルクは一息つき、言葉を締めくくった。

 

「なら、その『アレ』とかいう決戦兵器はすっぱり諦めな。連邦軍にアイロスの事をタレ込んで、跡形もなく破壊してもらうのが一番手っ取り早い。それが一番確実な策だ。」

 

「非効率なだけでなく、あまりに短絡的です、ボルクさん。」

 

地下室で真っ先に反対の声を上げたのは、指先をピタリと止めたヤゴ・チエ中尉だった。

眼鏡の奥の切れ長の瞳が、冷徹な事務官のそれへと切り替わる。

 

「その提案には重大なエラーがあります。連邦軍に情報を売れば、確かにアイロスは排除できるでしょう。ですが、我々が2年も費やした時間が無駄になるのです。」

 

「俺もチエ中尉に同意だ。先生、あなたの言う通り戦力は足りんが、あの兵器を連邦の手に渡すわけにはいかん。」

 

暗がりからロニン・スーウェル軍曹も、寡黙な影の参謀としての重い言葉を口にした。

 

「奴らが奪った『ギニアスの遺産』のデータは、かつて連邦を震撼させたアプサラスの技術だ。万が一、あれが連邦軍の、それもジャブローの兵器開発局の手に渡ってみろ。奴らはそのデータを解析し、さらに強力な新型MSやMAを量産してスペースノイドの抑圧を強める。俺たちが命懸けで守り、残してきたジオンの最高技術を、敵の『牙』として飼い慣らさせるような真似は、死んでも御免だ。」

 

幹部2人の容赦のない現実的、かつ軍人としてのプライドの篭った反論が、通信線を伝って北米のボルクへと突き返された。

ボルクは「チッ、分かっちゃいるがよ……」と頭をガリガリと掻き、反論を飲み込んで黙り込む。

 

「でも……ボルク、あなたの言うことも一理あるわ。」

 

画面の向こうで、キリーが苦渋を滲ませた表情のまま、低く、しかし冷静な声を絞り出した。

 

「戦力差と移動手段の限界はどうしようもない。チエの言う通り、連邦の手にあの技術を渡すのは最悪のシナリオだけど……あの娘たちのティターニアが反乱分子の象徴として北米で暴れ回るくらいなら、いっそ連邦のウィッチハント隊にアイロスごと、機体を跡形もなく破壊してもらった方がマシかもしれない。……非常に悔しいけれどね。」

 

我が子のように愛した娘たちの機体を自らの手で葬る覚悟すら孕んだ、元指揮官としての悲痛な現実論。

室内を再び支配しかけた重苦しい静寂を破るように、チエはドリスへと問いかけた。

 

「――ドルセ。あなたのハッキング能力で、なんとかならないのですか?」

 

チエの提案に、応接室の全員が微かな希望を抱いて北米のモニターを凝視した。

しかし、画面の向こうのドリスは、ワインレッドのロングヘアをがっくりと落とし、両手をこれ以上ないほど大きく広げてみせた。

 

「悪いけど、今回はお手上げよ。」

 

「お手上げだと? お前さんがそこまで言うなんて…。」

 

ボルクが驚いてドリスの顔を覗き込む。

ドリスは溜め息混じりに液晶画面のコードを指し示した。

 

「例の決戦兵器の根幹システムはね、純度100%のジオンの、それもギニアス・サハリンの技術で作られているのよ。連邦の技術者が現物をひと目見れば、一発でジオンの機体だって見破られる。下手にデータを書き換えるような工作をしたら、かえって足跡が残って、そこから私達の元に辿り着くわよ。」

 

ウィザード級のハッカーであるドリスから下された、非情なまでの「技術的限界」の宣告。

ハッキングによる工作も不可能。

アイロスに奪われた切り札は、連邦の手に渡ればスペースノイドの破滅を呼び、そのまま放置すれば北米を恐怖に陥れる。

 

 

 

 

 

すべての選択肢が塞がれたかに見えたその時、カルロスは日本刀の柄を叩く指をピタリと止めた。

浅黒い顔の奥で、現実主義者としての冷徹な覚悟が定まる。

 

「――よし、決めたぞ。あの決戦兵器の『奪還』は、ここで綺麗さっぱり諦める。」

 

カルロスが静かに下した結論に、通信室の空気が微かに揺れた。

 

