スティレットのおはなし   作:ぺかちゅう

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#5 お披露目!その名はXF-3!

「フレームアームズ・ガール、セッション!」

 

 バトルフィールドに向かう二体のFAガールの声が、あおの部屋に響く。

 

「見てなさい!」

 

 片方はスティレットのもの。そしてもう片方は──。

 

「きゃははっ!」

 

 バーゼラルドのものだ。

 新たな武装を試すため、スティレットがバーゼラルドとのバトルを望んだのである。

 

「戦闘データの記録を開始」

 

 武希子個人によって強化されたスティレットの武装は、FA社にデータ提出を行う必要がなく、轟雷のバトルと違って戦闘データの自動収集も行われない。

 そのため、アーキテクトがローカルでバトルの録画を開始する。

 

「アーキテクトも記録頑張ってね。でさ、スティ子を強くしたって、どんなことしたの?」

「ふっふっふ。それは見てのお楽しみなりよ」

「とか言っといて、解説する気満々のくせに~」

「あ、バレた~?」

 

 録画兼検証係のアーキテクトに声をかけつつ、完成した武装を届けに来た武希子と話し始める部屋主のあお。

 

「私に作ってくれたような高威力のビーム砲ですか?」

「ビーム砲はあるけど、轟雷ちゃんのやつとは毛色が違って──」

 

 轟雷の問いに武希子が答え始めるのとほぼ同時に、バトルの準備が完了する。

 

「お、始まるでありんすな!轟雷ちゃん、ちょっと待っててね。……コホン!そう、あれこそがスティレットちゃんの新たなる姿!」

 

 スティレットの姿を確認し、武希子が──それまで会話していた轟雷に断りを入れつつ──ハイテンションで説明しだす。

 

「その名も、スティレットXF-3!」

「えっくすえふすりー?」

「その通り!スティレットちゃんを、かの有名戦闘機であるF-2に擬え、その強化型としてF-3の名を冠したのであります!だがしかし、改めて戦闘機の方を振り返ってみると、F-3という戦闘機は現在は実在しない!故に、架空の存在としてXを頭につけたのでありま──」

「あー、つまり強化型スティ子ってこと?」

「うん」

「なるほど。名前ついては分かったから続きをどうぞ?」

「はいな!武器については後に回すとして……それではまず機動力について!背中のブースターを強力なものに改造したのに加えて──」

 

 解説に熱が入り始めた武希子の話を遮り、話を進めさせるあお。

 

「見事に手綱を握っているな」

「武希子ちゃんもそれを分かってて語っていたみたいだし〜」

「阿吽の呼吸というやつね」

 

 あおたちのやり取りにそんな感想を抱く迅雷たちであった。

 

 

 

 バトルフィールド内。

 荒野のバトルステージの空中で、それまでとは一味違うスピードを発揮するスティレットがバーゼラルドに接近していた。

 

「おぉ、速いねスティレット!……XF-3ってつけて呼んだ方がいい?」

 

 小手調べと言わんばかりに射撃を行いながらバーゼラルドが問いかける。

 

「今まで通りでいいわよ、アタシはアタシだしね!」

 

 背部と上腕部のブースターを活かして難なく躱し、答えるスティレット。

 速度自体を上げただけでなく、旋回や急な加減速もお手の物である。

 

「おー、機敏な動き!」

「新型ブースターの力よ!」

「バッタみたい!」

「褒めてるのよね?」

 

 言葉を交わしつつ、スティレットはふとフィールド外に目を向ける。

 追加装備の製作者である武希子が、あおたちにその内容を説明しているようだ。

 

「それじゃ、これの性能も見せてあげる!」

 

 武希子への協力と言わんばかりに、新しい武器──右腕に装備されたスマートガン──での攻撃を行うスティレット。

 轟雷の使うキャノンから発射されるものとは違う、細い光線がバーゼラルドに向かう。

 

「ビーム砲だ!なんかばーぜのビームみたいな細さ──うわわ、速い!」

「威力よりも狙いやすさと当てやすさを重視した結果よ!アンタのみたいに偏向したりはしないけどね!」

 

 想像よりも速い弾速に驚きつつも、バーゼラルドはビームを回避する。

 

