機動戦士ガンダム オリオンの軌跡   作:浅片名羽馬

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68話 償いと願い

人口の横穴は、密林の奥深くにぽっかりと口を開けていた。

夜の闇に溶け込む入口の周囲を、ジオン兵たちが厳重に警戒している。

木々の影に身を潜め、ザクⅡの脚部に寄りかかる兵士たちの表情には、疲労と焦りが濃く滲んでいた。

湿った空気の中に、張りつめた緊張が淀んでいる。

横穴の奥には、分厚い金属でできた隔壁がそびえていた。

本来は堅牢な要塞の入り口だったはずのその隔壁に、今は大きな爆破痕が黒く口を開けている。

爆薬で強引に開けられた穴の縁は溶け、歪み、内部の暗闇を不気味に覗かせていた。

淡い月明かりが木々の隙間から差し込み、兵士たちの顔を青白く浮かび上がらせる。

 

「あっちが派手に暴れてくれたおかげで、こっちの警戒が手薄になったな……」

 

一人の兵士が、低い声で呟いた。

 

「インビジブル・ナイツに感謝しないとな。」

 

横穴の奥からは、金属が擦れる音と慌ただしい足音が、絶え間なく響いていた。

日本刀を腰に差した指揮官、カルロス少佐が横穴の入口に姿を現した。

日本刀を腰に差した彼の鋭い横顔が、月光に淡く照らされる。

彼はさっきまで呟いていた兵士に鋭い視線を向け、低く尋ねた。

 

「おい、作業の進捗状況はどうだ?」

 

兵士は慌てて敬礼し、息を整えながら答えた。

 

「はっ! 内部はアプサラスが爆発した衝撃で、あちらこちらが崩落しており、撤去や経路確保に手間取りましたが……目的のエリアには到達しました。データのサルベージ作業は、3時間前に開始しています。」

 

カルロスは腕を組み、わずかに眉を寄せた。

 

「本命のギニアス少将のデータは?」

 

「……まだ見つかっていません。現在、私室を重点的に探しています。」

 

カルロスは小さく鼻を鳴らし、自信ありげに言った。

 

「あの男なら、大事なものは自分の部屋に隠しているはずだ。徹底的に探せ。」

 

すると、隔壁の穴から別の兵士が息を切らして駆け寄ってきた。

興奮で顔を紅潮させながら、彼は声を弾ませた。

 

「少佐! ギニアス少将の私室を発見しました!

隠し部屋にサーバーが……!」

 

カルロスの表情が一瞬で変わった。

彼は思わず拳を握り、短く笑った。

 

「よし……やはり自分の部屋か。俺の読み通りだ。」

 

カルロスは周囲の兵士たちに向かい、声を張り上げた。

 

「全データのサルベージが終わり次第、サーバーは破壊しろ!

その後は速やかに撤収する!」

 

彼は刀の柄に手をかけ、不敵な笑みを浮かべた。「……ついに、ギニアス・サハリンの遺産を手に入れたぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

朝方のデリー基地は、薄い霧に包まれていた。

夜明けの淡い光が、戦いの傷跡を容赦なく照らし出している。

滑走路脇には損傷したモビルスーツが無残に横たわり、半ば溶けた装甲や折れた四肢が朝露に濡れていた。

特に多く見られるのは撃破されたジムの残骸だ。

胴体を大きく抉られた機体、頭部を失ったまま倒れているもの、四肢を斬り落とされ動けなくなったもの……。

昨日の激戦の爪痕が、基地全体に重く残っていた。

その残骸の間を、衛生兵たちが慌ただしく動き回っている。

担架に乗せられた負傷兵に点滴を繋ぎ、血に染まったパイロットスーツを切り裂いて止血する者。

うめき声を上げる兵士の肩を抱き、落ち着かせる者。

朝の冷たい空気に、消毒薬の匂いと血の臭いが混じり、静かな悲鳴のような声がところどころで上がっていた。モビルスーツ格納庫では、整備兵たちの忙しない足音と金属音が絶え間なく響いていた。

クレーンが損傷した機体を吊り上げ、溶接の火花が暗い格納庫の天井を橙色に染める。

整備兵たちは汗だくになりながら、夜通しで作業を続けていた。

誰かが叫ぶ声がする。

 

「こっちの脚部アクチュエーター、急げ!

次の出撃に間に合わせるんだ!」

 

朝の光が格納庫の入り口から差し込み、忙しく走り回る整備兵たちの影を長く伸ばしていた。

第4小隊に貸し出されている格納庫では、薄暗い照明の下で慌ただしい作業が続いていた。

サンダースの陸戦型ガンダムは、大きな台座に寝かされた状態で固定され、整備兵たちが入念に点検と整備を行っていた。

左脚部を中心に、溶接の火花が断続的に上がり、工具の金属音が響き渡る。

その少し離れたモビルスーツハンガーには、ソウヤのスライフレイルとジョシュアのジム・キャノンがしっかりと固定されていた。

二機とも昨日の激戦の傷跡を残しながら、静かに佇んでいる。

整備班長が油と汗にまみれた作業服姿で、ソウヤとサンダースの方へ歩み寄ってきた。

彼は軽く頭を下げ、報告を始めた。

 

