フレズヴェルクに敗北した翌日。
スティレットと轟雷はバトルフィールドで特訓をしていた。
その相手はというと──。
「ねー!なんでばーぜが二人いっぺんに戦わなきゃいけないのー!?」
「アイツみたいにビュンビュン飛びまわれるのはアンタくらいでしょ!あの時ゆっくり昼寝してたんだから手伝って!」
「私たちはとにかく経験を積まないといけないんです!いちいち交代してる暇なんて!」
バーゼラルドである。
ただのバトルであればバーゼラルドも普通に戦っていたかもしれないが、二人を同時に相手取ることを強いられている上、その装備も妙だった。
「なんで轟雷の大砲を持たなきゃいけないのー!?重いよー!」
「そのキャノンがフレズヴェルクの持ってたキャノンと似てる強さだからよ!」
あおの同級生であり、模型やフィギュアが大好きな少女である寿武希子が轟雷用に製作したリボルビングバスターキャノンを右のサブアームに持ち。
「じゃあこっちの迅雷の剣は!?」
「アイツのブレードに近い取り回しだから!」
迅雷の使うユナイトソードを、ショートソード状態にして左のサブアームに持ち。
「スティレットのおっきい剣とマテリアおねーちゃんの槍はどーして!?」
「フレズヴェルクの銃のように色々な使い方ができるからです!」
自身の両手には、スティレットのメガスラッシュエッジとマテリア姉妹が所持していたガンブレードランスを持って戦っていた。
バトルが始まる少し前──。
「そういうのをね、悔しいって言うんだよ」
「悔しい……。あお、私は悔しいです!とても、とても悔しいです!」
フレズヴェルクに負けて以来、自分の中にもやもやした気持ちが芽生えたことを打ち明けた轟雷は、あおにその気持ちの正体を教えられていた。
「もっと強くなって、フレズヴェルクともう一度バトルをしたいです!」
「轟雷……」
「なのであお、お金をください!強くなるために強力なパーツを買う必要があるんです!」
「えぇ~!?」
あおに小遣いをせがむ轟雷。もしかしたらあおの影響を受けているのかもしれない。
「うーん……。パーツ頼りになる前にさ、実力を高める方が良いんじゃないかな?」
「実力……。そうです!そうと決まればそのための特訓を──」
「アタシも協力するわ、轟雷」
「スティレット……」
あおの──可能ならば出費を抑えたいが故の──助言を受けて特訓をすることにした轟雷に、スティレットが話しかける。
「アタシだって負けて悔しかったんだから。強くなってフレズヴェルクを見返してやりましょ!」
「はい!……でも、具体的にどう特訓すればいいんでしょう?」
「いい考えがあるわ。バーゼラルド!」
「え、なぁに?」
「アタシたちの特訓を手伝ってほしいの」
バーゼラルドに特訓の協力を頼むつもりのスティレット。
「バトルするの?いいよー!それじゃ早速──」
「待って、ただのバトルじゃ意味がないわ。ちょっとやってほしいことがあるのよ」
「なになに?」
「みんなにも協力してほしいの!」
「む?」
「なぁに、スティレットちゃん?」
「おかしな特訓でも思いついたのかしら?」
協力を仰ぐスティレットの言葉に、他のFAガールたちが首をかしげる。
──そんなやり取りがあって今に至るのだが。
「この特訓って意味あるのかな?」
バトルを観戦するあおが、同じように観戦しているFAガールたちに問いかける。
「特訓をすること自体は良いと思うが、これでは……」
「意味はあんまり無いんじゃないかしら」
「同意」
「そうね~。きっと滑稽なことになるだろうと思ったから武器を貸してあげたけど……」
バトルフィールドで行われている特訓は、詳しくないあおでも疑問に思っていたとおり、あまり効果的なやり方とは言えないようである。
「武器の特性を近づけても、バーゼちゃん本人がそれに慣れてなくちゃね~」
「相手にするべきは、同じような装備の相手ではなく同じような強さの相手だろうな」
「だよねぇ」
納得するあお。フィールド内で戦っているバーゼラルドが武器の使い分けに手間取っている様子を見れば、それも明白と言ったところだろうか。
「それに、同じような装備の子を相手にするなら、ねぇ」
「えぇ」
マテリア姉妹がアーキテクトの方を見ながら言う。
その言葉に気づかず、あおたちはバトルフィールドの中に意識を向けるのであった。
あおたちが見つめるバトルフィールドの中では、バーゼラルドに対してスティレットたちが注文をつけていた。
