機動戦士ガンダム オリオンの軌跡   作:浅片名羽馬

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75話 勝者の病

インド北部、デリー近郊。

かつて一年戦争の激戦を生き延び、今や連邦軍のアジア方面における巨大な心臓部となったデリー基地は、人工的な灯りと、降り注ぐ熱帯の夜気に包まれていた。

長距離滑走路には数機のミデア輸送機が翼を休め、ハンガーの周辺では、臨戦態勢を維持するジム・コマンドや陸戦型ジムが、重苦しい金属音を立てて巡回を行っている。

だが、その防衛網は一見強固に見えて、内実は限界を迎えていた。

先の残党補給基地制圧戦で、MS部隊の2割を失ったデリー基地は、残る機体の多くを「残党の足取りを追うため」に周辺の密林や主要ルートへ分散・出撃させていたからだ。

 

 

 

 

デリー基地から離れたジャングル。

熱帯の巨木の合間から、一機のモビルスーツが微動だにせず、闇に潜んでいた。

ザクⅠ・スナイパータイプ。

その頭部中央で、一際異彩を放つ黄色のモノアイが、不気味に、かつ鋭く発光している。

それは通常のザクのそれとは異なり、かつてジオン公国軍が開発した強行偵察型ザクのパーツを流用した、高性能望遠タイプの大口径カメラレンズだった。

前方に大きく突き出たその大口径の「眼」は、夜間の暗視能力は勿論、数キロ先にある物質の僅かな熱源や、空気の歪みすらも正確にデジタル処理してコクピットへ投影する機能を持っている。

ジィ、ジィ……と、レンズの絞りが微細な金属音を立てて焦点を結ぶ。

カメラの捉えた映像は、数キロ先に位置する連邦軍デリー基地の姿を、まるで目の前にあるかのように鮮明に映し出していた。

 

「——カルロス少佐、サン・シータです。デリー基地の索敵を完了しました。」

 

ザクⅠ・スナイパータイプの窮屈なコクピット内で、サン・シータ伍長は照準器から目を離さずに無線のキーを叩いた。

彼の操る旧式機のモノアイは、外部ジェネレーターと直結した大口径のビーム・スナイパーライフルと連動し、夜闇に浮かぶデリー基地の微細な熱源まで完全に捉えていた。

 

「少佐の読み通り、基地の防衛線はガラ空きだ。ハンガーに精鋭部隊のジム・コマンド小隊が1個小隊、それと少ないですが陸戦型のジムが数機。ジャングル全域へ分散して索敵中って読みは当たりですねえ。……今、ハンガーの周辺をうろついてるのは、普通のジムが3機です。」

 

サン・シータは不敵な笑みを浮かべ、照準の十字を基地中央の管制塔、そして滑走路に並ぶミデア輸送機のコクピット部分へと合わせた。

 

「——見事な索敵だ、サン。その位置を維持し、いつでも引き金を引けるようにしておけ。」

 

カルロスはグフのコクピットのサイドモニターで、サン・シータから送られてきたデリー基地の熱源データを素早く確認した。

そして、躊躇うことなくコンソールを叩く。

 

「チエ、データを送った。ベースの最終解析を頼む。」

 

「了解しました、少佐。データを受信、これより統合リンクを展開します。」

 

通信回線から返ってきたのは、カルロス隊の通信室長であり副官でもある、ヤゴ・チエ中尉の涼やかな声だった。

彼女が乗るのは、連邦軍から鹵獲し、現在は自分たちの貴重な目と耳として運用しているホバートラックのソナー席だ。

薄暗いトラックの車内。

チエは肩甲骨まで伸ばした黒髪を無造作に後ろで結び、戦闘用の大型ヘッドセットを被り直した。

切れ長の瞳の奥で、眼鏡のレンズがコンソールの緑色の冷たい光を反射している。

 

感情を表に出さない冷徹な指先が、キーボードの上を正確無比に滑っていく。

 

「……解析終了。報告通り、デリー基地の防衛戦力は通常よりも低下しています。巡回中のジム3機は、いずれも駆動音のノイズが酷いです。恐らくは前の戦闘の損傷を応急処置だけで済ませた機体ですね。」

 

チエは冷静沈着なトーンのまま、淡々と連邦軍の致命的な弱点を炙り出していく。

しかし、その切れ長の瞳の奥には、カルロス少佐の掲げる反撃の狼煙に対する、熱い闘志が静かに灯っていた。

 

「ただし、ハンガー内のジム・コマンド1個小隊、および陸戦型ジムは完全稼働状態にあります。こちらの第一撃と同時にスクランブルがかかれば、5分以内に防衛線へ到達するでしょう。」

 

「5分か、余裕だな。よくやった、チエ。相変わらずの手際の良さは我が隊の『家宝』だな。」

 

カルロスは少し的外れな誉め言葉を呟き、日本刀の柄にそっと触れ、不敵に唇を歪めた。

 

「先生、スプリガンの調子はどうだ?」

 

「ああ、良い調子だ。」

 