「理由としては、先生の言う通りだ。現在の俺たちに戦力と移動手段がない。東南アジアから北米へ殴り込みをかけ、無傷で強奪し返すなんてのは不可能だ。……何よりも、ティターニアと共に北米で無差別テロをされることだ。そうなれば、アースノイドどもはますますスペースノイドを敵視し、さらなる抑圧と差別の檻を強固にするだろう。それは……俺たちが華星警備を作ってまで抗おうとしている、哲学に反する。」

 

 

カルロスは一度目を閉じ、それからアフリカの画面の向こうで唇を噛み締めているキリーを真っ直ぐに見つめた。

 

「すまない、キリー。お前の大事な娘たちの乗機ごと……叩き潰すしか道はない。お前の娘たちの機体を、破壊することを許してくれ。」

 

「……いいえ、いいのよ、カルロス。」

 

キリーは悲痛な眼光を湛えながらも、静かに首を横に振った。

 

「あの子たちの平穏な未来を守るために、その象徴たる機体をスクラップにするというのなら……私は、あなたのその苦渋の決断を尊重するわ。あの娘たちの誇りをテロの道具にされるくらいなら、いっそ、私たちの手で幕を引くべきよ。」

 

元指揮官の気高き覚悟に、チエもロニンも、そして北米のボルクとドリスも、静かに、だが深く納得して頷いた。

 

「では、方針を切り替えるぞ。作戦目的は、決戦兵器および『ティターニア』を含めた、アイロス派戦力の完全破壊だ。」

 

カルロスは卓上のコンソールを睨み、大まかな逆撃の作戦行動を紡ぎ出した。

 

「まずは、『ギニアスの遺産』の処理だ。幸い、確保した技術者の協力は得られるな。ドリス、お前がその男の認証コードを使って、地下工廠のシステムごと完全デリートを頼む。」

 

「了解。それなら私の得意分野よ。」と、ドリスは頷く。

 

「そして2つ目だ。連邦軍に情報をリークし、アイロス達を潰させる。奴らが兵器のシステム調整に手間取っている2週間の空白の間に、連邦を誘導し、アイロスたちを連邦の手で始末させるんだ。」

 

「作戦のロジックとしては完璧ね、カルロス少佐。」

 

ドリスはキーボードを叩きながらも、すぐに鋭い懸念を指摘した。

 

「だけど、肝心の『どうやって情報をリークするか』が問題よ。下手に具体的な軍事座標や動向を自分たちの回線から発信したら、一発でこの『華星警備』に足が着くわ。誰か、連邦側に顔が効いて、かつ私たちと繋がっていることが絶対にバレない『安全な仲介者』でもいれば別だけど……。」

 

世界最高のハッカーが頭を抱えたその時、アフリカの画面から、キリーが静かな、しかし確信に満ちた声を割り込ませた。

 

「――いるわよ。その役割に、これ以上ないほど相応しい適任者が。」

 

「何?誰だ、キリー?」

 

カルロスが身を乗り出すと、キリーはその唇から、歴史の闇に消えたはずの驚くべき名前を紡いだ。

 

「――アイナ・サハリンよ。」

 

その瞬間、地下執務室の空気が完全に破裂した。

 

「な、……ッ!? アイナ・サハリンだと……ッ!?」

 

「馬鹿な……あのサハリン家のお嬢様が……!?」

 

カルロスとロニンが驚愕に声を荒らげ、チエもまた眼鏡を落としそうになるほど目を見張った。

対照的に、元連邦軍の軍人であるボルクとドリスの2人は、なぜカルロスたちがこれほどまでに狼狽しているのか分からず、不思議そうに首を傾げ合っている。

 

「キリー!アイナ・サハリンが生きているというのは本当か!?あのギニアスの妹が、今もこの地球にいるというのか!」

 

「ええ、本当よ。」

 

カルロスの取り乱しぶりに、キリーは穏やかに頷いた。

 

「去年ね……私がルオ商会のエージェントとして、このラサの土地の買い取り調整のためにラサ基地へ赴いた時、偶然、彼女と出会ったのよ。」

 

「なぜだ……!なぜそんな重要事項を、今まで俺に報告しなかった、キリー!」

 