「タカバ隊長、サンダース軍曹。陸戦型ガンダムの状況ですが……グフのヒート・ロッドの攻撃で左脚の駆動系がほとんどショートしています。メインアクチュエーターから補助回路まで広範囲に損傷しており、正直、今の状態では使い物になりません。完全に復旧させるには、左脚を交換しないと駄目ですね。」 

 

サンダースは巨体をわずかに前傾させ、低く唸るような溜息を吐いた。

その視線の先、寝かされた白い機体をソウヤも静かに見つめている。

整備班長の報告を咀嚼するように間を置き、サンダースが重々しく口を開いた。

 

「左脚を交換となると……コジマ大隊基地に戻らないといけませんね。」

 

ソウヤも同意するように頷き、言葉を継ぐ。

 

「ここには陸戦型ガンダム用の予備パーツは無いから、コジマ大隊基地にストックしてある分で修繕するしかないですね。」

 

サンダースは巨体をわずかに前傾させ、短く息を吐いた。

 

「ええ。そのストックしても……アプサラス戦で撃破された陸戦型ガンダムを解体し、共食い整備で食いつないでいる状況ですからね。」

 

整備班長は汗を拭いながら、苦笑を浮かべて口を挟んだ。

 

「それでも、まだパーツがあるだけマシですよ。他の部隊じゃ、もう在庫が底を突いて、機体を解体したりしてますからね……。」

 

サンダースは短く鼻を鳴らすと、静かにソウヤへと視線を向けた。

ソウヤは整備班長の報告を聞き、落ち着いた声で言った。

 

「陸戦型ガンダムを修理するためには、コジマ大隊基地に持ち帰らないといけませんね。」

 

その言葉が終わらないうちに、格納庫の入り口の方から小さな足音が近づいてきた。

エミリアが息を少し乱しながら小走りで駆け寄ってくる。

彼女はソウヤとサンダースの前で立ち止まると、軽く頭を下げてすぐに伝えた。

 

「隊長、サンダース軍曹……ファントムスイープ隊のマオ少佐が、隊長をお呼びです。」

 

ソウヤとサンダースは思わず顔を見合わせた。

 

(……なぜ、ファントムスイープ隊が?)

 

ソウヤは一瞬、作戦後の何かトラブルを想像したが見当がつかず、すぐに首を振って考えを切り替えた。

 

「わかった。すぐに行く。」

 

ソウヤはエミリアに向き直り、短く言った。

 

「エミリア、一緒に来てくれ。サンダース軍曹、後のことを頼みます。」

 

サンダースは巨体をわずかに動かし、低く頷いた。

 

「了解しました。ここは任せてください。」

 

ソウヤはエミリアと共に格納庫を後にし、マオ少佐が待っているという場所へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

作戦会議室は、作戦終了後の慌ただしさが残る中、比較的静かだった。

壁際に置かれた大型モニターが淡く光を放ち、部屋の中央のテーブルにはまだ作戦地図が広げられたままになっている。

マオ少佐は疲れた表情を隠さず、ソウヤとエミリアが入ってくるのを待っていた。

ソウヤが部屋に入ると、マオ少佐はすぐに立ち上がり、軽く頭を下げた。

 

「急に呼び出してすまない、タカバ隊長。……実は、君たちに依頼したいことがある。」

 

その言葉の後、マオ少佐は壁際の大型モニターを指差した。

 

「ゴドウィン・ダレル准将が、直接君と話したがっている。昨日の作戦に関連した重要な話だそうだ。」

 

モニターの画面が切り替わり、厳つい顔立ちの准将が映し出された。

ソウヤは背筋を伸ばし、モニターに向かって軽く敬礼した。

大型モニターに映し出されたゴドウィン・ダレル准将は、ソウヤに向かって軽く頷いた。

 

「タカバ中尉、今回の第4小隊の活躍は見事だった。特に敵本陣に切り込んでくれたおかげで、残党の戦力が分散され、そのお陰でファントムスイープ隊の負担がかなり軽減された。心から感謝する。」

 

ソウヤは背筋を伸ばしたまま、静かに答えた。

 

「恐れ入ります、准将。しかし、あれは第4小隊全員の力です。私一人でできたことではありません。」

 

ゴドウィン准将は小さく笑い、すぐに本題に入った。

 

「謙遜は結構だが、君たちの働きは本物だ。……実は、君たちに頼みたいことがある。」

 

准将は少し表情を改め、真剣な目でソウヤを見つめた。

 

「建造中のラサ基地の近くに廃都市がある。その廃都市で、ジオン残党らしき不審な動きが報告された。そこで……コジマの第4と謳われる君の部隊に、廃都市の偵察任務をお願いしたい。」

 

ゴドウィン准将はそこで一度言葉を切り、モニター越しに深く頭を下げた。

 

「無理を承知で頼む。どうか、引き受けてくれないか。」

 

ソウヤは准将が頭を下げたことに明らかに驚き、慌てて片手を上げた。

 

「准将! 頭を上げてください!そんな……准将が頭を下げるなど……」

 

