機動戦士ガンダム オリオンの軌跡   作:浅片名羽馬

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※注意・この話では、原作キャラが死亡します。



第39話 Nフィールド 地獄の聖域【5】

Nフィールド宙域は、絶え間なく閃光が漆黒の空間を染め上げる。

放たれるビームの閃光、爆発の光芒、スラスターの噴射炎などが絶え間なく明滅し続け。

ア・バオア・クーの無音の戦場は最終局面を迎えようとしていた。

ジオンの超大型宇宙空母ドロスを基軸とした防衛線が第2・第4艦隊を阻んだ。

バイアリーターク隊は局地的に優勢ではあったが、全体では連邦軍は劣勢であった。

 

 

 

——だが、潮目は変わるのは突然だった。

 

 

 

ア・バオア・クーから放たれる砲火が途切れ、敵MSの動きが迷いを見せたのだ。

潮目は音もなく、しかし確実に変わっていた。

バイアリータークはジャミングフィールドを広げ、ジオンの通信を封鎖。

連邦軍は反撃に打って出る。

ジオンを狩る狩人、虚空を舞う魔女達、そして輝く三ツ星が虚空を裂いてドロスへ向かおうとした。

だが、その前に立ち塞がったのは、三つ首の幻獣——キマイラ隊。

オリオン小隊達はドロスを屠るために、二手に分かれた。

片方は巨鯨ドロスを屠るために前進し、もう片方は幻獣を足止めするために身を投げ出す。

今、ドロスを陥とすための最終突入の幕が上がった。

 

 

 

 

 

 

マスケッティアと第7狙撃部隊は、キマイラ隊のゲルググ三機の下を潜り抜けようと虚空を滑った。

三つ首の幻獣が見下ろす高みから、ドロスへの道は下に開かれていた。

ソウヤは操縦桿を握り、推進器を微調整しながら加速する。

テネス少佐のジム・スナイパーカスタム達が左右を固め、キマイラ隊を警戒しながら追従した。

 

だが、その瞬間——

 

灰色の巨大バックパックを背負ったゲルググが、両手に持った二門のガトリング・ガンをゆっくりと下に向けた。

ハインケル・バッツ中尉の粗暴な声が、通信に響く。

 

「へっ……下から抜けようってか?舐められたもんだ。ドロスには行かせるかよ——ガトリングの餌食にしてやるぜぇ!!」

 

イーサンのジム・ドミナンスが、即座に敵の銃口の動きを捉えた。

二門のガトリング・ガンが、マスケッティアたちに向けられている。

 

「ヤザン! 撃たせるな!撃てぇー!」

 

イーサンの指示が飛ぶや否や、ヤザンのヴァンガードがジャイアント・ガトリングを最大回転させた。

90mm弾の奔流が虚空を埋め、ジム・ドミナンスのガトリング・スマッシャーが追従して火を噴く。

弾幕がキマイラ隊に向かって殺到した。

三機のゲルググは、余裕の動きで回避する。

濃淡グリーンのキャノンタイプが弾幕をすり抜け、青いゲルググ——マッキ・ヴィスコンティ大尉の機体が優雅に旋回しながらソウヤたちを追いかけようとした。

マッキの声が甘く響く。

 

「ほお……射撃機体をドロスに向かわせるか…。だが、私のゲルググなら、すぐに追いつく!」

 

マッキはペダルを踏み、マスケッティア達を追いかけようとした。

 

しかし——

 

愛機のゲルググの加速が、いつものように鋭くならなかった。

スラスターの噴射はいつものように青白い光を放っていたが、機体が一瞬よろめく。

 

マッキの声に戸惑いが混じる。

 

「……何だ、この鈍さは? 私の愛機が……こんな動きをするはずが…?」

 

その刹那——シイコのジム・コマンドが、漆黒の闇を舞うように背後から急接近した。

 

「タカバ少尉を……追わせないわ!」

 

キマイラ隊が弾幕を回避した瞬間に、シイコは一気に間合いを詰め。

青いゲルググがソウヤを追走することにシイコは察知した。

左の人差し指を青いゲルググの背中に指差し、マニュピュレータの付け根からワイヤーフックを射出。

背中に細い鋼線が引っ掛かり、シイコの聖痕が刻まれたのだ。

マッキは背後から近づく、ジム・コマンドに気づき、急旋回を試みる。

 

「ちっ……背後からか!」

 

 

青いゲルググが旋回をした瞬間に、シイコはスラスターを全開にした。

引っ張られる力を利用し、ジム・コマンドが一気に加速。

青いゲルググの背後を再び取る。

マッキの声に驚きが混じる。

 

「なんだ!?この……動きは!私が二度も背後を!?」

 

シイコは背後からハイパー・バズーカを構え、引き金を引いた。

爆発の閃光が虚空を照らすが、マッキは瞬時に弾道を読み、機体を傾けて回避する。

爆風が青い装甲をかすめ、火花が散った。

マッキが、ジム・コマンドに二度も背後を取られ、足止めされたことをトーマス・クルツは即座に察した。

濃淡グリーンのゲルググ・キャノンのコクピット内で、クルツの顔が歪む。

 

