格ゲーの悪の組織のナンバー2やってます 作:テムテムLvMAX
「ナインライン……貴様を殺す為に、消す為に、私は何も惜しまない……故に全力を尽くし……殺す」
吹き上がる闘志、武道場を覆い尽くすサイキックパワー、そして俺に向けられた殺意、完璧に、完全に、確実に、決定的に俺を殺すだろう、やっぱ俺死ぬかもしれない、死の可能性がラウムの時の十倍くらいはあるよ、えぇとここで逃げてもいいなら逃げる、生きるために恥もプライドも無視できる俺だ、連コインも辞さない。
「聞き飽きたセリフだな、ライジンよ! お前は俺に勝てんぜ!」
「言ったな……!」
どうせなら少しでもキレさせて冷静さを奪い、俺の考える時間を貰う!
ライジンもこの狙いに気がついているのか、笑って見せた、その後足を振り上げI字の姿勢をとった。
どう出る、どうする、このライジンからは次が読み取れない、対人経験のない俺が戦えていたのはサイキックパワーを使った意識の読み取りや、高い身体能力のおかげだ、力も技術も上回る今のライジンはもはや手の施しようがない、逃げるだけが残された道だ。
ライジンが足を振り下ろし床に向けて踵を突き刺すと、そこから衝撃波が指向性を持って走り、俺の足元へと集まり、回避すらも出来ず俺の足元は爆発した。
「ぬぅぅぅ……“激雷”!」
「ぐ、うお、ぁぁぁっ!?」
爆発で打ち上げられた俺の身体はあまりにも無防備で、そこへライジンは強化された旋熱放を放とうと構えたが、それを放たず俺へと飛び掛かる。
「キェェェッ!」
「やべっ……ぎぃぁぃっ!?」
狙いが分からず咄嗟に顔を両手で守るが、ライジンの拳は俺の腹部に突き刺さり、保持されていた旋熱放が凄まじい回転でライジンの拳から放たれ、腹を貫く。
「防ごうというのが、間違いなのだ!」
拳の一撃でここまで……!
俺の身体は旋熱放の威力をモロに受け身体を地面に叩きつけられる、痛みで受け身を取れず、強い力で跳ね上がった身体は丁度ライジンの目線の高さだった。
「死ねぇ……」
着地し既に足を振り上げていたライジンは再び“激雷”を放った、かかとは俺の胸を捉えそのまま地面へと押し込まれ、俺の上半身は床へめり込む。
衝撃波が俺の心臓に伝わる、床を通じて人を打ち上げる威力を持つ衝撃波が肺に集中し、空気が全て押し出され、右肺と、血管のいくつかが破裂する音が幻聴かもしれないが聞こえた。
「かは……!」
「無様な、先ほどの威勢は嘘だったか……本気を出せばこの程度……やはり相応しくない……アクダーマ様の右腕にはな」
ライジンが俺を踏みつける力を強くした、首の骨が嫌な音を上げた。
死ぬ、俺は死が見えた、一度死んだからか死ぬタイミングが自分で分かってしまった、残された時間も、残された命も。
まだ、やりたいことがある、ドミニオンが本当に悪の組織なのか確かめないといけないんだ、それに俺を認めてくれた四天王たちへの不義理になるんだ、なにより俺が苦労してきたことを全部無視して「自分がナンバー2にふさわしい」と言い切るコイツの無責任さに腹が立つ……!
こんなポッとでのやつに、今まで散々ドミニオンのために動かなかったやつに、アクダーマに心酔するだけで動こうとしなかったこんなやつに……!
こんなやつに殺されかけてる俺に……腹が立つ、無性に腹が立つ。
「でも、アクダーマも悪いんだ……!」
「なにぃ? この後に及んでアクダーマ様に楯突くか?」
ライジンの足首をつかむ、力を込める、立ち上がろうとして押し返されるが、こっちも負けないように押し返す。
「ぬ? なんだ……!」
「……アクダーマがなぁ、そんなに好きならなぁ……」
「はぁ……?」
「テメェで勝手に崇拝してりゃ良いんだ……だってのに貴様はナンバー2になりたがる……ならなってみろよ今から業務引き継いでみろよ四天王のご機嫌取りしろよアクダーマに適当にあしらわれてみろよアンヌに拉致されてみろファッツマンと会食しろよボケ──ッ!!!」
うぉぉぉぉぉ喰らえ喰らえ喰らえぇぇえええ!!!
