連邦軍のキャリフォルニア・ベース奪還作戦は最終段階に突入していた。
北米の荒野に点在する集結地点では、各部隊が最終準備に追われていた。
弾薬の補充、モビルスーツの整備、そして戦闘を前にした兵士たちの静かな決意が、乾いた空気を重く淀ませる。
遠くでは、他の連邦軍部隊の輸送機が低空で轟音を響かせ、ジムやガンタンクの部隊が砂塵を巻き上げながら移動する。
歩兵部隊の隊列が無線で怒号を交わし、戦場の喧騒が不穏な予感を一層掻き立てていた。
南側の集結地点に布陣したオリオン小隊は、輸送機ミデアを降下させるのだった。
ミデアのコンテナハッチが油圧音とともに開き、陽光に照らされた砂塵が舞い上がる。
整備班が素早く動き出し、工具の金属音と怒号が響き合う。
ジム・ドミナンスの重厚な装甲が陽光に鈍く輝き、量産型ガンキャノンの肩部キャノンが専属整備士のイヤン軍曹の手で入念に調整される。
陸戦型ジム改のコックピットでは、専任整備士のミサキ上等兵がモニターに映る機体状況を鋭い目で確認し、システムチェックを進めていた。
「整備は順調か?」
オリオン小隊の隊長、イーサン・ミチェル・オルグレン少佐が、低く落ち着いた声で整備主任のケンジ・ナガト中尉に尋ねる。
イーサンの声には、部下たちの不和を懸念する微かな重みが混じる。
「問題なしだ、隊長。ジム・ドミナンスのシールドは補強済み、ビームライフルもフルチャージ完了だ。ガンキャノンの弾薬は全弾装填済み、イヤンが肩部キャノンの照準をバッチリ合わせてくれた。陸戦型ジム改は…左肩のサーボモーターに少し癖があるが、実戦には影響ないレベルだよ。」
ケンジは額の汗を拭い、疲れと自信が入り混じった笑みを浮かべた。
イヤン軍曹がガンキャノンの整備台から顔を上げ、冷静だがどこか苛立ちを抑えた声で補足する。
「隊長、ガンキャノンの可動率は9割ですが、キャノンの精度は完璧です。ソウヤ少尉に『無理な動きは控えて』と伝えてください。パーツがもう底をついてますんで、壊されたら困ります。」
イヤンの言葉には、補給不足への不満と、チーム内の緊張感を察する慎重さが滲む。
ミサキが陸戦型ジム改のコックピットから通信で割り込む。
「オルグレン隊長、ミサキです。陸ジム改のサーボ、微調整済みましたけど、ヤザンの無茶な操縦だとまた焼き付くかもしれないです…。あいつに『限界を超えた動きをするな!』って伝えてくださいよ! ソウヤ少尉と揉めてる場合じゃないんですから!」
ミサキの声には、ヤザンの無謀な戦いぶりへの苛立ちと、ソウヤとの衝突によるチームの不協和音への懸念が混じる。
彼女の言葉は、整備士としてのプライドと仲間への気遣いが交錯していた。
イーサンは小さく頷き、通信に応じた。
「分かった、イヤン、ミサキ。ソウヤとヤザンには、俺がしっかり伝える。整備、頼んだぞ。次の戦いは厳しい…全員、気を引き締めてくれ。」
格納庫の片隅では、ソウヤ・タカバ少尉が量産型ガンキャノンの整備台の影で、データパッドを手に作戦を確認していた。
だが、彼の目は落ち着かず、前回の戦場でのヤザンとの衝突が脳裏をよぎる。
「オデッサの新星」と持ち上げられる自分が、仲間を傷つけた事実が、ソウヤの胸に重くのしかかっていた。
一方、ヤザン・ゲーブル曹長はミデアの外で、整備中の陸戦型ジム改を遠くから見つめ、拳を握りしめる。
「ソウヤ…お前がいなけりゃ、俺はもっと…」
ヤザンの呟きは風に掻き消され、途切れた。
オデッサでソウヤに命を救われた記憶が心の奥で疼き、嫉妬と感謝が交錯する彼の目は、どこか迷いを帯びていた。
整備班は、ジム・ドミナンス、量産型ガンキャノン、陸戦型ジム改の整備を終えた。
陽光が傾き始めた荒野の集結地点で、3機のモビルスーツが静かに佇む。
オリオン小隊の整備場は、他の部隊の喧騒に囲まれながらも、どこか孤立した緊張感を漂わせていた。
イーサンは、ミデアの脇に立ち、地上から3機を見上げていた。
その目は感慨深げで、どこか遠くを見るような光を宿している。
「どうした、イーサン? そんなまじまじと眺めて?」
整備主任のケンジ・ナガト中尉が、汗とオイルで汚れた作業着のまま、イーサンに歩み寄る。
背後では、他の部隊の整備兵がジムの装甲を修復する音が響き、戦闘前の慌ただしさが伝わってくる。
「いや…次の出撃で、オリオン小隊の本来の任務に挑むんだなと思ってな。色々、考えていたんだ。」
イーサンの声は落ち着いているが、言葉の端に重みが滲む。