ソウヤは少し動揺しながらも、すぐに姿勢を正した。

ゴドウィン准将はゆっくりと頭を上げ、苦い笑みを浮かべた。

 

「……すまない。無理を承知で頭を下げてしまった。

実は、デリー基地のハドソン少将は今回の損害の責任を問われて本部に呼び出された。

基地のモビルスーツ部隊も深刻な損害を受け、再編成と立て直しが必要な状況だ。」

 

マオ少佐がその横で説明の補足をした。

 

「建造中のラサ基地の警備隊を派遣したかったのですが……今回の作戦でハドソン少将が警備隊のモビルスーツを少なからず動員しており、最低限の戦力で基地警備をしているのが現状です。

ラサ基地警備隊の派遣も難しい状況なのだ。」

 

ゴドウィン准将は頷き、続けた。

 

「私もファントムスイープ隊を動かしたいのだが……北米方面でジオン残党が再び活発化する動きが出てきた。

そちらに隊を移動させる必要がある。

だからこそ、すぐに動けて、腕の立つ君たちの第4小隊に……廃都市の偵察任務をお願いしたい。」

 

准将はそこで言葉を切り、真剣な目でソウヤを見つめた。エミリアが、ソウヤの少し後ろから小さく、しかしはっきりとした声で質問した。

 

「……廃都市の偵察、ということですが……具体的にどのような動きが報告されているのでしょうか?

ジオン残党がどれくらいの規模で活動しているのか、情報はありますか?」

 

ゴドウィン准将はエミリアの方に視線を移し、わずかに表情を緩めた。

 

「ドットナー准尉か。君の作戦理論は以前から興味深く読ませてもらっていたよ。……報告によると、廃都市内で夜間に複数のモビルスーツらしき影が目撃されている。規模は不明だが、少なくとも小隊規模以上の動きがある可能性が高い。ただ、詳細はまだ掴めていない。だからこそ、君たちのような経験豊富な部隊に頼みたいんだ。」

 

ソウヤは静かに息を整え、准将とマオ少佐の顔を交互に見た。

胸の奥に、わずかな警戒と責任感が混じり合うのを感じながら、ソウヤは、はっきりした声で答えた。

 

「……了解しました。廃都市の偵察任務、引き受けます。」

 

そこで一度言葉を切り、ソウヤは少し表情を硬くした。

 

「ただ、ひとつお伝えしておかなければならないことがあります。昨日の戦闘で、サンダース軍曹の機体がグフのヒート・ロッドを受け、左脚の駆動系が広範囲にショートしました。デリー基地では予備パーツがなく、完全に復旧させるにはコジマ大隊基地に戻って交換する必要があります。そのため……今回の偵察任務は、私とジョシュア軍曹の2機体制で行うことになります。」

 

ゴドウィン准将はソウヤの言葉を聞き、わずかに目を細めた。

彼は短く息を吐き、画面越しにゆっくりと頷いた。

 

「了解した。機体がそんな状態では、無理はさせられないな。2機体制になるのは心もとないが……無理をしない範囲で構わない。あくまで偵察が主目的だ。危険を感じたら、すぐに引き返してくれ。君たちを失うわけにはいかない。」

 

准将の声には、心からの配慮が込められていた。

 

ソウヤは静かに頭を下げた。

 

「ありがとうございます。その言葉、確かに受け取りました。」

 

ゴドウィン准将はソウヤが任務を引き受けてくれたことに、深く頷いた。

 

「ありがとう、タカバ中尉。無理を言ってすまない……だが、君たちなら安心して任せられる。必ず、無事に帰還してくれ。君達の無事の帰還を心から、祈っている。」

 

准将の声には、心からの気遣いが込められていた。

 

「了解しました、無事に帰還してませます。」

 

ソウヤは静かにゴドウィン准将に敬礼をした。

 

 

 

 

通信が終わり、画面が暗くなると、部屋に静かな空気が落ちた。

ソウヤとエミリアは軽く頭を下げ、会議室から出ようとドアに向かった。

すると、後ろからマオ少佐の声が掛かった。

 

「待ってくれ、タカバ中尉、ドットナー准尉。」

 

ソウヤとエミリアは足を止め、思わず顔を見合わせた。

エミリアの肩がわずかに強張り、ソウヤも軽く眉を寄せる。

二人はゆっくりと振り返った。マオ少佐は少し緊張した面持ちで、エミリアの方へ一歩歩み寄った。

彼女はエミリアの目の前で立ち止まると、深く頭を下げた。

 

「……先日は、本当に申し訳なかった。ドットナー准尉。あなたの過去のことを不用意に口にしてしまい、ひどく傷つけてしまいました。私の配慮が足りなかった。心から謝罪する、本当に申し訳ない。」

 

マオ少佐の声は低く、誠実だった。

深く下げた頭は、なかなか上がらなかった。

エミリアは一瞬、言葉を失い、唇を軽く噛んだ。

彼女の指が制服の裾をそっと握りしめ、視線を少し落としたまま、小さな声で答えた。

 

「……いえ……大丈夫です、マオ少佐。もう、気になさらないでください。」

 

