格ゲーの悪の組織のナンバー2やってます 作:テムテムLvMAX
こんにちは、黒服一号です、普段はナンバー2ナインライン様の補佐を担当しています。
黒服二号とは血の繋がりはないんですが、同じ境遇と言う縁で常に一緒に行動しています。
一号、二号という名称はアクダーマ様に与えられたものではありません、これはナインライン様に与えられたコードネームです。
私たちが安易に名前を呼ばれたくないという要望に応えてくださった結果であり、ナインライン様の優しさの表れでもあります。
私たちはとある児童養護施設で隔離されて過ごしてきました、アクダーマ様に助けて頂くまで暗い世界に、文字通りの意味で暗く狭い部屋に閉じ込められて過ごしていたんです、私たちのサイキックパワーを恐れた大人たちによって、今なら気持ちを分かります、ですが……当時は大人への憎悪を滾らせて、いつか施設をめちゃくちゃにしてやろうと思っていました。
しかし、そこへ現れたアクダーマ様によって私たちは本当にやるべきことを教わったのです、無闇に力を振るうのではなく人生を変えるために力を使うんだと、それ以来私たちはアクダーマ様に忠誠を誓い黒服としてドミニオンの力になっていました。
私たちはこの新たな世界を治める人間になるためいち早く大人になろうとしました、この思いは自然と出てきて、私たちを閉じ込めた弱い大人になりたくない、こういう思いも込めて。
「アクダーマって本当見境ないよな……こんなチビッ子達もスカウトしてるんだからさ……いやリヴィちゃんも居たな」
それからしばらくしてアクダーマ様が選んだナンバー2、ナインライン様が現れました、私たちはナインライン様の補佐をアクダーマ様より直々に命じられました。
「俺の補佐に君たちをか、正直頼りな……いや、分かった、頼りになりそうだ、だから抑えてくれ……おっそろしい二人だ……なんてパワーしてんだよ……じゃあこれからよろしくな」
少々低く見られてしまった事もありましたが、ナインライン様は私達から見て一般人であるとその時は思いました、何処か子供っぽいというか、サイキックパワーも小さく見え、大人らしくないようにみえていました。
「姉さん、あいつなんでナンバー2に抜擢されたんだと思う?」
「分からない……何処をどう切り取っても、普通に見えるもの」
私の目線から見て、アクダーマ様の作り上げた組織のナンバー2という役職はナインライン様に不釣り合いだと思っていました、いえ、これは今も悩む所ではあります、今もナインライン様は無理をしてナンバー2をやっているようですから。
しばらくナインライン様に仕えていたのですが、渡される仕事はお茶を淹れたり一緒にテレビを見たりナインライン様の身体をほぐしたり、言ってしまえば子供のお手伝いの範疇を超えなかったのです、どうやっても直接ナインライン様の負荷を軽減する何かを任されることはありませんでした。
「二人とも、甘いの好きか? ケーキ買ってきたんだけど、クマちゃん乗ってるやつ、食べる?」
それにしびれを切らしたのは二号でした、二号は形式上でもナンバー2の補佐という位置に誇り持っていました、ですが当のナンバー2から任された仕事がおつかいレベルなのが気に入らず、鬱憤を溜めていましたが、ある日とうとうそれを爆発させたのです。
「ん〜っ……ナインライン様! なぜあなたは我々にオママゴトのような命令ばかりするのか! 舐めているのか! 侮っているのか! 所詮子供だとバカにしているのか! ボクはそれが気に入らない! ボクの後に入ってきたくせに!」
「あのちょっと落ち着けって……な? 落ち着いて話をしよう? お願いだからさ! クマちゃん嫌いだった?」
「ボクは子供じゃないんだぞ! そんな所気にしてるんじゃない!」
「……ケーキ、嫌いだったか?」
「馬鹿にする! でぇぇぇぇりやぁぁぁぁあ!!!」
「ぎゃぁぁぁ!!!」
二号はナインライン様の執務室で大暴れし、何もかもめちゃくちゃに散らかして、ナインライン様にも本棚をぶつけたり投げつけたり、まるで子供じみた癇癪を起こしてしまったのです。
私も、思うところがあって止めませんでした、確かに子供です、そういう年齢です、ですが子供だからと許される甘い世界とは決別したつもりでした、だから不満を持っていました。
「……そうか、そういうことか、お前たちは組織に歯向かうか……私に歯向かうか……恩知らず共」
その時現れたのはアクダーマ様でした、アクダーマ様は顔に出さない怒りを持って現れ、その場にいた私と二号に向けられた冷たい気配は今でも忘れられません。
