北米大陸の太平洋沿岸地帯のジオン軍の地上拠点、キャリフォルニア・ベース。
元々は地球連邦軍の基地であったが、ジオン軍の第二次地球降下作戦のときに占拠されてしまい。
今ではジオン公国軍の地上における最重要拠点となっている。
そのキャリフォルニアベースに一隻のユーコン級潜水艦が到着するのだった。
ユーコン級から、オデッサで敗走した兵士たちが次々と下船し、キャリフォルニア・ベースの衛生兵や輸送兵達が忙しく、負傷した兵の救護や積載した物資を降ろしたりする。
30代くらいの瘦せこけた男がユーコン級から降り立つと久しぶりの日光が眩しいのか、太陽に手をかざした。
「やっと、辿り着いた。あとはHLVに乗って、帰るだけだ。」
そう呟くと男はふらふらと歩きだし、ユーコン級の物資搬出作業の現場に行くのだった。
男は作業現場に辿り着くと一つのコンテナを愛おしそうに見つめる。
「これを持ち帰れば、〝ヴァルキリー〟が完成する。」
男は作業をしている輸送兵の一人を呼び止めた。
呼び止められた兵士は男の襟の少佐の階級章に気付き、敬礼する。
「このコンテナにはジオン公国の勝敗に関わる重要な物が入っている!デリケートな物だから、丁重に扱うように!」
男の鬼気迫る物言いに兵士は畏縮しながらも了解するのだった。
男は満足したようで、物資搬出作業の現場から立ち去る。
兵士は男が立ち去ったことを確認すると、コンテナの状態確認作業を始めた。
コンテナは電子ロックが施されており、関係者以外はコンテナを開けられないようにされていたのだ。
兵士はコンテナに傷がないかと確かめていると、中から機械の稼働音が僅かに聞こえてくる。
「このコンテナ、なんなんだ?」
兵士はコンテナの書類に記載されている責任者と所属を確かめる。
「責任者ジル・ペロー少佐、所属がフラナガン機関?」
記載されている人物と所属機関を確かめた兵士は、あまり関わってはいけない物だと感じ。
コンテナの搬出作業に取り掛かるのだった。
その頃、ジャブローの地下基地ではソウヤとヤザンは訓練に明け暮れていたのだった。
フォルド中尉のガンダムを倒してから宇宙戦から地上戦主体になり、訓練内容も戦闘中でのシステム設定変更、あらゆる状況を想定したシチュエーション戦闘、様々な環境で地形や天候の影響を知るためのフィールド戦闘、鹵獲したジオンのモビルスーツ操縦訓練などの高度な内容に変化していた。
「ヤザン、ここから先は湿地帯みたいだ。歩行モードを変更しよう。」
「了解した、これなら歩行システムのモードを+9に変更しておこうぜ。」
「そうだな。それくらいが丁度良さそうだ。」
今はジャングル地帯の敵機の探索を想定したシミュレーション訓練をしており、進行方向に湿地帯が広がっているのでモビルスーツの歩行システムのパワー加減を変更し、湿地帯に適した設定に変更している最中である。
私とヤザンはジムの歩行システムを修正し、湿地帯に足を踏み入れるのだった。
「オリオン2より、オリオン3。右前方の水が広範囲で泥で濁っている。」
「こちら、オリオン3。俺も確認した。モビルスーツが移動した痕跡だな。」
「ターゲットかもしれない。周囲を警戒しながら、水が濁っている場所を調べよう。」
「了解した。」
周囲を警戒しながら、水が濁っている場所を調べるとジオンのモビルスーツの丸みを帯びた足跡が残されていた。
「この足跡だと、ザク系統かグフ系統だな。」
「そうだな、ソウヤ。」
「足跡はあっちのジャングルに続いてるようだ。」
「足跡がジャングルの方に向かっていて、俺たちは湿地帯に足を踏み入れている。てことは。」
二人のジムは身をかがめ、盾を足跡が続いているジャングルの方に向ける。
「アンブッシュされているな。ヤザン。」
「湿地帯で機動力が落ちた所を狩る。俺もそうするからな。」
二人は防御態勢を取りながら、ジャングルに潜伏している敵機を探すのだった。
「おい。ソウヤ。見つかったか?」
「待ってくれ。………見つけた!」
ソウヤはセンサーをサーモセンサーに切り換え、敵が潜伏していると思われるジャングルを調べる。
すると、僅かに温度が高い地面を発見したのだ。
湿地帯に隣接している地面だから、他の地形に比べたら水分を多く含んでいるために水分の蒸発や熱容量の大きさが熱を吸収と分散させる効果がある。
また、ジャングルの植物が太陽の光を遮るので地面の温度は低いはずだ。
なのに、その部分だけが温度が高いと表示されるのだ。
つまり、そこには熱を排出する物体が存在していることになる。
「見つけたか!」
「多分な、あそこの地面が僅かに温度が高い。」
「ふん、お前の判断に任せるよ。」
「分かった。あそこにビーム攻撃を仕掛ける。防御任せた。」
「任された。」
ヤザンのジムはソウヤのジムの前に移動し、盾を構えたまま、姿勢を低くする。
ソウヤはヤザンが姿勢を低くしたことを確認すると、ビームライフルを放つ。
放たれたビームはジャングルの緑を幾らか焼くと巨大な爆発が起きるのだった。
「おし!まずは1機だな!ソウヤ!」
「ああ!」
爆発の影響でジャングルの一部が吹き飛び、火災が発生する。
燃えるジャングルから1機のモビルスーツが湿地帯に飛び出してきた。
「グフが潜伏してたようだな!」
「ヤザン、俺はフォローに入る!」
「フォロー任せたぜ!ソウヤ!」
ヤザンは飛び出してきたグフの足元にバズーカを発射、発射された弾はグフの足元に着弾し、巨大な水しぶきを上げながら柔らかな湿地帯の地面を抉るのだった。
グフはバズーカの爆風と急に足場が崩れたことでバランスを崩してしまい、ヤザンの接近を許してしまう。
「ふん!もらった!」
