機動戦士ガンダム オリオンの軌跡   作:浅片名羽馬

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第37話 Nフィールド 地獄の聖域【3】

ソウヤは、マスケッティアのコクピット内で、ふと時間を思い返した。

あれから……何時間経ったのだろう。補給を終えて、再び戦場へ舞い戻ったのは、もう二度目、いや三度目か。

時間の感覚が、ミノフスキー粒子の霧の中で溶けていく。

虚空に散らばる火球の数だけが、過ぎ去った時間を教えてくれる。

オルグレン隊長とヤザンと共に、弾幕を張り続ける。

ヴァンガードのジャイアント・ガトリングが咆哮し、ドミナンスのガトリング・スマッシャーが回転を止めず、マスケッティアのフレーム・ランチャーが火線を織りなす。

撃ち漏らし、自分たちに接近する敵は、シイコ中尉たちのウィッチーズ隊が確実に仕留めてくれた。

シイコ中尉のスティグマ攻撃で敵を翻弄し、翻弄した敵をボカタ大尉とライラ准尉が連携して撃破していく。

彼女のジム・コマンドは獲物を狩る獣のように、敵へ滑り込む。

魔女に近づいた瞬間、命取り——言葉はいらない。

彼女達の戦い方は、それ自体が答えだった。

弾幕の外側や死角から忍び寄る敵は、テネス少佐の第7狙撃部隊が遠距離から正確に貫いた。

L-3ビーム・スナイパー・ライフルが火を噴くたび、ゲルググやリック・ドムのコクピットが砕け散る。

その動作には、獲物を楽しむ猟師のような、静かな恍惚が漂っていた。

第7狙撃部隊が加わってくれたことで、弾幕の密度は飛躍的に上がった。

オリオン小隊の誰かが補給で抜けても、第7狙撃部隊の三機が即座にその穴を埋める。

ウィッチーズ隊が補給に向かうときは、テネス達が警護を引き継いでくれた。

第7狙撃部隊が後退する間は、ウィッチーズとオリオンが戦場を維持する。

誰もが一瞬の隙も許さない、息の合った連携。

ローテーションが回り始める。

そして今——三回目の補給を済ませ、再び戦場に立っていた。

マスケッティアのコックピットの時計は、18時30分を指していた。

作戦開始の13時20分から、すでに約5時間が経過している。

 

 

 

 

 

 

 

オリオン小隊は変わらず弾幕を展開し続けた。

ヴァンガードのジャイアント・ガトリングが咆哮を上げ、ドミナンスのガトリング・スマッシャーが回転を止めず、マスケッティアのフレーム・ランチャーが火線を織りなす。

ウィッチーズ隊は接近を試みる敵を追い払い、第7狙撃部隊はビーム・スナイパー・ライフルで遠距離から狙撃を試みる。

連携はまだ生きていた。

だが——敵は、学習していた。ジオンのモビルスーツたちは、オリオン小隊の弾幕のキルゾーンに迂闊に入らなくなった。

ギリギリの距離でビーム・ライフルやジャイアント・バズーカの牽制射撃だけを繰り返し、ウィッチーズ隊が追いつく間合いを測りながら、決して深追いさせない。

第7狙撃部隊の狙撃も警戒され、命中率が目に見えて落ちていた。

敵機は死角を巧みに使い、弾幕の網をすり抜けながら、じわじわと消耗を強いる戦法に切り替わっていた。テネスの通信が、掠れた声で入った。

 

「へっ……敵も渋くなったな。俺たちの間合いと補給のテンポを完全に読まれてる。迂闊に手を出さなくなったぜ。」

 

シイコの声が、静かに続く。

戦闘中の彼女は、いつもの甘い響きを抑え、冷たく鋭い。

 

「オリオン小隊と第7狙撃部隊が援護できる範囲を把握されたのね。私たちが追いかけられる距離も、完璧に測られてみたい……。」

 

ボカタ大尉が、ため息混じりに応じた。

 

「まあ、敵がこっちに来ないってことは、死ぬ確率が減るってことだ。

悪い話じゃないわ。」

 

ヤザンの声が、苛立ちを隠さずに割り込む。

 

「最初はジャイアント・ガトリングで掃射するのが楽しかったけどよ……。このまま遠距離で撃ち続けるのは性に合わねえ……得意な接近戦がしたくなってきたぜ。流石に長時間ぶっ放してると、砲身の動作が怪しくなってきたぜ。」

 

テネスが、笑いを含んだ声で尋ねた。

 

「へっ……ヤザン曹長、俺と気が合いそうだな。お前、今何機撃破した?」

 

ヤザンは肩をすくめるように答える。

 

「最初は数えてたけどよ……今はもう、次から次へと来るから数えてねえよ。数える暇があったら、一機でも多くぶっ飛ばす方が先だ。」

 

シイコも、ヤザンとテネスの会話に加わる。

 

「私も最初は数えてたけど……今はもう、数えていないわ。」

 

テネスは満足げに笑った。

 

