スティレットのおはなし   作:ぺかちゅう

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助けるおはなし



#8 世話焼き少女

 あおの部屋のちゃぶ台の上。

 轟雷とフレズヴェルクがバトルの準備をしている脇で、スティレットもバトルフィールドに赴くべく、手助けを申し出た他のFAガールの手を借りながらバトルの準備を進めていた。

 

「二刀流か。いずれ手合わせを願いたいものだな」

「いつでも受けて立つわ。でも今は……」

「轟雷ちゃんたちのまぐわいを優先ね」

「横恋慕はほどほどにするのよ~?」

「ちーがーうー!二人のバトルが気になってるだけよ!」

 

 迅雷やマテリア姉妹の言葉で、険しくなりかけていた表情を緩めるスティレット。

 

「でもさー、やっぱりなんか変だよね、フレズヴェルク」

「同意。現在のフレズヴェルクの立ち振る舞いが、これまでのそれと合致しない」

「──それも気になるのよね……。あんな風にしてるアイツ、アタシも見たことないもの」

 

 バーゼラルドとアーキテクトの会話に返すかのように、スティレットはバトルフィールドで観戦するもう一つの──本当の──目的を呟く。

 

「まぁ、バトルを見てれば分かるでしょ」

 

 楽観的な言動で内心の不安を押し込めながら、ほんの少し前のことを思い返すスティレットだった。

 

 

 

 ──轟雷たちが迷いを断ち切り、それまでのように穏やかな日々を送り始めた頃。

 あおの部屋にフレズヴェルクが訪れ、それ以前と同じようにバトルを挑んできた。

 それだけならおかしな事でもないのだが、おかしな事が一つあった。

 フレズヴェルクの纏う雰囲気がそれまでとは異なっていたのである。

 

「あなた……本当にフレズヴェルクですか?」

「フレズヴェルク=アーテルだ」

 

 轟雷からの問いかけにそう答えたフレズヴェルクからは、以前のようにバトルそのものを楽しみにする様子は見られなかった。

 轟雷に勝利することだけしか考えていないようなフレズヴェルクに戸惑う、あおの部屋の住人たち。

 そして、フレズヴェルクと、戸惑った様子の轟雷がバトルを始めようとした時だった。

 

「待ちなさい」

「──スティレット?」

「……なんだ?」

 

 少し不機嫌そうに割り込むスティレットに、轟雷とスティレットが反応する。

 

「アタシもフィールドに行く」

「……ボクは轟雷と──」

「二人でアンタをボコボコにしようなんて言わないわ。ただ、直接見させてもらいたいの」

「私は構いません。一人きりよりも安心できますし」

「……好きにしなよ」

「ありがと」

 

 両者の合意を得て、バトルの準備を始めるスティレットであった。

 

 

 

 ──これまでの経緯を思い出しつつ、他のFAガールたちとともに作業を終えるスティレット。

 

「よし、と。みんな、助かったわ」

 

 そう感謝するスティレットに向かって、頷きを返すFAガールたち。

 

「スティレットちゃん」

「クロ?」

 

 自分を呼びかけるクロの声に、スティレットがセッションベースに乗ろうとする足を止めて振り向く。

 

「気をつけなさい。あの子、少し……嫌な感じよ」

「メチャクチャにされないようにね~」

「ん……。そうね、分かったわ」

 

 クロとシロの言葉に応え、バトルへと赴くスティレットであった。

 

 

 

 バトルが始まってすぐ。

 月面のバトルフィールド内で二丁のサムライマスターソードを腰に携え、二人の戦いを見つめるスティレットの瞳には、一方的に轟雷を攻め立てるフレズヴェルクの姿が映されていた。

 

「なんでなのよ……」

 

 轟雷が押されているだけならば良い。

 スティレットの心情的には良くないが、仕方ない。

 

「なんでそんなに……」

 

 問題なのは状況ではなく、バトルの在り方。

 

「つまんなそうに戦ってるのよ……!」

 

 スティレットの目に映るバトルには、フレズヴェルクの心がどこにもないようにしか見えなかった。

 

「そんなんじゃないでしょ、アンタは……」

 

 スティレットにとって、フレズヴェルクは他人の迷惑を考えられないどうしようもないほど自分勝手な性格のFAガールで。

 大好きなバトルのためなら他のことは二の次になってしまう幼い性格で。

 それでも、バトルが大好きな純粋な存在だった。

 