オリオン小隊の真の任務は、キャリフォルニア・ベースに逃げ込んだジオンのニュータイプ研究機関「フラナガン機関」の確保だ。
これまで幾多の試練を乗り越えてきたが、ようやく本来的な目的に辿り着いたのだ。
イーサンは、任務の重さと部下たちの命を預かる責任を胸に刻んでいた。
「確かに…ジャブローの防衛、偽シャアの騒ぎ、北米の魔女、補給基地の件…色々あったな。」
ケンジもまた、これまでの戦いを振り返り、疲労と誇りが混じる表情で呟く。
彼の手には、整備で酷使された工具の感触がまだ残っていた。
「もし、フラナガン機関を無事に確保できれば、この部隊の役割も一段落だ。」
イーサンが静かに言う。
言葉には、戦争の不条理を乗り越え、任務を果たす決意が込められていた。
「そうだな。この3機には本当に頑張ってもらった。」
ケンジはジム・ドミナンス、量産型ガンキャノン、陸戦型ジム改を順に見つめる。
その目には、機体への深い感謝と、戦場を共にした信頼が宿っていた。
「おやっさーん! 何してるんですか!」
ミサキ上等兵が、軽快な声とともにイーサンとケンジの元に駆け寄ってきた。
彼女の作業着はオイルで汚れ、額には汗が光っているが、笑顔はどこか晴れやかだ。
遠くで、他の部隊の整備兵が叫ぶ声や、ガンタンクのキャタピラの軋む音が聞こえる中、ミサキの声はオリオン小隊の小さな絆を象徴していた。
ケンジが穏やかに答える。
「この3機には世話になったな、と思ってな。」
ミサキもまた、オリオン小隊の3機を見上げる。
彼女の視線は、特に自分が整備を担当する陸戦型ジム改に注がれる。
「そうですねー。本当にこの子たちは頑張ってくれましたもんね!」
ミサキは陸戦型ジム改に微笑みかけ、まるで戦友に話しかけるような愛着を込める。
だが、その笑顔の裏には、ヤザン・ゲーブル曹長の無茶な操縦や、ソウヤ・タカバ少尉との衝突によるチームの不和を気遣う影がちらつく。
「確かに、よく頑張ってくれましたね。」
イヤン軍曹が、ミネラルウォーターのペットボトルを4本手に持って、ゆっくりと3人に近づいてくる。
彼の冷静な声には、量産型ガンキャノンへの信頼と、補給不足の戦場での苦労が滲む。
イヤンはイーサン、ケンジ、ミサキにペットボトルを一つずつ手渡し、自分も一本を開ける。
4人はモビルスーツを見上げながら、しばし言葉を交わさず、戦闘前の静かなひとときを共有した。
遠くでは、他の部隊のジムがテスト稼働の唸りを上げ、輸送機が新たな補給物資を降ろす音が響く。
ミサキが、ペットボトルを手に軽く笑みを浮かべて口を開く。
「もう、オリオン小隊が結成されて1ヶ月も経つんですね。」
彼女の声には、戦場の疲れを忘れさせるような明るさが宿る。イヤン軍曹が、冷静な口調で頷く。
「そうですね。もう1ヶ月…長いようで、あっという間でしたね。」
イヤンの目には、量産型ガンキャノンの整備で苦労した記憶がよぎる。
ナガトが、懐かしそうに目を細めて続ける。
「確かに。あの時、こいつらがうちの小隊に配備されたのを思い出すよ。」
1ヶ月前、オリオン小隊はジャブローの地下基地で結成された。
モビルスーツ開発部隊に所属していたケンジ・ナガトは、イーサンの要望を受け、オリオン小隊の整備班長に任命された。
ケンジは、同じ開発部隊の部下だったイヤン軍曹、モビルスーツ整備班に配属を熱望するミサキ上等兵、そしてケンジのツテや志願で集まった整備兵たちを率い、オリオン小隊の整備班を立ち上げた。
彼らの最初の仕事は、ソウヤの量産型ガンキャノンの整備だった。
「一番最初に俺たちが整備したのは、ソウヤのガンキャノンだったな。」
ケンジが、遠い記憶を辿るように呟く。
「ええ、最初は『所詮は量産型のガンキャノンだし、楽勝かな』なんて思いましたけど…結構大変でしたね。」
イヤン軍曹が苦笑いを浮かべ、ペットボトルを手に軽く首を振る。
彼の冷静な口調には、整備の苦労を乗り越えた誇りが滲む。
オデッサ作戦を終えたばかりのソウヤの量産型ガンキャノンは、ジャブローの格納庫に運び込まれた時点で満身創痍だった。
他のガンキャノンから移植したパーツによる共食い整備の影響で、機体のバランスが乱れ、あちこちで調整不良が露呈していた。
さらに、屋外での過酷な運用でパーツの随所に錆が発生し、整備班を悩ませた。
ケンジは、パーツの交換、錆の除去、ソウヤの戦闘データを基にした機体最適化に追われた日々を思い出す。
「ソウヤのやつ、キャノン砲の発射間隔が早いからな。それに合わせて冷却機能を補強するの、ほんと大変だったな。」