「こんクソボケが!!」
「ぐぅ……!?」
ライジンの足首を掴んだまま立ち上がり、ライジンの抵抗を無視して壁へ投げて、その壁を突き抜けていくライジンを追って外へ出る。
そこには中国支部の人員がずらりと並び武道場を囲うように立っていた、その列にはアンヌたちがいて俺たちの戦いをみていた。
「ま、どうでもいい! おらっ!」
「ぐあっ!?」
ライジンに一発食らわせて膝を付かせる、その膝に足を置いて大腿骨を踏み抜いた。
「ぎゃぁぁぁっ!?」
「愛と怒りと悲しみとついでに私怨と鬱憤と苛立ちの……!!!」
「やめろっ……! やめろっ!!」
足を砕かれてなお後ずさるライジンに俺の想いを込めた一撃をお見舞いだ、ビビらなくていい、俺は想いをぶつけるだけだから。
「子孫絶滅拳!!!!」
「ミ"……!」
勝った! 終わり!
ライジンは悶絶しながら気絶しその場で泡を吹いて倒れた、このまま置いておこう、どうせ部下がどうにかするだろう。
俺としては、ストレスがきれいさっぱりなくなって気分がいい、まるで死んだ後の死後の世界のようだ、まるで体が羽のように軽い。
「ふふ、ふはは! いい気持ちだ……あ……?」
おかしいな、なんで視界がゆがむんだ……なんでアンヌたちが俺を覗いてるんだ……?
俺、なんで見下ろしてるんだ……?
俺は……俺は……また死んだのか? ライジンと……相打ちになって……?
ん? あのシルエットは? 人が空を飛んでいる……見慣れた姿だ、まさか!
「下がれ」
アクダーマ!? 来たのか! ……なんでだ? やっぱりライジンと戦ったのは不味かったか……ライジンとの死合を察知して来たみたいだが……俺もライジンも再起不能だし、間に合ってないぜ……。
「アクダーマ様だ……!」
「あれがアクダーマ様……!」
「アクダーマ様……」
アクダーマの登場に中国支部の下っ端たちは口々にアクダーマの名を呼んだ、下っ端はその姿さえ見ることは叶わないだろうな、ましてや支部の下っ端なら。
「……さて、ナインライン……お前は無茶をする……」
「アクダーマ様、どうしてここに」
「オーストラリア支部長、アンヌだったか、それは聞くほどのものか? この私がここにいる理由は分かるだろう、ナインラインの出迎えだよ」
「で、出迎え?」
え? 出迎え? すでにオレ死んで幽霊になってるから見送りの間違いでしょ?
「ナインラインは現状死んだようなものだ、だが……」
「何を!」
「私のサイキックパワーは少し特殊でな……死者を呼び戻せる」
アクダーマが俺の頭部(死体の方)を掴み、何か力を流し込んでいるように見えた。
へぇ〜!? そうだったのか……あ、でもそうか、ゲームだとリザレクション持ちだもんな……え? それって他人に使えるのか?
おっ、少しずつ身体が治っていく、同時に幽霊状態の俺も身体に引き戻されていく。
アクダーマはその間、小声でつぶやいていたのを聞いてしまった。
「さぁ、コンテニューだ、ナインライン……お前にはまだ私の野望の手伝いをしてもらわねばならない、それにだ……」
それに……? やたら含みを持たせた言い方をするな。
「このアクダーマの……人生に置いても右腕となる男なのだからな……」
む? なんか毛色変わったな……?
とかなんとか考えている内に俺の身体は元に戻り、死ぬ寸前で息を吹き返した。
その後病院へと移動ししばらく入院となった、もちろんドミニオンの息が掛かった病院だ。
だが、病室のベッドに寝かされながら俺は嫌な予感に冷や汗をかいていた。
これで第一部が終わります、ここまでのご愛読ありがとうございました。