「バーゼラルド!もっと素早くやってちょうだい!」
「お願いします!」
「え~!?」
スティレットと轟雷からすれば真面目にやっているのだが、傍から見るとどちらが特訓をしているのかよく分からないことになっている。
そんな状況に、バーゼラルドも苛だちが募ってきていた。
「もぉ~!」
「えっ!?ちょっと!?」
「バーゼラルド!?」
ついに我慢の限界に達したのか、手持ちの武器を二人に投げつけるバーゼラルド。
そして──。
「も~やだー!」
スラストアーマーを始めとした自前の武器を展開、投げつけられた武器の直撃で体勢の崩れたスティレットと轟雷に向ける。
「フルバーストモードッ!」
「ま、待ちなさ──きゃあぁっ!」
「お、落ち着い──きゃあっ!」
焦る二人をバーゼラルドの攻撃が襲い、バトルは終了するのだった。
「すみません、バーゼラルド……」
「悪かったわ……」
「もうこんな特訓やらないからね!」
無茶な特訓に付き合わせたことをへたり込んだまま謝る二人の前で、バーゼラルドは不機嫌そうに仁王立ちをしていた。
そんなバトル後の三人──というよりも、スティレットと轟雷の二人──に対して、あおが話しかける。
「ぶっちゃけさ、普段のバーゼと戦ったほうが練習になるんじゃない?」
「たしかに、そうかもしれないです……」
もっともな指摘を受け、俯きつつも納得した様子の轟雷。
「うそでしょ、アホっ子のあおに正論を言われるなんて……」
「……え、なんでこっちがディスられてんの?」
愕然とするスティレットに、あおがツッコミを入れる。
あおは言葉を続ける。
「まぁいいや……。ところでさっきの話だけど、轟雷たちの装備ってお店で買えるの?」
「んー……。ばーぜたちの装備は普通のじゃないから、お店には売ってないかも」
「もちろん、使うだけなら市販の武器でも使えると思うわ~」
「だが、強力な武器や装備となるとFA社に頼るか、あるいは自作するしか無いだろうな」
「肯定。それに、自作するならば高い工作技術で作る必要がある」
「轟雷ちゃんが貰ったバズーカみたいにね」
FAガールたちがあおの疑問に答える。
「そっかぁ。私が自作するのは難しそうかなぁ……」
「そうですね……」
考え込むあおと轟雷。
それを尻目に、マテリア姉妹たちがスティレットに話しかける。
「会社に頼むにしても、スティレットちゃんは厳しいかもね~」
「どうしてよ?」
「轟雷ちゃんは会社のお仕事でここにいるけど、私たちはそうじゃないもの」
「あくまでも轟雷たちに協力している立場だからな」
「フレズヴェルクと対等に戦える装備を入手するなら、他の手段を考える必要があると思われる」
「そっか、そうよね……」
最もな指摘に、今度はスティレットが考え込んでしまう。
今度は誰も会話を引き継がず、部屋が静寂に包まれた。
「ちょ、ちょっと!?ダメだよ勝手に!」
訪れた沈黙の中、あおが声を上げる。
アーキテクトたちがスマートフォンを操作しているのに気づき、それに注意をしたようだ。
「一体何やって……武希子?FAガールについて教えて……?」
どうやら、FAガールについて詳しそうな武希子に教えを請おうと連絡をしていたようである。
そして、ほんの少しの間のあと──。
「呼ばれて飛び出て──あ、古い?たまたますぐそば通りかかった時に連絡があるとはこれぞ運命!寿武希子、あおからのヘルプコールを受けて馳せ参じたでありんす!」
ドアが開き、武希子が部屋に入ってきたのであった。
「そういうわけでさ、なんか新しい装備を作れないかな?武器とか装甲とか」
武希子に事情を説明し、協力を仰ぐあお。
「ふぅむ、強くなりたいってことなりか……。単純に強力な武器だけならともかく、身に纏う装甲となると精度がな~……」
やはり、装甲を作るのは武希子といえども簡単なことではないようだ。
無論、武器を作れるというだけでも、かなりの工作技術ではあるのだが。
「まぁ、何にしてもまずはFAガールについて詳しく知る必要があると思うっすなぁ」
「そっか、そうだよね。……教えて、武希子!FAガールについて!」
「合点承知の助!」
あおの頼みを快諾した武希子は、あっという間に準備を済ませてFAガールについての講座を始める。
そのタイトルは、FAガールはじめて物語。
次回もセッション!
評価・感想などをいただけると嬉しいです!