「俺は……15機くらいは狩ったかな。スコープに映った瞬間、全部終わらせてやったぜ。」

 

ボカタ大尉が呆れたように呟く。

 

「この戦闘狂達どもめ……。あんな戦闘をしておいて、雑談する余裕があるのが凄い……。」

 

すると、ヴァンガードのジャイアント・ガトリングの銃口から、マズルフラッシュがぴたりと止まった。

高速回転していた砲身が惰性でわずかに回り続けるだけで、火線が途切れる。

ソウヤは即座に視線を移した。

ヴァンガードの腰部に装備された円筒形弾倉——給弾ベルトが、完全に空になっていた。

弾切れだ。ヤザンの声が、通信に少し悔しげに響いた。

 

「ちっ……弾切れだ。すまねえ、隊長。もう一発も出せねえ。」

 

イーサンは冷静だが、切迫した声で即座に判断を下した。

 

「ヤザン、バイアリータークに戻れ。補給と整備を受けろ。出来る限り、すぐに戻ってこい。」

 

ヤザンは短く応じた。

 

「了解……。すぐ戻るぜ。」

 

ヴァンガードの推進器が青白く噴射し、機体は後方へ旋回。

ジャイアント・ガトリングの砲身を下げ、バイアリータークの格納庫へ向かう。

その背中が虚空に遠ざかるのをソウヤは見送った。

テネス少佐の声が通信に鋭く入る。

 

「第7狙撃部隊、全員気を引き締めろ。穴が開いたぞ。スコープに映ったジオンは、一匹残らず狩れ。」

 

ボカタ大尉も、ため息混じりに続ける。

 

「シイコ、ライラ。気を抜くな。今が一番危ないタイミングだ。」

 

シイコは静かに、しかし冷たく応じた。

 

「……分かってるわ。」

 

ライラが男勝りな声で。

 

「任せてくださいよ。 ヤザンが戻ってくるまで、守り抜いてみせます!」

 

ソウヤとイーサンも身構えた。

そう——敵は、決まって一気に攻めてくるタイミングがあった。

それは、ヤザンのヴァンガードが抜けた瞬間だ。

ヴァンガードのジャイアント・ガトリングの掃射が無くなった途端、ジオンのモビルスーツたちが津波のように押し寄せてくる。

これまで二度、ヤザンが補給でバイアリータークに戻ったときも、同じだった。

あれだけ目立つ高速弾幕が消えた瞬間を敵は見逃さない。

ザクIIの群れが急接近し、リック・ドムが重装甲を押し進め、ゲルググがシールドを構えながらビーム・ライフルを連射してくる。

ソウヤは操縦桿を握り直した。

残ったメンバーは、ヤザンが補給を終えて戻ってくるまで、この穴を塞がなければならない。

漆黒の宇宙の闇に無数の赤い光点が浮かび上がった。

最初は一つ、二つ……そして、次第に連なり、広がる。

まるで、闇の底から無数の獣の目が、一斉に開いたかのように。

その視線は、ただの機械のセンサーではなく、獲物を定めた捕食者のものだった。

同時に、青白い光の点滅が虚空を埋め始めた。

ジオンのモビルスーツたちが、スラスターを一斉に噴射させた証。

無数の推進炎が星屑のように瞬きながら、ゆっくりと、しかし確実に距離を詰めてくる。

ジャイアント・ガトリングの弾幕が消えたことを、敵は完全に察知していた。

 

「奴さんが来るようだぜ、構えろ!出来るだけ減らすぞ!」

 

テネスの掛け声に第7狙撃部隊のジム・スナイパーカスタムが、即座に反応した。

テネス少佐の機体が、L-3ビーム・スナイパー・ライフルを構え、静かに引き金を引く。

青白い光線が虚空を貫き、接近するザクIIのコクピットを正確に撃ち抜く。

一機、また一機と火球が咲く。

だが——それでも、敵の数は圧倒的だった。

撃墜された機体の隙間を、すぐに新たな影が埋めていく。

狙撃の精度は落ちていないのに敵の波は止まらない。

 

「ソウヤ!俺達で十字砲火を形成するぞ!撃てーー!」

 

イーサンのジム・ドミナンスが、バックパックの左右に装備されたガトリング・スマッシャーを連射。

円柱が高速回転し、弾丸の奔流が虚空を埋める。

ソウヤのマスケッティアもフレーム・ランチャーの6銃身ガトリングを回し、十字砲火を形成しようとする。

だが、ジャイアント・ガトリングの圧倒的な弾幕に比べれば、火力は明らかに劣る。

先ほどまでの「絶対に近づかせない」壁は、薄く、脆くなっていた。

損傷を無視して突進するリック・ドムが、火線を掻い潜り、距離を詰めてくる。

敵の波がじわじわと、オリオン小隊の懐に迫っていた。

 

「シイコ!切り込み役は任せた!私とライラでサポートする!行けー!」

 