「そういう風にされちゃったっていうのなら──」

 

 正確な原因は知らないが、外的な要因──例えば、新たなプログラム──でフレズヴェルクが変えられてしまったことは分かる。

 フレズヴェルクは、FA社でずっと過ごしているのだから。

 おそらくは、バトルのこと以外を教えなかったらしい開発関係者だろう。

 フレズヴェルクにたった一つだけ楽しいことを教え、それを奪ったのだ。

 自身の望まぬままに、フレズヴェルクがあんなバトルをするようにされてしまったのならば。

 

「止めてやらなきゃ……アタシが!」

 

 

 

「状況、分析。強化プログラムのアップグレードを優先実行。結果、オーバーフロー」

 

 あおの部屋では、アーキテクトが、力を制御できずに苦しみだしたフレズヴェルクの状態を口にしていた。

 それは奇しくも、スティレットの推察と同じ結論。

 

「体内のナノマシンが暴走しているのか!」

 

 迅雷の言葉を聞きながらバトルを見つめるあおの眉間に皺が寄る。

 数日前、FA社に赴いてフレズヴェルクに会っていたあおは、フレズヴェルクの歪な価値観を知っていた。

 歪ながらもバトルが心から好きなフレズヴェルクのことを理解していた。

 だからこそ、フレズヴェルクの気持ちを無視するFA社への不満が募っていたのである。

 

「あお!」

 

 そんな中、バトルフィールド内のスティレットから通信が届く。

 

「スティ子!?」

「あの子がなんかおかしい!」

 

 外から見ているあおたちからみても異常な事態は、当然スティレットも把握していた。

 

「あのね、フレズは──」

 

 状況を知らせようとするあおだったが、スティレットがそれに被せるように捲し立てる。

 

「なんとかしてみるから、後よろしく!」

「なんとか、って──ちょ、ちょっとスティ子!?」

 

 それだけを告げて、あおの返事も聞かずに二人の元に飛び去っていくスティレットの姿が、ちゃぶ台の上の空間に映し出されていた。

 

「よろしくって言われても……。みんな、どしたの?」

 

 呆然とするあおの視界に、自分たちの武器を取り出すFAガールたちが入る。

 

「ばーぜたちも!」

「轟雷の手助けを実行する」

 

 

 

「フレズヴェルク……!」

 

 猛攻を受けて倒れ込みながらも自分の名を呼ぶ轟雷に答える素振りを見せず、轟雷に近づいていくフレズヴェルク。

 ナノマシンの暴走の影響か、禍々しい赤に染まったフレズヴェルクが、轟雷にとどめを刺そうとベリルスマッシャーを振り上げる。

 その直後だった。

 

「これで終わ……ん?──くっ!」

 

 ベリルスマッシャーを振り下ろそうとした時、フレズヴェルクが横に目を向けたかと思うと、その場を跳び退く。

 それとほぼ同時に、一瞬前までフレズヴェルクが立っていた地面にミサイルとガトリングの弾頭が着弾し、土煙が上がる。

 

「視界が……ぐぅっ!?」

 

 直撃を避けたとはいえ、突如襲ってきた土煙に目を細めて怯むフレズヴェルクに、飛来したスティレットが全力で突撃する。

 

「スティレット!?」

 

 轟雷が驚きの声を上げるが、スティレットの側にはそれに反応する余裕などない。

 撃ち尽くし、デッドウェイトにしかならないミサイルの基部と強化ガトリングをパージして、フレズヴェルクを掴んだまま飛び去っていくスティレットだった。

 

 

 

 フレズヴェルクを轟雷から引き離すべく、組み付いたまま全力で飛行し続けるスティレット。

 

「くっ、このぉ!」

 

 フレズヴェルクの声にスティレットが顔を向けると、声の主は押し飛ばされながらも取り出していた二丁のベリルショット・ランチャーの銃口を、立ち上がろうとする轟雷に向けていた。

 

「やらせない!」

 

 そう叫びつつ、スティレットは左手で片方のベリルショット・ランチャーを掴んでその銃口を上に向けさせ、もう片方を右足で踏みつけるようにして取り落とさせる。

 どちらも発射直前だったのだろう、掴まれた方の銃口からは上空に向かってビームが放たれ、もう片方からは蹴り落とされた直後に地面に向かって閃光が走った。

 

