その為の右腕   作:オリジナル生徒が曇るの楽しいね

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始まりの終わり

私のミスでした。

 

貴女はそう言った。

だけど、アタシはそうは思わない。

あの砂漠、あの叡知、あの楽園、あの終焉。

全てで貴女は、貴女達は、皆は最善を尽くし、抗い、そして負けた。

そうだ。全部、全部が間が悪かった。

とにかく全てが手遅れで、何もかもがどうする事も出来なくなってた。

もし、もしも誰かが。

そんなどうしようもない悲劇の終着点を、奇跡の始発点に変える事が出来る様な人が居たら、

 

あの別離

あの復活

あの失墜

あの絶望

 

あれらを全て乗り越えて、この先が見れたかもしれない。

でも、そんな人は居なかった。皆、頑張ったけどどうしようもなかった。

どうしようも、なかったんだ。

だから、やめて。

 

「……貴女と貴女のその右腕に全て託します」

「私達の願い」

「私達の望み」

「私達の奇跡」

「全て託します」

「だから、どうか……」

 

嫌だ。待って、行かないで。

もう声も出ない。何時もなら動く右腕も動かない。

動けよポンコツ。何時もならこんな薄い壁、簡単に壊せるだろ。

 

「だから、どうかその右腕で助けてあげて……」

 

待っ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まただ」

 

目を開く。体を起こす。

軋む音に目を向ければ、不釣り合いな右腕が見える。

それに意思を向けると、問題無く動いた。

動いてもらわないと困る。

 

「アタシに何が出来る?」

 

見上げる天井は穴が開いて、日の光が漏れている。仮拠点の廃工場、ヘルメット団も寄り付かない砂漠の中にある場所。だが、アタシみたいなのが居着くには丁度いい。

本日晴天、本当に清々しく嫌になる晴天だ。

立ち上がる。ベッド代わりの段ボールとコンテナが崩れて、アタシも右腕の重さに引かれて落ちる。

痛い。怠い。目がチカチカする。喉が乾いた。

何時開けたのか覚えていないペットボトルの中身を飲み干す。温くて臭い水、飲めば確実に腹を壊す。でも〝彼女達〟のお陰で大丈夫。それに喉はましになった。

行かないと。アタシの役目を果たさないと。

今度は、今度こそ護らないと。

役目を果たせ。寄せ集めの継ぎ接ぎのポンコツ。

倒れるなら役目を果たせ。

朽ちるなら自分を使い潰せ。

立ち上がれ、立ち上がれ、立ち上がれ。

息を吸え、酸素を脳に筋肉に回せ。

 

「……っは!」

 

さあ、行こう。

まずは今日、この日を乗り越えろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願いします。先生、どうか彼女を救ってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

何処かで聞いた覚えのある声が聞こえた気がした。

周りを見ても、その声の主達は居ない。

居るのはヘルメット団とアビドス対策委員会のメンバー。

そして、聞こえてくるのは鳴り止まない銃声と怒号だけだ。

 

「先生! どうしたんですか?!」

「ああ、ごめん! ちょっと耳鳴りがして。ノノミ、六時の方向に掃射!」

「はい、やりますよー」

 

ノノミのガトリングが迫るヘルメット団を食い破り、その隙をセリカとシロコが広げていく。

 

「うへー、……ちょっと多くないかな?」

「ホシノ! もう少し耐えて!」

 

ホシノの言う通り、事前に集めた情報から予測していた数よりもヘルメット団が多い。

それにいやに統率が取れている。

 

『先生! また増援です!』

「くっ! これ以上は……。皆! 一度退くよ!」

「は、はい!」

「じゃあ、おじさんが殿だね」

 

ホシノが盾を構え、ノノミ達が援護に銃弾をばら蒔きながら撤退を始める。

とにかく、今は体勢を立て直す事が先決だ。

そう考え、足を踏み出した時だった。

 

「先生……!!」

 

誰の声だったのか。それは分からない。

ただ、解る事がある。

警戒の外、そこから現れた別動隊。

恐らく、挟み撃ちを計画していたカイザーの兵。

それが放つ銃弾で自分は死ぬ。それだけだ。

 

「くっ……!!」

 

アロナの防御も間に合わない。

ただ、周囲の時間がゆっくりと過ぎて、アビドスの皆がこちらに駆け寄る姿と、カイザー兵が引き金を引く様がよく見えた。

死を覚悟し、カイザー兵へのせめての抵抗と睨み付ける。

そんな視界の中で、突然影が落ちてきた。

 

「…………先生、ご無事で?」

「え? あ、うん。大丈夫だよ?」

 

あまりに突然降ってきたそれは、襤褸切れと言っていいローブで顔は見えない。

だが、背格好と声で少女だと判った。

しかし、特異な部分がある。先程まで自分に銃口を向けていたカイザー兵、それを押し潰す青い装甲に覆われた巨腕だ。

 

「君は……?」

 

少女は気絶したのか動かないカイザー兵をその巨腕で軽々と掴み上げ、いまだにこちらに狙いを定める隊へ投げつけた。

 

「……話は後です。今は逃げてください」

 

そう言うと彼女は右腕を盾代わりに掲げて、ヘルメット団とカイザーの混成部隊へと駆けていく。

 

