ソードアートオンライン 翠玉の守護者 ~神様のミスで死んだので、SAO世界に転生して頑張りたいと思います。~ 作:灯油明太子
第1層のフィールドに、金属音と掛け声が響く。
近くの岩陰から様子をうかがうシュウトの視線の先では、赤い装備に身を包んだ風林火山のメンバーがモンスターとの戦闘をしていた。
「とどめだ!」
クラインがとどめを刺し、戦闘が終わったのを見計らって、シュウトはクラインに声をかけた。
「あんたがクラインで、間違いないか?」
突然呼びかけられたクラインは、眉をひそめながら返答する。
「ん?誰だおめえ?」
「いきなり悪い。キリトって名前に心当たりはあるか?」
「知ってるが......あいつの知り合いか?」
「あぁ、キリトがクラインのことを心配してたんだよ。『ちゃんと生き延びてるかな?』って。寝言で」
一瞬の沈黙の後、クラインが笑い出した。
「ははっ、あいつが寝言で俺の心配ねぇ......それで、わざわざ声をかけてくれたのか。サンキューな」
クラインが少し照れくさそうに頭を掻きながら言った。その後、少し真面目な顔になって言った。
「おめえ、名前は?」
「シュウトだ」
「そうか、シュウト。せっかくだ、フレンドくらいはなっとこうぜ」
クラインはそう言うと、シュウトにフレンド申請を送る。
「おう、よろしくな」
そう言うとシュウトもメニューを操作して、二人のフレンドリストに互いの名前が追加された。
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皆さんこんにちは、シュウトです。
第1層の攻略を終えて、その足でクラインとのパイプ作りに向かったんですが、大成功。そのまま、その日はクライン達と一緒にご飯を食べて、同じ宿に泊まることにしました。ほら、第2層で宿をとるのを忘れて、すぐに始まりの街に転移しちゃったんでね。
そういえば、さっきクライン達が赤い装備でそろえてるのを見て、自分もそういうのやらないとかなって思うんですよね。将来的にキリトとかとパーティーを組むことを考えたときに、キリトが黒ずくめ、アスナが白、風林火山メンバーが赤なわけですね。キリトハーレムの他のメンバーとか考えると、被らない色ってちょっと濃い目の緑色だと思うんですよね、少なくともSAO内においては。てなわけで、緑色の装備をそろえることにしました。
装備を緑系で揃えてみたら、意外と好評で。風林火山のメンバーからは「目に優しい」とか「回復職っぽくて安心感ある」とか言われました。いや、俺カウンター主軸の盾持ち片手剣プレイヤーだから。回復できません。というか、このゲームは魔法の類なんて何もないから、どうやって、回復させるんだよ。
第2層に戻って、キリトとアスナと合流してからは、第2層以降も3人で攻略を継続。キリトの火力とアスナの手数、そして俺の盾とパリィで、まるでよくできたRPGのパーティみたいな連携をしてました。いや、実際そうなんだけど。とはいえ、結構大変だったんですよ?前世でプログレッシブを全然見れてないから、第2層からの展開が全く分からないんだもん。
ただキリトとアスナが強すぎて、第2層の攻略もボス討伐も滞りなく進んだ。
続く、第3層ではマッピングと罠解除を俺とアスナで分担して、キリトはというと、モンスターの挙動研究という名目で一人で特攻したりしてた。怖すぎるだろ。これが二刀流の資格を持つために必要な無鉄砲さなんでしょうか。
そのうち、ボス戦が終わるたびに「このメンツ、固定にした方が良くない?」という空気が生まれ始めて、第4層以降は完全に定番化しました。シュウト、キリト、アスナ。攻略組のトリオ枠。
でもまあ、当然ながらずっと順風満帆ってわけでもなくて。
第6層の迷宮区で、ちょっとヤバい目に遭いました。強攻撃モーションに対して、俺の盾受けがギリ間に合わず、HPがイエローゾーンのちょっと赤よりに。しかも移動できるタイプのソードスキルのクールタイム中。やばい、これ死ぬパターンじゃんって思ったその瞬間、キリトが割り込んできて助けてくれた。
「今のは俺のミスだ」って言ってたけど、いやいや、どう見ても俺の判断ミスだから。
アスナも「……次からも、絶対に生き残るって約束して」なんて言ってくるし。なにこれ、死亡フラグ?
そんなこんなで第7層・第8層もこなして、気づけば攻略速度は他のパーティより頭ひとつ抜けていた。
それが良かったのか悪かったのか、他の攻略組から「情報共有が少ない」「独走しすぎ」なんて空気が流れ始めて。いや、それはそっちが遅いだけだろ……と言いたいけど、変に摩擦起きてもめんどいので、3人で話しあって、得られた情報をアルゴ経由で還元することに。うん、やってること便利屋だべや、コレ。
そんな日々を続けて、2023年の3月に入ったころ。キリトがいろいろと理由をつけて、俺達は、パーティーを解散することになった。プログレッシブだとそういう展開あったっけ?と思ったけど、そこまで映画やってないもんな。まあ、原作本編ルートに近いってことでヨシッ!
こうして、俺たちは一時的にパーティを解散することにしました。いやまあ、たぶんまた合流するでしょ。そのころには、アスナは血盟騎士団の副団長として攻略の鬼になってるんでしょうか。
パーティーを解散することを決めた夜。宿屋のロビーで、3人並んで座って、会話もないまま2人を見つめる時間があった。
この、静かな余韻の中で思ったのは――。
ああ、自分で思ったよりも、このパーティが好きだったんだなってこと。やっぱり、キリトもアスナもいい人なんだもん、居心地がいいに決まってる。とはいえ、ここで引き留めて俺の知らない展開に進んでいってもらっても困るんだよね。サイドエフェクトという名の、原作知識が通用しなくなるもんね。
というわけで、明日からは「ソロ活」です!