「ちっ……マッキの奴、ジム如きに足止めされてんのかよ。情けねぇな……。」

 

毒を吐くように呟きながら、クルツは機首を後ろに振り向けた。

 

視界の下方、ドロスに向かって突き進む紺色の新型機のシルエットが捉えられる。

ゲルググ・キャノンのバックパックに装備されたビーム・キャノンが瞬時にマスケッティアを捉えた。

照準システムが赤く点滅し、マスケッティアをロックオンする。

クルツの指が、操縦桿のトリガーに掛かる。

 

「——お前だけは、絶対にドロスには行かせねぇ……!」

 

だが、その瞬間——背後から、恐ろしく重いプレッシャーが襲い掛かった。

まるで、飢えた獣が首筋に牙を立て、へし折らんばかりの殺気。

クルツの肌が粟立ち、背筋が凍りつき、冷や汗が一気に走る。

 

「なんだ!?背後に何が居やがる!?」

 

慌ててゲルググ・キャノンを旋回させ、振り向き直ったクルツの眼前には——バイザー越しに輝く、二つの獣のような眼があった。

 

ペイルライダー・ヴァンガード。

 

ヤザン・ゲーブルが、ビームサーベルを振り上げ、至近距離で迫っていた。

クルツの声が思わず震える。

 

「てめぇ……! いつからそこにいやがった!?」

 

たじろぎながら、クルツは咄嗟にスラスターを逆噴射させた。

ゲルググ・キャノンが後退する。

ヤザンのビームサーベルが虚空を切り裂くように振り下ろされるが、紙一重で回避。

だが、その軌道に巻き込まれたビームライフルが溶断される。

溶断されたビームライフルの切断面から火花と煙が噴き出す。

 

「へっ……逃げ足だけは速ぇな、"幻獣"さんよー。だが、次は逃がさねぇぜぇぇ!!」

 

クルツは歯を食いしばり、溶断されたビームライフルを投棄し、ビーム・ナギナタを右手に持った。

クルツは目の前のヴァンガードを凝視した。

ヴァンガードの右手に持っていたはずのジャイアント・ガトリングが無くなっていたのだ。

 

「……てめぇ……さっきのデカイ機関砲はどこへ消えやがった!?」

 

さっきまでの弾幕を吐き出していたはずの巨大な回転砲身がない。

 

通信越しに、ヤザンの獣のような笑い声が響いた。

 

「ははははっ! よく気づいたな、キャノン野郎。さっきの掃射で動きが怪しくなっちまったから、手放したんだよ。弾倉もパージしてな。お前がソウヤに狙いを定めた瞬間に、一気に間合いを詰めたってわけだ。」

 

ヤザンの声は楽しげに、底知れぬ殺気を帯びていた。

 

「それによ……キシリアが集めたエース部隊のキマイラ隊、そんな強ぇ"幻獣"にちまちま射撃してるのは、面白くねぇんだよ。近づいて、ビームサーベルをぶち込んでこそ、戦いてっもんだろう?」

 

クルツの顔が怒りで赤く染まった。

 

「てめぇ……! 俺たちキマイラ隊を倒すこと前提で喋ってんのかよ!?ふざけんな……!」

 

ゲルググ・キャノンは低く唸りを上げ、スラスターが青白く噴射する。

 

 

「モビルスーツに乗って日の浅い奴らに、負けるわけがねぇ!てめぇを、ぶっ殺してやる!!」

 

ヤザンのヴァンガードが、ゆっくりとビームサーベルを構え直した。

バイザー越しの二つの眼が、再び輝きを増す。

 

「へっ……上等だ。来いよ、"幻獣"。俺を楽しませてくれぇぇー!!」

 

二機の機体が、虚空で向き合う。

推進器が最大出力で噴射し、互いの間合いが一気に縮まる。

ビーム・ナギナタとビームサーベルが交錯し、火花が散った。

マッキの青い高機動型ゲルググがシイコのジム・コマンドに絡みつかれ、クルツの濃淡グリーンのキャノンがヤザンのヴァンガードと激しく斬り合う中——

灰色の巨大バックパックのような物を背負ったゲルググのコクピットで、ハインケル・バッツ中尉は頭を抱えた。

 

「ちくしょう……あの二人が勝手に一騎打ち始めやがって……!」

 

ハインケルの機体は左右一門ずつのガトリング・ガンを構えた支援型。

前衛が敵を引きつけ、後方から弾幕を浴びせて援護するのが本来の役割だった。

なのに、今、クルツとマッキはそれぞれ個別に戦闘に没頭し、ハインケルは孤立無援のまま宙に浮いている。

 

「前衛がいねぇと、俺のガトリングが活かせねぇじゃねぇか……!」

 

苛立ちを吐き捨てた瞬間——

三機の影が、ハインケルの高機動型ゲルググ改に殺到した。

イーサンのジム・ドミナンスが、二連装ビームライフルを構えて赤い光線を放つ。

ボカタとライラのジム・コマンドが左右からハイパー・バズーカを同時発射。

三方向から火線が集中し、ハインケルを包囲する。

 

「ちっ……!」

 