水色のイフリート——『スプリガン』は、カルロスたちの手によって、ボルクの要望に合わせた見事な改修が施されていた。

右手には圧倒的な破壊力を誇るドムのジャイアント・バズ。

左腕の甲には中距離での牽制と面制圧を可能にする35mm3連装ガトリング砲。

さらに、左右の脚部側面にはザクの兵装を現地改造した3連装ミサイル・ポッドが鈍い鈍色を放って装着されている。

そして腰の左右には、グフに装備されていた一対の凶器——ヒート・マチェットがマウントされていた。

限られた時間と貴重な資材の中で、自らの我が儘とも言える要求を全て形にしてくれた残党の整備兵たち、そしてそれを許したカルロスの男気に、ボルクは胸の奥で深く感謝する。

かつてゴビ砂漠で自分たちアルバトロス輸送中隊を震え上がらせ、壊滅へと追い込んだジオンの試作MS。

その狂暴なまでの追従性と圧倒的な機動性は、血の滲むような改修と精密な調整によって、今やボルクの意思と完全にシンクロする完璧な「手足」と化していた。

 

「——よし、これで全員の腹は決まったな。」

 

二人の会話を静かに聞いていたカルロスが、通信回線の向こうで不敵に唇を歪め、日本刀の柄をパチリと鳴らした。

 

「各員、耳の穴をかっぽじってよく聞け!」

 

カルロスはグフのコクピットから、作戦に臨む全軍へ向けて鋭い指示を飛ばした。

その声には、部隊を率いる指揮官としての絶対的な威厳が満ちていた。

 

「サン・シータ伍長が管制塔を狙撃した瞬間に、チエはジャミングを開始! サンは管制塔を撃ち抜いたら、ロニン軍曹のドム・キャノンと一緒にモビルスーツ格納庫を狙え! 敵のモビルスーツを出来る限り、出撃させるな!」

 

「了解です、少佐! 管制塔の次は格納庫ですね、特等席から特大のビームを叩き込んでやりますよ!」

 

サン・シータがザクⅠ・スナイパーの照準を調整しながら、獰猛な笑いを含んだ声で応じる。

 

「システム、電子戦モードへ移行。狙撃と同調させます……。いつでもどうぞ、サン伍長。」

 

ホバートラックのソナー席で、チエ中尉が眼鏡の奥の切れ長の目を細め、冷徹にカウントダウンを開始した。

 

「俺と先生が先陣を斬る! ザク3機編成の2個小隊は、俺と先生に続け!」

 

「ザク第1、第2小隊、了解! 少佐と先生の背中は俺たちが守るぜ!」

 

後方に控える6機のザクⅡのパイロットたちから、覚悟に満ちた太い声が一斉に返ってくる。

 

「ワッパ隊とトラック隊は、モビルスーツ隊が基地に突入してから追従しろ。基地に到着次第、ワッパ隊は基地施設の破壊と歩兵の牽制! トラック隊は物資の積み込みに専念!」

 

「こちらワッパ隊、了解! ちょこまかと動き回って、連邦の生身の兵隊どもを震え上がらせてやりますよ!」

 

「トラック隊、了解! 使える物資はネジ一本残さず毟り取ってやります!」

 

「いいか、居住区画と衛生区画の攻撃は極力避けろ! 俺達は虐殺をしに来たんじゃない!」

 

カルロスのその重い言葉に、通信回線が一瞬、静まり返った。

復讐の念に駆られがちな残党兵たちにとって、それは自らを「軍人」として繋ぎ止めるための最も重要な一線だった。

 

「……了解。面制圧のツイン・ミドル・キャノンだが、狙いはハンガーと滑走路だけに絞らせてもらう。余計な場所には一発も落とさんさ、少佐。」

 

 

ドム・キャノンのコクピットから、ロニン軍曹がドスの利いた、しかし確かな理性を含んだ声で応じた。

 

「他の連中にも、チエが援軍を頼んではいるが……フッ、そいつは宛にするな。自分たちの力だけでデリーをブチ抜くぞ! 先生、行くぞ!」

 

カルロスに呼びかけられ、イフリート・スプリガンのシートに深く腰掛けたボルクは、操縦桿のグリップを強く握り締め、不敵に笑った。

 

「ああ、問題ない。元連邦の俺が言うのもなんだが……あんたのそういう綺麗事、嫌いじゃないぜ、カルロス。……全員、遅れるなよ!」

 

「作戦開始——仕留めるぞ!」

 

ジャングルの暗闇を引き裂き、サン・シータの放った黄色の熱線がデリー基地の管制塔へと迸った。

同時に、チエが放ったウイルスが連邦軍の通信網を完全にマヒさせる。

大爆発の炎が夜空を焦がした瞬間、カルロスのグフと、ボルクのイフリート・スプリガンが、ジャングルの闇から平原へと爆発的なスピードで躍り出た。

 

 

 

 

カルロスたちの完璧な奇襲により、デリー基地は一瞬にして火の海と化した。

 

「て、敵襲ーーーッ!! ジオンの残党だ!!」

 

「バカな、どこから現れた!? 索敵網はどうなっていたんだ!」

 