声はまだ少し掠れていたが、以前よりは穏やかだった。

エミリアは少し息を整え、静かに口を開いた。

 

「……あの、マオ少佐。

一つだけ、訂正していただきたいことがあります。」

 

マオ少佐はわずかに目を丸くし、穏やかに尋ねた。

 

「何かな?」

 

エミリアは指先で制服の裾を軽く握りしめ、真っ直ぐにマオ少佐を見つめた。

声は小さかったが、はっきりしていた。

 

「確かに、私が所属しているコジマ大隊第4小隊は、辺境の基地の小隊です。でも……第4小隊は、私の誇りなんです。」

 

マオ少佐の表情が驚きに変わった。

 

エミリアは少し息を吸い、言葉を続けた。

声がわずかに震えていたが、目は揺るがなかった。

 

「前の部隊で起きたことを、完全に乗り越えられたわけじゃないんです。あの一件以来、周りの人たちは私を『厄介者』や『訳あり』と見ていました。でも、第4小隊のみんなは……本当に『仲間』として私を見てくれる。そのおかげで、少しずつ『自分はここにいていいんだ』と思えるようになってきました。」

 

エミリアはチラリとソウヤの方を見た。

その視線は、とても短かったが、心の中では強く想っていた。

 

(この人が、私を変えてくれた。自信を失っていた私を、もう一度立ち上がらせてくれた。私の過去を知っても、決して避けたり、怖がったりしなかった。私は、そんな隊長が掲げた「一人でも多くのジオン残党を宇宙に帰す」という夢を、手伝いたい。隊長を守りたい、という想いが、こんなにも強いなんて……)

 

 

エミリアは再びマオ少佐に向き直り、静かだが確かな声で告げた。

 

「第4小隊は、私の誇りなんです。」

 

マオ少佐はエミリアの言葉をじっと聞き終え、優しく微笑んだ。

その笑みには、驚きと同時に深い理解が混じっていた。

 

「……確かに、それは訂正しないといけないわね。私の言い方が浅はかだったわ。本当に申し訳なかった、エミリア准尉。」

 

マオ少佐はもう一度、深く頭を下げた。

 

「分かってくだされば、良いんです。」

 

エミリアがそう言うと、マオ少佐はくすくすと小さく笑った。

エミリアもつられて柔らかく微笑む。

その和やかな空気を、ソウヤはエミリアの隣で静かに見守っていた。

ソウヤの唇にも、穏やかな微笑みが浮かんでいた。

すると、作戦会議室のドアが軽くノックされた。

 

「少佐、入ってもいいか?」

 

クスクスと笑っていたマオ少佐は、すぐに表情を引き締め、いつもの厳格な態度に戻った。

 

「ユーグ隊長か。入っても大丈夫だ。」

 

ドアが開き、一人の男性が入ってきた。

落ち着いた青みがかった黒髪、キリッとした眉毛と鋭い眼差し、左頬に切り傷のある精悍な顔立ちの男性だった。

ソウヤとエミリアは入ってきた人物に気づき、即座に敬礼した。

ユーグも二人の存在に気づき、丁寧に敬礼を返した。

ユーグはマオ少佐に視線を向け、落ち着いた声で尋ねた。

 

「こちらの二人は?」

 

マオ少佐は軽く頷き、ソウヤとエミリアを紹介した。

 

「こちらはコジマ大隊第4小隊の隊長、ソウヤ・タカバ中尉と、副官のエミリア・ドットナー准尉だ。彼らに廃都市の偵察任務を依頼したんだ。」

 

ユーグはそれを聞き、納得したように頷いた。

しかし、ソウヤの名前を聞いた瞬間、彼の目がわずかに見開かれた。

 

「……そうか、廃都市の偵察は彼らがしてくれるのか。うん? ソウヤ・タカバ……もしかして、『オデッサの新星』のソウヤ・タカバか?」

 

ソウヤはその二つ名を聞いた瞬間、顔が少し引きつった。

眉の間に小さな皺が寄り、唇がわずかに硬くなる。

ユーグはその反応を敏感に察し、すぐに頭を軽く下げた。

 

「……すまない。失礼な呼び方をしてしまったようだ。」

 

ソウヤは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに柔らかく首を振った。

 

「いえ……気にしていません。

ただ、その二つ名はあまり好きではないので。」

 

そのやり取りを聞いていたエミリアが、ふと思い出したように小さく呟いた。

 

「……ユーグ……もしかして、41号作戦のユーグ・ローグ中尉ですか?」

 

その言葉を聞いた瞬間、ユーグの表情が曇った。

鋭かった眼差しが一瞬だけ陰り、左頬の切り傷がわずかに引きつるように見えた。

エミリアはユーグの顔が曇ったことに気づき、慌てて頭を下げた。

 

「……す、すみません! 不用意なことを言ってしまいました……」

 

ユーグはすぐに表情を整え、静かに首を振った。

 

「いや、先にこちらが失礼な発言をしたんだ。お互い様だ。気にしないでくれ。」

 

作戦会議室に、4人の静かな緊張が漂っていた。

ユーグ大尉は軽く息を吐き、ソウヤとエミリアを交互に見た。

 