「ボクの邪魔を──」

「してるのよ!」

 

 残った武器でも轟雷を撃てない距離まで引き離されて苛立つフレズヴェルクの声に、スティレットが応える。

 

「だったら、轟雷より先にお前を!」

「行かせない!アタシが止める!」

 

 互いに声を張り上げつつ、ニ体のFAガールが向かい合った。

 

 

 

 スティレットがフレズヴェルクの足止めを始めたのと同じ頃、直前まで戦闘が行われていた場所には、捨てられたミサイルの基部と強化ガトリング、そして傷ついた轟雷だけが残されていた。

 

「スティレット……」

 

 訪れた静寂の中、ふらつきつつも立ち上がり、スティレット達が飛び去っていた方を見つめながら心配そうにつぶやく轟雷。

 

「轟雷!」

「あお?」

 

 あおの声に反応した轟雷が、バトルフィールドの外へと意識を向ける。

 

「今ね、みんなが!」

 

 

 

 轟雷から離れた地点。

 その上空で、二機のFAガールによる空中戦が繰り広げられている。

 フレズヴェルクは自分にターゲットを向けたが、しかしスティレットは気を抜くわけにはいかなかった。

 ボロボロの轟雷のもとに、万が一にも今のフレズヴェルクを向かわせるわけにはいかない。

 そのためにも、張り付いて近接戦闘を強いることをスティレットは徹底する。

 

「しつっ、こい!」

「褒め言葉!」

 

 フレズヴェルクが、全力で纏わりつくスティレットに対して苛立ちを見せる。

 距離を詰めつつスマートガンを発射するスティレット。

 

「当たりなさい!」

「無駄なんだよ!」

 

 一発、ニ発と向かってきた閃光を避けつつ、フレズヴェルクはスティレットを迎撃する。

 そして、スティレットのスマートガンから放たれた三発目のビーム。

 それだけが明後日の方向に放たれた。

 

「……?なにを──」

「囮よ!」

「──しまっ……」

 

 それまでは狙いをつけて発射されていたビームの光が全く別の方向に走ったことにフレズヴェルクが気を取られ、攻撃が途切れた隙をスティレットは突いた。

 スティレットが全力で突撃し、それによって二人の距離が一気に縮まる。

 

「これでっ!」

 

 今の自分が取っている戦法に銃器は適さないと判断し、数発撃っただけのスマートガンを鈍器のように叩きつけるスティレット。

 フレズヴェルクは咄嗟にベリルショット・ランチャーでその攻撃を防ぐ。

 だが、刃先を向けることも間に合わなかったベリルショット・ランチャーはスティレットの前腕に固定されたスマートガンに弾き飛ばされ、フレズヴェルクは取り回しの良い火器を失うこととなった。

 

「ランチャーが……よくも!」

「このままぁ!」

 

 勢いのままにスマートガンを振り、あわよくばダメージを与えようとするスティレットだったが、フレズヴェルクは同じ攻撃を二度受けるような相手ではない。

 すぐに召喚したベリルスマッシャーの柄で受け止めて地力の差で押し返し、スティレットが弾かれたところで二本目のベリルスマッシャーを振るい、スマートガンを切り裂く。

 

「くっ!」

 

 スティレットは即座に破壊されたスマートガンを破棄し、スマートガンは直後に爆発。

 その爆風でよろけたスティレットの隙をついて、フレズヴェルクは轟雷の元へ向かおうとする。

 

「待ちなさい……よ!」

 

 飛び去ろうとするフレズヴェルクを見て二本のサムライマスターソードを抜き、残った柄をシースブレイドに変形させるスティレット。

 両方のシースブレイドをブーメランのように回転させながら、フレズヴェルクに投げつける。

 

「まだ来る──ぐぅっ!」

 

 片方は回避したものの、もう片方のシースブレイドは避けきれずにベリルスマッシャーで受け止める羽目になったフレズヴェルク。

 巨大なブーメランを受けたことでよろけたフレズヴェルクに向かって、二刀流になったスティレットが勢いよく接近する。

 再三にわたって始まる接近戦。

 