悲鳴に似た連邦兵の錯乱した通信が、チエの乗るホバートラックの傍受回路に次々と混ざり込んでいく。

ロニン軍曹の駆るドム・キャノンの重厚な砲火。

そしてサン・シータ伍長のザクⅠ・スナイパーによる正確無比なビーム狙撃。

二つの圧倒的な長距離火力をまともに浴びたモビルスーツ格納庫は、次々と内側から爆炎を噴き上げて激しく炎上していく。

基地の周辺を巡回していた3機のジムは、夜闇を切り裂くツイン・ミドル・キャノンの砲火とビームの強烈な発光を、その目で確認した。

 

「——砲撃地点から、モビルスーツが2機接近!!」

 

「速い……! なんだ、あのスピードは!?」

 

火線の走った方向から、凄まじい推進力を発揮して肉薄してくる2つの影。

それは、恐るべき移動速度で接近するカルロスのグフと、ボルクのイフリート・スプリガンだった。 

ハッと我に返ったジムのパイロットたちは、慌てて100mmマシンガンの銃口を2機へと向け、狂ったように引き金を引き絞る。

夜闇の中に、無数の実弾が閃光の帯となって撃ち出された。

しかし、応急処置を施されただけの「数合わせの機体」による射撃など、百戦錬磨の2人には通用しなかった。

 

「甘いな、連邦の犬どもが!」

 

カルロスのグフは、鋭いステップで弾幕のわずかな隙間をすり抜け、弾道を完全に予測したかのような滑らかな動きで突進を続ける。

 

「そんな我武者羅な弾幕が当たるかよ!もっと、進路を塞ぐように撃つんだな!」

 

ボルクの駆るスプリガンもまた、イフリート特有の狂暴なまでの追従性を完全に御し、巨体を左右に激しくスライドさせながらマシンガンの嵐を涼しい顔で回避していく。

弾丸が装甲の数センチ横をかすめていくが、ボルクの精密な操縦技術は寸分の狂いもなく、最短距離で敵との間合いを潰し、2機の魔神は3機のジムの目と鼻の先へと肉薄した。

 

「まずは1機……!」

 

ボルクの駆るイフリート・スプリガンが、右手のトリガーを絞る。

至近距離から放たれたドムのジャイアント・バズのロケット弾が、手前のジムの足元へと容赦なく叩き込まれた。

凄まじい大爆発が地表を抉り、直撃を受けたジムの両脚が膝から下ごと木端微塵に消し飛ぶ。

バランスを失ったジムは、悲鳴を上げるようにうつ伏せのまま地面へと激しく転倒。

 

スプリガンは倒れたジムに、35mm3連装ガトリング砲の銃口を向ける。

激しいマズルフラッシュと共に放たれた実弾の嵐が、ジムの両腕の駆動関節を正確に穿ち、100mmマシンガンごと機体から完全に引き剥がす。

瞬時に機体の「牙」を全て奪い取り、コクピットを傷つけることなく戦闘不能へと追い込んだのだ。

 

「流石は先生! ならば、こちらも——」

 

同じタイミングで、並走するカルロスのグフの右腕から、青白い火花を散らす電磁鞭がしなやかに撃ち出された。

放たれたヒート・ロッドは、もう1機のジムの右肩口へと猛蛇のごとく巻き付く。超高熱の熱線がジムの装甲を瞬時に赤熱化させ、100mmマシンガンを握り締めていた右腕をあっさりと熔断した。

ドサリと落ちる鉄の腕。

しかし、カルロスの猛攻はそれだけでは終わらない。

カルロスは手首の微細な操作だけでヒート・ロッドを躍らせると、今度はそのジムの左脚へと巻き付け、グフの出力を一気に引き上げて力一杯に引きずり回した。

 

「う、うわあああっ!?」

 

天地をひっくり返された連邦兵の悲鳴が上がる。

グフに引きずられたジムの左脚は、過熱したロッドの超高熱によって、まるで飴細工のようにドロドロに熔け落ち、平原に赤黒い鉄の航跡を残して沈黙した。

残るは最後の1機。

目の前で2機の僚機が一瞬にして文字通りの「肉達磨」にされた光景を前に、最後のジムのパイロットは完全に恐怖に囚われ、狂ったようにビーム・サーベルを抜いて突き出してきた。

 

「慌てるなと言ったはずだ、駄犬!」

 

ボルクのスプリガンが、鋭いステップ移動でその刺突を真横へと回避する。

すれ違いざま、カルロスのグフが放ったヒート・ロッドがジムのサーベルを持つ右腕を叩いて弾き飛ばした。

武器を失い、完全に体勢を崩したジムに向けて、ボルクはスプリガンの左腕のガトリング砲を向ける。

接射距離から放たれたガトリング砲が、ジムの両腕とメインカメラをピンポイントで爆砕した。

爆煙の中から、頭部を失い、煙を噴き上げながら膝から崩れ落ちる最後の機体。

カルロスとボルクの息の合った、あまりにも圧倒的な連携攻撃の前に、巡回していたジムの防衛線はわずか数十秒で完全に消滅したのだった。

 

 

 

 