ウィッチーズ隊は、接近を許した敵を迎え撃つ。

シイコのジム・コマンドが先陣を切り、前衛を務めた。

ボカタとライラがハイパー・バズーカでシイコのサポートに徹する。

だが、敵の数は多すぎた。

一機を仕留めても、二機、三機と新たな影が現れ。

ウィッチーズ隊は対応に追われ、連携の隙が生まれ始める。

虚空に火球が連なるが、敵の勢いは止まらない。

 

「くそ!どんだけ撃っても、近寄ってくる!」

 

ソウヤは歯を食いしばり、マスケッティアのフレーム・ランチャーから四連装ミサイルを連続で放った。

尾を引きながら弧を描く四発のミサイルが、敵の密集した宙域に突き刺さる。

爆発の連鎖が広がり、ザクIIの群れが火球に飲み込まれる。

同時に、バックパック右側のアサルト・キャノンが火を噴く。

散弾が扇状に拡散し、無数の破片が敵の武装やスラスターを抉る。

ザク・マシンガンが誘爆して爆散し、右腕が千切れ飛ぶザクⅡは虚空を回転しながら後退する。

何機かは損傷を負い、ア・バオア・クーへ引き返すが、それでも多くの影が、損傷を無視して前進を続けた。

連携は、乱れ始めていた。

敵の数が多すぎる。

オリオン小隊の弾幕はまだ生きていたが、隙間が少しずつ広がり始めていた。

その時、ソウヤは一際大きな青白い光の点滅を捉えた。

他のモビルスーツのスラスターとは明らかに違う——巨大で、圧倒的な輝き。

 

「あの噴射光の大きさは……モビルスーツじゃない……!?」

 

光は急速に近づいてくる。

巨大な青白い噴射炎が、闇を切り裂きながら直進。

ソウヤは即座にアサルト・キャノンを向け、散弾を放った。

無数の破片が虚空に広がり、狙った相手に着弾する。

鋼鉄の表面に火花が散り、装甲が削れる音が想像できた。

だが——相手は止まらない。

命中しているはずなのに、真っ直ぐに、容赦なく、こちらへ向かってくる。

ソウヤはフレーム・ランチャーのガトリングを向けようとした。

だが、次の瞬間——モニターに映った黄色の眼に睨まれ、ソウヤは凍りついた。

マスケッティアの眼前に現れたのは、褪紅色の大蛇の顔だった。

褪紅色の鋼鉄に覆われた巨大な頭部が虚空を滑るように迫る。

その口は、噛み砕くように大きく開かれていた。

 

「———!?」

 

ソウヤは咄嗟に操縦桿を握り締めたが、すでに遅かった。

鋼鉄の大蛇はマスケッティアに噛みつくように激突。

衝撃が機体を貫き、コクピットが激しく揺れる。

褪紅色の大蛇はマスケッティアを押し込み、獲物を仕留めたかの様にマスケッティアを連れ去っていく。

 

 

通信機から普段の冷静さを失ったイーサンの声が、通信に響いた。

 

「ソウヤ!?マスケッティアが……!くそっ、ソウヤ、無事か!?応答しろ!」

 

シイコの声が、金切り声のように鋭く割り込む。

普段の甘い響きは消え、ソウヤの危機に耐えられないような震える叫ぶ。

 

「タカバ少尉!?タカバ少尉ぃっ!そんな!?お願い!応答して!タカバ少尉!!」

 

マスケッティアが離脱した瞬間、敵は一気に押し寄せた。

ヴァンガードの穴が開いたままの戦線に、ジオンの波が雪崩れ込む。

 

 

 

 

 

 

 

ブラレロは、マスケッティアと睨み合うように向き合っていた。

ブラレロはスラスターを噴射させ、猛スピードで前進を続ける。

マスケッティアを連れ去り、オリオン小隊の弾幕展開を妨害するため——それが目的だった。

本当は、ヒート・ナタで撃破するはずだったが、マスケッティアの右腕に装着されたフレーム・ランチャーで防がれたため、獲物を引きずるように虚空を滑る。

ソウヤはコクピット内で、激しいGを耐えていた。

後ろから押しつけられるような重圧が、体をシートに押し付ける。

警報音が鳴り響き、機体の姿勢制御が限界に近づいている。

右腕に装着されたフレーム・ランチャーに、巨大な鎌のようなものが深く食い込んでいた。

フレーム・ランチャーは前腕部にはめ込むように固定されており、鋼鉄の刃がその装甲を抉っている。

ソウヤは襲われた瞬間、咄嗟にフレーム・ランチャーで相手の鎌を防いだのだ。

もし、ジムと同じチタン・セラミック複合材だったら、フレーム・ランチャーごと機体を両断されていただろう。

 

「ルナチタニウム合金製でよかった…!」

 

ルナチタニウム合金だったからこそ、持ちこたえた——ソウヤはその幸運に感謝した。

ソウヤは相手の外見を見て、瞬時に認識した。

相手はモビルアーマーだと。

モビルスーツとは逆に、人型の汎用性を犠牲にし、活動領域や運用条件を限定したことで機体性能を引き上げたジオンの新兵器。

一年戦争の終盤に現れた、強大な未知の存在。

そんな怪物が、今、目の前にいる。

すると、フレーム・ランチャーに食い込んだ鎌状の武器が徐々に赤熱化し始めた。

このままでは、ルナチタニウム合金でも耐えきれず、両断される——ソウヤは即座に判断した。

 