「あぁ、もう!メンドくさいなぁ!」

「こっちのセリフ!」

 

 苛立ちを隠さないフレズヴェルクの声に、スティレットが返す。

 

「いきなり乗り込んできてあおの部屋で暴れまわって、戦い終わったら飛び去って!」

 

 初めて戦ったときのことを叫びながら、サムライマスターソードで斬りかかるスティレット。

 単純な斬撃故に、フレズヴェルクに簡単に受け止められるも、鍔迫り合いの最中にドローンを二の腕に固定したまま機関砲で射撃してダメージを蓄積させていく。

 

「ちまちまと!」

「また来たと思ったら、戦いたいだけであおに怪我をさせようとして!」

 

 ダメージを嫌って離れようとするフレズヴェルクに向かってスティレットが突っ込み、二度目の襲来の時を思い出しつつ再び斬りかかる。

 

「いつまでも──」

「今度は勝手に暴走!」

 

 現状に不満を乗せて吐き出しながら体重をかけてサムライマスターソードを振り下ろし、フレズヴェルクに防御を強要。

 またも至近距離からの機関砲を放ち、フレズヴェルクに対してダメージを与え始める。

 

「鬱陶しいんだよ!細かいのが!」

 

 繰り返される射撃に腹を立て、反撃を試みつつフレズヴェルクが叫ぶ。

 防御に使っていない方のベリルスマッシャーで右側のドローンを破壊されながらも、怯む様子を見せないスティレット。

 

「ほんっと、世話がかかるんだから!」

 

 畳み掛けられるスティレットの言葉に、それを無視しようとしていたフレズヴェルクが歯ぎしりする。

 

「──誰が頼んだ!」

「アタシが決めた!」

「ふざけるなぁ!」

 

 残った左側の機関砲で撃たれながらも怒りのままに力を込めてベリルスマッシャーを横薙ぎにし、スティレットの右手からサムライマスターソードを取り落とさせるフレズヴェルク。

 

「うっ──」

「もう片方も!」

 

 先程の意趣返しと言わんばかりに、フレズヴェルクはもう片方のサムライマスターソードを蹴り落としてスティレットを丸腰同然にする。

 

「これで!」

「くっ……きゃあぁ!」

 

 一気に武装を失ったスティレットに向かって、トドメと言わんばかりにフレズヴェルクのベリルスマッシャーが振り下ろされる。

 咄嗟に左腕のブレードを展開して防ぐスティレットだったが、体重を乗せた一撃に耐えられるはずもない。

 ブレードを破壊され、その勢いのままに弾き飛ばされるスティレット。

 

「消えろぉ!」

 

 フレズヴェルクが取り出したキャノンの銃口を向けられ、急速に落下するスティレットは思わす目を閉じる。

 だが、敗北は訪れなかった。

 代わりに訪れたのは、受け止められた感覚。

 

「……轟雷?」

「ありがとうございます、スティレット。助けてくれて。今度は、私が」

 

 スティレットを抱きとめながらそう口にした轟雷は、あおの部屋で暮らすFAガールたちの装備を身に着けて飛行していた。

 助かったことを自覚し、スティレットはフレズヴェルクの方を見上げる。

 

「くっ……!」

 

 フレズヴェルクは体制を崩していた。

 轟雷の肩のキャノンから出ている煙を見て、フレズヴェルクの砲撃が妨害されたのだと理解するスティレット。

 

「……いいところは譲るしかないかしらね」

「でも、あなたのおかげです」

「ん……そっか」

 

 少なくとも時間稼ぎにはなっていた。

 轟雷の言葉は、スティレットに確かな達成感を与えていた。

 

「ていうかアンタ、ちゃんと飛べるの?」

「大丈夫、だと思います」

 

 そう答えつつスティレットを地面に降ろそうとする轟雷だが、バーゼラルドのブースターで無理矢理飛んでいる彼女は、飛行に慣れていない様子を隠せずにいた。

 

「フラついてるじゃないの。これ、使いなさい」

 

 降ろされたスティレットが、自分の背中の飛行ユニットと四肢の尾翼を、飛行の安定性を上げるために轟雷に装着する。

 

「ありがとうございます」

「勝ってきなさいよね!」

「はい!」

 

