機動戦士Gundam GQuuuuuuX 届け、言葉ー 作:川嶋 夜姫
ジオン独立戦争の終戦から4ヶ月。
サイド6コロモ・コロニーの宇宙掃除会社スペースデブリマックスで働く元ジオン兵の少女が居た。
宇宙での作業用ロボットとして2本のアームに頭の上にクレーンがついているが、ぶっちゃけ無重力で吊り上げるのにいるのか疑問に思う。
「いつもフックがゆらゆら揺れるのが気になるんだよなぁ。」
しかも、その揺れているフック自体は少ししか見えない為、絶妙にうざいだけにとどまるのだ。
ボールの後部には推進器が幾つか取り付けられているのだが、それに接触しないようケーブルが伸びている。
これは安全帯で、宇宙では物の位置関係を見失えばすぐさま迷子になってしまう。
流されないように、また同じ空域のコロニーでも領空内に侵入しないようにしなければならない。
スペースデブリマックスは軍警の下請けで働いている民間のお掃除屋。
下手な事をしでかすわけにはいかないのだ。
ボールが活動できる時間は約2時間。
普通に作業して帰ってくる事を考えての時間で、空気はその倍はもつ。
でも、それでも4時間しか持たないため、これで何処かに遠出しようなんて事を考えるのはジャンク屋やってる人でも考えはしないと思う。
きっと、今作業している元ジオンの兵も・・・・・。
と言いたいが、それに近しい事を彼女は行なって今ここにいる。
人類が増えすぎた人口を宇宙に強制移民させて既に半世紀が過ぎた。
地球の周りに巨大な人口都市コロニーは人類の第二の故郷となり、そこで子を産んで、育てて、そして・・・・・死んでいった。
宇宙世紀0078年。
ただ、暮らしていた家族の運命が少しずつ、変わり始めた。
【第一話 戦争】
どこにでもあるような、3人家族。
お父さんは地球育ちで、宇宙には無限の可能性があるって言って、頑張って働いて宇宙に最も近いサイド3にやってきた。
そこで、機械が好きなお母さんと出会って仲良くなった。
なんでも、技術の進歩に星の研究が常にあったからとお母さんが言ってた。
ボクが生まれてからも2人は仲がとてもいいし、仕事も順調で普通に生活する分には不自由なく育ててもらった。
休みの日なんかは、お父さんから地球の話をよく聞かせてもらった。
「ボクが大きくなったら、お父さんとお母さんを連れて地球に行ってみたい!」
小さいながらも地球から宇宙に行くよりも、宇宙から地球に行く方が高いのは本で知っていた。
だから、バイトできる歳になったらたくさん働いて、家族旅行で地球に行くんだ。
そう、思っていたんだけど・・・・・。
学校から帰ってきて、バイトへ行く準備をしていた時の事をよく覚えている。
いつもならあまり音を立てないで玄関を開けて帰ってくるお母さんが、慌ててドアを開けてボクを抱きしめて。
「驚かないで聞いてちょうだいね・・・・・。
パパが、捕まったの。」
お父さんが地球生まれ、地球育ちという身分から地球連邦軍のスパイ疑惑をかけられて逮捕された。
お母さんがボクが準備している時に帰ってくることなんてなくて、まずそれでびっくりしたけど。
そんなこと、あるなんて。
でもこれ、戦争協力を強制する手口らしかった。
お母さんもその少し後、お父さんの釈放を条件に戦争協力を強いられて、ジオニック社への強制転職させられた。
宇宙世紀0079年1月3日。
サイド3がジオン公国を名乗り地球連邦政府に宣戦布告。
それから、1ヶ月・・・・・。
ボクの元に赤い手紙が届いた。
軍への強制的な入隊。
わずか1ヶ月という短い期間で訓練をし、3月4日、資源発掘隊と同じ時間帯と共に地球へ向かう。
緊急用コロニー脱出ポットには自分と同じくらいの歳の子と2人の大人が乗っていた。
中にいる間は特に会話が発生することはなかった。
「連邦軍に潜入して、情報を伝達すべし。」
サイド2で暮らしていた人の名前を借りて、コロニー落としの被害者、難民としてジオンに復讐したい。
悲劇のヒロインとしての役割を与えられて、連邦軍へと潜入するのだ。
「ホヌイ・オズキです。
サイド2の14バンチに住んでいました。」
サイド2の宙域はジオンが宣戦布告を開始してすぐに攻撃を受けた場所だ。
特に8バンチのアイランドフィッシュは暮らしていた2000万人以上を乗せたままコロニー落としに使われた。
この戦争に参加していなくても、コロニー落としの件は知っている。
ジオン本国に居る人間でさえも。
連邦の人は難民のふりをしたボク達を受け入れてくれた。
「大変だったろう。
辛かっただろう。」
涙を流しそうな声で言いながら抱きしめられる。
まるで、我が子を思う親のような。
あぁ、2人に会いたいな・・・・・。
連邦軍へ入隊し、陸戦艇ビッグトレーのオペレーターになる事ができ、情報の入手がしやすい立場になることが出来た。
10月15日オデッサ作戦開始予定日。
後方待機組だったビッグトレー級ヤツガシラはオデッサ鉱山地帯の奪還を目的としたオデッサ作戦に参加する事になる。
ボクは人目を盗んでジオンの連絡係に伝達する事になるが、この数ヶ月・・・・・。
部隊の人によくしてもらって多分、情が移ったとう表現が正しいかはわからない。
ただ、みんな難民だからか、それともまだ子供だからかとても優しく接してくれていた。
でもジオンはボクに何をしてくれているんだ?