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と意気込んだはいいものの、全然エピソードトークができないんですよね。だって、一人だと何にも起きないんだよ。クエストをクリアしたお祝いを一人でやるわけにもいかないじゃん、ボッチ感強すぎて。
ここまで約半年くらい、キリトとアスナとほとんど一緒にいたせいで、いや、おかげさまで、今は一人でいることに違和感を覚えるようになってきました。最近はNPCに話しかける狂人ムーブの実績も解放しましたよ。昔は人見知りしすぎて、一人で過ごすのが当たり前だったのにね。
とはいえ、ソロプレイにもいいところがある。それは、この独り言を口に出しても不審に思われることが圧倒的に減る事だ。
例えば、戦闘しながら
「うへぇ、こいつ無駄に体力多いじゃん。めんど。......おりゃ!よし、パリィ成功!さすがに、回数重ねてきたから、この階層の敵の行動も予備動作から予想できるようになってきたな。やっぱりこの世界に来るなら、モンハンは必修
とか。
......誰もツッコミしてくれないけどね!
あとは、マイペースに動けるのもかなり大きい。結局、夜型ですからねオタクってやつは。いつぞやの第1層の攻略の時に寝坊しないように、できるだけ早く寝てたけど。そんな面倒なことしたくないですよ。
そういえば風林火山のメンバーが最近、攻略組に加わった。たまに狩りに誘われて、一緒にパーティを組んだりすることもあって、狩りが終わると決まって宿屋で俺に飯を奢ってきては、
「おめー、そろそろソロプレイはやめといた方がいいんじゃねぇのか?」
っていつも俺のことを心配してくれた。ありがたいけどね。
アルゴとの関係も続いていて、フィールドに行っては情報をアルゴに売る日課をこなしている。大体は、キリトの方が先にその情報を売っていて、高値で情報を売ることはできていない。
昨日も、
「キー坊もだけど、シュー坊もソロでよくそんなに攻略の最前線を維持できるナ」
「いやいや、俺は死なないように必死にレベル上げを頑張ってるだけだよ」
「それでも最前線にいることには違いないダロ?」
「まあ、そうかもしれないけどさ」
「これからも贔屓にしてくれよ、ニャハハ」
てな感じで、雑談してたり。
最初は「同じ情報を買う」理由が分からなかったから、聞いてみたことがある。そしたら、
「情報は裏が取れてて、信用できることが一番だからナ!」
ということらしい。納得である。
そんなこんなで攻略が進み、今の最前線は24層。
キリトやアスナといつもパーティーを組むことはないけど、ボス攻略では顔を合わせるため、疎遠になることはなかった。その日は偶然にもキリトとアスナとパーティーを組んで、ボス攻略に挑んだ。
その日も無事に犠牲者を出すことなく、ボス攻略を終えて、久しぶりに3人で、昔のように祝勝会をすることになった。
「「「乾杯!」」」
攻略組御用達の安い酒場の一角で、3人が木製のカップを鳴らす。
久しぶりにパーティを組んだとは思えないくらい、呼吸はぴったりだったし、何より今日も全員生きて帰ってこられた。それだけで十分だ。
「はぁ~、やっぱ二人とも強いわ。正直、俺ソロになってからさ、パリィの練習ばっかりしてたから、久々に連携できるか不安だったんだよね。やっぱ、火力お化けがいると戦闘が楽だよね~」
「別に、そんな心配いらなかっただろ」
キリトが軽く笑う。
「ふふ、昔より動き良くなってたんじゃない?」
アスナも微笑んだ。
和やかな空気の中で、ふとアスナが呟く。
「……次は25層ね」
「ようやく1/4てところだな……」
キリトの声も少しだけ真面目になる。
「あ......」
……気づいてしまった。いや、正確に言えば思い出した。
実際に、この目で見たわけではないし、具体的なシーンも知らない。しかし、キバオウ率いるアインクラッド解放隊が攻略組からリタイヤしてしまうほどの犠牲者を出した25層がすぐ目の前に差し迫っている。
これまで何人も死んだ。それでも何とか進めてきた。でも、次は"クォーターポイント"であり、今までの比ではない被害を覚悟して攻略に挑まなければならない。自分が救いきれない仲間が出てきてしまうかもしれない。
もし、キリトやアスナが、風林火山のやつらが……
俺を信頼して、背中を預けてくれる仲間を守り切れるのか。
「...ウト? シュウト!?」
「大丈夫? 深刻そうな顔してたけど......」
二人に心配させてしまったようだ。
「……なあ、俺さ」
自分でも驚くくらい声が小さい。
「次、誰か死ぬんじゃないかって......思ってて」
俺の言葉に、キリトもアスナも黙った。
短い沈黙のあと、キリトが目を伏せてから、こちらを見て、言った。
「俺たちは死なない。誰も死なせない。それだけだ」
アスナも頷いた。
「そうよ。死ぬのが怖いなら、生き延びる方法を考えるしかないじゃない」
その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた気がした。
「……だな。悪い、変な空気にしちまった」
「いいさ」
キリトがカップを掲げる。
「25層も、絶対に突破するぞ」
「おう」「ええ」
再び、カップが軽い音を立ててぶつかった。
前回の更新からかなり間が空いてしまって、申し訳ないです。公開してから、お気に入りに登録してくれた方がいらっしゃったりで、とても嬉しかったのです。
ですが、いかんせん大学院の修士2年生なもので、就活や研究で忙しくて、全然更新できませんでした。なんなら、作品を思いついたときに、一旦第1層までの展開しかちゃんと考えてなかったもので、頭の中で話が進んでいかなかったんですよね。