ハインケルは舌打ちすると、即座に両手のガトリング・ガンを最大回転させ、三機に向かって弾幕を張る。

近寄らせない——それが、今のハインケルにできる唯一の抵抗だった。

イーサンが通信で短く指示を出す。

 

「散開! 一ヵ所に固まるな!弾幕を散らせ!」

 

三機は即座に反応した。

イーサンのドミナンスが上方へ跳び、ボカタが左へ、ライラが右へ——三方向からバラバラに動きながら、二連装ビームとハイパー・バズーカを交互に放つ。

ハインケルの弾幕は虚空を切り裂くが、敵は一点に集中せず、散らばって回避。

火線が交錯し、弾丸とビームが虚空で火花を散らす。ハインケルは歯を食いしばり、ガトリングの回転を止めない。

 

「くそっ……連邦ごときに……!まとめて蜂の巣にしてやる!!」

 

三機は決して近づきすぎず、しかし決して離れすぎまいようにハインケルを包囲し続け、ドロスへの道を死守する。

ソウヤは背後から響く爆音と火線の交錯を感じ、思わず振り向こうとした。

だが、その瞬間——通信にテネス・A・ユング少佐の声が割り込んだ。

 

「タカバ少尉、後ろを見るな。」

 

ソウヤの指が操縦桿で一瞬固まる。

テネスの声は静かだが、確固とした響きを帯びていた。

 

「君が見るべきは、眼前のドロスだけだ。後ろの連中が命を削って時間を稼いでいる。君が彼らの助けになりたいなら——ドロスを落とすこと。それが、君にできる唯一の助けなんだ。」

 

ソウヤは息を詰め、ゆっくりと視線を前に戻した。

前方に広がるのは、ジオンの超大型宇宙空母ドロスの巨大なシルエット。

無数の砲門とMSハッチが、なおも連邦を拒むように睨んでいる。

 

「……了解しました、テネス少佐。」

 

ソウヤは小さく息を吐き、操縦桿を強く握り直した。

 

「ドロスを……落とします。」

 

マスケッティアの推進器が青白く噴射し、第7狙撃部隊のジム・スナイパーカスタム三機が左右を固めて追従する。

四機は敵の防衛線を切り裂くように加速し、ドロスへ突き進んだ。

背後では、仲間たちの咆哮と火線が静寂する宙を震わせ続けていた。

ソウヤは振り向かず、ただ前を見据えた。

眼前の巨鯨を屠る——それが、今、自分にできる全てだった。

 

 

 

 

 

 

マスケッティアと第7狙撃部隊はドロスを屠るために、敵の防衛線を突破しようと駆け抜けた。

前方に立ち塞がるのはムサイ級巡洋艦3隻と、ザクII、リック・ドム、ゲルググなどのモビルスーツの群れ。

艦首のメガ粒子砲が黄色く光り、敵モビルスーツのモノアイが赤い軌跡を描く。

ソウヤたちの進路を鉄壁のように塞いでいた。

 

テネス少佐の声が通信に低く響く。

 

「タカバ少尉、ここからが本番だ。ムサイの砲火とMSの弾幕が来るぞ。俺たちが道を切り開く——お前はドロスだけを見ていろ!」

 

「了解……ドロスだけを、狙います。」

 

だが、行く手を阻む敵は容赦なかった。

ムサイ級の一隻が艦首を向け、メガ粒子砲の黄色い光が膨張する。

同時に、ザクIIの群れがマシンガンを連射し、ゲルググがビーム・ライフルで精密射撃を浴びせてくる。

漆黒の宇宙に、弾幕の雨が降り注いだ。

第7狙撃部隊のジム・スナイパーカスタムが即座に反撃を開始。

ビーム・スナイパー・ライフルが火を噴き、遠距離から敵モビルスーツのコクピットを次々と貫く。

火球が連なり、敵の弾幕にわずかな隙が生まれる。

ソウヤはペダルを踏み込み、スラスターを全開に噴かし、弾幕の間を縫うように加速した。

マスケッティアのシールドが弾丸をかすめ、火花が散る。

 

「まだ……届かない。」

 

ドロスの巨大なシルエットが、なおも遠くに浮かぶ。

ムサイ級の艦砲が再び光を帯び、敵MSの影が再び密集し始めた。

 

「数が多い!ミサイルで蹴散らす!」

 

マスケッティアの大型複合ミサイルランチャーが、低く唸りを上げた。

上部ミサイルベイのハッチがゆっくり開き、20発のミサイル弾頭が虚空に姿を現す。

ソウヤは密集し始めた敵モビルスーツの群れに照準を合わせ、引き金を引いた。

 

「全弾、発射!いけぇーーー!」

 

白い煙の軌跡が20本、弧を描いて敵群へ殺到する。

ザクIIがマシンガンで迎撃を試み、リック・ドムがスラスター全開で逃げようとし、ゲルググがシールドを構えて防ごうとする。

だが、ミサイルは容赦なく突き進んだ。次々と着弾。

火球の光芒が宇宙を焼き、連鎖爆発が虚空を赤く染め上げ、敵機の残骸がゆっくり回転しながら漂う。

ソウヤは息を詰め、呟いた。

 

