「武希子、うちの子をよろしくね……」
「もちろんでありんす。不肖寿武希子、必ずスティレットちゃんを幸せにするなり!」
「何よその小芝居……。それじゃ行ってくるわね、あお。よろしくね、武希子」
「任されましたであります!」
「行ってらっしゃーい」
迎えに来た武希子の肩に乗り、出発するスティレット。充電くんは武希子のバッグに入れてもらった。
武希子たちを見送ったあと、あおは玄関から居間へと戻り、FAガールたちの会話に混ざり始める。
「でもスティレットと武希子かぁ。なんか不思議な取り合わせだね〜」
「ね、私もそう思う」
バーゼラルドの言葉に返すあお。
「スティレット殿は強くなってくると言っていたな」
「そうですね。どんな風にかは聞きそびれてしまいましたけど……。そうだ、アーキテクトは知っていますか?」
迅雷と話していた轟雷が、スティレットたちの電話を聞いていたというアーキテクトに疑問を投げかける。
「火力と機動力を強化するということ以外は特に話していなかった」
「そうですか……。あおはどう思いますか?」
「んー……。武希子って興味がない相手には趣味を押し付けてこないから、私とはプラモの話はほとんどしないんだよね。だから見当もつかないや」
あおが武希子と親しいことに目をつけた轟雷の質問だったが、あおにもどういう強化をするのかは想像がつかないようであった。
「まぁなんだかんだ言って面倒見がいいから、スティ子の望む形に仕上げてくれるんじゃないかな」
「うむ、積み上げられた友情を感じるな」
「通じ合ってるね〜」
「信頼」
「そこに割って入るスティレットちゃん……」
「罪作りな女の子ね……」
特に心配していないあおと、うんうんと頷く迅雷たち。
周囲の気楽な様子に、轟雷もあまり考えすぎずにスティレットがどうなるのかを楽しみに待つことにするのだった。
一方、スティレットたちは武希子の家に到着していた。
「うちの場所は覚えたなりか?」
「バッチリよ!」
そんな言葉を交わしながら家に入っていく二人。
武希子は、スティレットに間取りを説明しながら作業部屋に進んでいく。
「──で、ここがプラモを作ったりする部屋。そしてこれが、寿武希子作製のプラモコレクション!」
「すごい……。こんなに沢山のプラモが、全部綺麗に作ってある……」
「どれも全塗装済みでありますぞ!」
綺麗に組み上げられたプラモデルを見つめるスティレット。
轟雷の武器を見ていたので全く心配はしていなかったが、改めて武希子のプラモデルへの愛を目の当たりにすることで、スティレットが抱く期待感は更に大きくなっていく。
「ねぇ武希子、早速──」
「はいはーい」
スティレットが俄然やる気を出しつつ棚から武希子へと振り返り、武希子がそれに応えつつ作業用具を取り出すのであった。
「パーツを手作りするのって大変なのね」
「まぁね~。装甲の邪魔にならないようにしなきゃだし、なによりスティレットちゃんを更にカッコよくしたいと思うと、やっぱり気合いを入れて作りたくなるのでありんすよ」
スティレットが、図面を書いている武希子を見ながら呟くと、作図を続けながら武希子がそれに答える。
「そっか、アタシを更に……アタシがカッコいい……」
さらりと言われた称賛に照れた様子を見せるスティレット。
「照れてるスティレットちゃんはカッコいいというよりは可愛いなりなぁ」
「うぅ……。おちょくり過ぎは禁止ー!」
弄りに対して素直に反応するスティレットは、武希子からしてもからかい甲斐のある相手のようであった。
「もう!……でもホントに大変そうね、アタシは見てるだけでいいの?」
「対価の話かい?」
気を取り直して話を続けるスティレットに、手を止めず応じる武希子。
「そう。アタシを見てるだけで楽しいってのは伝わってくるけど」
「ふぅむ……。仕事ならともかく、好きなことだからやっているわけでありますからなぁ」
「好きなことだから……」
「敢えて言うなら、スティレットちゃんを強くさせてもらうのが対価なりね!」
「──そっか。じゃあ、アタシも武希子の好きなことに協力するわ!FAガールについてとか、分かることならバンバン答えるから、遠慮なく聞いてちょうだい!」
そんな会話を交わしながら、装備の作製は進んでいく。
しばらく経った後──。
「よし、背部ブースターは一段落!」
「なかなか格好いいじゃない!」
背中に装着する改良型ブースターの造形が完了し、スティレットがそれを見て感嘆の声をあげる。
「ご満足いただけて恐悦至極~。それじゃ、次は──」
「武器ね!」
「その通り!で、スティレットちゃんはどういう武器がほしいのでありますか?」
意気込むスティレットに向かって、具体的な意見を求める武希子。
「アタシの戦い方は飛行しながらの高速戦闘が基本だから、当てやすい武器がいいわね」
「狙いがつけやすくて撃ったらすぐ着弾する、みたいな感じ?」
「うん。もちろん威力もほしいけど……流石に高望みしすぎよね」
「命中率と威力。ちなみに、例のフレズヴェルクちゃんはどんな遠距離武器を?」
「えっと、二丁拳銃とキャノンね。どっちもビームを撃ってきたわ」
「なるほどなるほど……。じゃあスティレットちゃんも使ってみよっか?ビーム砲」
「……え、そんな簡単に?」
轟雷に与えられたキャノンのような高性能な武器を望んでいたとは言え、あっさりと言い放つ武希子にスティレットは戸惑った様子を見せる。