ケンジが、半ば呆れたように笑う。
「本当に大変でしたよ。錆びたパーツを交換して、共食い整備で崩れた機体バランスを調整して…それでいて、タカバ少尉の戦闘データに合わせた最適化ですよ? 寝る暇もなかったです。」
イヤンが珍しく感情を込めて続ける。彼の言葉には、量産型ガンキャノンへの愛着が込められていた。
ミサキが、陸戦型ジム改を愛おしそうに見つめながら口を挟む。
「でも、一番大変だったのはこの子でしたよね…。」
その言葉を聞いたケンジとイヤンは、揃ってイーサンの方を向き、どこか恨めしそうな視線を投げる。
イーサンは、3人の視線に気圧されるように一歩後ずさる。
「ど、どうした? そんな目で見るなよ。」
イーサンの声には、珍しく動揺が滲む。
ミサキが、ペットボトルを握りしめ、怒った口調でまくし立てる。
「どうした?じゃないですよ! 整備施設もパーツもベース機もあるからって、隊長、私たちにモビルスーツの組み立てをお願いしますか!?」
彼女の声には、イーサンの無茶振りへの不満が混じる。
ケンジも、半ば呆れたように愚痴をこぼす。
「確かに、ヤザンの操縦に対応できるモビルスーツを用意しろって…普通、整備班にそんな仕事頼まねえだろ。俺がモビルスーツ開発部隊にいたからって、あの無茶振りはキツかったぞ。」
イヤン軍曹が、黙って頷きながら「ウンウン」と相づちを打つ。
その落ち着いた態度の裏には、同じくイーサンの無謀な要求に振り回された記憶がよぎっていた。
「あー、本当にすまなかった! だが、ヤザンの操縦に追従できるモビルスーツがどうしても必要だったんだ。量産機じゃ、どうしても俺の求めるスペックに届かなくてな。」
イーサンは頭を下げ、3人に謝罪する。
その声には、隊長としての責任感と、ヤザンの戦力を最大限に活かしたいという切実な思いが込められていた。
「まあ…あの時、渡されたヤザンの戦闘データを見た時は、さすがに驚きましたよ。すべての数値が他のパイロットの倍だったんですから。」
ミサキが、陸戦型ジム改を愛おしげに見つめながら呟く。
彼女の声には、苦労を乗り越えた誇りと、機体への深い愛着が滲む。
ソウヤの量産型ガンキャノンの整備に目処がついた頃、イーサンがヤザンの戦闘データとシミュレーションデータを整備班に渡してきた時のことは、今でも鮮明に思い出される。
ヤザンが叩き出した数値は、一般のパイロットの倍に達しており、並の量産機では彼の操縦に耐えられないことが明らかだった。
整備班長のケンジをはじめ、ミサキやイヤンを含む全員が、データの異常さに目を疑った。
イーサンは、アフリカでブルーディスティニーの暴走により、頓挫した陸戦型ジムの改修プランに目をつけた。
イーサンとナガトはプロジェクトチームに掛け合い、改修プラン用の腕パーツと脚パーツを譲り受け、さらにRX-78ガンダムの予備ジェネレーターとバックパックを上司のツテで入手。
ヤザン専用のモビルスーツを組み上げる計画を立てた。
だが、ベース機の陸戦型ジムにそのままパーツを取り付けても、フレーム強度が不足し、自壊する恐れがあった。
イヤンにガンキャノンの整備を任せ、ケンジとミサキは何度も設計とシミュレーションを繰り返し、陸戦型ジムのフレームを補強。
ようやく強化されたフレームに、RX-78のジェネレーターを交換し、バックパックと腕、脚パーツを取り付けた。
その後も、パーツの調整、ジェネレーター出力の最適化、システムの書き換え、動作確認が続いた。
ジャブローの地下格納庫は、徹夜の整備作業でオイルと金属の匂いが充満し、整備班の疲労はピークに達した。
それでも、ミサキにとって、ヤザンの陸戦型ジム改は自分の手で初めて作り上げたモビルスーツだった。
「この子は…私の初めての作品なんですよね。だから、特別なんです。」
ミサキが、陸戦型ジム改にそっと視線を投げる。彼女の声には、整備士としての誇りと、機体への深い愛着が込められていた。
「まあ、こんな中で一番手が掛からなかったのはイーサンのジム・ドミナンスだったな。何せ、新品の状態で納入されたから、調整するのはシステムだけだったからな。」
ナガトが、ジム・ドミナンスに視線を移しながら、軽く笑みを浮かべる。
その声には、整備の苦労を乗り越えた安堵が滲む。
「確かに、後期生産型のジムが母体ですから、パーツの組み合わせがしっかりしてました。調整が楽で助かりましたね。」
イヤン軍曹がで頷きながら言う。