煙を噴き上げて完全に沈黙した3機のジムをスプリガンのメインカメラで見下ろし、ボルクは操縦桿から僅かに力を抜いて、呆気ないほどの弱さを無線に零した。

 

「……脆すぎるな。応急処置の数合わせとはいえ、連邦の拠点を守る兵が、この程度とは…。」

 

「当然だ、先生。連邦の官僚どもは、一度自分たちが大損害を与えた相手が、まさかその舌の根の乾かぬうちに本陣へ攻め寄せてくるとは夢にも思うまいよ。」

 

カルロスはフッと鼻で笑い、グフのモノアイを基地の奥へと向けた。

連邦軍はジオン残党を完全に「敗走して怯えるだけの弱卒」と見くびっていた。

その驕りと油断こそが、彼らの機動性を鈍らせ、装甲を紙のように薄くしていたのだ。

そこへ、重厚な足音と共に、後続のザクⅡ2個小隊・計6機が平原の闇を割って戦場へ滑り込んできた。

 

「ザク各機!命令通り、ミデアの翼を奪え! 飛び立たせるな!」

 

カルロスの指示に、ザク小隊の面々が瞬時に応じる。

6機のザクⅡが一斉に120mmザク・マシンガンとマゼラ・トップ砲を構え、滑走路に並ぶミデア輸送機へと容赦ない火線を浴びせた。

カルロスの指示通り、コックピット、推進エンジンを破壊されたミデアは激しい金属火花と火の粉を散らし、二度と空へ舞い上がれぬ鉄の重荷へと変えられていく。

だが、デリー基地もただ蹂躙されるだけではなかった。チエの警告していた「5分」が経過したその瞬間、ロニンとサンの猛砲撃を耐え抜いた中央ハンガーのハッチが、凄まじい金属音を立てて開いた。

ハッチから姿を現したのは、先ほどの機体とは一線を画す威容。

赤と白の鮮やかな塗装、デリー基地の精鋭部隊——ジム・コマンド小隊の3機が、ビーム・ガンを構えながら猛然と飛び出してきたのだ。

 

「チッ、やはり出てきたか……!」

 

ザクの一機がビームを浴びて後退する。

しかし、後続のザク小隊はすぐさま散開し、激しい牽制の弾幕を張ってジム・コマンドの進路を阻んだ。

 

「少佐、先生! 俺たちが引き付けます! その隙に、やってください!」

 

「恩にきる!」

 

ザクたちの援護射撃により、ジム・コマンドと自分たちの間に一瞬の「道」が開くのをボルクは見逃さなかった。

 

「行くぞ、先生! 奴らの首を引き千切ってやる!」

 

「ああ……! スプリガンの本当の性能、ここで見せてやる!」

 

カルロスのグフが通常型ヒート・ロッドをパチパチと唸らせて左側から回り込み、ボルクのスプリガンは右手のジャイアント・バズをしっかりとホールドし、最大出力で大地を蹴った。

 

 

 

 

現れたジム・コマンド3機の動きは、先ほどのジムとは完全に一線を画していた。

接近するグフとイフリートに対し、3機は大型のシールドを隙間なく噛み合わせるように構え、強固な防御フォーメーションを組みながらビーム・ガンによる鋭い迎撃を開始したのだ。

 

「チッ、流石に良い腕をしているな!」

 

「射線を集めさせるな、散開しろ!」

 

カルロスのグフとボルクのイフリート・スプリガンは、瞬時に左右へと大きく分かれた。

互いに異なる角度から肉薄することで、連邦の濃密なビームの火線を分散させる。

同時に、ミデアの破壊を完了した6機のザクⅡ小隊もすぐさま動いた。

彼らは自らが飛行不能にしたミデアの巨体をそのまま強固な『盾』として利用し、遮蔽物の影からジム・コマンドの陣形へ向けて120mmザク・マシンガンの集中射撃を浴びせる。

 

ガガガガガッ!! 

 

激しい発砲音が響き、ザクたちの放った無数の実弾がジム・コマンドのシールドを激しく叩きつける。

しかし、ジム・コマンド小隊は決して動揺しなかった。集中火力を盾で巧みに防ぎ、体勢を崩さないまま、激しく炎上しているモビルスーツハンガーの敷地内へと滑り込むように後退していく。

彼らは炎と黒煙、そして複雑に入り組んだ建物の影を、臨時の遮蔽物にしたのだ。

 

「——全機、踏み込むな! 深追いをするんじゃあねえ!」 

 

カルロスは操縦桿を引き、グフを建物の手前で制動させた。

ボルクのスプリガンもまた、スラスターを逆噴射させ、その隣に滑り込む。

火の手が上がり、黒煙が視界を遮るハンガー地帯は、死角だらけの迷路も同然だった。

焦って入り組んだ敷地内へ踏み込めば、曲がり角や煙の向こうからビーム・ガンによる手痛い待ち伏せを喰らうリスクが極めて高い。

それはカルロスの冷徹な戦術眼が、瞬時に弾き出した警告だった。

カルロスはコンソールを叩き、ホバートラック経由の長距離通信のチャンネルを開いた。

 