距離を詰めたヤザンのジムは至近距離でグフの胸にバズーカを放つ、至近距離で放たれたらグフの装甲でも耐えることはできない。
グフの上半身は爆散し、残された下半身が力なく倒れ、湿地帯の泥に汚れるのだった。
模擬戦闘が終わり、ヤザンとソウヤはシミュレーター装置から出るとオルグレン少佐が二人を出迎える。
「二人とも、先の戦闘はかなり良かったぞ。地形特性を理解した素晴らしい戦闘だ。」
オルグレン少佐は二人の先ほどの戦闘を素晴らしいと評価された。
「ソウヤが最初の攻撃を成功させたお陰ですよ。あれで1機になったので楽になりました。」
「私もヤザンが前衛をしてくれるので安心して、射撃に集中できるよ。ただ、最後のグフの時にフォローすると言ったのに、ヤザンのフォローがあまりできていなかったです。」
「必ずフォローしてくれると思ったから、あれだけ攻めることができたんだ。信用してるよ。」
「そう言ってくれるのは嬉しいよ。」
私とヤザンは互いに称賛するのだった。
「歩行システムの変更もスムーズで的確にできるようになり、あの地形での最も効果のある戦術もできるようになったな。おし、今日の訓練はここまでとする。」
「今日の訓練は終了でありますか?では、この後は自由と言うことですか?」
オルグレン少佐が訓練終了と言ったので、ヤザンがそのワードに素早く反応する。
「ははは、ヤザン。訓練は終了だが、この後に大事な用事が控えているから休みじゃないぞ。」
隊長の一言でヤザンはガックシと肩を落とし落ち込む、昼から休めると思ったのだろう。
「この後は格納庫で俺達の部隊に配備されるモビルスーツの確認をする。」
「俺達の部隊に配備されるモビルスーツですか!?」
ヤザンは先まで落ち込んだ態度はどこに行ったのか、隊長の話に興味を持つ。
「しかも、ヤザン。お前に新型が受領されるようだ。」
「新型でありますか!?それは楽しみであります!隊長!早速、格納庫に行きましょう!!」
「はははは、現金なやつだな。」
隊長はヤザンに腕をグイグイと引っ張られ、私はその光景を微笑ましく見守りながら、私達は格納庫に向かうのだった。
格納庫に到着すると中は多くの整備兵が慌ただしく作業をしていた。
モビルスーツハンガーに固定された3機のモビルスーツの調整をしているようだ。
私は一番手前のモビルスーツハンガーで整備されている機体に反応をする。
「ガンキャノン!」
それはオデッサで使用していた量産型ガンキャノンであった。
前は燃えるような赤色であったが、今は落ち着いた紺色をメインに塗装をされている。
「ソウヤは引き続き、ガンキャノンか。こいつにはオデッサで助けられたからな。」
「そうだな、ヤザン。こいつにまた乗れて、嬉しいよ。」
また、ガンキャノンに乗れることに私は心から喜び、武者震いする。
「お!イーサン!来ていたのか?」
一人の男性整備兵が近づいてくる、男性はがっしりした体型で短めでやや無造作な黒髪、顎や頬には無精ヒゲが少し伸びており、額にはオイル汚れが薄っすらと残っていた。
「機体の方はどうだ?」
「ガンキャノンの方は調整が済んでいて、通常整備だけで済んでいる。新しい機体の2機は調整をしたい。」
「そうか、じゃあ。俺とヤザンの機体は調整を済ませてしまおう。」
「了解した!そこの二人がソウヤとヤザンか?」
男性は興味津々に私とヤザンに視線を向け、ゆっくりとこちらに歩み寄り、私とヤザンの肩をポンポンと軽く叩く。
「お前達がイーサンが選んだパイロット達か、シミュレーターでガンダム5号機を倒したんだってな?俺は技術士官のケンジ・ナガト中尉だ。ケンと気軽に呼んでくれ。」
ナガト中尉は自己紹介を言い終えると右手を差し出された。
私とヤザンは中尉の差し出した右手に握手で応えるのだった。
「ケン、自己紹介は二人への済んだか?そろそろ、俺とヤザンのモビルスーツの説明をして欲しいんだが?」
「おお、そうだったそうだった。お前とヤザン曹長の機体の説明をしないとな。」
ナガト中尉は隊長にそう言われると、量産型ガンキャノンの左横のハンガーで整備されている機体の前に移動する。
その機体はRGM-79ジムに似ているが、頭部にトサカ状の追加センサーが装備され、胸部ダクトの改修や増加装甲が加えられており、脚部には側面スラスターが装備されている様だ。
「こいつはRGM-79DO ジム・ドミナンス、後期生産型ジムをオーガスタ研究所の関係施設で開発された機体だ。」
ナガト中尉はジム・ドミナンスの整備用端末を操作し、ジム・ドミナンスの機体データを整備用端末のモニター画面に表示する。
表示された機体スペック値は標準のジムの数値を軽く超えている事がすぐに分かり、私とヤザンは目を輝かす。
「こいつは試作武装や新型装備のデータ取集をする為にハイスペックなことは勿論のこと、機体のあちらこちらにハードポイントが設けてある。そのハードポイントに様々な武器を担架したり、装備することができる。」
整備端末をナガト中尉は操作し、モニター画面の情報を切り替え、ジム・ドミナンスの腕やバックパックなどに配置されているハードポイントの場所を見せてくれた。
確かに、オルグレン少佐の優れた判断力なら的確な装備をハードポイントに装備させ、任務の成功率を上げるだろうと私は思った。
「次にヤザン曹長の機体を紹介する。」
ナガト中尉は隊長のジム・ドミナンスの横のモビルスーツハンガーの前に移動する。
ハンガーに固定されている機体は陸戦型ジムの様だが、腕や脚、バックパックの形状が違うようだ。
「こいつはRGM-79GC 陸戦型ジム改だ。陸戦型ジムをエース仕様に強化するプランがあってな。その強化プランを施した機体だ。」