「なんだこいつ?!」

「え? ちょっと! うわっ!?」

 

ヘルメット団の一人を掴み武器代わり振り回し、気絶したら放り捨て、またそれを繰り返す。

 

「先生、大丈夫?」

「うん、私は大丈夫。だけど……」

「あの子、知ってるの?」

「いや、初めて会うよ」

 

ホシノを始めとして、アビドス対策委員会は油断せず警戒しながら距離を取っていた。敵混成部隊の意識は完全に彼女に向いている。

青く重厚な装甲に覆われ、前腕は通常の義手よりも長く様々な機構が仕込まれているのか、手首が回転し丸ノコの様に銃や装甲を切り裂き、手甲部からは銃弾が放たれる。

 

「先生、……ちょっと急いで立て直そう」

「そうだね。あれはちょっとマズい」

 

フードに隠れて見えなかった顔は戦闘の余波ではだけ、見えた顔は鬼気迫るというにも生温さすら感じさせる表情だ。

 

「潰れろ!」

「かっ……!!」

 

盾持ちの重装甲兵が大盾を振り下ろし、彼女を押し潰そうとする。

だが、彼女は潰れない。歯を食い縛り、右腕で受け止める。肩の接続部が軋み痛みが走り、肘関節からはモーターの廃熱が止まらない。

だが、それがどうした。

〝彼女達〟は無くした右腕をくれた。

自分達がどうにかしたかっただろうに、こんな自分に託してくれた。

だから、

 

「消え失せろ……!!」

 

大盾に指を食い込ませ、逃がさぬという意思で怯ませる。

そして、前腕の装甲が解放された瞬間、重装甲兵の大盾と本人がひしゃげ弾き飛ばされ、砂漠の砂を巻き上げ墜落する。

 

「……聞け。これより先、シャーレに仇為すならば、アタシが相手になる。そいつと同じ目に合いたくないなら去れ……!」

 

その言葉にヘルメット団は散り散りに、カイザー兵は一目散に逃げ去り、少女は襤褸切れのローブのフードを被り直す。

 

「勝っちゃった……?」

「ん、あの子の勝ち。だけど……」

「油断は禁物だよ」

 

アビドスの皆の言う通り、油断は出来ない。

シャーレに仇為す者は許さないという発言と行動から、敵とは思えない。だが、シャーレの責任者である自分には彼女と会った覚えがない。

先生が少女の正体を思案する中、彼女がこちらに歩み寄ってくる。

 

「……」

「シロコ、待って」

 

警戒し銃口を向けようとするシロコを制し、先生は彼女の目の前に出る。

 

「ちょっと先生?!」

「大丈夫だよ。……それで、えっと、君は?」

 

先生の問いに返ってきたのは言葉ではなく、生身の手だった。

生身の左手は先生の頬や肩、首や腹を触り、何かを確認する様な手つきで暫くそれを続けた後、フードの奥から深い安堵の息が聞こえた。

 

「今度は、間に合った……」

「え?」

「良かった。間に合ったんだ……」

「あの、どうし……っ?!」

 

はっきりと聞こえない程小さな声、それを聞き直そうとした時、彼女の体が崩れ落ちた。

 

「ちょっ! 大丈夫?!」

「先生!」

「ごめん。手伝って」

 

どうにか支えた少女の体は軽いが、右腕の重さは先生一人では厳しい。

ノノミやセリカの助けを借り、気絶した彼女を日陰に寝かせる。

 

「ふぅ……。そう言えば皆怪我はない?」

「皆は大丈夫ですよ~。……それよりも先生……」

「この子だね」

 

熱中症の可能性を考え、アヤネに補給を頼みながらローブを脱がせ、ホシノは体を締め付けている部分は無いかと確認する。

幸い、全体的にゆったりしたデザインの服で、体を締め付け熱が籠る心配は無さそうだと、一先ず先生の上着で扇いで風を当てる事にする。

 

「ホシノ、その子は大丈夫そう?」

「んー、とりあえずは大事にはなりそうにはないよ。でも、これはちょっとね?」

 

小柄な体に不釣り合いな右腕、意匠的にカイザー製品ではなさそうだが、あの性能を見ると他にこんな義手を扱える様なメーカーに心当たりは無い。

 

「ま、とりあえずはその子が起きてからだね」

 

先生は数秒、悩む様子で頭を捻り、今は彼女が目を覚ましてからだとして、これからの計画を練り直すのだった。




名¦守家ツグ
所属¦連邦捜査部シャーレ

原作とは違う世界線のキヴォトスから全てを託されて送られてきた生徒。
しかし、本人は所謂ネームドの様な力も知恵も無い、ただの一般生徒に過ぎなかった。
だから、そんな自分を変えたい変わりたい。コミックのヒーローの様に誰かを助けられたら、もしかしたら変われるかもしれない。
そう思い、シャーレの門戸を叩いた。
それが全ての始まりだとは思わずに。

義手
全体的なイメージはロミオ・ブルーの腕。
制作はエンジニア部を代表としたミレニアムとゲマトリア。
元はある事件で右肩から先を失った彼女の為に作られた極普通の義手だった。
しかし、彼女の願いと望みを叶え、頻発する戦いを生き残る為に、徐々に武装を施し今の姿となった。
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