「くそ……!」

 

ソウヤは素早くフレーム・ランチャーから右腕を抜き取った。

固定ジョイントが外れ、機体のバランスが崩れるが、無視してスラスターを全開。

ブラレロから強引に離脱する。

離れ際に、ソウヤはフレーム・ランチャーの自爆命令を入力。

フレーム・ランチャーの警告音が鳴り響く中、ソウヤは躊躇なくスイッチを押した。

 

「自爆プログラム……起動!」

 

離れた瞬間、フレーム・ランチャーが爆発した。

食い 込んだ鎌状の武器——ブラレロの左側のヒート・ナタを巻き込みように火球が広がる。

ブラレロは左側のヒート・ナタを失い、鋼鉄の大蛇の動きがわずかに鈍った。

ソウヤは息を吐き、マスケッティアを旋回させた。

 

「まだ……動けるよな…。」

 

ソウヤは素早く周囲を確認した。

マスケッティアのセンサーが捉えた光景は、荒廃した戦場の縮図だった。

連邦のジムやボール、ジオンのザクIIやリック・ドムの残骸が無重力の闇に漂っている。

サラミス級の艦体が半壊し、ムサイ級の装甲が引き裂かれた破片がゆっくり回転しながら浮遊する。

所々で、まだ戦闘の光が瞬く——遠くでビームの閃光が交錯し、火球が咲き、推進炎が点滅する。

だが、今、この瞬間、ソウヤの周囲には誰もいなかった。

イーサン、ヤザン、ウィッチーズ隊、テネス少佐……皆の光は、遥か彼方に遠ざかっていた。

ソウヤは視線を戻し、自分を襲った大蛇を睨むように見た。

何故だか分からない。

ただ、直感めいたものが胸を刺した。

あの蛇の頭のようなモビルアーマー——ヘビアタマ——に、因縁を感じる。

初めて見たはずの怪物なのに、どこかで出会ったような、忌まわしいような感覚。

 

「なんだ、この感覚?前にどこかで?」

 

ブラレロは大きく旋回した。

巨大なスラスターが青白い炎を噴き、鋼鉄の巨体が再びマスケッティアに向き直る。

獲物を仕留め損ねた獣が、再び牙を剥くように、ゆっくりと、しかし確実に距離を詰めてくる。ソウヤは手持ちの武器を確認した。

バックパック右側のアサルト・キャノン。

左側の大型複合ミサイルランチャー。

左腰に装着されたビームサーベル。

頭部バルカン砲。

 

「アサルト・キャノンの散弾は、先の攻撃で弾かれた……。頭部バルカン砲も、同じようなものだ。高速で動くモビルアーマーに、ビームサーベルの近接戦闘なんて…。ヤザンじゃあるまいし、俺には無謀だよな……。」

 

大型複合ミサイルランチャー以外、あの怪物に致命傷を与えられそうになかった。

だが、あのスピードでは、ミサイルの照準を合わせ、ロックオンさせるのは難しい。

ヘビアタマの動きは予測不能で、巨大な噴射炎が虚空を切り裂きながら、瞬時に軌道を変える。

ソウヤは唇を噛んだ。

 

「くそ……手札が厳しいな……どうする?」

 

大蛇の黄色い眼が、再び輝きを増す。

褪紅色の装甲が虚空の光を冷たく反射し、ヘビアタマは獲物を仕留め損ねたことを怒るように、再び突進の体勢に入った。

ソウヤは操縦桿を強く握り締めた。

マスケッティアの推進器が、低く唸りを上げる。

ブラレロは機体後部から棒状の構造物を上下に展開し、鋼鉄の巨体が低く唸りを上げながら、真っ直ぐにマスケッティアへ接近する。

マスケッティアは向かってくる、大蛇の方に向き直り、身構えた。

 

「さて、お前はどうする、ヘビアタマ?どう攻めてくる?」

 

突然、棒状の先端が緑色に光った。

 

「光った!?ビームか!」

 

ソウヤは直感で危険を察知し、即座にAMBACで機体を横に滑らせた。

緑色のメガ粒子砲が虚空を切り裂き、マスケッティアのいた空間を焼き払う。

紙一重で回避した衝撃波が機体を揺らし、コクピットの警報が鳴り響く。

ブラレロは止まらない。

上下のメガ粒子砲が連射態勢に入り、次々と緑色の光線を放つ。

 

「あの棒状のやつはビーム砲か?変なところにあるな!」

 