中尉は整備用端末を操作し、陸戦型ジム改の機体データを画面に出す。
「こいつの腕や脚は、あるプロジェクトで製作されたパーツの予備パーツを移植している。通常の陸戦型ジムよりも反応速度やパワーは向上しているし、脚部のふくらはぎ部分は内蔵式ビームサーベルラックから小型スラスターに変更。更にジェネレーターと背中のランドセルをRX-78ガンダムの物に換装している。ジェネレーター出力やスラスター推力、パワーが上がっているから機体のフレームなども強化されてる。」
「ガンダムのパーツを使ってるのですか!?そいつはマジかよ!」
ヤザンは陸戦型ジム改にガンザムのパーツが組み込まれていることを聞き、声を弾ませた。
「ヤザン曹長、こいつはガンダムのパーツを組み込んだだけじゃないんだぜ。」
ナガト中尉は陸戦型ジム改の機体の変更箇所を説明を終えると次の画面に切り替える。
「まずは右腕スタンアンカー。ジオンのグフのヒートロッドを参考に作られた装備で射出されたワイヤー付きアンカーを敵に突き刺し、高圧電流を流す武装だ。」
陸戦型ジム改の右腕を見ると装着式の武装が取り付けられており、尖った釘の先端のようなアンカーとワイヤーを巻き取るための円柱型の巻き取り機が組み込まれたユニットが装着されていた。
「そんで、そこに置かれている小型のシールドが陸戦型ジム改の左腕に装着されるシールド・ヒートクローだ。」
私達は格納庫の床に置かれている小型のシールドに目を移す。
そのシールドはジムなどに支給される通常シールドよりも一回りサイズが小さかったが、どうやらそのシールドと同じくらいの長さの鉤爪が格納されているようだ。
「こいつはシールドにヒートホークのように赤熱化する鉤爪が仕込まれていて、武器の持ち替えをせずに素早く近接戦闘できるようにするために作られた試作兵器だ。通常のシールドみたいな耐久性がないから気を付けろよ。」
「へえ、スタンアンカーにシールド・ヒートクローか。ゴリゴリの近接仕様のカスタマイズ、俺好みの機体だぜ。」
「気に入ってくれて、何よりだ。他には背中のランドセルのビームサーベルが2本、右腰に装着される100mmマシンガンなどがある。携行火器はビームライフルとロケットランチャーが用意されている。」
「最高だ。こいつがあれば、どんなジオンのモビルスーツにも負ける気がしないぜ。」
ヤザンは自分の愛機となる陸戦型ジム改を喜びながら、じっくりと眺めるのだった。
「さて、イーサンとヤザン曹長の機体の調整を始めますか。おい!集まれ!」
ナガト中尉の掛け声で格納庫で整備作業中の整備兵の何名かが集まってくる。
「よし、パイロットも来たから機体の操縦系統の調整を済ますぞ。ドミナンスと陸戦型ジム改は試作モビルスーツだから念入りに調整だ!分かったな!」
整備兵はナガト中尉の指示に気合の入った掛け声で答え、それぞれが担当しているモビルスーツのパイロットの元に駆け寄る。
私達は自分の機体を整備している整備兵と機体の調整を開始するのだった。
「俺の調整はすんなりと終わったな。」
私はそう呟きながら、廊下を歩いていた。
「まあ、二人のように新型の調整をするわけじゃないからな。」
私の量産型ガンキャノンはナガト中尉の整備班に多少のチューンナップをされてはいるが、ヤザンやオルグレン少佐のようにゼロから調整をしなくても良かったので、私の機体調整は短時間で終わったのだ。
オルグレン少佐とヤザンの手伝いをしようと思ったが、先に休んでも良いと少佐に言われたので私は自分の部屋に戻るために廊下を歩いてた。
「お、ソウヤ少尉じゃないか?」
不意に後ろから私を呼びかける声がしたので振り返る。
「ルース中尉!?」
ルース・カッセル中尉は私を呼び止めると私の元に歩み寄られた。
「少佐と曹長はどうしたんだ?」
「二人は新しく受領したモビルスーツの調整をしております。私は前の部隊で使っていた機体を引き続き使うので短時間の調整で済んだので。」
「そうか、少佐の部隊も本格的に動き始めるんだな。」
「中尉はどうして、こちらに?」
「俺は自分の母艦に戻ろうとしていたんだ。」
「母艦ですか?中尉の母艦はなんですか?」
「俺が所属している艦は改ペガサス級のサラブレッドだ。」
「ペガサス級!?あのホワイトベースの!?」
ペガサス級と言えば、地球連邦軍の最新鋭のモビルスーツ運用の強襲揚陸艦だ。
私はルース中尉が最新鋭強襲揚陸艦のモビルスーツのパイロットに驚きながら、そんなにもすごい人と話せていることに興奮するのだった。
「ルース中尉、すごいですね!あのホワイトベースと同じ戦艦のモビルスーツパイロットされていて!ルース中尉もフォルド中尉と同じ、ガンダムタイプに乗られるんですか!?」
「ああ、俺もフォルドと同じでガンダムのパイロットを任されている。興味あるのかな?」
「はい、興味あります。」
「良かったら、サラブレッドに行ってみないか?俺のガンダムも昨日、基本システムの調整が終わったばかりなんだ。」
「良いんですか!?」
「ああ、フォルドの件で君には迷惑を掛けてしまったからな。」
ルース中尉の申し出に驚きつつも有頂天になる。
最新鋭のペガサス級とガンダムの実機を間近で見れるなんて、滅多にないチャンスなのだから。
「よし、サラブレッドが停泊しているドックに向かおうか。」
「はい、ルース中尉!」
私はルース中尉と一緒にサラブレッドが停泊している戦艦ドックに向かって歩き始めた。
「ルース中尉はオルグレン少佐とは以前からお知り合いだったのですか?」