「……やったか?」

 

だが、火球の中から、損傷したゲルググとザクIIが這い出てきた。

装甲は焼け焦げ、推進器は半壊しながらも、ビーム・ライフルとマシンガンをマスケッティアに向け、接近を続ける。

ソウヤは機体を横に滑らせ、射撃を回避した。

だが、敵は執拗に迫ってくる。

 

「くそ……まだ生きてるのか……!」

 

焦燥が胸を締め付ける。

このまま時間を食われれば、ドロスに近づくのは遅れ、ヤザン、シイコ達の命が危ない。

 

——その時。接近してきたザクIIの胴体に、弾丸が着弾した。

 

ザクIIは一瞬硬直し、内部誘爆を起こして爆散する。

ソウヤは弾頭が飛んできた方向に視線を移した。

そこに、4機のジムが近づいてくる。

ややマッシブなシルエット、バックパックのスラスターが2基から4基に増強されたことが、スラスターの光の強さで伺える。

その機体の盾には、ローマ字の「Ⅳ」にカメレオンが掴まっているエンブレムが描かれていた。

 

「……後期生産型のジム……ジム改か。」

 

ソウヤが悟った瞬間、渋みのある声が通信に入った。

 

「こちら、第二連合艦隊第4MS小隊!これより、援護に入る!」

 

4機のジム改は即座に交戦を開始。

マシンガンとバズーカを連射し、ソウヤに迫る敵モビルスーツを次々と撃破していく。

ソウヤは即座に礼を述べた。

 

「ありがとうございます!助かりました!」

 

すると、隊員らしき人物のぶっきらぼうな声が返ってきた。

 

「礼なんてどうでも良い!さっさとドロスを落としてこい!」

 

その失礼な言い方に、先ほどの渋い声——おそらく隊長らしき人物が叱る。

 

「モンシア! その言い方はなんだ!」

 

叱られた隊員は、肩をすくめるような声で応じた。

 

「へいへい……。」

 

ソウヤは小さく息を吐き、操縦桿を握り直した。

 

「……任せました。」

 

マスケッティアの推進器が再び噴射し、ドロスへ向けて加速する。

背後では、第4MS小隊のジム改が敵の追撃を食い止めていた。

第4MS小隊が敵モビルスーツの群れを引き受けてくれたことで、ソウヤの眼前に残ったのはムサイ級巡洋艦3隻だけだった。

ムサイの艦首が一斉にこちらを向き、メガ粒子砲の黄色い閃光を放つ。

三隻の艦砲射撃が暗黒の空間を埋め尽くす弾幕となって、マスケッティアに殺到した。

黄色い閃光の奔流が漆黒の宇宙を切り裂き、ソウヤの視界を埋める。

 

「来た……!」

 

ソウヤは歯を食いしばり、推進器を微調整。

マスケッティアを弾幕の隙間を縫うように走らせる。

 

警報音が短く鳴り、機体がわずかに震える。

だが、ソウヤは怯まない。

マスケッティアは額のスコープバインダーを降ろし、メガ・ビーム・シューターを右手に構えた。

 

 

「ロックオン…!まずは…中央のムサイ!」

 

赤い照準円が中央のムサイ級を捉える。

ソウヤは引き金を引いた。

 

「当たれぇぇーーー!!」

 

メガ・ビーム・シューターが咆哮し、巨大な赤い光束が虚空を貫いた。

光束は中央のムサイに直撃。

装甲がどろどろに溶け、内部誘爆が連鎖し、艦体が二つに裂けながら巨大な火柱を上げる。

ムサイはゆっくりと傾き、暗黒の海に沈んだ。

 

「残り2隻……!」

 

ソウヤはバックパック左側の大型複合ミサイルランチャーの対艦用ロングレンジミサイル2発を発射。

白い煙の軌跡を残して、左右のムサイ級へ向かう。

ミサイルはムサイの装甲を貫通し、内部で爆発。

艦体が内側から破裂し、火球が次々と咲き、推進器が吹き飛ぶ。

左右のムサイは巨大な残骸となって回転しながら漂い始めた。

ソウヤは息を吐き、操縦桿を握り直した。

 

「よし!……突破したぞ!」

 

ドロスの巨大なシルエットが、すぐそこに迫っていた。

マスケッティアはドロスの左側面を滑るように走らせ、巨鯨の左舷後方へ機体を位置取らせた。

 

周囲のモビルスーツは連邦軍の波に気を取られ、マスケッティアの接近に気づいていないようだ。

 

ソウヤは息を殺し、メガ・ビーム・シューターの照準をドロスの装甲に重ねる。

 

赤いロックオン円がゆっくりと収束した。

 

「これで……終わりだ!」

 

指がトリガーに触れた瞬間——頭に鋭い稲妻が走った。

 

「——!」

 

ソウヤは反射的にスラスターを逆噴射。

マスケッティアが後退するや否や、目の前を黄色い閃光が切り裂いた。

ソウヤは即座に視線を移した。

そこに、一隻のチベ級重巡洋艦が主砲を向けていた。

艦首の主砲が再び黄色く膨張し始め、距離を詰めながら、連射態勢に入る。

 