マスケッティアはアサルト・キャノンを2発連続で発射。

散弾が扇状に広がり、鋼鉄の表面に火花を散らす。

だが——効果はなかった。

装甲に弾かれ、破片が虚空に拡散するだけ。

ヘビアタマの巨体は傷一つ負わず、突進を続ける。

ブラレロは一気に距離を詰めた。

巨大なスラスターが青白い炎を噴き、鋼鉄の巨体がマスケッティアの懐へ滑り込む。

その動きは獲物を仕留める蛇のように素早く、無駄がなかった。

ソウヤは息を詰め、操縦桿を握り締めた。

ヘビアタマの黄色い眼が至近距離で冷たく輝く。

右側のヒート・ナタの赤い軌跡がマスケッティアを両断しようと振り下ろされる。

ソウヤは咄嗟にスラスターを噴射させ、機体を急降下させた。

ヒート・ナタの刃先が、紙一重で機体の頭上をかすめる。

 

「くっ……!」

 

 

マスケッティアは虚空を滑るように下方へ逃げ、ブラレロの巨体がすぐ上に通過する。

赤熱した刃が空を切り、大推力の余波が機体を震わせた。

ソウヤの額に汗が伝う。

 

「速い……! あの巨体で、一瞬で距離を詰められた……!」

 

ソウヤは息を呑み、相手の戦法を瞬時に読み解いた。

 

「ヒット&ウェイ……か。」

 

あの巨体とスラスター出力で、一撃離脱を繰り返す高速機動戦。

接近するまでにビーム射撃、接近したら鎌状の近接武器で斬りつけ、すぐに離脱して距離を取り、再加速で次の突進を仕掛ける。

モビルスーツのような小回りの利く回避は、機体重量と推進器配置から見て不可能に近い。

だが、単調で単純な軌道なら予測可能だ。

直線的な加速・減速の繰り返し。

ならば——その軌道を先読みし、対艦用ミサイルを『軌道上に置く』形で迎撃すればいい。

 

「あの軌道なら、ミサイルを置くことが出来そうだな。」

 

マスケッティアはスコープバインダーを降ろし、高倍率カメラで大蛇の旋回パターンを追った。

大型複合ミサイルランチャーの照準システムが、敵の推進炎のベクトルをリアルタイムで解析。

 

「次のヘビアタマの攻撃は……このラインを通るはずだ。」

 

ソウヤは唇を噛み、静かに呟いた。

 

「来いよ……ヘビアタマ。お前の軌道は、もう読めてるよ。」

 

ブラレロの巨体が大きく旋回を終え、再びマスケッティアへ向けて加速を開始した。

青白い噴射炎が虚空を切り裂き、鋼鉄の大蛇が直進する。

ソウヤは対艦用ミサイルの準備を整え、ロックオンを待つ。

大型複合ミサイルランチャーの先端が、わずかに熱を帯び始めた。

 

「来る……!」

 

ヘビアタマの旋回が終わり、再び突撃態勢に入った。

鋼鉄の大蛇が虚空を切るように加速し、マスケッティアへ向かってくる。

ソウヤは牽制としてアサルト・キャノンを2発放つ。

散弾が再び火花を散らすが、相変わらず装甲に弾かれるだけ。

しかし——相手は真っ直ぐに突っ込んできた。

 

「よし!今だ!」

 

ソウヤは大型複合ミサイルランチャーの先端から、対艦用ロングレンジミサイルを一発発射した。

長大な推進炎を噴きながら、ミサイルはヘビアタマの軌道に沿って一直線に飛ぶ。

ソウヤは勝ちを確信した。

あのスピードで直進している今、回避は不可能だ。

この一撃で、決着がつくはず——。

だが、次の瞬間——ヘビアタマの口にあたる部分のシャッターが開いた。

ソウヤの脳に稲妻のような閃きが走った。

 

「——!」

 

緑色の巨大な閃光が口部から放たれた。

放たれた緑色の閃光は、虚空を切り裂くように広がり、ミサイルを飲み込んだ。

一瞬の静寂の後、対艦用ミサイルが大爆発を起こす。

強烈な火球が膨張し、橙色の炎と白い光が周囲を覆い尽くした。

視界が一瞬、真っ白に染まり、センサーが過負荷でノイズを吐き出す。

鋼鉄の大蛇は一瞬、動きを止めた。

強烈な閃光と熱波が光学センサーを混乱させ、マスケッティアの姿を捉え損ねる。

マスケッティアは機体を回避させた拍子に、漂流していたサラミス級の装甲の残骸にぶつかった。

咄嗟にAMBACで姿勢を制御し、残骸の陰にぴたりと寄り添うように身を隠した。

 

「口からビームて、怪獣かよ!本当に見た目どおりに喜天烈だな…。」

 

ブラレロはその場から離れ、ゆっくりと周囲を旋回し始めた。

獲物を探す毒蛇のように、ゆっくりと、しかし確実に、範囲を広げていく。

スラスターの青白い炎が、尾を引きながら闇を切り裂き、残骸の間を縫うように移動する。

発見されるのは時間の問題だ。

ソウヤは息を潜め、残りの武器弾数を思い返す。

大型複合ミサイルランチャーの上部ミサイルベイ——20発、全弾残っている。

対艦用ロングレンジミサイルは、先の一撃で迎撃されたため、残り一発。

アサルト・キャノンも、連続使用で弾倉がほぼ空に近く、残り2発しか残っていない。

 