シミュレーターでのフォルド中尉とガンダム5号機の時、ルース中尉とオルグレン少佐は親しそうに会話をしていたで、私は二人の仲が気になり、ルース中尉に聞いてみるのだった。
「俺とイーサンの事か?そうだな、オルグレン少佐は俺が戦闘機乗りだった時の上司だ。」
「そうだったんですね。では、少佐と一緒にルウム戦役などに参加をされたのですか?」
「いや、ジオンと開戦する前に少佐が別の部隊に異動することになったんだ。だから、開戦した時は別々の部隊でルウムなどを戦ったな。」
「成程、オルグレン少佐とは戦闘機乗り時代の知り合いだったんですね。」
「ああ、ルウムの後は俺は北米のオーガスタ基地に転属、少佐はジャブローでモビルスーツ開発のテストパイロットをすることになったんだ。」
「え!?少佐はジャブローでモビルスーツ開発のテストパイロットをされていたのですか!?」
少佐が連邦軍のモビルスーツ開発のテストパイロットをされていたことに私は驚く。
「うん?知らなかったのか?」
「ええ、私がオルグレン少佐の指揮下に入ったのは最近ですので、少佐の過去の事などは詳しくなくて。」
「あの人は連邦軍のモビルースーツの基本モーション全般と操縦席のレイアウトの開発は、イーサンが携わっているからな。」
ジャブローに来て、オルグレン少佐の小隊に入ってからは、シミュレーターでの訓練に明け暮れていた。
だが、オルグレン少佐とは訓練やモビルスーツの技術的な話はするが、少佐とは個人的な話は少なかったと思い返す。
「まあ、仕方ない。この戦争でイーサンも色々とあったからな。」
「色々と言いますと?」
「少佐のご両親と婚約者を先の一週間戦争で亡くなっているんだ。」
「え……?」
私は言葉を失うのだった。まさか、あのジオンの非道な行いがされた一週間戦争で少佐のご両親が無くなっているとは。
ルース中尉は話を続けられる。
「イーサンの父親はサイド2の地球連邦軍駐屯艦隊司令官のジョージ・オルグレン中将、母親はサイド2でコロニー融和政策をされていた地球連邦議会のクラウディア・オルグレン議員だ。」
「聞いたことがあります、猛将ジョージ・オルグレン。ジオンの奇襲攻撃を受け、駐屯艦隊の9割が壊滅しても残存戦力で最後まで抵抗されたと。」
「ああ、ミノフスキー粒子で通信が切断され、モビルスーツでの電撃戦などで艦隊のほとんどが壊滅してもコロニーの防衛をされた方だ。」
「しかし、サイド2は……。」
「ああ、奮闘したが駐屯艦隊は全滅。サイド2は毒ガス攻撃などで住民は全滅だ。」
「クラウディア議員もニュースなどで知っています。コロニーとの融和政策を考えていた方でサイド1、2、4、5が地球連邦よりだったのはクラウディア議員のお陰であったと。」
「コロニー側の不満などを聞いて、色々と取り図ろうとしていたようだ。なんでも、ジオン・ズム・ダイクンとも
知り合いだったとイーサンが言っていたよ。」
出会って間もないが、モビルスーツに関する戦術、技術などを私やヤザンに明るく語ってくれる少佐に、そんな辛い出来事があったなんて、知りもしなかった。
ただ、私は少佐の身に起こったことがショックで顔を下に向けるのだった。
「すまないな。母艦の見学の前に暗い話をしてしまって。」
ルース中尉は気が沈んでいる私を気遣って、声を掛ける。
「いえ、私が少佐のことを知りたいと言ったので、大丈夫です。」
「そうか、なら良いんだが。あまり、思い詰めるなよ。」
「はい、ルース中尉ありがとうございます。」
廊下を歩きながら、少佐のことを考える。
先の一週間戦争で大事な人を一度に失ったのに、あんな風に少佐は明るく気丈に振舞えるのだろうか。
私の力でどこまで、少佐の助けになれるのだろうかと考えるのだった。
同じ惨劇を味わった、士官学校の友人のことを思い出す。
「ソウヤ少尉、着いたぞ。」
どうやら、色々と考えて歩いていたら、目的の宇宙船ドックに到着したみたいだ。
私は前を見る、そこには今まで見たことがない宇宙戦艦が停泊していた。
「これが改ペガサス級の〝サラブレッド〟か。」
その外観は地球連邦軍の主力艦艇のサラミス級やマゼラン級とは明らかに違う設計デザインだった。
サラミス級などはまだ船のような外観をしていたが、これはまるで生き物のような姿をしていた。
以前、本で見たことがあるスフィンクスのような形に似ている。
しかし、ジオン軍が〝木馬〟と称するように馬のような形をしていると納得してしまう形なのだ。
その緑色の鉄の馬は戦艦ドックに静かに佇まい、戦場を駆けるのをじっと待っているようだった。
私は目の前の駿馬に目を奪われる。
「すごいだろう?」
「はい、サラミス級やマゼラン級とは全然違いますね!」
「連邦軍がモビルスーツの運用を目的に作った艦だからな。かなり特殊な造りになっているよ。」
「そうなんですね。」
「よし、中に入るか。」
ルース中尉はサラブレッドのスロープを警護している警護兵に身分証を提示し、私がサラブレッドの見学に来たことを説明され、警護兵は私の見学を了承してくれたようだ。
私も警護兵に身分証を確認してもらう、確認が作業が終わると私はルース中尉と一緒にサラブレッドのスロープを渡り、サラブレッドの内部に入るのだった。
「これがサラブレッドの格納庫ですか。まるで、モビルスーツ整備工場みたいだ。」
サラブレッドのモビルスーツ格納庫は今まで見たことがない程にクレーンやマシンアームなどの整備機材が豊富な広々とした格納庫だった。
私はオデッサ作戦で野外での整備や大型倉庫での整備を受けたことがるが、サラブレッドのような最新鋭のモビルスーツ格納庫に衝撃を受けた。