彼の目には、量産型ガンキャノンの整備で味わった苦労と対比した、ジム・ドミナンスの扱いやすさへの淡い満足感が宿る。
「でも、この子が一番遅く来ましたよね!」
ミサキが、笑いながらジム・ドミナンスを指さす。
彼女の声には、戦場の重圧を吹き飛ばす軽快さが混じる。
「まあ、コイツが来た時は、量産型ガンキャノンと陸戦型ジム改の疲れが吹っ飛んだな。なにせ、新型機でハードポイントに色んな武器を装備できるからな!」
ナガトが、少し興奮した口調で続ける。
彼の目には、ジム・ドミナンスの汎用性への技術者らしい情熱が光る。
「そうそう! やっぱり、ハードポイントに武器の追加は浪漫ですよね!」
ミサキが、目を輝かせて相づちを打つ。メカ好きの彼女にとって、ジム・ドミナンスの柔軟な武装構成は、整備士としての夢そのものだった。
3人はそれぞれが整備を担当するモビルスーツを見上げ、戦闘前の束の間の安堵を共有する。
「ありがとう、君たち。整備班のおかげで、ここまで来れた。」
イーサンが、静かに、だが心からの感謝を述べる。
その声には、隊長としての責任感と、部下への深い信頼が込められていた。
「いいんだよ。これが俺たちの仕事だ。」
ナガトが、穏やかに答える。彼の言葉には、整備士としての誇りと、戦場を支える使命感が滲む。イヤンとミサキも小さく頷き、モビルスーツを見つめる視線に、仲間との絆と機体への愛着が宿る。
「だけど、ヤザンとソウヤ少尉がこのままなのは嫌だな…。」
ミサキが、陸戦型ジム改を見つめる視線を曇らせ、不安げな声で呟く。
彼女の声には、チームの不和を気遣う思いがあった。
「確かに、そうですね。グアイマスまでは本当に仲が良かったのに…。」
イヤン軍曹が、珍しく感情を込めて頷く。彼の冷静な口調にも、かつてのヤザンとソウヤの連携を惜しむ気持ちが垣間見える。
「そうだな。なんだかんだ、あの二人の戦い方は噛み合っていたからな。」
イーサンが、静かに続ける。
ヤザンが敵のエースに突っ込み、ソウヤが射撃で露払いをする――あの二人の戦い方は、まるで戦場で息を合わせる戦友のようだった。
ジャブローでの鮮やかな連携は、オリオン小隊がここまで生き延びてこられた大きな要因だった。
イーサンの声には、チームの結束を取り戻したいという願いが込められていた。
「なんとかしたいが、ヤザンの気持ち次第だからな。ソウヤの『オデッサの新星』って二つ名は、頭では理解してると思うが…アイツのプライドが許さないんだろう。」
イーサンが、遠くでデータパッドを見つめるソウヤと、ミデアの影で立ち尽くすヤザンを交互に見やりながら言う。
「ヤザンはプライドが高いですからねー。それが良い働きをする時もあれば、今回みたいに悪く働く時もありますから。」
ミサキが、半ば呆れながらも、どこか優しい口調で続ける。
ヤザンの陸戦型ジム改を専属で整備する彼女は、彼の性格をある程度理解していた。
戦場での果敢な突撃はチームを救う一方で、ソウヤへの嫉妬は溝を深める原因でもあった。
「まあ、こればっかしは本人の問題だ。ヤザンがまた暴走しそうになったら、俺たちが止めるしかねえよ。」
ナガトが、腕を組んで言う。彼の声には、整備班長としての現実的な判断と、仲間への信頼が混じる。
「それに、ヤザンはなんだかんだ仲間思いですから。きっと、ソウヤ少尉と仲直りしてくれますよね?」
ミサキが、希望を込めて言う。彼女の視線は、陸戦型ジム改に注がれ、ヤザンへの信頼と機体への愛着が滲む。
「そうだな。そうあって欲しい。」
イーサンが、願うように呟く。その声には、隊長としての責任感と、部下たちの絆を取り戻したいという切実な思いが込められていた。
その時、一台の大型トラックがオリオン小隊の前に停まり、砂塵を巻き上げた。
助手席から補給部隊の隊員が駆け足でイーサンたちに近づいてくる。
「オリオン小隊はこちらでしょうか?」
隊員が、息を切らしながら尋ねる。
「そうだ。だが、このトラックは何だ?」
イーサンが、トラックの荷台に目をやりながら答えた。
「はい! ジャブローからオリオン小隊への追加物資です!」
隊員が、誇らしげに荷台を指さす。
荷台には、アクチュエーター、サスペンション、モーター、センサーなどのパーツに加え、新型ビームライフルと小型シールドが積載されていた。
「おー! この土壇場で来たのか!」
ナガトが、目を輝かせて叫ぶ。
彼の声には、補給不足に悩まされていた整備班の安堵と興奮が混じる。