頭部バルカン砲は論外、ビームサーベルは接近戦以外では役に立たない。

 

「正面から対艦用ミサイルを撃てば……また迎撃されるな。」

 

ソウヤは唇を噛んだ。

あの口部メガ粒子砲は、射程も威力も驚異的だ。

ならば——武器がないと思われる後方からの攻撃が、唯一の望みだ。

だが、モビルアーマーの推力なら、ロックオンしたとしても、対艦用ミサイルを振り切られる恐れが大きい。

あの加速と旋回性能では、後ろを取った瞬間も、すぐに追いつかれる。

 

「今はまだ、見失ってる……。でも、発見されるのは時間の問題。仲間や味方の応援が来る可能性も……低いな。」

 

ソウヤは背にしているサラミス級の装甲残骸に、ふと気付いた。

サラミス級から剥がれ落ちた堅牢な装甲板、マスケッティアの全身を隠しす程の大きさだ。

正面から見ると、依然として厚みのある一枚板のように見えた。

表面は焦げつき、弾痕と溶けた跡が無数に刻まれているが、

艦体の一部として形を保ち、鈍く灰色に輝いている。

しかし、横から見ると——それはまるで薄い紙のように細く、頼りなく見えた。

厚さはわずか数メートルにしかならず、

剥がれ落ちた断面がギザギザに露出している。

 

一撃で両断されそうな、脆く見える側面。

 

「……これだ。」

 

ソウヤの脳に、一か八かの閃きが走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソウヤは大型複合ミサイルランチャーの上部ミサイルベイを操作し、ミサイルのセッティングをする。

 

「陽動と目眩まし用は近接信管、本命は着発信管に設定…。」

 

最初に発射される10発を近接信管に、残りの10発を着発信管に設定。

これで、ミサイルがヘビアタマに近づいた時に広範囲爆発を起こし、着弾時に確実にダメージを与えられる。

設定が終わると、ソウヤは左腰に装着しているビームサーベルをビーム刃を形成せずに右手で抜き取った。

マスケッティアは少しだけ、サラミス級装甲板の陰から顔を出し、ヘビアタマの位置を確認した。

相手はまだ、自分を探しているようだ。

ゆっくり旋回を続け、黄色の蛇眼はマスケッティアを探し求めていた。

ブラレロがこちらを背にした瞬間——ソウヤはビームサーベルを起動させた。

赤い光刃が宇宙の闇に鋭く光り、ビームサーベルの柄がゆっくりと放り投げられる。

 

「頼む、食い付いてくれよ…。」

 

光刃は回転しながら、装甲板の側面に沿って漂うように浮かんだ。

鋼鉄の大蛇の眼が赤い光を捉え、瞬時にその光へ向きを変えた。

ヘビアタマはビームサーベルの方に向かって行く。

 

「よし!食い付いた!」

 

ソウヤはビームサーベルに向かったのを確認すると、装甲板から離脱した。

そして、ブラレロがビームサーベルに近づいた瞬間に、アサルト・キャノンを一発だけ発射する。

散弾が扇状に広がり、ヘビアタマの側面に着弾する。

衝撃でヘビアタマがマスケッティアを感知し、即座に反応した。

口部が緑色に光り、メガ粒子砲が放たれる。

 

「流石に2度目は、攻撃範囲と威力が分かるよ!」

 

ソウヤはスラスターを噴射し、機体を大きく横に移動させた。

緑色の巨大な閃光が虚空を切り裂き、マスケッティアは紙一重で回避した。

ヘビアタマは一気に間合いを詰めようとする。

巨大なスラスターが青白く噴射し、ビームを連射しながら、鋼鉄の巨体が加速する。

ソウヤは頭部バルカンを連射、最後のアサルト・キャノンを放ち、上部ミサイルベイからミサイルを10発発射した。

近接信管モードのミサイルが、バルカンの曳光弾が、アサルト・キャノンの散弾と共に虚空を埋め尽くす。

まるで打ち上げ花火のように、無数の光点が爆発し、大蛇の視界を白く染めた。

ブラレロは蛇行しながら弾幕を回避した。

鋼鉄の巨体が、まるで生き物のようにくねり、バルカンの曳光弾をかわし、アサルト・キャノンの散弾を弾き飛ばし、近接信管のミサイルが爆発する火球の間を縫うように前進を続ける。

褪紅色の大蛇の眼が虚空を切り裂き、ソウヤの機体を捉えようと猛追し。

赤熱したヒート・ナタの刃が、再び振り上げられた。

ソウヤは息を詰めた。

コクピットの警報が連続で鳴り響く。

 

「よし!ここが勝負どころだ!」

 

ヘビアタマの巨体が、距離を詰めてくる。

赤熱した刃が、マスケッティアの胴体を両断しようと迫る。

刃先が視界を赤く染め、熱波がコクピットを包む。

ソウヤは歯を食いしばり、スラスターを全開にし、前方にAMBACする。

腕部と脚部が同時に動き、機体を強引に回転させる。

 