「確かに、今の連邦軍の戦地でのモビルスーツの整備は野外での重機を使った野外整備や戦車や戦闘機の格納庫を流用したものが主流だからな。君はオデッサ作戦に参加したしていたから、新鮮に映るんだろうな。」
「はい、オデッサ作戦では野外での青空整備などがほとんどで屋根がある倉庫整備はほんの数回だけでした。」
「そうか、君の方が私よりもモビルスーツに乗っての実戦経験は豊富みたいだな。」
「そんなことはありません。オデッサ作戦では生き抜くのに必死でした。」
「確かに、誰もがこの戦争で必死に生き抜こうとしているな。さて、俺のガンダムを見に行くか。」
「はい、中尉。」
私とルース中尉はガンダムが置かれているモビルスーツハンガーに向かった。
「これがルース中尉のガンダムですか。」
私は目の前にそびえ立つ青いガンダムを見上げる。
シミュレーションで見た、フォルド中尉の赤いガンダム5号機と外観はそっくりだが、ルース中尉のガンダムは青をメインカラーにしてるようだ。
「これが俺の愛機、ガンダム4号機だ。」
私の隣に立つ、ルース中尉は同じようにガンダム4号機を見上げる。
しかし、その眼差しは私の驚嘆の眼差しではなく、自信と愛機に対する優しい眼差しだった。
「外観は後ろのフォルド中尉のガンダム5号機と変わりませんね。」
私はガンダム4号機の後ろのハンガーに置かれている、フォルド中尉のガンダム5号機を見る。
実際に5号機を見るのは初めてだが、シミュレーションの姿通りだ。
「外観はほぼ一緒だ。だが、内部のほうが所々が違うんだよ。ジェネレーター出力は俺のガンダム4号機の方が少しだけ上だからな。」
「そうなんですね。同じ外観なのに、なんで違うんですか?」
「それは後から教えるよ。」
ルース中尉は階段を上がり、格納庫の側面に設けられた足場を歩き、ガンダム4号機の操縦席に移動するためのスロープに移動する。
私もルース中尉の後を追うように操縦席前のスロープに移動をした。
「これがガンダムの操縦席ですか。」
私はガンダム4号機のコックピット内部を興味津々に見る、レイアウトは自分が乗っている量産型ガンキャノンに似ているがモニターは高画質の物になっており、操縦桿やコンソールも新型になっている。
「ガンダムに乗ってみるか?」
「良いんですか!?ガンダムに!?」
ルース中尉の提案は意外だった、ガンダムは連邦軍の最新鋭モビルスーツであり、秘匿性の高い機体なのだから。
「良いんだよ。ただし、ジェネレーターは稼働させないが。」
「そうですよね。」
流石にジェネレーターを稼働させたら、ルース中尉が勝手に自分以外の人物をガンダムに乗せたことがバレてしまい、責任問題になる。
でも、あの〝ガンダム〟に乗れると思うと、私は胸の高鳴りが抑えられない。
「では、お言葉に甘えて。」
私は恐る恐る、〝ガンダム〟のコックピットに乗り込むのだった。
「これが〝ガンダム〟のコックピットか…。」
〝ガンダム〟のコックピットは広さは量産型ガンキャノンとあまり変わらないが。
だが、〝ガンダム〟の名前を冠する機体の神秘性と力強さを私は感じるのだった。
私は操縦桿をゆっくりと握り、まるで自分が特別な存在になったと思ってしまう。
「どうだ?ガンダムの乗り心地は?」
ルース中尉は操縦席の外から私を眺めていた。
「なんか、自分が特別な存在になったと思ってしまいます。ホワイトベースのガンダムのパイロットもこんな気持ち、なんでしょうか?」
「どうだろうな?だが、ガンダムに乗ると言うことは特別なことなんだろう。」
ルース中尉は身を乗り出し、操縦席のパネルを操作する。
すると、ガンダム4号機のモニターが起動し、ガンダム4号機のシステムが表示された。
画面にはガンダム4号機の機体スペック、機体のシステム、武装データなどが映し出される。
「ガンダム4号機のデータ!?ルース中尉、私にこのデータを見せても大丈夫ですか!?」
「まあ、これはオルグレン少佐や他の人には黙っておいてくれ。君がそんなにも喜んでくれるから、サービスだ。」
「ははは、ありがとうございます。」
ルース中尉はいたずらっぽく笑い、私はくすくすと笑いながらガンダム4号機のデータを拝見するのだった。
「凄いな、全長はほとんど同じなのに9tも重さが違うし、ジェネレーターもこんなにも細身なのに1550kwもある。マグネットコーティング?これはなんだろう?」
「それはミノフスキー物理学の応用で磁気単極子を安定固着させる磁気塗膜だ。フィールド・モーターの反応速度と駆動性を向上させ、コーティングを施した部分の機械の干渉で発生する抵抗を減少させる技術らしい。」
「そんな画期的な技術が導入されているんですね。流石はガンダムだ。」
私は目を輝かせながら、機体のスペックデータなどに目を通すと次に武装データに切り換えた。
「武装もガンダム5号機と同じように頭部バルカン、ハンドビームガン、高出力ビームライフル、最新のビームサーベルが装備されている。本当に連邦軍の最新技術の粋を集めている。」
「確かに、こいつの標準装備は連邦のモビルスーツの中でもトップクラスの装備だろう。だが、こいつの装備はこれだけじゃない。」
ルース中尉はパネルを操作し、新しい武器のデータがモニターに表示される。
モニターに表示された武器は大型のビームライフルの様な物だった、陸戦型ジムの携行装備に長射程のビームライフルがあると聞いたことがあるので、それと類似する武器だろうかと考えた。
しかし、このビームライフルの銃口部分は大きい、これではビームの出力を絞ることができないと思うのだった。
「どうした?ソウヤ少尉?」
考え込んでいる私の顔を見て、ルース中尉が声を掛けられる。
「すいません、ルース中尉。少し、この武器の事を考えていました。」