「キターーーー!」
ミサキが、大きな声で喜びを爆発させる。
彼女は荷台に駆け寄り、パーツを検めるように目を輝かせた。
「よし! 部品も到着したし、ヤザンの新しいビームライフルとソウヤのシールドが届いた! 明日の出撃に間に合うように整備するぞ!」
ナガトが、気合いを込めた声で叫ぶ。
「了解です!」
イヤンとミサキが、ほぼ同時に答え。
二人はすぐさま他の整備兵を呼びに走り、トラックの荷台からパーツを降ろす準備を始めた。
整備場の空気は、補給の到着で一気に活気づく。
だが、その喧騒の中で、ヤザン・ゲーブル曹長は一人、ミデアの影で立ち尽くしていた。新型ビームライフルが自分の陸戦型ジム改に装備されるという話は耳に入っていたが、整備班の明るい雰囲気が、なぜか彼の胸に居心地の悪さを刻む。
彼は胸の内に渦巻く居心地の悪さに耐えきれず、宛もなく集結地点を彷徨い始める。
砂塵を踏みしめるブーツの音が、通信兵の無線や61式戦車の重い走行音と混じる中、ヤザンの背中には孤独感と苛立ちが滲んでいた。
戦闘前の喧騒が、彼の心の迷いを一層際立たせていた。
そのヤザンの背中を、誰かが遠くからじっと見つめていた。
影に潜むその人物は、ヤザンが彷徨いながら移動を開始するのを確認すると、口元に不敵な笑みを浮かべ、静かに姿を消した。
ヤザンは、集結地点の喧騒を背に、宛もなく彷徨っていた。
夕暮れの荒野に伸びる影は、ヤザンの孤独感を一層濃くしていく。
整備班の明るい笑い声や補給トラックのエンジン音が遠くで響く中、彼の心はソウヤ・タカバ少尉への複雑な思いで揺れ動いていた。
ソウヤは仲間だ。ヤザンはそれを認める。
だが、胸の奥で疼く苛立ちが、その事実を曇らせる。
歩兵として泥と汗と血にまみれた日々。
戦場を這いずり、死の淵をくぐり抜け、這い上がってきた自分の人生。
出世への渇望、認められたいというプライド。
それらが、ソウヤへの嫉妬を燃え上がらせていた。
「オデッサの新星」と持ち上げられるソウヤが、まるで自分を追い越す存在のように感じられる。
マスコミの賞賛、周囲の視線――それらが、ヤザンの心に刺さる棘だった。
ふと、記憶が脳裏をよぎる。
オデッサ作戦のあの時。
死神のようなグフがヒートサーベルを振り下ろし、ヤザンの陸戦型ジムが動けない瞬間。
土煙の中、ソウヤの量産型ガンキャノンが放ったビームラがグフの止めの一撃を阻止した。あの時、ソウヤは命の恩人だったこと。
ジャブローのシミュレーションでは、二人でガンダム5号機を倒したこと。
イーサンの過酷な特訓も、ソウヤと肩を並べて乗り越えたこと。
ジオンのジャブロー降下作戦では、ソウヤの援護射撃が背中を守り、敵を次々と葬った。
ソウヤはいつも自分の後ろに居た。
自分の背中を、静かに、だが確実に守ってくれていた。
グアイマスの戦いの後、マスコミに囲まれたソウヤの顔が思い出される。
フラッシュの光の中、ソウヤは戸惑い、嫌そうな表情を浮かべていた。
「オデッサの新星」という二つ名が、彼に重くのしかかっていることを。
あの時、ヤザンは気づかなかった。
ソウヤがその重圧に耐えきれず、押し潰されそうだったことに。
そして、先日の補給基地制圧作戦。
ヤザンがビームライフルを構えた瞬間、ソウヤの声が響いた。
「頼む!撃つな、ヤザン!」
必死に懇願するソウヤの声は、真剣だった。
ソウヤは、ヤザンを戦場の狂気から引き戻そうとしていた。
いつも穏和で、自己主張が少なく、生真面目にイーサンの命令をこなし、ヤザンの無茶をフォローする。
あいつのそんな姿が、ヤザンには分かっていた。
だが、ソウヤへの賞賛、周囲の視線が、ヤザンのプライドを刺激する。
歩兵から這い上がった自分の苦労、血と汗にまみれた戦場の日々、出世への執着。
それらが、ソウヤの存在を許せない理由にすり替わる。
ヤザンは拳を握りしめ、砂塵を蹴る。
「分かってる…ソウヤは悪くねえ。なのに、なんでこんな気分になるんだ…?」
彼の呟きは、戦場の喧騒に掻き消され、誰にも届かなかった。
不意に、ヤザンの肩が誰かとぶつかった。雑踏の中でよくあることだ。
ヤザンは気にせず歩を進めようとしたが、背後から鋭い声が響いた。
「おいおい、上官にぶつかっておきながら、謝罪もなしかよ?」
ヤザンが振り返ると、黒いパイロットスーツに中尉の階級章を着けた男が、数人の部下を従えて立っていた。
男の目は冷たく、口元には嘲るような笑みが浮かぶ。
背後の部下たちは、同じく黒いスーツに身を包み、無言でヤザンを睨む。
