帝国学園との試合の翌日、部室でミーティングし昨日の試合の反省をする。
「問題点も何もみんな体力なさすぎ。」
マックスの鋭い指摘に部員達は落ち込む。
(まぁ、今まで練習サボったりしてたから無理もないな…)
「あのう、昨日の豪炎寺さん、サッカーに入部してくれないんですかね?染岡先輩や彩先輩のシュートも凄かったけど、豪炎寺さんのシュートの威力も凄かった!豪炎寺さんがいれば、戦略の幅が大幅に広がると思いますが…!!」
「豪炎寺がいなくても、俺と彩のシュートで点を決めてやるさ!!豪炎寺は入部する気がないみたいだし、豪炎寺にばかり頼ってはいられないだろ?」
(豪炎寺に対してやっぱライバル心を持つか…)
「みんなー!お客さんよ!」
秋ちゃんがそう言って連れてきたのは、夏美さんだった。
「くさいわね。」
「こんな奴、なんで連れてきたんだよ!?」
「話があるっていうから…」
「帝国学園との試合、帝国は途中で試合放棄したけど、内容的には3対2だった。学園内でも実質的には帝国学園に勝利しているんじゃないかとの話題で持ちきりだわ。試合前に彩さんから申し出があった通り、フットボールフロンティアへの参加を認めましょう。」
「ホントか!?ホントにフットボールフロンティアに参加できるのか!?」
「えぇ。ただし、条件があるわ。次の練習試合の結果次第では直ちにサッカー部は廃部、フットボールフロンティアへの参加もなしとします。」
「次の対戦相手…?」
「次の試合相手は尾刈斗中。試合は1週間後よ。せいぜい頑張る事ね。」
翌日の放課後、彩は病院にいた。
帝国学園との試合でゴールポストに激突した為、念の為に受診したのだ。
検査結果は何も異常はなかったが、女の子なんだから無茶な事はするなと医師の先生から注意されてしまった。
注意するのならボールをぶつけてきた佐久間に言ってくれと内心思いながらも先生の剣幕には耐えられず頷いてしまった。
診察室から受付に戻る途中、そこで偶然豪炎寺と鉢合わせする。
豪炎寺は私を見て目を見開いていた。
「なぜここに山野がいるんだ…?まさかこの前の試合で怪我を…?」
「あ〜。これはね、ゴールポストに激突したから一応念の為に受診してたの。豪炎寺君はなんで病院に…?」
「えっっ、彩怪我してたのか!?」
ここないるはずのない声に振り返ると壁に隠れてこちらの様子を伺っていた守が気まずそうにでてくる。
「全く、お前には呆れるよ。」
豪炎寺が案内してくれたのは妹の夕香ちゃんの病室だった。
「妹の夕香だ。夕香は去年のフットボールフロンティアの決勝の日、スタジアムに応援に来る途中トラックに轢かれてな。その日からずっと眠り続けている…」
「だからお前、サッカーを…?」
「あぁ。俺がサッカーをしていなければ、夕香は事故に遭うこともなく、苦しい思いをすることもなかった。夕香がこんな状態なのに、俺だけのうのうとサッカーをする訳にはいかない。だから、夕香が目覚めるまでサッカーはやらないと決めたんだ…なのに…なぜなんだろうな…自分でもわからないんだ。自然と、身体が動いていた。」
「ねぇ、豪炎寺はさ、サッカーが憎い?大切な家族が事故に遭う原因をつくってしまったサッカーが。」
私の問いに対し、豪炎寺はしばらく考えた後答える。
「嫌、サッカーは俺にとって全てであり、大好きなスポーツだ。サッカーを憎んだことはないし、悪いのは事故を起こした運転手だとは思っている」
「それが答えなんじゃない?豪炎寺は何も悪くないし、サッカーが大好きだからこそ、夕香ちゃんが目覚めるまでサッカーを封印していても身体は正直だから、自然と動いた。おそらく夕香ちゃんもサッカーをプレイしているお兄ちゃんの姿を見るのが一番好きだったんじゃないかな…?もしそうなら、サッカーを封印している今の豪炎寺を夕香ちゃんが見たらどう思うだろう…?私が夕香ちゃんの立場だったら、悲しいし、お兄ちゃんごめんねってなると思う」
そう言うと、豪炎寺は目を見開き、私と夕香ちゃんを交互に見る。迷いが見て取れた。
「あ、でもだからと言って無理にサッカー部に入部してほしいとは言わないよ。豪炎寺自身が今の状況でサッカーがホントにやりたいのか、決心してからの方がいいしね。」
「つらい話、させて悪かったな。この事は誰にも言わないから。」
「あれからサッカー部はどうなったんだ?」
「次の対戦校が決まったんだ。お前のシュートのおかげでみんな張り切ってるぜ。ありがとな。」
そう言い残し、私と守は病室を後にする。
翌日、サッカー部に新しくマネージャーが入部した。
「新聞部の音無春菜です!!今日からサッカー部マネージャーやります!!みなさんの練習見てるだけじゃ物足りなくて、だったら一緒の部活やった方が早い!そう思ったんです。新聞部の取材力を活かしてみなさんのお役に立ちたいと思います。よろしくお願いします!!」
「おとなしって…」
「やかましの間違いなんじゃないの?」
「よろしくね。春菜ちゃん。女子が入部するのは大歓迎だよ!!」
「こちらこそよろしくお願いします。彩先輩!!」
その後、河川敷でサッカー部が練習しているのを見つめる豪炎寺の姿があった。
(山野に言われた、俺のホントの気持ち…サッカーが好きだ。でも、夕香は俺がサッカーをプレイするのを許してくれるのか…?)
すると黒いいかにも高級そうな車が豪炎寺の側に止まる。
「こんにちは。雷門夏美と言います。」
「どうも…」
「失礼だけど、あなたの事を調べさせてもらったわ。あなたの妹さんの事もね。あなたはこのままでいいの!?あの諦めの悪い連中とプレイしたい、だから通学路でもないこの道を通ってる。」
「ほっといてくれ。」
「サッカーを辞める事が妹さんへの償いになるとでも言うの?そんなの、勘違いにも甚だしいわね!!あなたに一番サッカーをしてほしいのは、一体誰なのかしら!?」
そう夏美にいわれ、豪炎寺が思い浮かぶのは妹が自分を応援する姿だった。
(夕香…やっぱり俺はサッカーを諦めきれない。俺はサッカーが大好きなんだ!!)
そう決心すると、練習をしている守達の近くまで寄った。
「円堂、俺、やるよ。」
「ホントか!?豪炎寺!!よっしゃぁぁぁ!!!!」
「決心がついたみたいだね。豪炎寺。これからよろしく!!」
「あぁ。雷門や山野のおかげだ。ありがとな。」
こうして豪炎寺も加入し、雷門イレブンは尾刈斗中との試合に向けて特訓していくのだった。