「コジマ大隊の第4小隊か……噂は聞いていた。特に『殺さずの狩人』と呼ばれる凄腕パイロットがいると聞いていたが、まさか、君だったとは思ってもみなかった。……正直、君のようなパイロットが辺境にいるのは、勿体ない気もするな。」

 

ソウヤは静かに微笑み、穏やかだがはっきりとした声で答えた。

 

「勿体ないなどと……恐縮です。ただ、俺は今、コジマ大隊でやるべきことがあると思っています。」

 

その言葉に、エミリアが隣で小さく頷いた。

彼女は少し緊張しながらも、ユーグに向かって言葉を続けた。

 

「私も……コジマ大隊にいて良かったと思っています。

ここでは、ただ強いだけじゃなく、『どう戦うか』をちゃんと考えることができますから。」

 

マオ少佐はエミリアの言葉を聞き、優しく目を細めた。

 

「エミリア准尉の作戦理論は本当に興味深かったわ。……そんなアナタが、コジマのような辺境の基地にいるのは、少し意外だったけれど。」

 

エミリアはマオ少佐の言葉に、わずかに視線を落とした。

しかし、すぐに顔を上げ、柔らかな微笑みを浮かべて答えた。

 

「……以前は、私もそう思っていました。でも、今は違います。第4小隊が私の居場所なんです。」

 

その言葉には、確かな温かさが込められていた。

マオ少佐はエミリアの微笑みを見て、ほっとしたように小さく頷いた。

エミリアの瞳に、もうあの時の痛々しい影はほとんど残っていなかった。

ユーグは二人のやり取りをじっと聞いていたが、ふっと息を吐き、軽く肩をすくめた。

 

「なるほどな……。俺も41号作戦の後、色々言われた身だから、少し分かる気がする。君たちが無事に偵察任務から戻ってこれるよう、祈っているよ。」

 

マオ少佐が優しく微笑みながら、ユーグ隊長の言葉に続けた。

 

「そうね。廃都市の偵察……決して簡単な任務じゃないわ。何かあったら、すぐに連絡して。ファントムスイープ隊としても、できる限りの支援はするから。」

 

エミリアは二人の言葉に、胸の奥が少し温かくなるのを感じた。

彼女は小さく頭を下げ、穏やかな声で答えた。

 

「……ありがとうございます。私たちも出来る限り、ファントムスイープ隊のお役に立てるように頑張りますね。」

 

ソウヤも静かに頷き、4人の間に確かな信頼の空気が流れた。

マオ少佐は優しく微笑みながら、軽く頭を下げた。

 

「今日は本当にありがとう。廃都市の件、よろしくお願いするわ。」

 

ユーグも静かに会釈を返し、低い声で付け加えた。

 

「気をつけて。何かあったら、すぐに連絡してくれ。」

 

ソウヤは二人に向かって丁寧に敬礼し、穏やかな声で答えた。

 

「こちらこそ、貴重なお話をありがとうございました。

では、失礼します。」

 

エミリアもソウヤに倣って敬礼をした。

彼女の表情にはまだ少し緊張が残っていたが、目は柔らかく輝いていた。

 

「失礼いたします。」

 

ユーグ隊長とマオ少佐は軽く会釈を返し、見送るような温かい視線を向けた。

ソウヤとエミリアはもう一度頭を下げ、作戦会議室のドアを開けた。

二人は部屋を出て、薄暗い通路を並んで歩き始めた。

エミリアは少し歩きながら、小さく息を吐いた。

 

「……准将、意外とまともな方でしたね。無理をしない範囲で、と言ってくださって……」

 

ソウヤは隣を歩きながら、静かに頷いた。

 

「ああ。少なくとも、ハドソン少将よりは話が通じそうだな。」

 

二人はしばらく無言で歩いた。

やがて、エミリアが足を少し緩め、ソウヤの方を見上げた。

彼女のエメラルドグリーンの瞳には、わずかな決意と温かさが混じっていた。

 

「隊長……私はこれから、廃都市の地図データと過去の記録をもう一度まとめておきます。アプサラス開発基地制圧のデータもあるはずなので、データ室で調べて来ますね。」

 

ソウヤは足を止め、エミリアの顔を静かに見た。

 

「……わかった。無理はするなよ。俺は格納庫に戻って、サンダース軍曹とジョシュアの状況を確認してくる。」

 

エミリアは小さく微笑み、軽く頭を下げた。

その笑みは穏やかだったが、どこか名残惜しげに見えた。

 

「はい。では、後で格納庫で合流しましょう。」

 

二人は通路の分かれ道で別れた。

エミリアはデータ室へ向かう廊下を、ソウヤは格納庫方面へ向かう廊下を、それぞれ歩き始めた。

ソウヤは一度だけ振り返り、エミリアの小さな背中を静かに見送った。

 

 

 

 

ソウヤはエミリアと別れた後、格納庫に向かって薄暗い通路を歩いていた。

足音がコンクリートの床に静かに響き、遠くから整備の機械音が低く聞こえてくる。

ソウヤはサンダースの機体のことを考えながら、廊下の曲がり角を曲がろうとした。

その瞬間——出会い頭で誰かと強くぶつかった。

 

