その為の右腕   作:オリジナル生徒が曇るの楽しいね

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役立たずの抵抗

あれから数日が経った。

ツグの姿は見えず、あの日が嘘だったかの様な日常の中、先生はホシノと空き教室で作戦を練っていた。

そうして、ある程度の作戦を練り終わった頃、ホシノが窓の外を眺めながら呟いた。

 

「先生。あの子……、ツグちゃんの話なんだけど本当だと思う?」

「判断が難しい、かな? でも、まるっきり嘘とは思えない」

 

未来から来たなんて言われて、鵜呑みする人間は居ない。だが、ツグの話にはどこか真実味があった。

 

「先生もか~。おじさんもさ、信じられないんだけど、嘘かって言われるとちょっとね?」

「でも、話が本当なら私、度々重傷なんだよね」

「おじさんも最後はシロコちゃんにだよ。……ツグちゃんはそれを阻止しに来たんだよね。連絡は?」

「しようと思ってるんだけど、中々指が動かない。なんと言うか、連絡したらものすごい血相で飛んできそうでさ」

 

なんかそれは悪い気がする。

あの語り口、あの反応。全てがあの話を真実として裏付けている様な気がしてならない。

しかし、未来から来たという話をただ信じられるか。

これが引っ掛かって仕方がない。

 

「おじさんさぁ、ちょっとあの子が心配なんだよね」

「ホシノも?」

「やっぱり先生もか。……あの子、早くなんとかしないと、最悪壊れるかも」

 

ホシノから見ても、ツグは壊れる寸前だ。

壊れる寸前の状態で、最後の一線を頼りに保たせている。それが何なのか、先生とホシノはお互いを見る。

 

「私達、だね」

「ツグちゃんが言ってたセリカちゃんの誘拐。もし、それが起きたら間違いなく暴走するし壊れる」

「それ以外にも、私やシロコの事。それに多分まだある」

「ミレニアムのビッグシスターだっけ? それとトリニティとゲヘナ、少なくとも三大校で何かが起きる」

 

ミレニアムでは判らないが、トリニティとゲヘナで起きる事件で先生は致命的な重傷を負う事になる。

そして、アビドスで発生したという古代の遺産だか遺跡だかによって、アビドスだけでなくキヴォトス自体が危機的状況となる。

 

「多分、まだ話してない事はある」

「けど、それを言わないって事は話せないか話したくないか」

「もしくはその両方。あとは話せないかだね」

「未来から来たから?」

「タイムパラドックスなら、ツグが来た時点で発生してるだろうから他の理由かな。ほら、怪談とかであるよね。話したら、話題に出したら寄ってくる的な」

「うへー、おじさんそっち方面はごめんだよー」

 

うんざりした表情を浮かべるホシノだが、先生はその可能性を捨てきれない。

この土地、キヴォトスは先生の持つ常識から外れた土地だ。生徒はファッション感覚で銃を持ち、撃たれても打撲や内出血程度に収まり、他の住民は人の様に直立した犬や猫、果てはカイザー兵の様な機械人。

先生が知る〝普通〟からはかけ離れた世界、そこで怪談の様な存在が居ないか。

それを否定出来ない。

 

「とりあえず、今はセリカちゃんの誘拐を警戒かな?」

「ツグの話なら、セリカの誘拐から全部が始まってるからね」

「問題は誰が、だけど分からないんだよね」

 

そう、ツグの世界ではセリカの誘拐犯は結局判らず、第一容疑者のカイザーも不審死を遂げている。

あの話、聞いている限りでは何もかもが悪い方向にだけ動き、変えようとすると更に悪化。まるで、お前達はそうなるべきだと、何者かが強制しているかの様な印象すらあった。

それに、もう一つ気になるものがある。

 

「先生、あれの中身は見た?」

「いや、まだだね」

「重要みたいだし、早く見た方がよくない?」

「うん。だけど容量が大きいのと、何かプロテクトがかかってるみたいで、ちょっと苦戦してるんだ」

 

シャーレに戻り、アロナに解析を頼んだが、プロテクト解析は難航しアロナの叫びだけが木霊する結果になった。

恐らく、このデータを作った相手は本当に最悪の事態まで想定していたのだろう。

つまり、今もタブレット内で解析が進められているデータは、それだけの危険性と価値があるものだ。

 

「まあ、なんとかなるよ」

「そう願うよ~。っと、皆帰ってきたね。……って、ん?」

「どうしたの? ホシノ。……誰かを運んでる?」

「あれ、ヘルメット団だ。なんで?」

 

ノノミが背負っているのは、間違いなくヘルメット団の一人だ。

しかし、遠目から見ても分かる程にボロボロだ。

 

「なんでかは、とりあえず聞いてみようか」

 

嫌な予感がした先生は、話を聞く為に教室から出て四人の元へと向かった。

 

「あ、先生」

「やあ、皆。お疲れ様。で、なんだけど……」

「ん、そこで倒れてた」

 

シロコが指差したのは、校門から少し離れた曲がり角だった。

 

「やけにボロボロだったから、流石に放っておくわけにもいきませんでしたから」

 

ノノミの言う通り、彼女はかなり痛め付けられている様に見えるし、事実意識が無いのかヘイローも消えている。

 

「とにかく、校舎へ」

「う……」

 

と、先生が先導して保健室に向かおうとした時、背負われたヘルメット団が目を覚ました。

 

「大丈夫ですか?」

「ここは……」

「アビドス高校よ」

「アビドス……!」

「きゃっ!」

 

セリカの答えを聞くや、ヘルメット団はノノミの背中から跳ねる様に下りた。

 

「くそっ! なんだよ?! 何がしたいんだ?!」

「ちょっと落ち着いて。何があったの?」

「何が? お前らだろ! あの義手のバケモンけしかけたのは!」

 

その言葉に全員が顔を見合せた。

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