カルロスが厳しい声を上げ、説明を求める。

ギニアスの妹の生存など、ジオン地上軍の残党にとっては天を揺るがす大ニュースのはずだった。 だが、キリーは哀しげに目を伏せ、サハリン家の最後の生き残りの現状を静かに語った。

 

「……彼女は今ね、過去を捨てて、一年戦争の時に出会った元地球連邦軍の夫と、山奥でひっそりと平穏に暮らしているのよ。……カルロス、私にはどうしても、彼女が掴んだ小さな『平穏』を、私たちの都合で壊すような真似はできなかったの。だから、胸に仕舞い込んでいたの。」

 

「……っ。」

 

キリーの悲痛な独白を聴き、カルロスはそれ以上の追及をする言葉を失い、静かに口を閉ざした。

責められるはずがなかった。

自分が忠誠を誓った、あの甘直調な『坊っちゃん』もまた、一年戦争の最中、同じようにアースノイドの娘を愛し、すべてを投げ打ってでも彼女との融和の未来を夢見て散っていったのだ。

主君と同じように「敵軍の男と結ばれ、平穏を選んだ女性」の人生を、カルロスが泥足で踏みにじることなど、絶対に出来なかった。

 

「……分かった。お前の言う通りだ。その件は不問にする。」

 

カルロスは深く息を吐き出し、ダークスーツの襟元を整えると、再び冷徹な指揮官の目つきへと戻った。

 

「だが、キリー。彼女の平穏を守りたいというお前の情は分かったが、今回はアイロス達の暴走を止めるための文字通りの背水之陣だ。そのアイナ・サハリンを使って、どうやって安全に連邦へ情報をリークさせるつもりだ?」

 

カルロスの至極真っ当な疑問に対し、キリーは画面の向こうで、かつて出会ったあのサハリン家のお嬢様の横顔を思い浮かべるように、静かに語り始めた。

 

「実はね、去年、アイナは高熱を出してしまった娘のために、薬を買い求めにラサの街まで降りてきていたの。だけど運悪く、傲慢な士官たちに絡まれてしまってね……。その窮地を助け出したのが――他ならぬ、あのソウヤだったのよ。」

 

「なに、ソウヤだと……?」

 

カルロスは浅黒い顔の眉をひそめた。チエもロニンも、その奇妙な因縁の符号に思わずモニターを凝視する。

 

「ええ。サハリンの名は伏せていたようだけど、アイナにとって彼は命の恩人。そして彼のあの真っ直ぐな性格よ。ソウヤが相手なら、彼女も心を許して、『ギニアスの遺産』のことを、話してくれるはずだわ。」

 

「フム……。だが、いくら2人に接点があるとはいえ、どうやって安全に彼らを接触させ、リークを完了させるつもりだ? 下手にこちらから動けば、それこそアイツの鋭い直感に、我が社との繋がりを勘ぐられかねん。」

 

「そこは私に任せて頂戴、カルロス。華星警備の名前を一切出すことなく、ソウヤを自然な形で彼女の元へと誘導してみせるわ。必ず2人の接触を成功させてみせる。……だから、私に一任させてほしいの。」

 

それに対し、キリーは確固たる自信満ちた目でカルロスを見据える。

カルロスは戦友のその熱い意志を信じることに決めた。

 

「よし、分かった。アイナ・サハリンとソウヤ・タカバの接触工作は、すべてお前に一任する。……頼んだぞ、キリー。」

 

「ええ、任せなさい。あの子たちのティターニアを、これ以上あの亡霊どもに汚させはしないわ。」

 

キリーの力強い言葉とともに、東南アジア、北米、そしてアフリカを結んでいた極秘のモニター会議は静かに終了した。

 

宇宙で始まった『星の屑作戦』の裏で、東南アジアの地下要塞から放たれた次なるプロット。

それは、カルロスの冷徹な現実論に言い負かされ、答えのない深い迷いのなかを彷徨っているあの『殉教者』ソウヤ・タカバを、サハリン家の最後の生き残りへと引き合わせる、運命の導線だった。




最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
今回の話で判明した情報を読んで、皆様はどう思われましたか?
複雑に絡み合う情報、デラーズ、アイロス、カルロスのそれぞれの思惑。
私が描いたもう一つの星の屑作戦の結末、最後まで読んでくだされば、嬉しいです。
感想など、気軽に書いて下さい。

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