「今撃てば……他の敵に気づかれる……集中砲火を浴びる……!」

 

チベ級の主砲が咆哮を上げ、黄色い光線が次々と虚空を貫く。

マスケッティアは機体を横に滑らせ、シールドを構えて回避するが、光線がかすめ、シールドが赤く焼け焦げる。

警報音が連続で鳴り、機体が悲鳴を上げる。

 

「くそっ……!射撃体勢ができない!」

 

ソウヤの視界が揺れる。

チベ級は容赦なく迫ってくる。

このままでは、ドロスへの照準が取れない。

チャンスが、刻一刻と失われていく。

——その時、閃きが走った。

 

「これしかない……!」

 

ソウヤは瞬時に軌道計算を完了させ、左腕のシールドを艦橋に目掛けて投擲した。

勢いよく回転しながら飛んだシールドは、チベ級の艦橋に突き刺さり、艦橋は火花を散らす。

チベ級は主砲の照準を失い、ビームをあらぬ方向へ放ち続けた。

ソウヤは即座に照準をドロスに戻す。

メガ・ビーム・シューターが再びロックオンを完了。

 

「今だ……!」

 

トリガーに指をかけた瞬間——

先ほどシールドを突き刺されたチベ級が、急旋回して目の前に躍り出た。

艦体を真っ直ぐに向け、巨体をぶつけるように突進してくる。

 

「このままじゃ……ドロスを撃てない……!」

 

チャンスを無駄にしたくない。

しかし、眼前にはチベ級の巨体が迫る。

距離が急速に縮まる。

ソウヤは決断した。

右腰の外部サブジェネレータのリミッターを解除。

過剰なエネルギーがメガ・ビーム・シューターに流れ込み、銃身が赤く輝き始め、警報音が連続で鳴り響く。

 

「撃ち抜けぇぇーーー!」

 

臨界点に達したメガ・ビーム・シューターが、咆哮を上げた。

強大な赤い光の束が虚空を貫き、迫り来るチベ級を直撃。

艦体が溶け、内部が誘爆し、チベ級は火球となって砕け散った。

光束は勢いを失わず、そのままドロスの左舷後方に着弾。

厚い装甲が赤く溶け、内部構造が露わになり、巨大な亀裂が走る。

ドロスの巨体が僅かに傾いた。

ソウヤは息を荒げ、操縦桿を握り直した。

 

「くそ!仕留め損ねた!!」

 

ソウヤは、もう一度メガ・ビーム・シューターを構えようとした。

 

だがその瞬間——サブディスプレイが赤く叫んだ。

 

〔メガ・ビーム・シューター銃身溶解・外部サブジェネレータ暴走〕

 

赤熱した銃身が歪み、銃身が溶け落ちる様子がモニターに映され。

外部サブジェネレータが爆発寸前で暴れ、機体全体が異常振動に震え、警告音が絶叫のように鳴り続ける。

 

「くそっ……!」

 

ソウヤは即座に右腰のパージスイッチを叩いた。

供給ケーブルが外れ、赤熱した塊が勢いよく射出される。

虚空に放り出されたジェネレータは遠くで爆発し、火球を咲かせた。

 

メガ・ビーム・シューターは完全に沈黙した。

ドロス撃破の鍵を失ったことに、ソウヤの胸が締め付けられる。

視界が揺れ、息が苦しい。

 

「そんな……仕留めれ…なかった…。」

 

 

——その時。

 

通信に、掠れた声が割り込んだ。

 

「諦めるな、タカバ少尉!」

 

視界の端に、ジム・スナイパーカスタムが駆けつけた。

テネス・A・ユング少佐の機体だ。

L-3ビーム・スナイパー・ライフルを構え、ドロスの亀裂を捉える。

 

「俺の狙撃で……穿ってやるよ!」

 

テネスは静かに照準を合わせた。

指が引き金に掛かる。

 

一瞬の静寂の後——

 

ビーム・スナイパー・ライフルが一筋の閃光を噴く。

精密な一撃が、メガ・ビーム・シューターの開けた亀裂の奥深くへ突き刺さる。

瞬間、ドロスの内部で連鎖反応が爆発的に始まった。

火花が飛び、誘爆が連なり、装甲が内側から破裂する。

巨鯨の巨体が激しく震え、亀裂が一気に広がる。

 

そして——大爆発。

 

無数の残骸がゆっくり回転しながら漂い、

超大型宇宙空は宇宙の藻屑となった。

 

「やった!……やった!!」

 

ソウヤは息を荒げ、操縦桿を握りしめたまま残骸となったドロスを見つめた。

 

 

 

 

 

 