「考えていた?」
「はい、大型のビームライフルだとは思うのですが、この銃口の大きさだとビーム出力が絞れなくて、狙撃に向かない銃口だなと思いました。」
「ほお、それで?」
「放水銃のノズルみたいだなと思いました。まるで、メガ粒子を相手に浴びせるような運用を目的に作られているような…。」
私はふと、ルース中尉の顔を見る。
ルース中尉は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔しながら、私を見ていたので私は驚く。
「すいません、失言を言ってしまったようです!」
私は慌てて、謝罪をする。
ガンダムの武器を放水銃のノズルのようだとは流石に失言だったと私は自分の迂闊な発言を猛省する。
しかし、ルース中尉から出た言葉は怒りの言葉ではなかった。
「君はすごいな。形状だけでメガ・ビーム・ランチャーの特性を当てるなんて、流石はオルグレン少佐が見込んだだけはある。」
「え?」
ルース中尉の驚いた顔をされながら、私を称賛されるので私は呆気に取られるのだった。
「そう、このメガ・ビーム・ランチャーは高出力のビームを放出するために作られたんだ。」
「放出するために作られた?ビームを発射でなく、放出をするんですか?」
ビーム兵器の発射と放出は同じビームを放つ意味では同じだが、発射は一瞬で出力を絞ることで威力を高めることで威力を出すことだ。
しかし、放出の場合は一定のビームの量を放ち続けることになる。
それはモビルスーツ相手にはオーバーキルな威力になってしまう、このメガ・ビーム・ランチャーは対モビルスーツではなく、もっと大きな物に対して使うのだと私は考えを巡らせる。
「このメガ・ビーム・ランチャーはモビルスーツが携行できる対艦用ビーム兵器なんだ。」
「モビルスーツが携行できる対艦用ビーム兵器ですって…。」
「ミノフスキー粒子散布下の宇宙空間でモビルスーツの早期発見は非常に難しい。その環境下で敵の艦隊が通るルートを予測し、メガ・ビーム・ランチャーを携行したガンダム4号機が艦隊を狙い撃つのに最適なポイントで待ち伏せをする。そして、艦隊がメガ・ビーム・ランチャーの射線に入った瞬間、メガ・ビーム・ランチャーで艦隊をビーム掃射するんだ。」
私はルース中尉の話を聞いて、驚愕するのだった。
確かに、ミノフスキー下での待ち伏せをしたモビルースーツを発見するのは至難の業だ。僅かな噴射光などの切っ掛けがなければ、目視やセンサーでの発見は難しい。
そんな、発見が困難なモビルスーツが艦隊を殲滅できる武装を装備し、位置が特定される前に決定打を打つができることは画期的な武装だ。
「すごい、画期的な武装ですね!モビルスーツ単体で戦略レベルの結果を出せるなんて!」
私はこの画期的な武器のメガ・ビーム・ランチャーのデータを興奮しながら読み始める。
しかし、私はデータを読んで行くに連れて、ある事に気付き、興奮が冷め、ある疑問が浮かび上がるのだった。
「ルース中尉、この武装はガンダム4号機のジェネレーター出力だけで足りるのですか?」
「いや、ガンダムのジェネレーターだけでは足りないから、外部ジェネレーターユニットも使う。」
「…外部ジェネレーターとガンダムのジェネレーターを使ったら、この武器は安定して使えるんですか?」
「……参ったな。流石はオルグレン少佐が見出しただけあって、聡いやつだよ。そうだ、理論上のエネルギー出力が出せれば、使えるはずとなっている。」
確かに、この武器は使用できれば、艦隊を殲滅できる画期的な武器だろう。
しかし、艦隊を殲滅するくらいのビーム兵器であれば、それだけ膨大なエネルギーが必要になる。
それをモビルスーツ単体で補うのは無茶だ。
例え、連邦軍の最新鋭モビルスーツのガンダムでも、それだけの膨大なエネルギーを賄えられるわけがない。
もし、必要なエネルギーを得るために二つのジェネレーターを無理にドライブさせると機体などに大きな負荷が掛かるのではないかと考えた。
「どうして、こんな不確かな兵器を使おうとするのですか?ガンダムのスペックなら、十分に戦うことが可能では?」
ルース中尉のような人が、こんな不確かな武器を使おうとするのだろうか。
ガンダムの機体スペックや標準装備なら、ジオンのモビルスーツに負ける筈はない。
だが、この人はメガ・ビーム・ランチャーの可能性に賭けている。
私は不思議でたまらなかった。
「そうだな、確かにこいつはちゃんと撃てるかどうか、分からない武器だ。」
ルース中尉はガンダム4号機のコックピット脇に寄りかかり、静かに言葉を続ける。青い装甲を撫でるように見つめるその目は、どこか遠くの戦場を見ているようだった。
「ソウヤ少尉、君はメガ・ビーム・ランチャーの危険性に気付いたな。放水銃のノズルみたいだって? ハハ、面白い例えだ。だが、的を射てる。流石だ。」
「え、いや、そんな…ただ、思ったことを口にしただけで…。」
私は照れ隠しに頭をかく。ルース中尉の称賛に、胸が少し熱くなるのを感じていた。
「謙遜するな。君の目は、戦場で生き残る目だ。」
ルース中尉はそう言うと、モニターに映るメガ・ビーム・ランチャーのデータを指差した。
「この兵器は、確かに理論上は敵艦隊を一掃できる。ミノフスキー粒子下で待ち伏せし、一撃でジオンの艦隊を壊滅させる。それが俺に課された任務だ。だが、君が気付いた通り、この兵器はガンダム4号機のジェネレーターだけじゃ動かせない。外部ジェネレーターを無理やり接続して、ようやく撃てるかどうか…。最悪、機体が耐えきれず、俺ごと木っ端微塵になるかもしれない。」