「あ、アクダーマ様……! これはっ」
「愚か者……ここで処分する」
アクダーマ様は2号に飛びかかり、私は目をつぶりました。
慈悲深さの中に仲間すら許さない容赦のなさを持ち合わせた人だとは知っていたからです、憧れた強い大人でした、ですが、今その憧れが恐怖になって2号に向けられていました。
「待てっ!」
「かばうのか、ナインライン」
ナインライン様がアクダーマ様と2号の間に立ち、アクダーマ様を止めたんです、驚いたのは私だけではなく、二号も、アクダーマ様も驚いていました。
「……かばうのかって、アクダーマ様ってば容赦なさすぎだって」
「不必要なら切り捨てる、害があるなら処分する、慈善事業をしたいわけじゃないんだ、私は」
アクダーマ様の手を掴みながらナインライン様は2号をかばって立っていました、その中にナインライン様達だけが分かるやり取りもありました。
「それならまず俺からだ」
「……どういう意味か?」
「お前がどういう世界を目指しているのか、ナンバー2の立場からある程度見える、そんな目的があって世界を支配しようとするお前がどうしてこの子たちを排除するんだ、それは自分を裏切ることじゃないのか……考え直してくれよ? 考え直さないってなら、俺からだ、少なくともお前の未来を担うこの子たちじゃない」
ナインライン様の説得がアクダーマ様の核心を突いたのか、僅かに目を見開いてアクダーマ様が一瞬の思考を巡らせて、その手を引いたのです。
「……フッ……そう、だな……このことは、不問にしよう、その二人の処分はお前に預ける、どうにでもするといい」
ナインライン様の言葉にアクダーマ様は考えを変えて、二号から離れていきました。
するとナインライン様はアクダーマ様を留めていた手を二号の頭に乗せ、髪を撫で、笑顔を見せた後、申し訳なさそうに言いました。
「まず……二人とも悪かった、俺が二人と距離を取ろうとしたのが間違いだった、二人を外見上の子供と扱つかって、すまなかった……俺は二人のような子供とどうやって接したらいいか分からなかったんだ、ふふ、なんでも知ってる素振りをする大人ほど信用ならねぇだろ……悪かったよ二人とも、今日からで悪いが、二人をナンバー2の補佐に任命したい、頼めるか?」
私は気がついたら頷いていました。
体が勝手に動いたんです、私も自分自身に大人というフィルターを掛けていました、自分がどう見られているかなんて機にしてなかったんです、思い込んでいたんです大人と。
それを外して自分を振り返れば、まだ子供です……私も二号も……背伸びしたい子供だったんですよ。
大人ではなく大人ぶる、そうしているうちはまだ子供と、この時の理解しました、ナインライン様が子供っぽく見えたのもナインライン様が大人ぶるのではなく私たちに合わせていたからだったんです。
「仕方ない、ボクを甘く見たことを後悔させてやるからな」
二号も嬉しそうにしていました、照れ隠しが下手なのは昔からですね。
それから私たちはドミニオンのため、いえ、ナインライン様のために働いています。
ここ最近はナインライン様の支部への顔合わせで忙しく、ナインライン様担当の本部の仕事の処理にてんてこ舞いでしたが、今日戻ってくる時にお土産があるというので不問としておきます。
「やっほ〜二人とも悪かったな、長い間本部の仕事任せてさ……どう? 大丈夫だった?」
「ええ、問題ないでーす」
「滞りなく」
「優秀だな……俺のお役御免も近いか……そうそう、二人ともありがとうという感謝を込めてケーキを買ってきたよ、クリームたっぷりいちごたっぷり……俺がよだれ出てきたわ……」
「やったねー!」
「一号! そんな返事があるか! 「いいっていいって、二号も肩の力抜けよ、誰もいねぇから、な?」……そうですね、一号がこの様子ですから、ボクもそうしましょう……ふふっ」
私たちとナインライン様は生まれた環境も育った環境も違います、アクダーマ様の世界征服という同じ目的を持つ仲間です、でもそれ以上にナインライン様は特別です。
私はナインライン様のような大人になりたい子供です、きっと二号も同じ気持ちだと思います。
「二号、ケーキは好きか?」
「もちろん、クマさんも有れば完璧だね」
「なら今回のケーキは完璧だな」
もしもドミニオンが無くなっても、私と二号はナインライン様についていきます、私たちはナインライン様の補佐なんですから。
出番、あります。