 

前宙——

 

 

マスケッティアは前転しながら、ヘビアタマの巨体の上を滑るように通り抜けた。ヒート・ナタの刃先が、紙一重で機体の左肩をかすめる。

すれ違いざまの余波がコックピットを揺らし、警告音が一瞬高くなる。

機体がわずかに傾き、姿勢制御が乱れる。

ソウヤはスラスターを逆噴射させ、回転を抑えながら虚空を滑る。

額に汗が伝い、呼吸が荒くなる。

 

「くっ……!」

 

ヘビアタマの巨体が、そのまま勢いを殺せずに突進を続けた。

そして——薄い紙のように見えるサラミス級の装甲板に激突。

ヘビアタマの眉間部分に深い裂傷が走り、装甲が剥がれ、火花が散る。

巨体のスピードが急激に落ち、わずかに傾く。

マスケッティアが体で隠していた装甲板の側面が、ようやく露わになった。

ソウヤは即座に残りの10発のミサイルをロックオンせずに発射した。

放たれた10発のうち、5発がブラレロのボディーに着弾し、爆発が起こる。

鋼鉄の大蛇の装甲が剥がれ、内部から黒煙が吹き上がり、推進器の一つが炎を上げた。

前転するように回転していたマスケッティアは、ブラレロの巨体をすり抜け、瞬時に背後を取った。

ヘビアタマは装甲板に激突した衝撃で、スピードが急激に落ちていた。

ソウヤは即座に機体を安定させ、照準をヘビアタマに合わせた。

スコープバインダーが降り、高倍率カメラが敵の巨体を捉える。

ロックオンマーカーが赤く点滅し、対艦用ミサイルの照準が完全に固定された。

 

「今度こそ……終わらせる!」

 

ソウヤは勝ちを確信した。

大型複合ミサイルランチャーの残り一発の対艦用ロングレンジミサイルが発射準備を完了する。

人差し指が引き金に添えられ、わずかに力を込める。

この一撃で決着がつく——。

 

 

 

だが——指が、動かなかった。

 

 

 

ソウヤは目を瞠った。

頭では「これが最後のチャンスだ」と認識しているのに、人差し指が、まるで金縛りにあったように固まって動かない。

必死に力を込め、引き金を引こうとする。

しかし、それでも指は微動だにしない。

まるで、別の意志が自分の体を抑え込んでいるかのように。

 

「な……なぜ、指が……!?」

 

ソウヤの視界に、白いモヤが現れた。

最初はコクピットの隅に小さな霧のように浮かび、

みるみるうちに広がり、形を成していく。

やがて、それは両手を広げた人のようなシルエットになった。

淡く透き通った白い影が、ヘビアタマとマスケッティアの間に立ち塞がる。

まるで、この大蛇を殺させまいと、身を挺して守っているかのように。

ソウヤは息を呑んだ。

幻覚か? 超常現象か?

コクピットの照明が白い影を淡く照らす。

 

すると、自分の脳に直接囁かれるような声が響いた。

 

「どうか……この娘を殺さないでくれ。」

 

ソウヤの全身に電撃が走った。

幻聴——いや、もっと直接的で、温かみのある、切実な声。

それは、誰かの願いそのものだった。

ソウヤは操縦桿を握り締めたまま、凍りついた。

引き金に添えた指は、まだ動かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

衝突したブラレロは、巨体を震わせながら体勢を立て直した。

眉間の深い裂傷から黒煙が吹き上がり、内部の配管が破裂した火花が虚空に散る。

鋼鉄の大蛇は、ゆっくりとスラスターを噴射し、推進炎を青白く尾を引かせながら、マスケッティアから離れていく。

傷を負った獣のように戦場から離脱していく。

その間、両手を広げた白いモヤは、徐々に薄れていった。

ソウヤはコクピット内で、じっとその影を見守った。

白いシルエットは、まるで最後の力を振り絞るように、ゆっくりと輪郭を失い、虚空に溶け込んでいく。

やがて、完全に消えた。

残されたのは、静寂と、わずかに残る冷たい気配だけだった。

ソウヤは操縦桿を握り締め、周辺を警戒した。

ヘビアタマが再び襲ってくる気配はなかった。

スラスターの青白い炎は、遠くの闇に溶け込み、完全に姿を消していた。

ソウヤは右手の人差し指を何度か曲げてみた。

指は、ちゃんと動く。

金縛りのような感覚は、もうない。

あの時の不思議な現象——白いモヤ、脳に直接響いた声。

 

「どうか、この娘を殺さないでくれ」——は、一体何だったのか。

 

考えを巡らせていると、突然、コクピットに警告のアラームが鳴り響いた。

レーダースクリーンが赤く点滅し、2機のザクIIが背後から接近してくる。

モノアイが冷たく輝き、ザク・マシンガンを構えながら、距離を詰めてくる。

ソウヤは息を呑んだ。

大型複合ミサイルランチャーは上部ミサイルをほぼ使い切り、対艦用ミサイルは先ほど撃てなかった一発しかない。

アサルト・キャノンは弾撃ち尽くし、頭部バルカンも残弾わずか。

ビームサーベルは、囮のために使ってしまった。

 