イーサンたちは、ソウヤを送り出した後も、キマイラ隊との激闘を繰り広げていた。

虚空は火線と火花で埋め尽くされ、推進光が交錯する中——イーサンのジム・ドミナンス、ボカタとライラのジム・コマンドは、灰色ゲルググの弾幕を回避し続けていた。

ハインケルの両手に握られた二門のガトリング・ガンが咆哮を上げ、弾丸の雨が虚空に降り注ぐ。

三機は決して一ヵ所に固まらず、散開しながら反撃を繰り返す。

イーサンが二連装ビームライフルを連射し、ボカタとライラがハイパー・バズーカで爆風を巻き起こす。

弾幕の隙を縫い、灰色ゲルググの装甲に火花を散らしていく。

一方、ヤザンのヴァンガードは、クルツのゲルググ・キャノンと激しく斬り結んでいた。

ビーム・ナギナタとビームサーベルが何度も交錯し、火花が虚空に飛び散る。

二機の機体が絡み合い、互いの装甲を削り合う。

そしてシイコのジム・コマンドは、青いゲルググを翻弄し続けていた。

ワイヤーフックを巧みに操り、敵機の死角を何度も取る。

マッキの機体が急旋回するたび、シイコはスラスターを噴かし、間合いを詰めてハイパー・バズーカを放つ。

爆風が青い装甲をかすめ、火花が散る。

 

「タカバ少尉のためなら……あなたを、壊してあげる……!」

 

マッキの青いゲルググは、ギリギリのところでシイコの攻撃を回避し続けていた。

ハイパー・バズーカの爆風が装甲をかすめ、火花が散るたび、機体がわずかに震える。

コクピット内でマッキは息を詰め、唇を噛んだ。

 

「……この旋回速度……異常だ……!」

 

相手のジム・コマンドは、まるで虚空を踊るように動き、背後を何度も取ってくる。

通常のスラスターだけではありえない、唐突な軌道変更。

 

マッキの視界では、敵機が「瞬間移動」したようにしか見えない。だが、段々とそのトリックが分かってきた。

 

「なるほど……あれか。」

 

マッキはモニターを凝視しながら、推測を口にする。

相手はマニュピュレータの付け根から小型ワイヤーフックを射出しているのだ。

引っ掛けた機体を基点に、瞬間的な急加速と軌道変更を繰り返し、立体的な攻撃と攪乱を仕掛けている。

ワイヤーフック自体は細く、モニターでは視認できない。

だからこそ、敵から見ると「突然どこからともなく現れる」ようにしか見えないのだ。

 

「だが……決定的な癖がある。」

 

マッキの目が細くなる。

相手はワイヤーフックを射出する瞬間、必ず——左の人差し指で、標的を指差すような動作をする。

その一瞬の予備動作さえ見逃さなければ、回避は可能だ。

 

「ふふ……面白い。その癖さえ気をつければ……あなたを、優雅に切り刻んであげられる。」

 

マッキの唇に薄い笑みが浮かぶ。

青いゲルググのビーム・ソードが再び輝きを増す。

シイコは青いゲルググの動きを冷たく見据えながら、内心で舌を巻いた。

 

「流石は……ジオンが選りすぐったエースを集めたキマイラ隊か。」

 

ギリギリのところでハイパー・バズーカを躱され、致命傷を避け続けている。

だが、敵も遅いながら、シイコの『スティグマ攻撃』のトリックに気づき始めているはずだ。

ワイヤーフックを射出する瞬間、左人差し指で指差す動作——それさえ見抜かれれば、回避は可能になる。

以前なら、シイコは絶対の自信を持っていた。

スティグマ攻撃は、誰にも破れない必殺の技だと。

だが、あの模擬戦でソウヤに初めての黒星を刻まれて以来、シイコは自分の技に慢心しないと心に誓った。

 

そして——仕留める時は、絶対に瞬時に仕留める。

 

「なら……ソウヤさんのためだけに用意した秘策を使うしかないわね。」

 

シイコはゆっくりとハイパー・バズーカを左手に持ち替え、腰に懸架していたビーム・ガンを右手に握った。

 

そのまま、ビーム・ガンを連射しながら、マッキの青いゲルググに接近する。

マッキは身構えた。

 

「また……同じ手か。」

 

相手は接近し、ワイヤーを仕掛けてくるはず。

マッキは紙一重でビームを躱し、敵の動きを注意深く観察した。

 

だが、次の瞬間——

 

ジム・コマンドの左腕に装着されたシールドが、勢いよく投げ飛ばされてきた。

マッキは仕方なく、ビーム・ナギナタを横に凪ぎ、シールドを両断する。

 

「ふん……シールドで目眩ましか……!」

 

シールドが真っ二つに割れる瞬間——

シイコは右人差し指を立て、マニュピュレータの付け根からワイヤーを射出した。

細い鋼線が虚空を切り、青いゲルググの左肩にしっかりと引っ掛かる。

マッキは気づいた。

 

「左から右へ……変えたのか!」

 

目の前のジム・コマンドが、上に移動するように瞬間移動した。

マッキは先読みし、上空の敵を迎え撃とうとビーム・ナギナタを振り上げた。

ゲルググの眼前にバズーカの銃口が迫る。

 

「——!」

 

マッキは咄嗟にビーム・ソードを振り払った。

だが——感触がない。

敵を斬った感触が、まったくなかった。

マッキは凝視する。

目の前にあるのは、バズーカだけだった。

 

「……何……?」

 

理解が追いつかない。

 

次の瞬間——背後から衝撃が走った。

 