「今度はこれよ!」

「ほえっ!?」

 

 言うが早いか、バーゼラルドに突撃するスティレット。

 武器を持ち替えるでもなく突然突っ込んできたことに、バーゼラルドは驚きの表情を見せる。

 

「いっけぇ!」

 

 スティレットが気合の叫び声と共に左腕を上げ、勢いよく振り下ろす。

 その先端には折り畳み式のブレードが展開されていた。スマートガンと同じく、前腕部に装着されていたのである。

 斬りかかるスティレットの腕を、しかしバーゼラルドはサブアームで受け止める。

 

「さすが、やるわね……!」

「そう簡単にはいかないよー!」

 

 なにかあるとは勘付いていたため、いつでも身を守れるように注意を払っておいたのが功を奏した形だ。

 

「日本刀はやめたんだ?」

「まあね、今の戦い方とは合わないと思ったから」

「一撃離脱せんぽーってやつだね」

「機動性を活かしたいからね!」

 

 一瞬競り合い、すぐに距離をとりつつ言葉を交わす二人。

 

「でも、切り合いにも対応できるくらいの強度はあるわよ!なんたってこのブレードは──」

 

 

 

「──寿武希子渾身の加工で作製された強度抜群の一品なのであります!」

 

 あおの部屋では、ブレードで再び切りかかるスティレットの言葉を引き継ぐかのように武希子がそれの解説を繰り広げていた。

 

「どのようにして作ったかというと──あ、その辺は誰も興味ない感じ?そっかぁ。……うん、じゃあスマートガンとブレードについてはこのくらいなりね」

「スティレットちゃんの長所であるスピードを殺さないための武器を作ったのね〜」

「しかし、あのスマートガンは随分とこう……近未来的なデザインだな」

「同意。轟雷のリボルビングバスターキャノンのようなデザインの武器を想定していた」

 

 感想を口にするFAガールたち。

 そんな中、轟雷が疑問を抱き、それを口にする。

 

「でも、どうしてスティレットはバーゼラルドをバトルの相手に選んだのでしょうか?私の時の様に、アーキテクトに変身してもらえば良かったのでは?」

「スティレット殿はこの前のバトルの埋め合わせと言っていたぞ」

「この前って、轟雷と三人でやってたやつ?」

「うむ」

 

 あおの言葉に頷く迅雷。

 それに続けるように武希子が口を開く。

 

「そのバトルのことはよく知らないけど、バーゼラルドちゃんと戦うのが一番利になるというのもあるはずぞなもし」

「バーゼラルドとの戦いが利益に……。戦い方を参考にするということですか?」

「戦い方もあるだろうけど、バーゼラルドちゃんの使っている武器を参考にしたいんだと思うなりよ」

 

 そう言いながら武希子はバトルフィールドに目を向け、それに促されるように他のメンバーもバトルの観戦に戻るのであった。

 

 

 

 周囲が見守る中、スティレット達のバトルは佳境に差し掛かっていた。

 

「そろそろ使っちゃうよー!オールウェポンシステム、起動!」

 

 言うが早いか、スラストアーマーを背中から分離させるバーゼラルド。

 

「来たわね!」

 

 機動性を高めた分、強化前よりも余裕を持ってスラストアーマーに対応できると判断したスティレットは、分離したスラストアーマーの挙動を見逃すまいと集中力を上げる。

 

「いくよ、スティレット!」

 

 スラストアーマーがスティレットを囲むように配置され、それに装備されたセグメントライフルからビームが放たれる。

 各部のブースターを小刻みに稼働させてそれに対応するスティレット。

 

「なるほどね、相手の目を撹乱したり──っと!」

 

 周囲からのビームに気を取られすぎないようにしつつ、本命と思われる、バーゼラルドの背中に残ったサブアームからの射撃をすんでのところで躱す。

 

「それっ!」

「逆に本体での攻撃を囮にするっ!」

 

 突っ込んできたバーゼラルドのサブアームによる斬撃を受け止め、左右に飛んできたスラストアーマーからの射撃を避けるために大きく距離を取る。

 

「むぅ、なかなか当たらない……」

 