ヤザンは一瞬、苛立ちを抑え、硬い声で応じた。
「…失礼しました、中尉。」
彼は軽く頭を下げ、プライドを飲み込む。だが、目には反抗的な光が宿り、中尉の不敵な態度に警戒心が芽生えていた。
中尉が一歩近づき、ニヤニヤと笑みを深め、部下たちがヤザンを取り巻くように囲い込む。
「お前、どこの部隊だ?」
ヤザンは硬く答えた。
「連邦軍、オリオン小隊所属。ヤザン・ゲーブル曹長であります。」
輸送機のエンジン音が緊張感を一層重くしていた。
「オリオン小隊? あー! 知ってるぞ! 『オデッサの新星』がいる部隊じゃないか!」
中尉は、まるで喜劇の登場人物のように大げさに声を張り上げる。
ヤザンは唇を噛み、軽薄な態度に苛立ちを抑える。
ソウヤの名がこんな男の口から出ることに、胸の奥で怒りがざわめく。
「じゃあ、こいつが、『オデッサの新星』のですか? レナー卜中尉。」
取り巻きの部下が、わざとらしい口調で続ける。
黒いスーツの男たちの目には、嘲笑がちらつく。
「違うだろう。『オデッサの新星』はこんな獣臭い男じゃない。こいつはオマケだろう。」
レナー卜中尉がそう言い放つと、部下たちが一斉に笑い出した。
遠くでガンタンクのキャタピラが軋む音が響く中、笑い声がヤザンの耳に突き刺さる。
「オマケですか! 確かに、『オデッサの新星』にしては品がなさそうですからなー!」
「つまり、こいつは『オデッサの新星』の添え物なんですね!」
部下たちが口々に囃し立て、笑い声が戦場の喧騒に混じる。
ヤザンの拳が震え、怒りが爆発しそうになる。
だが、目の前のレナー卜中尉の冷たい目と、囲む部下たちの圧力に、ヤザンは歯を食いしばり、怒りを飲み込んだ。
レナー卜がさらに近づき、ニヤニヤと笑みを浮かべた。
「なあ、オマケ君。流石に上官にぶつかっておきながら、平謝りは良くないだろう?」
彼はわざとらしくヤザンの左足先を踏みつけ、耳元で囁くように続けた。
「オデッサの新星だったら、サインで許してやったが、オマケだとね。土下座で許してやるよ。」
ヤザンの怒りが頂点に達する。
血管が脈打ち、ソウヤへの嫉妬、歩兵から這い上がったプライド、血と汗の戦場が頭を駆け巡る。
レナー卜はヤザンの心を見透かすように、冷たく笑った。
「お前さ、俺らと同じ臭いがするんだよ。力が欲しい、地位も欲しい、スリルも欲しい。自分の暴力が正当化される戦場が何よりも心地いい。そうだろ?」
ヤザンの内心が揺らぐ。
だが、レナー卜はさらに畳み掛けた。
「でもよー。そんな血に飢えた獣が『オデッサの新星』みたいなキラキラしたものになれるわけないだろう? お前は俺たちと同じロクデナシだよ。」
ヤザンの目が一瞬鋭く光り、静かに言った。
「言いたいことはそれだけか?」
その瞬間、右腕を振り上げ、レナー卜の顔を全力で殴り飛ばした。
レナー卜は地面に倒れ、口元から血が滲む。
だが、その顔には獲物が罠に掛かったような不敵な笑みが浮かんでいた。
その瞬間を合図に、レナー卜の部下たちがヤザンに襲い掛かった。
ヤザンは即座にファイティングポーズを取った。歩兵時代に磨いたボクシングスタイルで、拳を構え、鋭い視線をレナー卜の部下たちに突き刺す。
近くの無関係な兵士たちが野次馬となって集まり始めた。
整備兵が工具を置き、戦車兵がハッチから顔を出し、歩兵が通信機を握ったまま乱闘現場を取り囲む。
「おい、ケンカだ!」
「誰が戦ってるんだ?」
とざわめきが広がる。
ヤザンは素早く動いた。
一人目の部下に左ジャブを叩き込み、顎を捉えた右ストレートで吹き飛ばす。
男は砂塵を巻き上げて倒れ、野次馬が「うおっ、すげえ!」「一撃だ!」とどよめき、盛り上がる。
ヤザンは間髪入れず二人目に襲い掛かり、横からのパンチをかわしてカウンターのフックで顔面を砕く。
二人目が地面に沈むと、野次馬の声がさらに熱を帯び、「やべえ、あいつ強えな!」「あいつ、ガチだな!」と叫びが上がる。
三人目と四人目が同時に飛びかかるが、ヤザンは足さばきで間合いを詰め、左のアッパーで三人目の顎を跳ね上げ、右フックで四人目をノックダウン。
倒れた部下たちの呻き声が響く。
野次馬が一瞬静まり、「あの黒いスーツ、どこの部隊だ?」「知らねぇなぁ?」と囁き合う声が戦場の雑音に混じる。
だが、背後から増援の足音が迫る。
三人のレナー卜の部下達がヤザンを取り囲み、素早く取り押さえた。