「サン! 聞こえるか。敵のコマンドどもが炎上するハンガーに身を隠しやがった。……そっちの『眼』から見て、あの煙の向こうの連中を狙い撃つことは可能か?」

 

数キロ離れたジャングルの奥。

サン・シータ伍長はカルロスの要請に応じるように、強行偵察型譲りの黄色の大きなモノアイのレンズをギチギチと鳴らした。

高性能カメラの熱源センサーとナイトビジョンが、激しく燃え盛るハンガーの熱を透過し、その奥に潜む3つの影を捉えようと電子音を上げ始める。

サン・シータは照準器を微調整しながら、カルロスへ向けて冷徹なトーンで返電した。

 

「少佐、一番右端のジム・コマンドなら狙えます。だが、この距離に加えて煙が邪魔だ。四肢へのピンポイント射撃は無理だ。やるなら、確実に機体を止めるために胴体を貫くしかねえが……構わないですか?」

 

射撃のプロとしての冷静な判断。

しかし、それは相手のパイロットの命を確実に奪う「撃破」を意味していた。

それを聞いたカルロスは、即座にボルクへと通信を繋いだ。

 

「先生、聞いたな。サンの位置からでは、右端の機体は胴体を撃ち抜くしかないそうだ。……どうする?」

 

カルロスがわざわざボルクの同意を求めたのは、ボルクが今なお、「極力、連邦軍の兵士を殺したくない」という強い信念を抱えているのを知っていたからだ。

泥に塗れた残党であっても、カルロスは仲間であるボルクの信条を何より尊重していた。

ボルクは一瞬、操縦桿を握る手に力を込め、メインカメラの向こうで燃え盛るハンガーを見つめた。

しかし、すぐに低く覚悟に満ちた声を返す。

 

「……構わん。これ以上戦闘が長引けば、フレッドの脱出に響くだけじゃない。俺たちの仲間にも被害が出る。大局を見誤るな……。」

 

私情よりも、今を共に生きる仲間たちの命と作戦の成功を最優先にする。

ボルクのその言葉に、カルロスは深く頷いた。

 

「恩にきる、先生。……サン、聞こえたな! 右端の奴のどてっ腹をブチ抜け! 射撃を許可する!」

 

「了解、少佐。……恨むなら、このデリー基地の官僚どもを恨みやがれよ。」

 

ジャングルの闇の中、ザクⅠ・スナイパーの大口径モノアイが冷たく輝く。

サンが静かに引き金を引き絞ると、空気の焦げる凄まじい絶叫と共に、黄色の閃光が放たれた。

 

ドビューーーン!

 

数キロの距離を一瞬で駆け抜けた高出力の熱線は、ハンガーの障壁と黒煙を物ともせず透過し、右端に潜んでいたジム・コマンドの胴体中央へと吸い込まれた。

直撃を受けた次の瞬間、激しい閃光と共にジム・コマンドが内側から大爆砕を起こす。

凄まじい爆風が周囲の煙を吹き飛ばし、絶対の安全圏と信じていた遮蔽物が吹き飛ぶ。

 

「——今だ、行くぞ先生!!」

 

「ああ、突入する!!」

 

爆発の炎が夜空を真赤に染めたその瞬間、グフのバーニアとイフリート・スプリガンのバーニアが爆発的な咆哮を上げた。

二機の魔神は、残る二機のジム・コマンドが動揺から立ち直るより早く、死角だらけの燃え盛るハンガー地帯へと猛然と突入する。

 

 

 

 

爆炎が激しく渦巻くハンガー地帯の奥。

絶対の安全圏と信じていた遮蔽物を貫かれ、一瞬にして僚機を失った2機のジム・コマンドのパイロットたちは、あまりの衝撃に激しく戸惑っていた。

 

「ビーム!? ジオンがビーム兵器だと!?」

 

「くそ、ジオンが長距離射撃ができるビーム兵器を持っているなんて、聞いてねえぞ!」

 

ジオン残党が、連邦の戦艦級の威力を誇るビーム兵器を持っていたなど、彼らの想定には微塵もなかったのだ。

2人が完全にパニックに陥ったその瞬間、左右の黒煙を割って、猛然とグフとイフリートが姿を現した。

 

「仲間が殺られたからって、警戒しないのは悪手だな。」

 

カルロスの冷徹な格言めいた声が通信を震わせる。

ハッと我に返った2人のジムのパイロットは、咄嗟にビーム・ガンを連射。

しかし、恐怖で完全に狙いが定まっておらず、放たれた光軸は2機の魔神の遙か後方へと虚しく外れていく。

 

「——そこだ!」

 

カルロスはステップを踏みながら、グフの右腕からヒート・ロッドを獰猛にしならせた。

放たれた電磁鞭は、正面のジム・コマンドの左脚へと毒蛇のごとく巻き付き。

カルロスがグフの出力を引き上げ、自分の方へと引き寄せるように力任せに引っ張ると、ジム・コマンドは体勢を崩し、激しく仰向けに倒れ込みながら地面をズリズリと手繰り寄せられた。

