機動戦士ガンダム オリオンの軌跡   作:浅片名羽馬

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第4話 集いし三ツ星

北大西洋の海中を一隻のユーコン級が海中を航行していた。

ユーコン級の中にはオデッサから脱出し、北米のキャリフォルニアベースに向かうためである。

一人の男が潜水艦の一室で親指の爪を噛みながら、呪詛のようになにかを呟く。

 

「彼女がやられるなんて想定外だ。テスト機体だとしても専用に作り上げたのに残ったのは妹達しかいないじゃないか。」

 

男は親指の噛み終わると次は人差し指の爪を噛み始めた。

 

「一番の最高傑作を失ってしまったのは忌々しい、建造中の〝ヴァルキリー〟を放棄してしまったのは大損失だ!あれが完成すれば、ジオンは無敵になると言うのに!!」

 

男の声はどんどん荒くなり、鼻息が激しくなる。

 

「これも全て、フラナガンのせいだ!!こんな地球の僻地に私を遠ざけて!!フラナガンさえ居なければ、彼女は!彼女は!!」

 

男の怒鳴り声がユーコン級の艦内に響き渡るのだった。

コンコンと、部屋のドアがノックされた。ノックが終わると一人のジオンの士官が入ってくる。身なりからすると、このユーコン級の艦長のようだ。

 

「ジル・ペロー少佐、お静かにしてもらえませんか?本艦は今は連邦の目を掻い潜りながら航行しているのです。先ほどの音で発見されたら、私たちは海の藻屑になりますよ。」

 

ユーコン級の艦長は静かに怒りながら、ジル・ペロー少佐に忠告を言うのだった。

 

「ああ、申し訳ない。我が軍の大損害を考えていたら、声が大きくなってしまったようだ。次からは気を付けるよ。」

 

ジル・ペロー少佐は艦長の気迫に恐れ、畏縮する。

 

「お願いしますよ。次しましたら、魚雷管に詰め込みますからね。」

「ははは、冗談が上手いな。」

 

艦長は言うことを済ますと部屋から出ていた。

だが、艦長が出ていった後も少佐の呪詛のような呟きは部屋から漏れ出していた。

 

 

 

 

 

 

1機のミデア輸送機が護衛のセイバーフィッシュを2機を引き連れて、北大西洋の南米付近の上空を飛行している。

ミデアの中には量産型ガンキャノンが1機だけ積載されており、ジャブローの連邦軍総司令部に向かっていた。

 

「ジャブローに呼び出して、俺はどうなるんだろうな…。」

 

ソウヤはミデアの仮眠室の簡易式の二段ベッドの下のベッドに寝転がりながら、自分がジャブローに呼び出された理由を考えている最中だった。

オデッサ作戦が終了したあとは量産型ガンキャノンの修理、ロングボウ小隊が全滅した経緯と工場プラントでの戦闘と鹵獲した機体の報告書を提出するのに多忙だった。

ガンキャノンは撃破された二人の機体からパーツを移植し、なんとか稼働できる状態にすることができたのだ。

新米の士官が戦闘の報告書とモビルスーツの修理申請を一人でしなければならなかったので、本当に大変だったと思い返す。

 

「ヨーロッパのジオン狩りに参加すると思ったのに直前でジャブローに召集されるからな。なんで、総司令部に召集なんだろうか?」

 

ソウヤは二段ベッドの天井を眺めながら、ジャブローに行く理由を考えるのだった。

 

「タカバ少尉、タカバ少尉、操縦室まで来てください。」

 

ミデアのスピーカーから呼び出しのアナウンスが流れる。ソウヤは寝転がるのをやめ、ベッドから起き上がった。

 

「呼び出されたようだし、行くか。」

 

ソウヤは連邦軍の士官服の上着に袖を通し、ファスナーを閉めると操縦室に移動する。

操縦室の自動ドアが開き、中に入室すると正面のキャノピーには青い空と南米の美しい緑に覆われた大地が見えるのだった。

その青と緑の美しいコントラストに一瞬、目を奪われる。

しかし、すぐに気持ちを切り替え、呼び出した機長に話し掛けた。

 

「機長、ご用件はなんでしょうか?」

 

「タカバ少尉、ゆっくりと眠れましたかな?」

 

「ええ、もちろんです。お陰でオデッサの疲れが取れました。」

 

「それは良かった。もうすぐ、ジャブローに到着しますので到着した後のことを説明しようと思いまして。」

 

「ありがとうございます。ジャブローからはなんと連絡がありましたか?」

 

「ジャブローに入港した後はモビルスーツを整備班に引き渡し、指定されたブリーフィングルームに向かうようにと連絡が。」

 