連絡係が来て情報を伝達するだけ。
見返りなんてのはない、それが当たり前だから。
せめてもの両親がどうしてるかという情報さえわからない。
連絡係は地球で活動していて、コロニーとは連絡をとっていないと言っていた。
自分で選択したつもりだった。
でも、結局は結果に流されようと願っていただけにすぎない。
11月7日オデッサ作戦開始。
この時まだ、連邦軍は本格的なMSの量産はできてはいないものの、3方向からの物量作戦でMSを持つジオン軍を押し始める。
11月9日11:00時ビッグトレー級ヤツガシラ、撃沈と同時にジオン軍のダブデ級を撃墜している。
陸上戦艦同士の戦闘はどこか仕組まれたものがあった。
【第二話 皆殺しと見殺し】
11月9日05:00時。
膠着状態を打破するために連邦軍は総攻撃を開始する。
ヤツガシラもそれと同時に行動を開始する。
しかし、岩陰に隠れて待ち伏せをしていたダブデ級の攻撃により、左舷の3連装大型砲が破壊される。
ボクは、待ち伏せも攻撃が来るのを知っていた。
そして攻撃を受けてすぐの報告もあえて遅らせた。
11月27日、ジャブローからサラミス級が4隻打ち上げる。
ルナツーに到着してすぐに、クルーはルナツーで生産していたMSへの機種転換訓練を行う。
その中に、ボクもいる。
オデッサで敵味方の陸上戦艦が落とされ、ヤツガシラの唯一の生き残りだったことから、ほんの一部の人からは皆殺しのホヌイなんて呼ばれたりもした。
オデッサで勝利を収めても、過程がめちゃくちゃだったら生き残った人に憎まれても仕方がない。
それも、ボクが招いたタネなら尚更。
もう、自分で選びたくなんかない。
逃げたい気持ちでいっぱいだった。
だから、真っ先に突っ込んで死ににいけるMSのパイロットに志願したんだ。
12月24日ソロモン攻略戦、チェンバロ作戦を開始。
連邦の新型MS軽キャノンはガンキャノンの量産モデルらしい。
右肩に低圧ビーム砲、左肩に試作MSに装備されていたビームサーベルがある。
ガンキャノンは支援機体としての役割で開発されていたが、それに対MS戦を想定した白兵戦能力を上げる調整がされている。
「我々キャットウォーク隊は囮として艦隊特攻を行う!」
サラミス級3隻、マゼラン級1隻の突撃部隊を編成。
上陸を目的とした部隊の前に出て、敵を誘導する。
実は、二段構えの囮なのだ。
「ホヌイ、軽キャノン250出ます!」
サラミス級の甲板にマグネットで固定されていた連邦の量産MS軽キャノンが飛び立つ。
ジオンの艦隊がソロモンの前に展開されており、ミサイルやビームでの牽制攻撃が飛び交う。
艦隊は右舷、MS隊は左舷で進みソロモンに向かうコースをとっていた。
「下は弾幕が薄い!2、3発撃ち込んで進むぞ!」
隊長機に続いて3機が並んでジオンのムサイ級の下面にまわりこむ。
しかし。
「ザク?!」
待ち伏せだ。
元々MSの運用を前提とした作りをしているムサイ級に下面にビーム砲などいらない。
足りない弾幕はMSで補える。
「う、うぁあ!!—。」
隊長機とそのすぐ隣にいた軽キャノンが撃ち落とされる。
グポンとモノアイを光らせたザクの銃口はボクの乗る機体へ向けられていた。