カルロスに慈悲はなく、引き寄せられたジム・コマンドに至近距離から、左腕の3連装ガトリング砲の銃口が、身動きの取れないジムの胸部へ弾丸を撃ち込む。

実弾の嵐はジム・コマンドの頑強な装甲を紙のように抉り、胴体のコクピットブロックを完全に撃ち抜き。

火花とオイルを噴き上げ、精鋭と呼ばれた機体は完全に物言わぬ鉄の塊へと変わった。

 

「お前で最後だ……!」

 

もう1機のジム・コマンドも、逃げる隙はなかった。

イフリート・スプリガンの脚部ミサイル・ポッドから、2発の小型ミサイルが白煙を引いて発射される。

至近距離でミサイルが命中し、ジム・コマンドは右腕と左足を木端微塵に破壊され、アスファルトの地面に激しく転倒した。

ボルクは即座に無力化するために左腕の甲の35mm3連装ガトリング砲の銃口を突きつけた。

 

ダダダダダッ!!

 

鋭い銃声が響き、残った左腕と、右足の駆動関節がピンポイントで粉砕される。

コクピットを傷つけることなく、完全にその四肢の「牙」をもぎ取ったのだ。

 

「……ハンガー内のコマンド小隊、すべて沈黙したようだな。」

 

ボルクはガトリングのトリガーから指を離し、荒い息を整えて報告した。

ほんの数十秒前までデリー基地の懐刀として立ちはだかっていた精鋭部隊は、完全に壊滅し、火の海の中で物言わぬ残骸となって沈黙したのだった。

カルロスは煙を噴き上げるジム・コマンドを見届け、ボルクが完全に敵の戦力を鎮圧したことを確認した。

「ふぅ……」とボルクが息を吐く通信の向こうで、カルロスはグフのモノアイを左右へ鋭く走らせ、周囲のセンサー状況を睨みつける。

背後の平原、そしてジャングル。今のところ、新たな連邦軍の動きはない。

 

「よし!各員、これより第二段階へ移行する!」

 

カルロスは電波ジャミングの合間を縫って、味方の各部隊へ矢継ぎ早に指示を飛ばした。

 

「ザク第1小隊は ハンガー内に残っているモビルスーツを完全に破壊し、息の根を止めろ!ハンガー内の確認を急げ!」

 

「ザク第1小隊、了解! 少佐、先生、ハンガー地帯に入ります!」

 

3機のザクⅡが120mmザク・マシンガンを構え、火の手の上がるハンガーの奥へと足を踏み入れた。

 

「残りのザク第2小隊はトラック部隊の警護に回れ! トラック部隊が物資の積み込みを完了するまで、周囲の警戒を厳にせよ!」

 

「ザク第2小隊、了解! トラックの盾になってみせますよ!」

 

3機のザクⅡが今度は滑走路側に展開し、強奪作業を行うトラック部隊を囲むようにして周囲へ銃口を向けた。

 

「ロニン! 基地のレーダー施設、および通信施設の破壊を継続しろ。連邦の耳と目を完全に潰すんだ」

 

「分かったよ、少佐。ドム・キャノンの火力を叩き込んで、二度と電波を拾えねえように瓦礫にしてやるさ。」

 

ロニン軍曹の乗るドム・キャノンが、巨大な通信アンテナの基部に向けて、再びツイン・ミドル・キャノンの砲門を唸らせた。

 

「ワッパ隊! 対モビルスーツ歩兵部隊の動きを警戒しろ。物資搬出の邪魔をされんよう、周辺を徹底的に飛び回って生身の連邦兵を釘付けにしろ!」

 

 

「ワッパ隊、了解であります! 地面を這いずり回る連邦の歩兵どもに、ワッパの恐ろしさをたっぷり教えてやりますよ!」

 

独特のローター音を響かせ、数台のワッパが超低空で基地内を縦横無尽に駆け回り始めた。

 

「サン! 君は現在地で待機。チエのホバートラックと共に、外部からの増援が来ないかを徹底的に索敵、警戒してくれ」

 

「了解しました、少佐。……ヤゴ中尉のソナーと俺のモノアイがあれば、ネズミ一匹近づけさせやしませんよ。安心して、物色ください。」

 

ジャングルに潜むサン・シータのザクⅠ・スナイパーが、再びその黄色のモノアイを周囲の街道や平原へと向け、ライフルを構え直した。

 

「ホバートラック、全方位のパッシブ・ソナー最大稼働。少佐、ジャングル全域へ分散した連邦の主力部隊が異変に気づいて引き返してくるまで、残された時間は長くありません。……お急ぎを。」

 

チエ中尉の冷徹で、しかしどこか引き締まった声が全員の回線に響き渡る。

 

「恩にきる、各員! ……先生、行くぞ。ハンガーの奥で眠っている『残り』を、叩き起こされる前にスクラップにする。」

 

カルロスの言葉に、ボルクは水色のスプリガンのモノアイを明滅させ、ジャイアント・バズを構え直した。

 

「了解だ、カルロス少佐。……手早く済ませよう。」

 

それぞれの部隊が一糸乱れぬ動きで動き出す中、カルロスのグフとボルクのスプリガンは暗闇に閉ざされた整備ドックへと侵入していった。

 