「ブリーフィングルームに?」

 

私は疑問に思う、ジャブローに呼び出されるから部隊が全滅した経緯の査問会の呼び出しか、量産型ガンキャノンを次の部隊に引き渡すために呼び出されたと思っていた。

しかし、呼び出される場所がブリーフィングルームなら司令部が自分を呼び出した真意がまったく分からないからだ。

私は司令部の真意がわからず、顔を曇らせていると機長が声を掛けてくれた。

 

「タカバ少尉、あまり気負わないほうがいいですよ。もし、少尉に罰を与えるために呼び出すなら、セイバーフィッシュの護衛を付けませんよ。」

 

確かに、機長の言うとおりだ。量産型のガンキャノンと尉官を一人を輸送する為だけにセイバーフィッシュの護衛を付けるのは通常はありえないのだから。

 

「おっと、もうすぐ着陸地点になります。少尉は席に座って、シートベルトをしてください。」

 

私は機長の言う通りに席に座るとシートベルトを装着した。

ミデアはゆっくりと高度を落とすとジャブローのジャングルの緑が段々と近づく、木々に留まっていた鳥たちがミデアの接近に驚き、羽ばたく姿が目に映る。

しばらくすると、ジャブローの緑の大地に不釣り合いな金属の地面が現れた。

ミデアはVTOL機能での垂直離着陸ができるので、その金属の地面に垂直着陸をする。

金属の地面はミデアの着陸を感知すると、下斜めにスライドしながら地中に移動を開始。

ミデアのキャノピーから見える風景は木々の緑から暗闇の黒に変色するのだった。

私はその光景を不思議そうに眺めていた、ジャブローに来ることは連邦軍の尉官であっても滅多にないことだから。

ミデアを乗せたエスカレーターが地下の地球連邦軍司令部に到着、誘導員に誘導され、ミデアは指定された位置に停止する。

私はシートベルトを外し、ミデアの外に出るためにタラップを降りた。

鍾乳洞を利用した基地なだけに熱帯地域の特有の暑さを感じることはなく、むしろ、氷室に似た涼しさを感じるのだった。

 

「ソウヤ・タカバ少尉でありますか?」

 

書類が入ったファイルを持った整備員が私に駆け寄ってくる。

 

「はい、そうです。」

 

私は彼に敬礼すると敬礼を返してくれた。持ってきた書類を渡してきたので私はそれを受け取り、書類に目を通す。

 

「ジャブロー到着証明書とモビルスーツの修理申請書に……。」

 

ある書類に目が留まり、私は大きな声で驚いてしまう。

 

「部隊転属同意書!?」

 

私は目を丸くしながら、部隊転属同意書を読む。

書類の責任者の名前の欄にイーサン・ミチェル・オルグレン少佐の直筆のサインが書かれていた。

 

「あの時の少佐が?なんで、私を部隊の転属をさせるんです?」

 

さらに書類を読んでみると不可解な所がもう一つあった。本来なら転属先の部隊名が書かれているはずなのに書類には転属先の部隊名が記載されていなかったのだ。

 

「この転属同意書は正規のものですか?」

 

「はい、正規のものだと聞いてます。」

 

渡してきた整備員に確認するが、正規の書類であると答えられる。私は到着証明書と修理申請書にサインすると転属同意書だけは記入しなかった。

 

「申し訳ない。この書類は確認をしてから提出させてもらいます。私が預かってもいいですか?」

 

「はい、分かりました。」

 

到着証明書と修理申請書を整備員に渡し、私は指定されたブリーフィングルームに急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ブリーフィングルームで男は新しく渡された階級バッジを手で摘まみながら眺めている。

金色の菱形が横に三つ並んだ曹長の階級を意味する階級バッジを嬉しそうに眺めていた。

 

「オデッサで俺以外のメンバーは戦死しちまったが、あの工場のジオンの新型を鹵獲できたのが大きかったな。」

 

ヤザン・ゲーブルはオデッサ作戦終了後、すぐにイーサンと一緒にジャブローに帰還した。

ジャブローに帰還し、オルグレン少佐から新部隊への配属を勧誘されたので了承するとオデッサでのジオンの2機の新型モビルスーツの鹵獲を評価され、曹長に昇格したのだ。

 

「新部隊の3人目は誰なんだろうな?」

 