 これまでであれば多少なりともダメージを与えられていた攻撃を、ギリギリのところで避けられる。

 強化前と比べて加減速に余裕が生まれたのが功を奏しているようだ。

 武装を作り上げた武希子と、それを使いこなすスティレット。その両方を心中で称賛しつつ、しかしそろそろ命中させたいと思うのもバーゼラルドにとっては当然のことだった。

 

「だったらこれだ!」

 

 そう言いながら、スティレットの周囲に展開していたスラストアーマーを自らの周辺に配置するバーゼラルド。

 一番の大技であるビーム兵器の一斉発射の構えだ。

 

「フルバーストモード──うえぇ!?」

 

 攻撃を始めながら発せられたバーゼラルドの言葉に、驚きが混じる。

 戦闘開始直後のようにビームを避けるか、あるいは自分の射程から逃れるために後ろに下がるかもしれないとは思っていたが、スティレットが選んだ行動は想定外だった。

 攻撃の中を突撃してきたのである。

 

「はあぁっ!」

 

 気合を込めた叫びと共に、バーゼラルドへと全力で接近するスティレット。

 無論、ヤケになったわけではない。

 回避を続けるだけでは状況の改善には繋がらない、そう考えたが故の行動だった。

 

「え、えぇっとぉ!」

 

 スティレットの思いもよらぬ行動に、バーゼラルドは思わず攻撃を中止し、自身の盾とするかのようにスラストアーマーを二つとも移動させる。

 それ自体は失策ではなかった。スラストアーマーの砲口は、特攻をかけるスティレットへと向けられていたのだから。

 しかし──。

 

「……いける!読みどお、りっ!」

 

 少なくとも、この瞬間はスティレットの判断が優っていた。

 状況を動かすための突撃には、二つの目的があったのである。

 一つ目の目的は、バーゼラルドに動揺を与え、攻撃の手を止めさせること。

 そして、二つ目はスラストアーマーを破壊すること。

 スラストアーマーがバーゼラルドの正面に配置されたことで、バーゼラルドに突撃することが、軌道を読みづらいスラストアーマーに突撃することと同義になったのである。

 バーゼラルドへと飛び込む速度を緩めないまま踊るように身を翻し、左腕を横向きに一閃。

 それにより、腕を振るうと同時に展開されたブレードが片方のスラストアーマーを真っ二つに切り裂く。

 

「えぇっ!?」

「もう一つ!」

 

 再び身を翻し、二つ目のスラストアーマーを正面に捉えつつ腕を振り上げるスティレット。

 展開されたままのブレードが、残されたスラストアーマーに突き立てられる。

 

「嘘ぉ!?」

「──ちっ!」

 

 一瞬のうちに両方のスラストアーマーを破壊されたバーゼラルドは驚き、一方でスティレットは舌打ちをする。

 スティレットの狙いはスラストアーマーを両方とも切り裂くこと。

 一つ目を両断できたまではよかったが、不満だったのは二つ目。

 自分と目標の位置を見誤り、結果としてブレードを突き立てる形になっていたのである。

 そのせいで、硬く作られたブレードも二つ目のスラストアーマーの破壊と引き換えに破損し、このバトルの間は使えないような状態になってしまった。

 しかし、それは些細なことでもあった。ブレードによる決着にこだわらなければ良いだけなのだから。

 

「……え?うわわっ!」

 

 切裂かれたスラストアーマーの爆発。

 スティレットによる攻撃から一瞬遅れて起こったそれが爆風を起こし、驚きのせいで反応が遅れたバーゼラルドがわずかに怯む。

 

「い、っけえぇ!」

 

 一方のスティレットは爆風を背にしてもう一度全力で加速。体勢を立て直す間を与えまいとバーゼラルドに突撃し、体当たりを行う形になる。

 

「あわわわ……──うそーっ!」

「これでっ!──きゃあぁっ!」

 