分厚い隔壁をヒート・サーベルで、強引にこじ開けた先に広がっていたのは、広大で無機質なドックだった。

そのドックの中央にミニ・トレー級小型陸戦艇が鎮座していた。

ビッグ・トレーをスケールダウンしたようなその威容は、熱核ジェットエンジンによる強力なホバー走行で陸上と水上を縦横無尽に駆け巡る、東南アジア方面連邦軍の動く要塞のはずだった。

しかし、2機の魔神がドックの天井照明を照らし出したその時、ボルクは思わずコクピット内で呆れ果てたような息を吐いた。

 

「……信じられん。起動準備すらされていないのか。メインジェネレーターの火すら入っていないぞ。」

 

ミニ・トレーの周囲には、整備用のキャットウォークや給油ケーブルがだらしなく放置されたままで、緊急出撃のためのシステム起動が行われた形跡は微塵もなかった。 

もし、この巨艦がまともに動き出し、重機関砲や対地ミサイルを乱射していれば、自分たちのトラック部隊やワッパ隊はひとたまりもなかったはずだ。

それを、連邦軍は完全に宝の持ち腐れにしていた。

ボルクの無線を聞いたカルロスは、グフのモノアイを不気味に発光させ、日本刀の柄にそっと手を置きながら低く言葉を返した。

 

「当然だ、先生。デリー基地の連中はな、自分たちが『絶対に安全なホーム』にいると骨の髄まで信じ込んでいたんだ。」

 

カルロスはグフの指先で、冷え切ったミニ・トレーのブリッジを指し示した。

 

「前の作戦で4割の戦力を削がれたというのに、奴らはそれを『ジャングルの奥に潜む残党の悪あがき』としか認識していなかった。だからこそ、残ったモビルスーツの大半を外へ放り出し、残党狩りという名の上の奴らへのご機嫌取りに躍起になっていた。……この本陣が戦場になるなど、官僚の頭には一瞬たりとも浮かばなかっただろうさ。」

 

「……一度大敗を喫しながら、その本質を理解していなかったというわけか。元地球連邦軍として、言葉もないな。」

 

ボルクは自嘲気味に呟きながら、右手のジャイアント・バズの砲口をミニ・トレーの艦橋に向けた。

 

「動かぬ要塞など、ただの鉄の棺桶だ。……カルロス、今のうちにこいつもスクラップにしておくぞ。これを破壊すれば、他のジオン残党もお前を認めるんだろ?」

 

「ああ、頼む、先生。徹底的に破壊し、二度と使い物にならんようにしてやれ!」

 

ジャイアント・バズの砲口から凄まじいマズルフラッシュが迸る。至近距離から次々と放たれるロケット弾が、ミニ・トレーの無防備なブリッジへと容赦なく突き刺さっていった。

 

 

ズドォォォンッ!!

 

ドドォォォンッ!!  

 

何発もの直撃を受けた艦橋構造物は、強固な装甲を引き裂かれ、内側から激しい炎と黒煙を噴き上げて一瞬で半壊、さらに完全に崩壊していく。

ドック内に反響する凄まじい大爆発の衝撃波が、ミニ・トレーの頭脳である指令室のコンソールや外部通信アンテナのフレームを木端微塵に粉砕した。 

 

ガシャォン……

 

弾切れを告げる乾いた金属音がコクピット内に響く。 すべての弾頭を撃ち尽くしたことを確認したボルクは、一切の躊躇なく右手のジャイアント・バズを手放した。

空になったジャイアント・バズの巨大な鉄の塊が、ドックのコンクリート床へと重々しい音を立てて投げ捨てられ、火花の中に転がっていく。

イフリートは次の戦闘に備えて、腰のホルダーにマウントされているヒート・マチェットを両手に装備する。

 

「……艦橋の完全破壊、確認。これでミニ・トレーの艦砲射撃を気にしなくて、良くなったな。」

 

「見事な手際だ、先生。流石は俺が惚れ込んだ男だ。」

 

「……それにしても、呆気なさすぎるな、カルロス。連邦軍のアジア方面本部が、これほどの寡兵による奇襲で、ここまで簡単に機能停止に追い込まれるとは…。」

 

ボルクの言葉には、かつて連邦の側にいた者としての複雑な落胆と、戦術教官としての冷徹な呆れが含まれていた。

 

デリー基地はあまりにも「脆かった」。

 

グフのコクピット内で、カルロスは日本刀の鞘をパチリと指先で鳴らし、フッと自嘲気味な鼻笑いを漏らした。

 

「当然だ、先生。奴らは『勝者』の病に冒されていたんだよ。」

 

「勝者の病、か。……確かに、今の連邦軍にはかつての必死さがないな。」

 

ボルクは自身の数奇な運命を振り返りながら、深く頷いた。

もし連邦が一年戦争当時の危機感を維持していれば、これほどの失態を演じることはなかったはずだ。

だが、その油断のおかげで、自分たちは今、生き残るための物資を手に入れている。

 

「フッ、奴らの官僚主義には感謝せねばな。おかげで我々は生き延びられる。……さあ先生、感傷はここまでだ。チエから『タイムアップ』の報せが届く前に、このご馳走を片付けるぞ。」