ヤザンは階級バッジを服の襟に付け直し、オルグレン少佐が新しく発足する特殊作戦小隊の3人目は誰かを考えた。

連邦軍はオデッサ作戦の成功で反攻に転じることができ、地球の全地域で反攻作戦が行われてようとしている。

そんな広い範囲で作戦が準備されている中で優秀な人材が来るのだろうかと疑問に感じていたのだ。

すると、ブリーフィングルームの自動ドアのスライドする音が聞こえたのでヤザンはドアの方に顔を向けた。

柳のようにしなやかに揺れる黒い髪、東洋人独特のベージュの肌をしてるが、まるで夜空ような深い蒼の瞳は彼が純粋な東洋人でないことを表しているようだった。

 

「タカバ少尉?オデッサのタカバ少尉ですか!?」

 

ヤザンの声に気付き、ソウヤはヤザンの方に歩み寄り、彼が此処にいることに驚く。

 

「ヤザン軍曹!ヤザン軍曹じゃないですか!?」

 

「今は曹長ですよ。」

 

ヤザンは襟の曹長の階級バッジをソウヤに見せた、ソウヤは曹長に昇格したことに驚くがすぐに昇進したことを祝うのだった。

 

「曹長への昇格、おめでとうございます。もしかして、ヤザン曹長もオルグレン少佐の召集を?」

 

ヤザンはソウヤの質問を聞き、小隊の3人目が誰かを悟った。

 

「なるほど、3人目はあなたでしたか。少尉となら一緒に戦えそうです。」

 

「3人目?つまり、ヤザン曹長も召集されたのですか?」

 

「ええ、ジャブローに帰還してからすぐに少佐からスカウトされました。」

 

「なるほど、部隊のことは聞いてますか?配属先の部隊名が記載されてないんですよ。」

 

「ああ、俺もなんの部隊かは聞いてないですな。」

 

二人が新部隊の話をしていると、誰かが声を掛けてくる。

 

「お、ソウヤも来たようだな。これで全員が揃ったわけだ。」

 

二人は声がする方に振り向くとオルグレン少佐が立っていたのだ。

 

「オルグレン少佐!オデッサ以来ですね。」

 

「タカバ少尉。来てくれて、ありがとう。部隊転属同意書にはサインしてくれたかな?」

 

「いえ、申し訳ありません。転属先の部隊名が未記載だったので同意のサインをまだ、出してません。」

 

「そうか。新しい部隊の説明を今からするから、それを聞いてからサインをしてくれ。」

 

「わかりました。」

 

「じゃあ、二人とも席に座ってくれ。」

 

私はヤザンはすぐにブリーフィングルームの席に着席し、新部隊の説明を聞けるようにする。

 

「よし、着席したな。」

 

オルグレン少佐は二人が着席したことを確認すると、壁に設置されていた照明スイッチを操作し、部屋の照明を落とす。

そして、オルグレン少佐はプロジェクターのリモコンを操作するとスクリーンに映像が映された。

スクリーンの映像には私達がオデッサで撃破した〝あのグフ〟が映し出されたのだ。

 

「こいつは…。」

 

映し出されたグフ・カスタムを見て、私は嫌悪感を表す。こいつのせいでアロンソ大尉とコルサコフ中尉が死ぬことになったのだから。

 

「二人も嫌というほど覚えてるかもしれないが、オデッサで戦ったグフ・カスタムだ。こいつの機動性と反応性は我々の常識を逸脱していた。」

 

少佐は映像のグフ・カスタムを人差し指で小突きながら、話をつづけた。

 

「この機体はジオン公国のとある研究機関所属のモビルスーツだ。」

 

「とある研究機関と言いますと?」

 

ヤザンは『とある研究機関』のワードに興味を示す。

私もヤザンと同じように、その研究機関に興味があった。

少佐は少しだけ間を開けてから、研究機関の名前を言うのだった。

 

「フラナガン機関だ。」

 

私とヤザンはあまり聞きなじみのない名前に困惑する。

 

「仕方ない。この研究機関の名前を知ってる者は連邦軍でも、ごく一部だ。それだけ秘匿性の高い研究機関ってことだ。」

 

彼はフラナガン機関の話を続けた。

 

「ジオンの突撃機動軍のキシリア傘下の組織で〝ニュータイプ〟の研究を行っているらしい。」

 

「ニュータイプ?なんですか、それは?」

 

ヤザンは新しく出た〝ニュータイプ〟のワードに混乱する。

『ニュータイプ』、ジオン・ズム・ダイクンが提唱したジオニズム思想に出てくる用語で『全人類を宇宙に上げ、新たな社会体制を築き、地球の再生を進める』思想用語だったとソウヤは思い返す。

 

「ジオンから亡命した研究者の話だと宇宙環境に適応し、進化した人類の総称らしい。」

 

私は少佐の発言を聞き、自分が覚えていた『ニュータイプ』の意味は違っていたのかと考えるが、今はそんな時ではないと追及するのはやめておいた。

 