「っ……!」

 

衝撃で相手の体が大きくよろめき、倒れそうになる。

ソウヤは咄嗟に手を伸ばし、女性の腕と背中を支えて受け止めた。

 

「大丈夫か?」

 

慌てて声をかけると、腕の中に収まった女性の体は小さく震えていた。

女性は明るいオレンジ色の髪を肩につく程度のミディアムヘアにまとめ、少し垂れ気味で柔らかな印象のアーモンド形の目をした、落ち着いたブラウンの瞳の持ち主だった。

彼女はぶつかった衝撃でよろめきながら、すぐに申し訳なさそうに目を伏せ、肩を落とした。

落ち込んだ様子で、声も小さく掠れていた。

 

「……す、すみません…ボーっとしていました…。」

 

ソウヤは彼女がしっかり立っているのを確認してから、ゆっくりと手を離した。

 

「いや、こちらこそ申し訳ない。……怪我はないでふか?」

 

 

女性はさらに肩を縮め、視線を床に落としたまま、弱々しく首を振った。

 

「……大丈夫です……本当に、申し訳ありません……」

 

その様子は、ただのぶつかり事故以上の落ち込みを感じさせた。

ソウヤは少し心配になり、静かに声をかけた

 

「……大丈夫ですか?かなり勢いよくぶつかったので……どこか痛くないですか?」

 

心配そうに尋ねると、女性はさらに肩を縮め、視線を床に落としたまま弱々しく首を振った。

 

「……気にしないでください。本当に大丈夫です……

私の方こそ、本当に……申し訳ありません……」

 

ソウヤは彼女の落ち込んだ様子を見て、少し心配になりながらも、穏やかに声をかけた。

 

「……俺はコジマ大隊第4小隊の隊長、ソウヤ・タカバ中尉だ。

あなたは……?」

 

女性はソウヤの自己紹介を聞いた瞬間、目を大きく見開き、驚いた表情を浮かべた。

彼女は慌てて姿勢を正し、声を少し上ずらせながら言った。

 

「……えっ、コジマ大隊の……第4小隊の隊長……!?

昨日の作戦で、敵本陣に切り込んで、残党の戦力を分散させて勝利に大きく貢献した……あの第4小隊ですか?」

 

女性のブラウンの瞳には、驚きと尊敬の色が混じっていた。

彼女は思わず一歩後ずさり、落ち込んでいた表情が一瞬で変わった。

 

ソウヤは彼女の反応に少し驚き、軽く苦笑を浮かべた。

 

「……ああ、そうだ。でも、そんな大げさなものじゃないよ。ただ、与えられた任務をこなしただけだ。」

 

女性は少し緊張した様子で姿勢を正し、落ち込んでいた表情を少しだけ和らげて言った。

 

「……私は地球連邦軍特務遊撃部隊『ファントムスイープ』の、シェリー・アリスン中尉です。よろしくお願いします。」

 

ソウヤは彼女の自己紹介を聞き、目を少し明るくして嬉しそうに頷いた。

 

「アリスン中尉もファントムスイープ隊所属だったのか。それは心強いな。」

 

シェリーはソウヤの反応に少し驚いた様子で、首を軽く傾げた。

 

「……ファントムスイープ隊をご存知なのですか?」

 

ソウヤは穏やかに微笑みながら答えた。

 

「ああ、先程作戦会議室で、指揮官のマオ少佐と隊長のユーグ大尉、そして司令官のゴドウィン准将とお会いしたばかりだ。廃都市の偵察任務について話していたところだったよ。」

 

シェリーはそれを聞いて、目を大きく見開き、明らかに驚いた表情を浮かべた。

 

「えっ……マオ少佐とユーグ大尉、そしてゴドウィン准将と……?もうお会いになっていたんですか……!」

 

彼女の声には、驚きと同時に、どこか戸惑うような響きがあった。

彼女は一瞬言葉を詰まらせた後、ソウヤの顔をまっすぐに見つめ、少し緊張した声で尋ねた。

 

「……あの、失礼ですが……タカバ中尉がコジマ大隊の……『殺さずの狩人』と呼ばれているんですか?以前、コジマ大隊の第4小隊に相手を極力殺さない、凄腕のパイロットがいると聞いたので…。」

 

ソウヤはその二つ名を聞いた瞬間、表情が少し柔らかくなり、静かな微笑みが浮かんだ。

 

「ええ、そう呼ばれていますね。」

 

シェリーは少し間を置いた後、ブラウンの瞳をまっすぐソウヤに向け、静かに尋ねた。

 

「……どうして、敵を殺さないように戦うんですか?」

 

ソウヤは突然の質問に一瞬戸惑い、目を軽く見開いた。

しかし、すぐに表情を整え、真剣な声で答えた。

 

「……ジオン兵であっても、家族がいて、故郷があって、戦っている理由がある人間だと思っているんです。

『戦争だから殺していい』という考え方は、どうしても好きになれない。 俺にとって戦いは、『勝つため』ではなく……『生き残るため』『仲間を守るため』『市民を守るため』に引き金を引くんです。だから、殺すことは出来る限り、最後の手段にしたいです。」