 

ドックの外のハンガー地帯では、カルロスの指示を受けたザクⅡの第1小隊が、冷徹かつ確実にデリー基地の息の根を止める作業に没頭していた。

 

3機のザクはハンガーを一つずつ覗き込んでは、整備用ベッドに固定されたままの無防備なジムや、システム起動前の待機状態にある陸戦型ジムを見つけ出し、至近距離から120mmザク・マシンガンを容赦なく叩き込んでいく。

火花とオイルが四散し、起動することすら許されずに次々とスクラップへ変えられていった。

一方、基地の防衛エリアでは、超低空を自在に滑空するワッパ隊が地獄の猟犬となって戦場を支配していた。

 

「——総員、リジーナを構えろ! 敵モビルスーツに標準合わせ!」

 

地上では、混乱の中から辛うじて体勢を立て直した連邦軍の対モビルスーツ特技兵たちが、型式番号M-101A3対MS重誘導弾『リジーナ』を必死に組み上げ、カルロスたちのグフやイフリートへ照準を合わせようとしていた。

だが、彼らの最大の誤算は、頭上をちょこまかと飛び回るジオンの機動浮遊機の存在だった。

 

「遅いぜ、歩兵さんよ!」

 

独特のローター音を響かせて急降下してきたワッパ隊は、リジーナの射撃体勢に入った特技兵たちの頭上を掠めながら、機首の機銃を激しく掃射した。

 

ドガガガガッ!

 

地面が激しく弾け飛び、上空からの死角を突かれた連邦の歩兵たちは手も足も出ずに、一方的に蹴散らされていく。

対MS誘導弾という強力な牙を持ちながらも、それを放つ前に、生身の兵士たちは戦力として完全に無力化されていった。

その混乱に追い打ちをかけるように、ロニン軍曹の駆るドム・キャノンが放つ、無慈悲な砲火が基地の心臓部を蹂躙していく。

 

ズドォォォンッ!!

 

轟音と共に面制圧用のツイン・ミドル・キャノンが火を噴くたびに、連邦軍の象徴であった巨大なレーダー施設や、作戦室の入った通信施設が特撮のミニチュアのように爆砕され、夜空へ向けて真っ黒なキノコ雲を立ち昇らせていく。

連邦の「耳」と「目」は、完全に瓦礫へと変えられていった。

そして、この凄惨な破壊劇の裏側にある『本命』の作戦——強奪フェーズもまた、驚くべき手際で進行していた。

滑走路や物資集積所へとなだれ込んだトラック部隊の面々は、ザク第2小隊の手厚い警護のもと、エンジンとコックピットを破壊されて鉄の死体となったミデア輸送機のカーゴ、連邦軍の弾薬庫、そして奇襲の火の手を免れた未だ無傷のハンガーへと文字通り群がっていた。

 

「急げ! 使えるパーツと弾薬を、ありったけ積み込め!」

 

「次だ、次のハンガーを確認しろ!」

 

残党兵たちは油と汗に塗れた手で、連邦軍が誇る最新のモビルスーツ用エネルギーCAP、予備の装甲板、各種類の弾が入った弾薬箱を次々と強奪し、待機させていた大型トラックの荷台へと山積みにしていく。

完璧な奇襲、完璧な蹂躙、そして完璧な略奪。

デリー基地の防衛線は、カルロス隊の圧倒的な連携と、ボルクが駆る『イフリート・スプリガン』の初陣の前に、わずか数分で完全に崩壊した。

だが、この戦いはまだ、全世界を巻き込む巨大な陽動戦の『一幕』に過ぎない。

連邦軍の絶対的な過信をブチ抜いた狼たちの牙は、今度は太平洋の闇に潜むユーコン級潜水艦『ウンディーネ』、そしてフィジー諸島へと帰ろうとするフレッドたちの運命の糸へと繋がっていく。




最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
今回はカルロス隊による、デリー基地襲撃の話でした。
イフリート、グフ、ザクⅠ・スナイパー、ドム・キャノンなどのジオンモビルスーツが活躍する話を書けて、楽しかったです。
ジオンモビルスーツの泥臭さが良いですよね~♪
でも、飛行モビルスーツだけは勘弁な(笑)
デリー基地はモビルスーツの殆どを破壊され、ミデアやミニ・トレーも破壊されてしまいましたので、デリー基地のライフは0ですね。
新キャラクターのカルロスの副官のヤゴ・チエも登場させることが出来て、本当に良かったです。
ヤゴ・チエの元ネタは「越後屋」で、「エチゴヤ」を逆さから読んで「ヤゴチエ」にしてみました。
ではでは、次の話も楽しみにしていてください。
感想など、気軽にどうぞ~♪

【機動戦士ガンダム オリオンの軌跡】に登場するオリジナル機体で好きな機体はなんですか?

  • 陸戦型ジム改
  • バイアリーターク
  • ペイルライダー・ヴァンガード
  • ペイルライダー・マスケッティア
  • ヴァルキリー
  • グフ・ノクターン
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