完現術者の日常 作:猿真似
本当に気が向いた時だけ投稿します。
「はぁ、はぁ、はぁ…まじで…なんなんだよ…」
夕暮れ時、1人の少年が誰もいないビルの屋上でで息を切らしていた。
来ている制服から、この近くの中学校の生徒という事が分かる。
おそらく部活帰りなのだろう。だがその顔は、部活が終わった喜びでもではなく、何か恐ろしい物を見たかのように真っ青だった。
「なんだよ…あの化け物…なんで俺が…こんな目に…!」
その時だった。
近くの建物の裏から、何か巨大な影が姿を現す。
その全身は灰色で、人というよりも、動物に近い。
手…というか前足には人なんてあっという間に輪切りにしてしまえそうな白く鋭い爪。
そしてその頭には、髑髏のような仮面をかぶっている。
「なんで…おれg…………うそ…」
少年の顔に浮かんだ絶望的な表情がさらに深くなる。
その理由は明白だった。
「なんで…こんなに…」
少年を囲むように、合計6体の化け物が現れる。
それぞれ形や色は違うが、全ての個体が顔に髑髏のような仮面をかぶっている。
「ごめんなさい…お母さん…」
最初に現れた一体が、その爪をゆっくりと振り上げる。
それが振り下ろされる時だった。
「大丈夫か〜坊主」
「…え?」
少年が目を開けた時、目の前にいたのは、あの巨大な化け物ではなく、
ヨレヨレのシャツにジーパン、ボサボサの髪にちゃんと剃れてない顎髭。
まるでダメ男というコンセプトであえて作ったのかと思うほど清潔感のない男が立っていた。
だが、その手には、奇妙な形の刀のようなものが握られている。
その刀を男は持ち上げ、近づいてきた化け物に向かって振り下ろす。
直後、赤い斬撃が刀身から放たれ、直撃した化け物が真っ二つになった。
「もう大丈夫だぞ。」
(良かった…)
その声と共に、少年の意識は闇に飲まれた。
一年後
その名は、カフェ「AURA」そこまで広いわけではないが、テレビにも取り上げられた事がある、人気店だ。
料理の味だけでなく、相談に乗ってくれる優しくて美人な店長がいることもあり、今日も客足は途絶えることはない。
その横にある細い道を通った先、カフェ「AURA」の裏手に小さな探偵事務所がある。
建物はカフェ「AURA」とつながっているが、穏やかな雰囲気を醸し出す表の「AURA」と違って、ひっそりと廃れた様な雰囲気を醸し出す。
そこには、こんな看板が立っていた。
『
「相変わらずうさんくさい看板だな。」
そんな事をぼやきながら、1人の学生がその建物へと入っていく。
玄関のすぐ先にある応対室を通り抜け、事務所の中の階段を上がり、上の生活スペースまで踏み込んでいく。
階段を上がってすぐのリビングは綺麗に整えられている。
いい匂いのする扉の横を通り、リビングを通り抜け、その先にある個室の扉を勢いよく開ける。
そこは、家具が綺麗に並べられたリビングとは違って、物がそこまで多くない部屋だった。
あるのはデスクにパソコン、ベッド、本棚だけ、そしてそのベッドの上に目的の人物は横たわっていた。
ボサボサの黒髪にちゃんと剃れていない顎髭、ヨレヨレのシャツのまま、ベッドに倒れ込むように眠っている。その手首には、黒い何か動物の牙のようなものを嵌め込んだ黒いブレスレッドがつけられている。
「おい!起きろ!一条!もう16時だぞ!」
「ん…あと1時間…」
「それマジで言ってんなら殴るぞ」
その言葉を聞いた途端、一条は跳ねるように飛び起きる。
「冗談だよ冗談、落ち着けって、アハハ…」
「はぁ…今日、依頼人と会う予定あんだろ、早くしないと、「すみませーん」やば!来たじゃんか!」
「落ち着けって公平、すぐ準備するから、応対室に通しておけ」
「ハイハイ、わかったよ。」
その数分後
「本日は、こんな事務所を選んでいただきありがとうございます。」
そう言いながら、依頼人の対面に座る一条、その姿は先ほどとは違い、しわひとつないシャツに身を包み、依頼人と対面する。
「では…依頼内容をお聞かせください。」
人物等紹介
一条優吾:小さな探偵事務所を営む男
石本公平:冒頭の少年。探偵事務所のバイト
黒い腕輪:真っ黒な腕輪。装飾は3箇所にあり、上(手の甲)側に黒いカケラが嵌め込まれている。(縁は金色)もう2箇所は下(天のひら)側に五芒星のようなマークと髑髏のようなマークが彫られている。