 

ソウヤの声は低く、しかし確かだった。

言葉の端々に、ソウヤがこれまで抱えてきた想いや後悔が静かに滲んでいた。

シェリーはソウヤの答えをじっと聞き、瞳をわずかに揺らした。

彼女は小さく息を吸い、落ち込んでいた表情が少しだけ柔らかくなった。

 

「……そう、ですか。」

 

胸の奥で、何かがゆっくりと揺れた。

ジオン残党を相手にしても、必要以上に命を奪わない。

戦うことを強いられながらも、殺生を極力避けるという、まるで矛盾した理想を、本気で体現している。

そして、怖いくらいに優しい人だ。

自分は、この人の戦い方に、どこかで救いを求めているのかもしれない。

それが出来る彼が、なんだかとても羨ましかった。

シェリーは無意識に視線を落とし、指先で自分の袖の端を軽く握りしめた。

落ち込んでいた表情が、わずかに複雑な色を帯びる。

 

「……タカバ中尉は、本当に……優しいんですね。」

 

声は小さく、しかし素直に零れ落ちた。

ソウヤはゆっくりと首を振り、静かに否定した。

 

「……優しいと言われる資格はありません。

俺はただ、愚かだっただけです。」

 

シェリーはわずかに目を細め、柔らかな声で尋ねた。

 

「……どうして、そう思うんですか?」

 

ソウヤは一瞬、息を詰めた。

胸の奥が、鈍く締め付けられるような痛みが走る。

指先が無意識に握りしめられ、蒼い瞳が床の一点を捉えたまま、わずかに揺れた。

 

「……一年戦争の頃……殺さなくても良かった命を、俺は奪ってしまいました。」

 

声が、ほんの少し掠れた。

言葉の合間に、息が浅く乱れるのが自分でも分かった。

 

「あのとき、初めて気づいたんです。敵も……味方も……結局は、ただの人間だってことに。家族を想い、故郷を守ろうとしていた、ただの人間だったって……。」

 

ソウヤはそこで一度目を閉じ、唇を強く結んだ。

過去の記憶が、胸の奥で重く渦を巻く。

奪ってしまったエイル達の命の重さが、今も心の底に深く刻まれ、決して消えない。

 

「……だから、これ以上、戦場で命を無駄にしたくない。極力、殺さないように戦っている。それが……俺が奪ってしまった命への、せめてもの償いだと思っています。」

 

最後の言葉は、ほとんど息のように小さく、震えていた。

ソウヤの肩が、わずかに沈み、蒼い瞳の奥に深い影が落ちた。

 

シェリーは、ソウヤの言葉を最後まで静かに聞き終えた。

ブラウンの瞳は、最初は驚きに大きく見開かれていたが、徐々に深い感情の揺らぎに変わっていった。

胸の奥が、熱いもので締め付けられるような感覚が広がる。

彼女は今、ソウヤの言葉に痛いほど共感していた。

 

「……タカバ中尉。あなたの戦い方……本当に、すごいと思います。正直…羨ましいと思いました。」

 

シェリーの言葉を聞いたソウヤは、わずかに目を細めた。

 

「……羨ましい、ですか?」

 

彼は静かに、しかし真剣な声で尋ねた。

 

「どうして、私の戦い方を羨ましいと思うんですか?」

 

シェリーは一瞬、視線を落とした。

指先が制服の裾を軽く握りしめ、複雑な感情が瞳に浮かぶ。

彼女は小さく息を吸い、掠れそうな声で答えた。

 

 

「……あなたは、戦いながらも……敵の命をできる限り奪わないようにしている。私には、それが……とても遠い理想のように見えるんです。」

 

シェリーはそこで一度言葉を切り、胸の奥で疼く痛みを抑えるように唇を軽く噛んだ。

 

「私は……戦うたびに、味方を殺してしまうんじゃないかという恐怖と、戦うこと自体が誰かの命を奪うことに直結しているような気がして……どうしても、あなたのように『殺さない』という選択を、堂々と貫くことができないんです。」

 

彼女はゆっくりと顔を上げ、ソウヤの蒼い瞳をまっすぐに見つめた。

その瞳には、羨望と苦しみ、そして静かな願いが混じっていた。

 

「……だから、その戦い方が羨ましいんです。戦いながらも、人を殺さない方法を本気で探そうとしている……そんな強さと優しさを、私も欲しいなと思って。」

 

声は最後の方で小さく震え、シェリーは自分の言葉を恥じるように視線を少し逸らした。

しかし、すぐにまたソウヤの方へ戻し、弱々しく微笑んだ。

 

「……すみません。急にこんなことを言ってしまって……」

 

シェリーの震える声が、通路の静けさに溶けていく。

ソウヤは彼女の言葉をじっと受け止め、ゆっくりと息を吐いた。

蒼い瞳が、シェリーのブラウンの瞳を静かに見つめる。

 

「……羨ましい、か。」

 

彼は小さく首を振ったが、その表情は優しかった。

 