「死ねるかぁ!!」
ザクのマシンガンから光が発する前に、ムサイを足場にして蹴る勢いで回避する。
「スコープ、機械アシストなんて待ってられるか!」
コックピットシートの頭の右側にあるスコープでザクに狙いをつける。
照準がきちんと確定するのに1秒弱かかり、今すぐにでも撃ち込みたいボクはそれを待ってられない。
「どうせお前が避けても艦に穴が空くだろ!」
右肩の低圧ビーム砲と右手の手持ち式ビームライフルを交互に撃ち込む。
ザクのエンジンを破壊すると、大爆発を起こして、ムサイ級のエンジンに誘爆させることが出来た。
「ごめんね。」
爆発を確認する事なく、ソロモンへと向かう。
宇宙空間なのに、爆発の振動が伝わる。
戦争の光は、自分の周りに広がっている。
見たくなくとも、見なきゃいけないんだ。
生きているから。
「頭が、痛い・・・・・。」
しかし、前に進みたいのにあまりの頭痛で眩暈が。
動きを止めては的になる。
体調不良で動かせないなんて情けない。
でも、こんなとこで死ぬくらいなら。
MSを無駄にするくらいなら、予備のパイロットに引き渡すのがいい。
うまいことソロモンを周り、戦闘の光が薄い場所まで下がる。
そんな中、キラキラ光る何かを見つける。
「なんだろ、ソーラーパネルかな。」
スコープの倍率を上げて、気になる物体を見つめる。
「流石に離れすぎてて、銀のパネルにしか見えないや。」
【第三話 ただいま、さよなら。】
一年にわたる戦争は後にジオン独立戦争として歴史に刻まれる事となる。
戦争が終わっても、戦後処理で約3ヶ月はサイド3へは帰れなかった。
でも、ようやく帰れる。
家族の事はスパイ生活で状況がわからなくてとても不安だったけど、戦争も終わって軍も疲弊してるしで強制力も昔ほどはなくなった。
「携帯端末なんかも支給されたやつだったし、でもやっと実家に帰れるー!」
連邦からくすねた軽キャノンは敵の戦力を探るのに役立ったためなのか、退職金はそれなりに貰えた。
多分個人で地球に行ける大気圏グライダーが買えるくらい。
「久しぶりにチーズケーキ食べたいなぁ。」
いろんな緊張から解放されたからか、忘れたいからなのか。
やりたい事とかがたくさん出てくる。
自分のベッドで熟睡したいなんて願いも、軍艦の狭い空間では叶わない願い。
寝袋に入って数人で部屋を共有なんてのはもうこりごりなんだ。
食事も栄養はあるらしいけど、たいしてあまり美味しくなかったし、嫌いな食べ物もあった。
特に野菜なんかはあまり取れないから少なかった。
タマネギ大好きなのに。
でもいいんだ。
帰るから。
コロニーの外を走るモノレールに乗り、降りてー。
地上に上がる階段を出ると丁度、夕方から夜に景色が変わる光景が見れた。
「地球を見ちゃうと作り物って感じがすごいね。
でもこういうなんとかマッピング見たいな技術もすごいとは思う、うん。」
などと独り言を発しながら、スタスタ歩く。
サイド3の9バンチには海がある。
広くて、綺麗で、キラキラってしてる。
お父さんも本物の海とあまり変わらないって言ってたけど、太陽の光を反射した時の海はすごく綺麗だって言ってた。
「ん、このにおいは雨か?