「そんな危険な兵器を…なぜ使うんですか? ガンダム4号機なら、標準装備だけでも十分に戦えるはずじゃ…。」
私の問いに、ルース中尉は一瞬目を閉じ、深く息をついた。そして、ゆっくりと私を見据える。その目は、戦場を何度もくぐり抜けてきた男の覚悟を宿していた。
「ソウヤ、引金を引くってのはな、ただ敵を倒すことじゃない。そこには、必ず何かを賭ける覚悟が必要だ。」
「引金を引く…覚悟?」
私はその言葉を反芻する。ルース中尉の声は静かだが、まるで心の奥に響くようだった。
「そうだ。このメガ・ビーム・ランチャーは、確かに不安定だ。だが、もし成功すれば、ジオン艦隊を一撃で壊滅させ、戦争の流れを変えられるかもしれない。たった一機のモビルスーツで、だ。だが、その一撃には俺の命も、ガンダム4号機も賭けなきゃならない。引金を引く瞬間、俺は全てを失う覚悟を持ってる。」
ルース中尉はコックピットの操縦桿を軽く握り、まるでその感触を確かめるように目を細めた。
「戦争ってのはな、ソウヤ。引金を引くたびに、何かを失う可能性がある。仲間、機体、故郷…時には自分自身の信念すらだ。イーサンのことも聞いただろう? 少佐は一週間戦争で両親と婚約者を失った。それでも、引金を引き続けてる。俺も、フォルドも、いつか戦場で消えるかもしれない。それでも、俺たちは引金を引く。なぜなら、それが戦争を終わらせるための一歩だからだ。」
私は言葉を失う。ルース中尉の言葉は、まるで重い鉄の塊のように私の胸にのしかかった。ガンダムのコックピットに座りながら、操縦桿を握る自分の手を見つめる。引金を引くことの重みを、今、初めて実感した。
「でも、中尉…そんな覚悟、どうやって持つんですか? 怖くないんですか?」
私の声は震えていた。ルース中尉はそんな私をじっと見つめ、静かに微笑んだ。
「怖いさ。毎回、戦場に出るたびに、胃が縮こまるような恐怖がある。だがな、ソウヤ。恐怖を乗り越える方法は一つしかない。仲間を信じることだ。」
「仲間を…信じる?」
「ああ。君とヤザンの戦い方を見てると、俺とフォルドのことを思い出すよ。あいつは先走りがちで、いつも俺が尻拭いしてるんだが…それでも、俺はあいつを信頼してる。戦場で背中を預けられる仲間がいるから、俺は引金を引く覚悟を持てる。君もヤザンを信じてるだろう? あのシミュレーション戦で、君が敵を見つけ、ヤザンが前に出て戦った。あの信頼が、君たちの強さだ。」
ルース中尉の言葉に、私はヤザンの顔を思い浮かべる。あのガンダムとのシミュレーターの模擬戦闘、ヤザンが前に出てくれたから、私は目の前の標的に集中でき、ビームライフルを撃てること。確かに、あの瞬間、ヤザンを信じていたからこそ、怖れずに戦えた。
「君が引金を引く時、ただ敵を狙うんじゃない。仲間を守り、未来を切り開くために引くんだ。その覚悟があれば、どんな恐怖も乗り越えられる。ソウヤ、君の戦う理由は何だ? その理由を胸に刻んで、仲間と共に戦え。それが、俺が君に伝えたい、引き金を引く覚悟だ。」
ルース中尉は私の肩を力強く叩き、ガンダム4号機のコックピットから降りるように促した。私は操縦桿を離し、ゆっくりとコックピットから降りる。その足取りは、さっきよりも少し重く、だが確かなものだった。
「ルース中尉、ありがとうございます。…俺、戦う理由、ちゃんと見つけます。そして、ヤザンや少佐と一緒に、戦争を終わらせるために戦います。」
「その意気だ、ソウヤ。君ならできる。イーサンも、君を信頼してるからな。」
ルース中尉は満足そうに頷き、ガンダム4号機を見上げた。その青い巨人は、まるでルースの覚悟を体現するかのように、静かに格納庫に佇んでいた。私はルース中尉の言葉を胸に刻みながら、階段を降りる。引金を引く覚悟と、仲間への信頼。それが私の戦う力になると、強く決意するのだった。
階段を降りると誰かが、ガンダムに近づこうとしていた。
「そこの君、何をしているんだい?」
ルース中尉がガンダムに近づく人物を呼び止める。
呼び止められた人物は慌てて私達の方を振り返るのだった。
黒人の女性で青い整備兵の続服を着ていおり、髪は少し乱れた短めの黒髪で綺麗な黒い肌をしており、細身のスタイルが良いボディーをしていた。
「申し訳ありません。この艦に配属予定でガンダムの整備をすることになりました。アニー・ブレビック上等兵です。」
アニー・ブレビック上等兵はルース中尉と私に敬礼をされる、私達もアニー上等兵の敬礼に敬礼で答礼する。
「そうだったのか、俺はルース・カッセル中尉だ。ガンダム4号機のパイロットだ。よろしくな。」
ルース中尉はアニー上等兵に手を差し出し、握手を求めた。
アニー上等兵も手を差し出し、ルース中尉の差し出された手としっかりと握手するのだった。
「よろしくお願いいたします、ルース中尉。では、そちらの少尉がガンダム5号機のパイロットですか?」
私はドキっとする。こんな新兵の私がガンダムのパイロットなんて、恐れ多い。
「いや、彼はガンダムのパイロットではないよ。もう一人のガンダムのパイロットはシミュレータールームで戦闘訓練中だ。彼はガンダムの見学に来た新米士官だ。」
ルース中尉がフォローしてくれたので、安心する。
ガンダムのパイロットなんて、私には責任が重すぎると思うのだった。
「私は特殊追跡部隊オリオン小隊所属のソウヤ・タカバ少尉であります。すいません、ガンダムのパイロットではなくて。」
「いや、すいません。私が勘違いをしてしまって。あれ?ソウヤ?タカバ?」
「はい、ソウヤ・タカバです。」
「オデッサ作戦の時の搭乗した機体は量産型ガンキャノンですか?」