一人が両腕を背後で捻り上げ、他の一人が首を締め上げる。ヤザンは歯を食いしばり、暴れようとするが、多勢に無勢で身動きが取れない。
野次馬のざわめきが遠くで続き、戦車のキャタピラの軋みが緊張感を一層重くする。
レナー卜は口元の血を拭い、立ち上がりながら不敵に笑った。
「いいパンチだ、オマケ君。だが、獣は所詮、獣だ。」
彼の声は冷たく、獲物が罠に嵌った満足感に満ちていた。
レナー卜がヤザンに近づき、腹に一発パンチを打ち込んだ。
「よくもまぁ、やってくれたな。」
ヤザンは歯を食いしばり、痛みを堪える。
レナー卜はもう一発、ヤザンの腹を殴る。
「さあて、どうしてやろうか?」
ヤザンは耐え、怒りが沸騰する。レナー卜はヤザンの髪を掴み上げ、不敵な笑みを浮かべ、獲物をなぶり殺す愉悦に浸るように顔を覗き込む。
戦場の空気が張り詰め、整備兵の怒号、トラックの騒機音が、野次馬の興奮した叫び声と交錯する。
突然、乱闘現場の喧騒を引き裂く声が響いた。
「やめてください!!!」
野次馬をかき分け、ソウヤ・タカバ少尉が現れる。
「ヤザンがご迷惑を掛けたことは謝ります。ですが、ヤザン1人にそこまでするのは如何なものかと思います。」
ソウヤの真っ直ぐな目は、レナー卜を射抜く。
ヤザンはソウヤの介入に苛立ち、胸の内で嫉妬がざわめく。
レナー卜はわざとらしく声を張り上げた。
「おお! 『オデッサの新星』のソウヤ・タカバ少尉ではないですか!」
彼はソウヤに近づき、ニヤニヤと笑う。
「あなたの仲間が失礼な態度をしたので、少し教育をしていたんですよ。」
ソウヤはレナー卜の目を冷たく睨み返す。
「教育と言うのは、リンチのことでしょうか?」
レナー卜は笑いながら応じた。
「いやー、あなたの部下は本当に強くて、俺たちも手を焼いてね。それで数人で取り押さえたんですよ。」
ヤザンの怒りが再燃する。
ソウヤは階級が上だが、「部下」扱いにプライドが耐えられない。
ソウヤは一瞬目を細め、静かだが力強い声で言い放つ。
「ヤザンは部下ではありません。私の大事な仲間です!」
その言葉は戦場のざわめきを切り裂き、野次馬の声を一瞬静める。
ヤザンはソウヤの言葉に胸を突かれ、嫉妬と感謝が複雑に交錯する。
ソウヤは続ける。
「仲間が迷惑を掛けたことは謝ります。ですが、彼を返してください。」
真っ直ぐな目でレナー卜を見つめる。レナー卜はイラつきを隠し、笑みを浮かべる。
「それは出来ないね。階級の上の俺を殴ったんだから? 本来なら、事案案件ですが?」
ソウヤは一歩も退かず、冷たく言い放つ。
「そうですか。それでしたら、正式な手続きを踏んでからお願い致します。中尉。」
レナー卜はソウヤの肩に手を置き、ニヤニヤと続ける。
「悪いことは言わねえ。あんな奴を助けたところで、『オデッサの新星』のお前に何の得がある? あんなのとつるんでも、お前のためにならないぜ。」
ソウヤは静かに、だが鋭く応じる。
「オデッサの新星なんて、他の誰かが勝手に言ってることです。私はオリオン小隊のソウヤ・タカバ少尉、ヤザンの仲間です。オデッサの新星と言いたければ、勝手に言ってください。」
その言葉は野次馬のざわめきを再び静め、レナー卜の笑みを一瞬凍らせる。
ヤザンはソウヤの言葉に反応し、叫んだ。
「もういい! もう帰れ! これは俺の問題だ!」
レナー卜の部下がヤザンの顔面を一発殴り、「お前は黙っていろ!」と怒鳴る。
ヤザンの頬に鋭い痛みが走り、血の味が口に広がる。
ソウヤの言葉に胸を突かれた直後の暴力に、ヤザンの嫉妬と仲間意識がさらに揺らぐ。
ソウヤの額に青筋が浮かぶ。ハイスクール時代、弱者を嬲り、愉悦に浸る卑怯者の嘲笑が脳裏をよぎる。
数の暴力で無力な者を痛めつけ、優越感に溺れる者たちの歪んだ笑顔。
ソウヤはその記憶をレナー卜の不敵な笑みに重ね、静かな怒りが燃え上がる。
レナー卜の肩の手を汚物を払うように振り払い、ヤザンに歩み寄ろうとする。
ソウヤの対応にレナー卜はイラつき、肩を掴む。
「おい! 無視するなよ。」
ソウヤは冷たい目でレナー卜を見据え、言い放つ。
「『俺』の肩にその汚い手で触るな。汚物が…。」
ヤザンは違和感を覚える。
ソウヤの一人称は普段「私」だが、気の緩んだ時に出る「俺」とも異なる、氷のような冷徹さが響いていた。
「調子に乗るなよ! 『オデッサの新星』!」
レナー卜は怒り、ソウヤの顔を殴ろうとする。
だが、ソウヤはレナートのパンチが触れる寸前、電光石火のカウンターを放った。
右拳がレナー卜の顎を正確に捉え、骨が軋む音が響く。