「ふっふっふ。こんなこともあろうかと、FAガール用のビームガンを作製中だったのでありんす!轟雷ちゃんにあげたリボルビングバスターキャノンは、本来実弾兵器だったはずが塗装とかに気合いを入れすぎたせいでセッションベースに巨大なビーム兵器として認識されちゃったんだけど、現在作成中の物は最初からビームガンとしてコンパクトに作られているから、重さによって動きが鈍ることもなく、なにより光学兵器は着弾も早い!機動戦にピッタリなのであります!」
「すっご……。っていうか、そんなの使わせてもらっていいの?」
虎の子の新型武器と聞いて、少し躊躇ってしまうスティレット。
「まぁ、ぶっちゃけ使う機会が見つからなくてお蔵入りに終わりそうだったから。ブッキーとしては、むしろ使ってほしいくらいなりね」
「そ、そう?だったらありがたく使わせてもらうわ!」
「うむ、遠慮なく使ってくだされ!そうだ、どうせならスティレットちゃんの腕に固定する形にしちゃおっか」
「固定式に?」
「高速戦闘でも安定して狙いをつけられるようになると思うぞなもし」
「そっか、別に手持ちにこだわらなくてもいいのよね。じゃあそういう感じでいきましょ!」
一通りの相談を終え、遠距離用のビームガンの作製が始まるのであった。
「このくらいの位置でどうなりか?」
「んー、腕を振った時にちょっと邪魔になるわね……」
「了解であります!また調整するからちょっとまっててね~」
ビームガンがスティレットの動きの邪魔をしないよう、入念に調整を繰り返す武希子。
「ビームガンの形、轟雷のやつみたいなゴツいのを小型化したようなのを想像してたわ」
「そういうのも好きだけど、そのビームガンはスマートな造形を目指したから。ゴツい方が好きなりか?」
「アタシもスマートな方が好き……かしら。武器の形の好みなんて、あんまり考えたことなかったけど」
「見た目にこだわるのもなかなか楽しいでありんすよ~」
「こだわるのが楽しい、か……。アイツも、楽しんでたのかな」
「アイツというと、フレズヴェルクちゃんなりか?」
武希子との会話を続ける中で、スティレットはフレズヴェルクのことを考え始めていた。
「うん。あの時は嫌なやつとしか思ってなかったけど、アイツも楽しみたくて轟雷のところに来たのかなって」
「ふむぅ。ま、わざわざ嫌われたがる子はあんまりいないと思うねぇ」
「やっぱりそうよね……。アタシが強くなりたいと思ったのはフレズヴェルクを見返してやりたいから。でも、アイツが楽しんでるけなのに、アタシはそれでいいのかなって思ったの」
自分が強くなりたい理由について考え、悩み始めていたスティレットは、それを武希子に打ち明ける。
「スティレットちゃんは間違ってないと思うなりよ?」
「え……」
別の目的を見つけるべきかもしれないと考え始めていたスティレットにとって、武希子の答えは想像していないものだった。
「見返してやりたいって気持ちは悪いものじゃない。スティレットちゃんだってフレズヴェルクちゃんを悔しがらせたいわけじゃないんでしょ?」
「う、うん」
「それに、スティレットちゃんの強くなりたいって気持ちにも嘘はない。だったらとっても強くなって、フレズヴェルクちゃんにスティレットちゃんが強いってことをしっかり見せてあげればいいと思うでありますなぁ」
「そっか……。そうよね!」
ビームガンを削りながらも真剣に諭してくれる武希子の言葉に、スティレットは自分の悩みが晴れていくのを感じていた。
「解決したようでなによりなにより。──っと、このくらいの位置ならどうでありますか?」
「ん……うん、いい感じ!」
「よしよし。じゃあこの位置をニュートラルにして、前後に若干動かせるようにするなりよ」
「あ、完全に固定するわけじゃないのね」
「どんな姿勢でも邪魔にならないようにするなら、多少は遊びが必要なりね。銃口の向きは固定されるから、そこんとこは安心してほしいであります!」
「心配してないわ。武希子のやることだし」
無意識に武希子への信頼を口にするスティレット。
それに気づいた武希子だったが、あえて指摘することもなく作業を進めるのであった。
作業を始めてから数時間後──。
「固定の仕方はこれでよし。このあとは塗装だから、とりあえずスティレットちゃんはお開きでいいなりよ」
「分かったわ、今日はありがとうね」
「こちらこそであります!それじゃ、支度するからちょっと待っててね~」
「はーい」
スティレットをあおの部屋へと送り届けるべく、武希子は外出の準備を始める。
道を覚えた以上、一人で帰ることもできるスティレットだが、一日触れ合って打ち解けた武希子の気遣いを断る気はなかった。
「よし、じゃあ出発するなりよ」
「分かったわ」
スティレットが武希子の肩に乗り、二人はあおの家に向かって出発する。
「そういえば、スティレットちゃんが持ってた日本刀。あれはどうして使ってるのでありますか?」
「え、なんで?んー、深く考えたこと無いけど……それなりに軽くて扱いやすいからかしら」
「ふむ、だったら……」
「な、なに?もしかして新しい装備と噛み合わせが悪いの?」
不安になり問いかけるスティレットだったが、武希子は首を横に振って否定する。
「せっかくの機会だし、接近戦用の武器も作れたら楽しいかなって!」
「高速戦闘でもっと取り回しがいいのを作るとか?」
「あとは切れ味を徹底追及したりとかはどうなり?」
「でも精巧すぎると扱いが難しいんじゃ──」
「じゃあじゃあ、いっそのこと二種類──」
さらなる改良計画について話し始める武希子とスティレット。
会話を弾ませながらあおの部屋へと向かう二人が、一つの影を作っていた。
次回もセッション!
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