 笑顔を見せ、激励の言葉を送るスティレット。

 共に過ごすFAガールの装備と想いを乗せ、轟雷が上空へと移動する。

 目指す先には、体制を整えつつ二人を見下ろすフレズヴェルク。

 

「さっき、私に言いかけていましたね」

 

 空中でフレズヴェルクと向き合いながら、──想いの力の作用なのか、金色に光り輝いているかのように見える──轟雷が言葉を紡ぐ。

 

「……なにを」

「終わりだ、と。言う通りにしましょう。私たちが、終わらせます!」

「ほざくなぁ!」

 

 赤と金が激突する。

 

 

 

 一方、直前まで激しいバトルを行っていたスティレットの周りには、一転して静寂が訪れていた。

 

「轟雷、フレズヴェルク……。アタシにも、まだなにか……!」

 

 互角に戦う二人のバトルを見上げながらも、尽力できることは残されていないかと考えるスティレット。

 

「残ってるのは──」

 

 

 

 スティレットができることを探している間も、上空では戦いが続いていた。

 

「やあぁっ!」

 

 レールガンとミサイルを撃ちつつ接近する轟雷。

 

「付け焼き刃ごとき!」

 

 対するフレズヴェルクはベリルスマッシャーを回転させて盾のように使い、ミサイルを防ぐ。

 その隙をついて、轟雷がガンブレードランスで突撃する。

 

「みんなからの力で!」

 

 もう一方のベリルスマッシャーでいなそうとするフレズヴェルクだったが、轟雷の狙っていたユナイトソードでの斬撃に気づき、一気に後退して距離を取る。

 

「そんなツギハギ!」

「受け取った気持ちで!」

 

 自分の番だとばかりに突撃してくるフレズヴェルクをビームで牽制するも、全て躱して轟雷の懐に飛び込むフレズヴェルク。

 勢いのままにフレズヴェルクがベリルスマッシャーを振るう直前、轟雷の展開したサブアームによって、柄の部分を抑え込まれる。

 同様にもう片方のベリルスマッシャーも、轟雷はユナイトソードで受け止めて見せる。

 

「ボクが!」

「私が!」

 

 同時に距離を取り、同じく同時に接近する両者。

 

「負かす!」

「勝ちます!」

 

 高速ですれ違いながら互いに斬撃を繰り出し合い、どちらも防ぎ合う。

 互角の戦いを演じながらも、あと一手が足りない。

 じりじりともどかしい状況が続く。

 その時だった。

 フレズヴェルクの体に、小さな衝撃が走る。

 

「──なんだ?」

 

 ぶつけられたのは水色のドローン。

 スティレットに残された、ただ一つの武装。

 弾丸は残っていなかったため、残り少ない推力で突撃させただけの、なんのダメージにもならない攻撃。

 

「く、この……!」

 

 それでも、フレズヴェルクの気を逸らさせるのには十分だった。

 下方を睨みつけたフレズヴェルクを見上げる、挑発するようなスティレットの表情。

 

「いつまでも邪魔を……、──轟雷は!?」

 

 ──少しだけ隙を作ろうという──スティレットの狙いを看破し、轟雷の方に向き直るフレズヴェルク。

 そこには、レールガンを初めとする重い武装を手放し、ガンブレードランスによる刺突の構えをとる轟雷の姿があった。

 

「舐めた真似を!」

 

 牽制を行うことも、距離を取ることもフレズヴェルクにはできたはずだった。

 だが、スティレットからの横槍で頭に血が上ったフレズヴェルクが選んだ手段は、迎撃。

 

「行きます!」

 

 真っ直ぐに突撃してくる轟雷に合わせる形で、フレズヴェルクも突撃を行う。

 

「倒す!」

 

 ベリルスマッシャーの刃を十字にクロスさせて、ガンブレードランスの突きを押し切ろうとするフレズヴェルク。

 しかし、轟雷による当て方が良かったのか、それとも仲間の想いが乗っていたからか。

 

「そ、そんな……!」

「いっけえぇ!」

 

 ベリルスマッシャーが、ガンブレードランスに打ち砕かれる。

 そして、止まることなくフレズヴェルクに届く轟雷の一撃。

 

「やったわね……!轟……ら……い……」

 

 力を使い果たしたスティレットが気絶するのとほとんど同時に、轟雷の勝利が確定した。

 




次回もセッション!

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