「ぐふっ! テメェ! よくも…ぎゃああああああ!」
レナー卜は尻餅をつき、砂塵を巻き上げる。
ソウヤは一瞬の隙も与えず、素早く踏み込み、レナー卜の股間を容赦なく踏み蹴った。
鈍い衝撃音が野次馬の間に響き、レナー卜は顔を歪めて悶絶する。
野次馬が息を呑み、「マジか…!」「ちょ、あの攻撃はヤバいて!」と囁き合う。
レナー卜の部下たちは、ソウヤの冷酷な一撃に戦慄し、一瞬動きを止める。
ヤザンも、こんなソウヤを見たことがなかった。
部下の一人が我に返り、怒りに駆られてソウヤに襲い掛かる。
ソウヤは冷静に相手の動きを読み、襲い掛かる腕をかわすと、喉元に正確な拳を打ち込んだ。
男は喉を押さえ、息を詰まらせて膝をつく。ソウヤは無表情で、がら空きの胸に蹴りを叩き込み、肋骨が軋む音とともに男を地面に沈める。
野次馬が「おいおい、えげつないな!」「あそこまでするか!?」とどよめくが、ソウヤの目は氷のように冷たい。
別の部下が背後から拳を振り上げ、ソウヤを殴り倒そうとする。
「ソウヤ! 避けろ!」
ヤザンが叫ぶ。
ソウヤはヤザンの声に瞬時に反応し、相手を瞳に捉える。
体を僅かに傾けて拳を回避し、相手の顎に鋭いアッパーカットを叩き込む。
男の頭がガクンと揺れ、目を見開いたまま膝から崩れ落ちる。
ソウヤは追撃として、倒れかけた男の顔に正確な回し蹴りを打ち込む。
殺さず、だが急所を的確に捉えた冷徹な打撃技に、野次馬は一瞬静まり、「なんだ、あの動き…」「『オデッサの新星』、こんな奴だったのか…」と戦慄の声が漏れる。
ヤザンも、ソウヤの冷酷な戦い方に目を奪われ、「仲間」と呼ばれた言葉と冷徹な姿に動揺する。
だが、騒ぎを聞きつけたレナー卜の他の部下が背後から襲い掛かり、ソウヤを取り押さえた。
一人がソウヤの両腕を背後で捻り上げ、他の一人が首に腕を回して締め上げる。
ソウヤは抵抗するが、多勢に無勢で身動きが取れない。
レナー卜は股間を抑えながら、よろめきつつ立ち上がる。
「テメェら、人が加減してりゃあ、調子に乗りやがって!」
彼は怒りに震え、ソウヤに殴り掛かろうとする。
「そこまでだ!」
突然、野次馬をかき分ける力強い声が響く。
イーサンが乱闘現場に現れる。
「うちの部下が、世話になったようだな。」
レナー卜はよろめきながらイーサンに近寄り、顔を歪めつつ嘲る。
「あんたが隊長さんかよ? 部下にどんな教育をしてるんだよ? ああん!」
その声には痛みと挑発が混じる。
イーサンは冷静に、だが鋭く応じる。
「その件は申し訳ない。あとで、二人には言い聞かす。だが、あの二人は私の大事な部下だ。返してもらおうか。」
レナー卜は激情を抑えきれず、吠えるように言う。
「ただで返せると思うなよ! そうだな…。」
彼は一瞬考え、あることを思いつき、ニヤリと笑う。
「確か、新しい武器が届いたそうですよね? 新型のビームライフルが。それを譲ってくれたら、二人を解放しますよ。」
ソウヤは無表情のまま、鋭い視線でレナー卜を射抜く。
ヤザンは顔の痛みを堪えつつ、歯を食いしばり、「ふざけるな…!」と呟く。
イーサンは一瞬目を細め、考え込む。
「良いだろう、お譲りしよう。」
イーサンは怒りを押し殺し、低い声で答えた。野次馬のざわめきが一瞬途切れ、「新型ビームライフルだと!?」「いいのかよ!?」と囁きが広がる。
レナー卜は満足げに笑う。
「へへへ、隊長さんは話が分かる人で良かったですよ。」
彼はソウヤとヤザンから十分に距離を取ってから、部下に合図を送る。
ソウヤとヤザンを押さえていた部下たちが手を離し、二人は解放される。
レナー卜は最後に不敵な笑みを浮かべ、「では、あとで取りに行きますね」と言い残し、取り巻きと共にその場を去る。
黒いパイロットスーツの背中が戦場の砂塵に消え、不穏な気配を残す。
ヤザンは地面に膝をつき、顔の痛みと血の味を感じながら、ソウヤとイーサンに視線を向ける。
自分が原因で二人に迷惑をかけたことに後悔が込み上げる。
「くそっ…俺のせいで…」と呟き、拳を地面に叩きつけた。
登場人物紹介
レナー卜・ジェルミ
原作 [機動戦士ガンダム・バトルオペレーション・コードフェアリー]
色々と彼のお陰で助かりました。
【機動戦士ガンダム オリオンの軌跡】に登場するオリジナル機体で好きな機体はなんですか?
-
陸戦型ジム改
-
バイアリーターク
-
ペイルライダー・ヴァンガード
-
ペイルライダー・マスケッティア
-
ヴァルキリー
-
グフ・ノクターン