「万事休す……か。」

 

ザクIIの2機がマシンガンを構え、照準を合わせる。

ソウヤは操縦桿を握り締め、撃破されることを覚悟した。

だが、その瞬間——赤いビームが虚空を切り裂いた。

2本の赤い光線が正確に2機のザクIIのコクピットを貫き、瞬時に撃破された。

ソウヤは瞬時に通信を開き、叫ぶように問いかけた。

 

「誰だ!? 今、ザクを撃破したのは!」

 

通信機から、ノイズがザザッと混じりながら、聞き覚えのある女性の声が響いた。

声は途切れ途切れで、強い心配と安堵が混ざり、わずかに震えている。

 

「タカバ少尉……!? 無事……だったのね……!よかった……本当に、よかった……!応答がなくて……私、もう……!」

 

ソウヤの胸が熱くなった。

その声は、紛れもなく——。

 

「カタギリ中尉!」

 

虚空の闇から、ビーム・ガンを構えたジム・コマンドがゆっくりと近づいてきた。

 

 

「中尉!無事でよかった…。他の皆は……どうなりましたか?」

 

シイコの声が、ノイズを乗り越えて届いた。

少し息を切らしながらも、落ち着きを取り戻そうとしているようだ。

 

「みんな、無事よ。ジオンに押し込まれて、一時は本当に危なかったけど。でも……ヤザン曹長が、ジャイアント・ガトリングを装備せずに緊急出撃してくれたの。そのお陰で持ち直せて、なんとか押し寄せたジオンは追い払うことが出来たわ。ボカタやライラ、他の皆が戦線を維持してくれて、……だから、私がタカバ少尉の救援と探索に来たのよ。見つかって……本当に、よかった……。」

 

シイコの声に、わずかな安堵と抑えきれない想いが混じる。

ジム・コマンドの機体が、マスケッティアの横に並ぶように停止した。

傷ついた二機が虚空の闇の中で、静かに寄り添う。

シイコの声が通信に優しく響いた。

 

「タカバ少尉……あの、あなたを連れ去ったモビルアーマーは……どうなったの?」

 

ソウヤは一瞬、言葉が詰まった。

白いモヤ、金縛りのような感覚、脳に響いた「どうか、この娘を殺さないでくれ」という声——

あの不思議な現象を、ソウヤは胸にしまい込んだ。

まだ、自分でも整理がつかない。

誰かに話すには、早すぎると感じた。

 

「……なんとか、撃退しました。」

 

ソウヤは静かに答えた。

事実だけを、淡々と。

シイコの声が一瞬途切れた。

驚きが、通信越しに伝わってくる。

 

「……単独で、あのモビルアーマーを……?タカバ少尉……本当に……すごいわ。」

 

彼女の声には、純粋な驚嘆と、どこか誇らしげな響きが混じっていた。

ソウヤは苦笑した。

マスケッティアのコクピット内で残弾表示が赤く点滅している。

 

「撃退はしたけど……武装のほとんどを使い切ってしまいました。ミサイルも、アサルト・キャノンも……もう、ほとんど残ってないんです。」

 

シイコは小さく息を吐いた。

すぐに、決意のこもった声で応じる。

 

「それなら……バイアリータークに帰艦するまで、私が護衛するわ。一人で帰すなんて、絶対に嫌よ。」

 

「……ありがとうございます、中尉。頼みます。」

 

二機の推進器が青白く光り始めた。

シイコのジム・コマンドが先導し、マスケッティアを優しく誘導するように進む。

遠くで、まだ戦闘の光が瞬いている。

去り際に、ソウヤはふと振り返った。

ヘビアタマが消えた闇の奥。

あの白いモヤは、何だったのか。

脳に響いた声の主は、誰だったのか。

今は、まだ答えが出ない。

だが、いつか——必ず、分かる日が来るはずだ。

二機のスラスターの光がNフィールドの闇に細い軌跡を描いた。




最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
今回はソウヤが初めて、モビルアーマーと戦う場面となります。
対戦したのはザクレロの派生機の"ブラレロ"です。
ではでは、次のお話もお楽しみに~♪

機体紹介

ブラレロ

ザクレロの派生機でブラウ・ブロに搭載された有線コントロール式メガ粒子砲をダウンジグ化した物を搭載している。
本来なら、ブラウ・ブロと同じようにオールレンジ攻撃が出来るはずなのだが、何らかの原因で使用できなかったようだ。

【機動戦士ガンダム オリオンの軌跡】に登場するオリジナル機体で好きな機体はなんですか?

  • 陸戦型ジム改
  • バイアリーターク
  • ペイルライダー・ヴァンガード
  • ペイルライダー・マスケッティア
  • ヴァルキリー
  • グフ・ノクターン
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