「ええ、量産型ガンキャノンに搭乗してました。」
アニー上等兵は私の名前と乗っていた機体を言うと、目を見開き、大きな声で次の言葉を言った。
「あの〝オデッサの新星〟のソウヤ・タカバ少尉!?初陣のオデッサ作戦で大活躍の!?」
私とルース中尉は顔を見合わせ、困惑する。
〝オデッサの新星〟なんて、私は聞いたことがないぞと頭が混乱する。
「アニー上等兵、〝オデッサの新星〟とはなんですか?私は初めて聞きましたが?」
困惑する私の様子を見て、アニー上等兵は高揚している自分を落ち着かせると説明を始められた。
「タカバ少尉はご存じないようですね。少尉は士官学校を卒業して、すぐにモビルースーツ隊に配属され、初めての戦闘がオデッサ作戦で戦い抜き。ザク4機、グフ1機、ドム1機、マゼラ・アタック8両撃破の大活躍したと聞いております。」
「確かに、北部防衛線到達までにザク3機とマゼラ・アタック4両撃破、オデッサ北部防衛線突破の時にザク1機、ドム1機、グフ1機、マゼラ・アタック4両は撃破しています。しかし、そんなに大活躍したとは思ってませんよ。」
「いえいえ、初めての大規模作戦で無事に生還され、これだけの戦果はすごいですよ。連邦軍の広報が少尉の活躍を大々的に宣伝するのは納得できます。私が今、所属している部隊の隊長さんも称賛していましたから。」
「そうなんですね。でも、〝オデッサの新星〟とは、なんだか恥ずかしいです。」
「多分、ジオンの〝赤い彗星〟とか、〝黒い三連星〟にちなんで、広報が名付けたんだと思いますよ。オデッサ作戦は連邦軍の勝利に終わりましたが少なからず、痛手をもらってます。連邦軍はオデッサ作戦は連邦の勝利であると喧伝したいから、少尉の活躍を幅広く宣伝をしたのでしょう。」
例え、士気高揚のための宣伝のための二つ名だとしても、〝赤い彗星〟のシャアと同じような二つ名は新米士官の自分には恐れ多いと肝を冷やし、額から変な汗が出てくるのだった。
「ほう、ソウヤ少尉は〝オデッサの新星〟なんて、かっこいい二つ名があるのか。羨ましいな。」
ルース中尉はニヤニヤと笑いながら私の顔を見られる、私はあまりにも恥ずかしい二つ名に顔を真っ赤にするのだった。
ジャブローのとある執務室、男は書類に目を通すと素早く自分の名前をサインする。
机の上には大量の紙の書類が積み重なっており、男は次の書類を手に取ると素早く目を通し、先と同じように素早くサインをするのだった。
執務室のドアがノックされる、男は次の書類を手に取るのを中断し、ドアをノックした人物に入室の許可を出す。
「イーサン・ミチェル・オルグレン少佐、入ります。」
キリっとした顔、綺麗にまとまったブラウンの髪のオルグレン少佐が男の執務室に入室する。
「やあ、イーサン。部隊の方はどうだね?」
「はい、ゴップ大将。新しい部隊は順調ですよ。新型モビルスーツを2機も用意してくださり、本当にありがとうございます。」
「それは良かった。君達に手に入れてもらう物はそれだけ危険な物だからね。」
ゴップ大将は両肘を机に置き、口元で手を組んで微笑んだ。
「はい、承知しております。だから、私の部下にあの二人を配属し、新型を2機も用意してくれたのですよね?」
「ああ、そうだ。少なからず、あの二人には例の素養があるかもしれない。毒を制するには同じ毒で制さなければな。」
「しかし、彼らにもテム・レイ大尉のご子息と同じ素養があるのでしょうか?」
「今のところは分からない。しかし、あのフラナガン機関のグフと渡り合い。あのオデッサ作戦で無事に生還しているのだからね。」
ゴップ大将は机の下のゴミ箱から捨てたはずの新聞を拾い上げ、とある記事をイーサンに見せる。
「広報も、もっとマシなネタはなかったのかと思うくらいに酷い記事だ。新米の士官がオデッサで大活躍したことをここまで宣伝しなてくも良いだろうと思うよ。」
「確かに、そうですね。」
イーサンは記事の内容を読んで、苦笑をする。
まさか、自分の部下がここまで軍部に持ち上げられるとは思わなかったからだ。
「なにが、〝オデッサの新星〟だ。まるで、ジオンの二つ名みたいな名前を着けおって。確かに、新米の士官の戦果としては飛び抜けているが、ここまで誇張しなくてもいいだろう。」
「仕方ないですよ、ゴップ大将。オデッサ作戦は我が連邦軍の勝利でしたが多少の損害は出ておりますし、軍上層部でジオンの内通者がいましたからね。オデッサの勝利は連邦軍の大勝利と印象付けたい為、ここまで大々的に宣伝をするのでしょう。」
ゴップ大将はイーサンの見解を聞き、深くため息をするのだった。
「まったく、この記事だけでも頭が痛いのに明日はもっと厄介な物がここにやってくるから、私は憂鬱だよ。」
「厄介な物?なにが来るんですか?」
ゴップは目を閉じ、もう一度だけ、深くため息をする。
そして、このジャブローにやってくる厄介な物の名前を告げた。
「ホワイトベースだ。」
登場人物紹介
ゴップ大将
原作 [機動戦士ガンダム]
レビルから『ジャブローのモグラ』と呼ばれている。
個人的に彼が活躍する、『ジョニー・ライデンの帰還』は大好きです。
アニー・ブレビック上等兵
原作 [機動戦士ガンダム戦記 Lost War Chronicles]
PS2のガンダムゲームに出てくる登場人物。
個人的に、このガンダム戦記は神ゲーだと思っている。
特にアニーとの親愛度がMAXになった時のムービーは破壊力が高い。
【機動戦士ガンダム オリオンの軌跡】に登場するオリジナル機体で好きな機体はなんですか?
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