 密着したまま、バーゼラルドにスマートガンを押し当てて発射するスティレット。

 攻撃を受けたバーゼラルドはもちろん、加速に重きを置いた結果装甲の強化を見送っていたスティレットも零距離射撃による衝撃で跳ね飛ばされ、地面に落下する。

 一瞬遅れて、切り裂かれなかった方のスラストアーマーも地面に激突。FAガールたちよりも重いそれによって、巨大な土煙が上がる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 土煙の中、落下の衝撃でふらつきながらも立ち上がるスティレット。

 

「きゅ〜……」

 

 スマートガンの直撃で、土煙が晴れたあとも目を回して気絶しているバーゼラルド。

 これにより、スティレットの新装備披露のためのバトルは決着となるのだった。

 

 

 

 バトルの後。

 スティレットとバーゼラルドはあおの部屋へと戻ってきていた。

 

「よし……!」

 

 バトルでの勝利と、そして新たな装備を使いこなせた事の実感を掴むように、小さく頷くスティレット。

 

「あちゃー、久しぶりにスティレットに負けちゃったな〜」

 

 スティレットに歩み寄るバーゼラルドは、バトルの後の高揚感の中に少しの悔しさを滲ませていた。

 

「お披露目バトルで不覚を取る訳にはいかないわよ。……どうだった、アーキテクト?」

 

 バーゼラルドに言葉を返し、スティレットは歩み寄ってきたアーキテクトに向き直る。

 

「高レベルな空中戦闘であったことを確認。フレズヴェルクと互角に戦えると推定」

「ありがと。それと──」

 

 そう言いながら、スティレットは最大の協力者である武希子を見上げる。

 

「──にっ!」

 

 スティレットの視線に対して、満面の笑顔でサムズアップしてくる武希子。

 

「……ったく。──ん!」

 

 照れくさそうにしながらも微笑みを浮かべ、サムズアップを返すスティレット。

 武希子がやや大袈裟なリアクションを好むことを、スティレットは彼女と触れ合う中で学んでいた。

 そんなやりとりの最中、あおと轟雷がスティレットに声をかける。

 

「そういえばさ。スティ子、ちょっとおしゃれしてる?」

「本当ですね、髪の毛のところ……」

「え?あぁ、これ?」

 

 そう応えながら、ツインテールの結び目部分に付けられた髪飾り状のパーツを指差すスティレット。

 

「あら、本当」

「お洒落をしたい年頃なのね~」

 

 あおたちの言葉に乗っかり、マテリア姉妹がからかうような口調でスティレットに話しかける。

 

「もう、そういうんじゃないから!これは装備と一緒に武希子がくれたの」

「武器を増やしただけじゃ寂しいかなと思ってね〜。轟雷ちゃんだって武装以外のところがちょこっと変わってるよね?それならスティレットちゃんもちょっと変化があった方がいいかなって思ったなりよ」

「なるほど、たしかに……」

 

 自分が強化された際に変化した、武装以外の部分──胸や二の腕、太腿の白い部品──に目をやりながら、武希子の説明に納得した様子を見せる轟雷。

 

「あと、武装形態の方も頭のアンテナとかのデザインをちょこっと変えて──」

「こんな感じよ」

 

 スティレットが、武希子の言葉に合わせて再び装甲を装着する。

 

「そうそう、こんな感じ。微妙に各部の形状を変えて武器との釣り合いを取ったなり。轟雷ちゃんみたいに色を変えてみるのも面白いかなって思ったんだけどね」

「それはまたの機会に、ってわけ」

「あー、たしかに……。全体のバランスが取れてないと、派手なアクセサリー付けただけじゃ可愛くならないもんね」

「士気の向上に繋がる、良い着眼点だ」

 

 二人による説明に合点が行ったあおと、その言葉に続ける迅雷。

 

「武装形態といえば、ガトリングなども少し強化したのであります!」

「スマートガンが便利だから、使うかどうかは微妙なところだけどね」

「たしかに、以前のものとは違いますね。威力も上がっていそうです」

 

 武希子が説明し始めるのに合わせてスティレットが取り出した武器をみて、轟雷が感想を述べる。

 

「そういうこと。ま、なんにせよこれで自信がついたわ。あとは……実際に戦ってみるだけ、ね」

 

 決意を新たにしつつ、スティレットはフレズヴェルクとの再戦に思いを馳せるのだった。

 




次回もセッション!

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