「で、その研究機関の地上研究班がオデッサに居たことが確認された。このグフ・カスタムと。」

 

スクリーンの映像が変わり、スクリーンに別の映像が映し出される。それは私達が工場プラントで鹵獲した組み立て中の謎の機体だった。

 

「この工場で鹵獲した機体もフラナガン機関のモビルスーツのようだ。」

 

「どうして、この機体がフラナガン機関のモビルスーツと断言できるのでありますか?」

 

ヤザンは至極当然な質問をする、先のグフ・カスタムとは形状も違うのに同じ研究機関が作った物だと断定できるのだろうか。

 

「こいつの操縦席周辺の回路の配置が通常のジオンのモビルスーツとかなり異なるからだ。先のグフ・カスタムとこの機体の操縦席の回路の配置を比較したら、ほぼ似ていた。つまり、こいつも同じ仕様だと言うことだ。」

 

ヤザンと私は少佐の説明を聞き、納得する。通常の回路配置ではなく、似た回路配置なら技術系統は同じ研究機関の産物である。同じ研究機関が作り出した作品なのだと。

 

「つまり、その研究機関を追うために集められたのですか?」

 

ヤザンは私達が集められた理由を単刀直入でオルグレン少佐に尋ねた。

 

「そうだ!私達はフラナガン機関地上班の追跡と捕獲の為に集められた!」

 

少佐は力強く答える。

 

「私達は独自の作戦権を持ち、独自の行動が許された特殊追跡部隊として召集された!」

 

少佐は私とヤザン曹長の顔を確認し、話を続けられた。

 

「君達はオデッサで、あのグフ・カスタムと戦い。生存することができた!そして、君達は連邦軍でも類まれなる才能を持っている!」

 

 

そう言うとファイルを開き始め、私達のプロフィールを言い始める。

 

「ソウヤ・タカバ少尉。君は射撃に類まれなる才能を持ち、モビルスーツの射撃成績は訓練中トップだった。その才能を見込まれて、ビームライフルの装備を許可されるほどだ。」

 

ヤザンは私のプロフィールに聞くと口笛を鳴らすのだった。

 

「ヤザン曹長は短いモビルスーツ転換訓練でモビルスーツを乗りこなし、類まれなる操縦センスでチームの前衛をしていた。あのグフと斬り結べたのも君だけだった。」

 

オルグレン少佐は手に持っていたファイルを閉じ、私達の方を改めて見つめる。

 

「ここにジオンのフラナガン機関を追跡するための特殊追跡部隊〝オリオン小隊〟の結成を宣言する!」

 

オルグレン少佐の気迫ある言葉に私とヤザンはただただ圧倒されるだけだった。

そして、未知の敵と戦えると闘志を燃やすヤザンとフラナガン機関の秘密を知りたいと思う私は胸が躍っていた。

 

私は持っていた転属同意書に素早くサインをし、オルグレン少佐に差し出すのだった。

 

「ソウヤ・タカバ少尉!〝オリオン小隊〟への転属をお願いします!」

 

少佐は嬉しそうに書類を見つめ、私の転属の書類を受け取る。

 

「よろしく頼むぞ!タカバ少尉!」

 

私と少佐は力強く握手するのだった。

 

「おっしゃーー!少尉殿が居てくれたら、百人力だぜ!」

 

ヤザン曹長は私の参入に感激し、背中を力強く叩く。

 

「ヤザン曹長!痛いですよ。」

 

「はははは、すまねぇ。」

 

こうして、ジャブローの地下に三つの星が集うのだった。




オリオン小隊が結成されました!
本当に楽しかったけど、疲れた(笑)
やっと、物語のタイトルにもなっている。
『オリオン』を出すことが出来ました!
この『オリオン』は主人公のソウヤにとって、特別な物になるので、物語の重要なワードになります。
ここから、物語が本格的に動き出すので、お楽しみに!

では、オリジナルキャラクター紹介をします。

オリジナルキャラクター紹介
イーサン・ミチェル・オルグレン 階級 少佐
希望CV 森川智之
年齢35歳 誕生日 7月4日 蟹座 O型
連邦軍では珍しい、『少佐』階級のモビルスーツ隊長。
元戦闘機乗りで、一年戦争初期を経験している。
実はかなりの名門の出身。
キャラクターのイメージとしては、トム・クルーズです。

【機動戦士ガンダム オリオンの軌跡】に登場するオリジナル機体で好きな機体はなんですか?

  • 陸戦型ジム改
  • バイアリーターク
  • ペイルライダー・ヴァンガード
  • ペイルライダー・マスケッティア
  • ヴァルキリー
  • グフ・ノクターン
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