予定表見そびれたなぁ。」
雨のにおいがしてすぐに、雨がぱらぱらと降り始めた。
傘は持ってないし、どこかで買うにも勿体無い気がしてならない。
「走る気力も湧かないや。」
水を切って走る車。
ライトの光が反射して少し眩しい。
コロニー内を走る車は基本的に電気自動車だ。
コロニー育ちで、ドライブが趣味って言う人はそんなにいないらしい。
「やっとついたー!」
小さながら一軒家。
ポストの中に敷いてある板を引き出してその下から鍵を取る。
「よかった、変わってないや。」
鍵穴に鍵を入れて回す。
「あれ?開いてる。
もしかして鍵かけてない?」
ドアノブを回して入り、リビングへ向かう。
「ただい・・・・・ま・・・・・。」
ギチ・・・・・。
ギィィ・・・・・。
「なんで、なに・・・・・?」
家に帰って目にした光景、多分私は一生忘れる事が出来ないと思う。
玄関を出て、鍵を閉めず後にした。
・・・・・さよなら。
【第四話 脱出】
0080.03.16 夜。
「確かMSデッキがあったはず・・・・・。
起動キーは隠し持ってたから、ザクを探さないと。」
港の工場地帯に侵入して、どうにかMSがある場所を探している所。
9バンチはMSのテストを行っていた場所というのもあって、戦争に持っていかなかったMSがあるはずだ。
軍服はもうないし、IDカードもない。
バレたら絶対殺される、かもしれない。
「このにおいは・・・・・。
うん、間違いない。
ミノフスキー粒子のにおいだ。」
戦争体験者、特にMS乗りはミノフスキー粒子のにおいをわずかながら感じ取ることができるみたいだ。
どんなにおいーだか、何に似てる?とか聞かれても例えるのが難しい。
香水であるんじゃない?知らんけど。
通気ダクトを通って降りると、ムサイ級が1隻とドムが4機並んでいた。
「ドムじゃダメだ、ザク用だし。
それにまだドムは主戦力だからすぐ足がつく。
どうするかなぁ。」
重力が薄いブロックだと、ふわふわと泳いで移動することができる。
ダクトから出て、物陰に隠れながらMSを探す。
ザクが欲しい。
ザクじゃなきゃダメ。
「あった!」
戦闘によるダメージなのか、ぶつけて擦れたのか塗装が剥げかかっており、両肩のシールドとスパイクがないザクを見つける。
「人もいないし、今いけるよね。」
壁を蹴って、ザクの元へ向かう。
コックピットハッチは開いておりスムーズに乗ることが出来た。
「ハッチ閉鎖、リフト下ろし。」
モノアイが光り、ザクが乗っているリフトが降りる。
順調だ。
あの時みたいに。
0079.12。
ソロモンを制圧した連邦軍は、ソロモンを改名コンペイトウでジャブローからの援軍到着を待っていた。
しかし、その最中見えない敵による奇襲を受けてしまう。
「パイロットは直ちに出撃せよ!
繰り返す!パイロットはー。」
自分が乗っていたサラミスのブリッジがやられ、照明が赤に切り替わる。
「みんな早く脱出カプセルに入るんだ!」
「私が先よ!」「怪我人を優先して!」
「ここもいっぱいか、どうしたら・・・・・。」
カプセルに入るための通路はどこも人がいっぱいだ。
混乱もして、ボクの行動を見て咎める人なんていない。
そもそも、目に映っていないんだろうな。
みんな自分が助かりたいから。
そんなボクもそうだけど。
MSデッキには人が少ない。
緊急脱出用のランチには人がたくさんで、今にも発艦する勢いだ。
「ハッチ開けろ!」
「リモコンができないんですよ!!」
艦のメインブリッジが機能しないためなのか、どこか故障しているのかわからないが、ハッチが開かない。
「ボクがやります。」
軽キャノンに乗り込んで、左肩のビームサーベルを手に取る。
「しくじったらみんなぺしゃんこになる・・・・・。
コトノハ、ボクならできる、やれる、やれる・・・・・。
よし!!」
素早く四角く斬って、蹴りを入れるとハッチが外に吸い込まれるようにふっ飛んでいく。
そして空気が急激に吸われるように出ていき、ランチもその勢いで外に放り出される。
「問題はここから、でもやるんだ!」
サラミスを抜け出して、見えない敵を探すMS隊が見える。
「どこだ?!どこに隠れてー・・・・・。」
黄色のビームが3発、全く別の方向から飛んできて、軽キャノンが撃ち落とされた。
「違う、なんだろ。
いや、そんなの探すんじゃない。
ボクは、帰るんだ!」
機体の推進剤と空気の数値を見る。
「1週間は空気は持つけど、問題は推進剤・・・・・。
どうにか、いけるように!」
わずかなスラスターの操作で月に向けて流される。
背中の方では、今でも混乱の嵐だ。
「大佐、この少女は・・・・・。
ですね、グラナダで・・・・・。
・・・・・はい。」
意識がはっきりしてない。
でも、多分ここはジオンの艦だ。
・・・・・。
「ここは・・・・・。」
コロニーの周辺に浮かぶデブリを固めたオブジェクトにぶつかって目が覚める。
昔から運任せをする時、眠る癖があったような。
でも、サイド3じゃない場所に辿り着いた。
「よし、頑張りますか!」
ザクのハンドルの下からインストーラーデバイスを取り外し、モノアイの色がピンクから青に変わった。
0080.03.20。
コトノハ、サイド6の空域にたどり着く。
それでも、生きたいんだ。