「俺の戦い方は、綺麗な理想なんかじゃない。ただの……償いですよ。

でも、シェリー中尉がそう思ってくれる気持ちは、とても嬉しい思います。

戦いながらも『誰かの命を大切にしたい』と思う心……それは、決して弱さなんかじゃない。

むしろ、すごく強いことだと思うんです。」

 

ソウヤは言葉を区切り、わずかに微笑んだ。

その笑みは穏やかで、どこか励ますような温かさがあった。

 

「シェリー中尉も、きっと自分の戦い方を見つけられますよ。

無理に俺と同じでなくてもいい。ただ……自分の心に嘘をつかないで戦ってくれれば、それで充分です。」

 

シェリーの瞳が、ほんの少しだけ揺れた。

胸の奥が、熱いものでじんわりと満たされるような感覚が広がる。

 

「……ありがとうございます、タカバ中尉。」

 

彼女の声はまだ小さかったが、さっきよりは少しだけ力が戻っていた。

ソウヤは軽く頷き、視線を格納庫の方へ向けた。

 

「俺はこれから、仲間の機体の確認に戻らないといけない。

あなたも……任務があるんじゃないか?」

 

シェリーははっとしたように目を瞬き、慌てて姿勢を正した。

 

「あ……はい。すみません、引き止めてしまって……」

 

「いや、こちらこそ。急にぶつかってしまって悪かったです。

……また、どこかで会ったら、ゆっくり話せたらいいですね。」

 

ソウヤはそう言って、静かに一礼した。

シェリーも小さく頭を下げ、柔らかな微笑みを浮かべた。

 

「……はい。また、お会いしましょう。」

 

二人は通路の真ん中で軽く会釈を交わし、静かに背中を向けた。

ソウヤは格納庫方面へ、シェリーは別の廊下へ、それぞれ歩き始める。

歩き出しながら、シェリーは胸の奥で小さく呟いた。

 

(……タカバ中尉、なんだか……とても温かい人だったな。)

 

ソウヤも一度だけ振り返り、遠ざかるオレンジ色の髪を静かに見送った。

唇の端に、ほんの少しだけ優しい微笑みが浮かんでいた。

ソウヤは格納庫へと続く廊下を歩きながら、ふと足をゆるめた。

胸の奥に、さっきのシェリーの瞳がまだ残っている。

あのブラウンの瞳に映っていた、羨望と痛みと願いの混じった光——

自分は本当に、あの想いに応えられているのだろうか。

小さく息を吐き、静かに前を向いた。

 

(……俺はただ、愚かだっただけだ。

でも……少しでも、誰かが自分の戦い方を「羨ましい」と思ってもらえるなら、

それも、悪くないのかもしれない。)

 

一方、シェリーは反対側の廊下を歩きながら、無意識に自分の左胸に手を当てていた。

まだ熱の残る胸の奥で、ソウヤの穏やかな声が繰り返し響いている。

彼女は足を止め、薄暗い通路の壁に軽く背を預けた。

唇の端に、ほんの少しだけ柔らかな微笑みが浮かぶ。

 

「……ありがとう、タカバ中尉。連邦軍にも、あなたみたいな人がいるのね。」

 

小さな呟きは、誰にも聞こえないまま、湿った空気に溶けていった。

二人はそれぞれの道を進みながら、

同じ戦場に生きる者として、確かに心を通わせたのだった。




最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
今回はPS3のガンダム戦記、連邦陣営の登場人物が出演していただきました。
ゴドウィン准将の無茶振りも出来る限り、再現してみました(笑)
流石に他部隊なので、無茶振りもマイルドにしておりますw
ではでは、次の話も楽しみにしていてください。


原作キャラクター紹介

ユーグ・クーロ
階級 大尉
原作 ガンダム戦記 PS3版
PS3版のガンダム戦記、連邦サイド主人公。
かなり不憫な人で、上層部の身勝手で一年戦争の時に大事な部下を失った人。
漫画版の方では、ジム指揮官仕様で2個小隊規模を単騎で殲滅したり、ジム・コマンドで水中のグラブロを単独で撃破したりと、かなりヤバイ戦果を上げてますw



シェリー・アリスン
■■■■・■ー■
階級 中尉
原作 ガンダム戦記 PS3版
この人も、かなりの不憫な人です。
しかも、この時点で彼女はかなりのトラウマになる出来事があったので…。
漫画版では救済されましたが、原作は……本当に…ね。


ゴドウィン・ダレル
階級 准将
原作 ガンダム戦記 PS3版
ユーグ達のためにジーラインやガンダム7号機を用意してくれる良い指揮官なんですか、冷静で無愛想過ぎて、初見は鬼畜司令官に見えるんですよね。
かなり鬼畜レベルの指令を出す人です。
あれ?やっぱり鬼畜司令官??

【機動戦士ガンダム オリオンの軌跡】に登場するオリジナル機体で好きな機体はなんですか?

  • 陸戦型ジム改
  • バイアリーターク
  • ペイルライダー・ヴァンガード
  • ペイルライダー・マスケッティア
  • ヴァルキリー
  • グフ・ノクターン
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