シイコのジム・コマンドが後ろに回り込み、ビーム・ガンを連射していた。

青い装甲が火花を散らし、装甲が溶かされる。

マッキは慌てて振り向こうとした。

 

しかし——遅かった。

 

目の前のバズーカが火を噴き、弾頭がゲルググの左肩に直撃。

左腕が根元から吹き飛び、火花と煙が噴き出す。

シイコはハイパー・バズーカを左手に持ち替えた瞬間から、それが二重の罠を仕掛けたのだ。

一つ目は、敵の視線を誘導する「囮」として、二つ目は敵がバズーカの脅威に気を取られた隙に背後を取り、敵がこちらに振り向こうとした瞬間に囮にしたバズーカを放ち、擬似的なクロスファイアを作り出すための仕掛けだったのだ。

マッキの声が、初めて動揺を帯びる。

 

「……私が……こんなジム如きに直撃だと……!?」

 

シイコの甘く危険な声が通信に響いた。

 

「タカバ少尉のために用意した、取って置きよ。これが私の二つ目のスティグマ!」

 

シイコはビーム・ガンを連射しながら、青いゲルググに一気に距離を詰めた。

赤いビームの軌跡が虚空を切り裂き、マッキの機体をかすめて火花を散らす。

マッキは急旋回で回避を試みるが、シイコの動きはすでに先を読んでいた。

シイコは腰に懸架していたビームサーベルを、左手に移した。

グリップを握り、刃を抜き放つ。

赤白い光刃が虚空に伸び、静かに唸りを上げる。

 

「私のために死んで!キマイラ!」

 

シイコのジム・コマンドが、瞬間的に加速。

ワイヤーフックを基点に軌道を変え、マッキの背後を完全に捉える。

マッキが気づいた時には、遅かった。

ビームサーベルが青いゲルググの背中を貫く。

光刃が装甲を溶かし、内部構造を焼き切る。

コクピットに近い位置を、正確に抉る一撃。

マッキの絶叫が通信に響いた。

 

「ぐあああああぁぁぁ!!」

 

ゲルググの背部が爆発。

火花と煙が噴き出し、機体が激しく痙攣する。

推進器が連鎖的に誘爆を起こし、青い装甲が内側から破裂。

巨大な火球が咲き、ゲルググは虚空に四散した。

残骸がゆっくり回転しながら漂う中、シイコのジム・コマンドは、静かにビームサーベルを収めた。

 

 

 

 

 

 

 

ハインケルは、マッキの青いゲルググが火球となって四散するのを、信じられない思いで凝視した。

 

「マッキが……撃墜だと……!?」

 

キシリア様に選ばれたキマイラ隊——自分たちは、ジオンが誇る選ばれし強者のはずだった。

連邦の白い悪魔ですら脅威に感じる存在のはずなのに……たかがジム如きに、こんなにあっさりとやられるなんて。

その隙を、イーサンは見逃さなかった。

 

「ボカタ大尉! ライラ准尉! 仕掛けるぞ!」

 

「了解!」

 

「いくわ!」

 

二人の返事が即座に返る。

イーサンのジム・ドミナンスを先頭に、ボカタとライラのジム・コマンドが続く。

三機が一気に間合いを詰め、ハインケルの灰色ゲルググに迫る。

ハインケルは慌てて両手のガトリング・ガンを最大回転させ、三機に向かって弾幕を張る。

 

「近寄るんじゃねぇ! まとめて蜂の巣にしてやる!!」

 

イーサンは二連装ビームライフルを構え、引き金を引いた。

赤い光線が放たれる——が、あらぬ方向へ逸れていく。

ハインケルは嘲るように息を吐いた。

 

「へっ……照準が狂ったな、鶏冠野郎。」

 

だが、次の瞬間——背後から、強烈な衝撃が走った。

コクピットのモニターに、赤い警告が点滅する。

 

〔バックパック・オッゴ破損 推進系統異常〕

 

「な……何だ!?」

 

ハインケルは何が起きたのか、理解できなかった。

通信に、イーサンの冷静な声が響いた。

 

「やはり、あのバックパックは作業用ポッドを改修してバックパック代わりにしていたな。元々が軍用じゃなく、民間のポッドだから、装甲が薄いと思っていたよ。」

 

イーサンは、ハインケルの背後に漂っていた——ヤザンが投棄したジャイアント・ガトリングの円筒形弾倉を、二連装ビームライフルで撃ち抜いていたのだ。

弾倉内部の90mm弾が誘爆し、背後からハインケルのバックパックを直撃。

オッゴが破壊され、推進系統が崩壊した。

ハインケルの機体が制御を失い始める。

 

「てめぇら……!」

 

灰色ゲルググの動きが鈍り、ガトリングの回転が弱まる。

イーサン、ボカタ、ライラの三機が隙を突いて一気に距離を詰めた。

ボカタとライラのジム・コマンドが、ハイパー・バズーカを構え、同時に引き金を引く。

轟音と共に弾頭が宇宙を駆け抜け、ハインケルの灰色ゲルググに直撃した。

装甲が内側から吹き飛び、火花と破片が散乱する。

衝撃波が機体を激しく揺さぶり、ハインケルのコクピットが大きく傾く。

 

「ぐっ……!」

 

ハインケルは歯を食いしばり、姿勢を立て直そうとした。

だが、その一瞬の隙を、イーサンは見逃さなかった。

イーサンのジム・ドミナンスが、推進器を全開に噴かして急接近。

左腕の内蔵ボックス・ビーム・サーベルが起動し、赤い光の刃が静かに伸びる。

 

「終わりだ。」

 

イーサンの機体が、ハインケルの灰色ゲルググの腹部に突き刺さす。

ビーム刃が装甲を溶かし、コクピットを貫通、内部構造を焼き切る。

ハインケルの絶叫が通信に響く。

 

「があああああぁぁ!!」

 

コックピットを貫かれたゲルググは、ゆっくりと赤いモノアイの光を失い、力無く漂い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

マッキに続いて、ハインケルまで火球となって散った光景をクルツは信じられない思いで凝視した。

 

「マッキ……ハインケルまで……!?」

 

ジオンのエース部隊と謳われたキマイラ隊が、次々と討たれていく。

選ばれし強者としてキシリアに集められた自分たちが、こんなにあっさりと……。

その恐怖が、背筋を凍らせ、呼吸を奪う。

そして、目の前の男。

ペイルライダー・ヴァンガード——ヤザン・ゲーブル。

まるで、強者との戦いを至極の楽しみとしているような、この男が一番危険であった。

何度もビーム・ナギナタを振り下ろしても、軽々と斬り返される。

自分のゲルググ・キャノンは、なんとか致命傷を避け続けているが。

装甲は溶断された傷痕が無数に刻まれ、火花と煙が絶え間なく噴き出していた。

ヤザンは後少しで獲物を仕留められる獣のような笑みを浮かべ、通信越しに低く笑った。

 

「はははっ……お前の仲間、落とされたようだな。お前との戦闘は、なかなか楽しめたぜ。」

 

その言葉は、クルツにとって最大の侮辱だった。

自分たちは選ばれた精鋭として集められた。

そんな自分たちと、遊び感覚で刃を交えていたというのか。

怒りが爆発し、視界が赤く染まる。

その時——クルツのゲルググ・キャノンの後方から、強大な爆発の光が漆黒の宇宙を焼き尽くした。

クルツは慌てて振り向く。

そこに広がっていたのは、巨体が真っ二つに裂け、膨大な火球が連鎖して咲き、無数の破片がゆっくりと漂っている超大型宇宙空母ドロスの残骸だった。

 

「……嘘だ……ドロスが……!?」

 

信じられない光景に、クルツの瞳が震え、息が止まる。

ヤザンの声が、再び響いた。

楽しげで、しかし底知れぬ冷たさを帯びて。

 

「おうおう、仲間も墜され、要のドロスも落とされた。降伏するなら、今のうちだぜ。」

 

その一言が、トーマス・クルツの逆鱗に触れた。

元々は地球出身で連邦空軍に所属していた。

だが、家族がサイド3出身であることから、一年戦争勃発と同時にジオン公国に亡命した。

そんな自分が、連邦軍に投降しろだと?

 

「ふざけるな……!」

 

怒りが爆発した。

クルツは我を忘れ、ビーム・ナギナタを振りかざしてヴァンガードに襲い掛かる。

 

「てめぇら全員……ぶっ殺してやる!!」

 

機体が限界を超えて唸りを上げ、推進器が最大出力で噴射する。

ビーム・ナギナタが虚空を切り裂き、ヤザンのヴァンガードへ殺到する。

だが、ヤザンは右手に持ったビームサーベルで、振りかざされたナギナタの刃を受け止めた。

 

ミノフスキー粒子同士の衝突音が虚空に響き、火花が散る。

そして——左腕に装着していたシールド・ヒートクローの2本の鉤爪を展開。

赤熱化した爪が、低く唸りを上げながら、ゲルググ・キャノンの腹部——コクピットを正確に貫いた。

 

「そんな!?があああああぁぁ!!」

 

クルツの絶叫が通信に響く。

赤く熱せられた鉤爪が内部を焼き切り、機体が激しく痙攣する。

誘爆が連鎖し、ゲルググ・キャノンの巨体が火球に包まれた。

ヤザンは静かにビームサーベルを消し、虚空に浮かぶ残骸を見つめた。

 

「へっ……楽しかったぜ、"幻獣"さんよ。」

 

キマイラ隊の三機は全て沈黙した。

背後では、ドロスの残骸がまだ漂い続けていたが、Nフィールドの戦いは——ついに、連邦の勝利へと決着した。




最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。
遂にキマイラ隊、ドロスの決着が着きました!
そして、あの部隊も出演。
少し分かりづらいかもですが、あの部隊だなと思われるように書いてみました。
楽しんでもらえたら、幸いです。
ではでは、次のお話も楽しみにしていてください!

【機動戦士ガンダム オリオンの軌跡】に登場するオリジナル機体で好きな機体はなんですか?

  • 陸戦型ジム改
  • バイアリーターク
  • ペイルライダー・ヴァンガード
  • ペイルライダー・マスケッティア
  • ヴァルキリー
  • グフ・ノクターン
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