機動戦士Gundam GQuuuuuuX 届け、言葉ー   作:川嶋 夜姫

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 生きるために。


第2章「今日もボクは」

 サイド6のコロモ・コロニーで今日も今日とてボールで作業をする。

ふらふらと揺れるフックはもう見慣れた。

 デブリを回収して一箇所に集める。

そのあとは他の人が四角く固めるのだ。

 

 いつもと同じ景色、いつもと同じ流れ着いてくるデブリ群。

そんな中、少し変わったものを見つけた。

 

「軽キャノンの頭じゃん。

いや珍しくもないわなぁ。」

 

 そう思って、適当にまとめて持っていこうとしたところ、ふと違和感に気がつく。

 

「あれ、軽キャノンってこんなアンテナあったっけ?」

 

 おでこに伸びるV字のアンテナ。

通常の軽キャノンやガンキャノンにはない装飾。

隊長機ですら、連邦系MSにV字アンテナはない。

ならこれは、なんだろうか。

 

 

【第五話 侵入】

 

 

 サイド6は一年戦争時、早期に中立という立場を取り、戦争から最も遠いサイドとなった。

そのためか、宇宙の戦争難民はサイド6へ集まる形となる。

不思議なことに、なぜか12月も多くの難民が押し寄せたと報道があった。

 コロモ・コロニーもその難民問題を抱えており、受け入れ自体はしたものの、居住区は割与えてもらえてない。

そのため、不法に建物を建築され、地図のない街、ジャンクヤードがうまれた。

 

「ここまで運んでくれたザクともお別れだね。

生命維持用の電源しか入ってなかったから、軍警にも見つかってなかったし。」

 

 シートを開けて予備のノーマルスーツに着替える。

 コックピットを開けて、コロニーと自分の位置を目視で確認する。

 

「うっわ、遠。」

 

 パイロットスーツじゃない宇宙服を身につけ、バックパックなしに飛び移るなんてのはどのくらいの無謀な事か。

でも、近づきすぎると誰かに見つかってしまう。

 

「ええい、ままよ!」

 

 ザクを蹴って、コロニーへ。

ここまで運んでくれたザクへの感謝を忘れずに。

 ザクは、見届けるかのように自分が降りた位置から動かなかった。

 

「そこそこ古いコロニーのはず。

入り口くらい沢山あるでしょ!」

 

 足のマグネットでコロニーの表面に立つ。

足を上げれば簡単に外れる程度の磁力のため、ちょっと癖があるが、歩くことができる。

 

「入り口はっけーん。

おっじゃまっしやーす。」

 

 おそらく点検用の出入り口だろう。

そこそこの傷があるから、多分古い。

新しいのだったら補強か埋められるか、はたまた塗り直すか。

今は使われてないと期待しよう。

 扉横のハンドルを回して、扉を開ける。

空気が漏れ出てるのがわかるが、すぐにそれは途切れた。

 

「使われてなくても、空気漏れがあるとコロニー公社に伝わるから早めっと。」

 

 中の空気を確認するよりも先に、扉を閉め直す。

手動とは言え、電子的なシステムで開け閉めする扉なら、開閉した時のログは残る可能性がある。

 

「空気はほぼないみたいだし、もしかしたら長年上から流れて溜まってた空気が抜けたのかな。」

 

 ヘルメットにAR機能があり、空気などを計測して表示する機能がある。

対応している銃の残弾なんかも出るんだとか。

 

「でもおかげで空気の流れを追ってけば地上に出れそうかも。」

 

 空気は満遍なくコロニー内を循環する。

その過程でほぼ密閉されている区画にも空気が流れる。

その流れを数値で見て、地上を目指す。

 

 しばらく進むとまた扉が見えてきた。

どうやらここの扉の隙間から空気が流れているようだ。

 

「ユニバーサルスタンダードっと。

よしよし、開いた。」

 

 点検用の扉なら、共通番号で簡単に開けることができる。

 扉を出た先はどうやらMS用の通路。

20メートル以上の高さがあり、歩いているとMS用の出入り口も見えた。

おそらく地上には繋がらず、宇宙に出るための場所だろう。

 

「ここは空気がしっかり流れてるね。

ようやく脱げるー!」

 

 暑苦しいヘルメットを脱いで、大きく息を吸う。

正直空気が薄くなりつつあったスーツを今すぐにでも脱ぎ捨てたいところ。

しかし、こんな所で置き去りは勿体無い。

 

「ちょっと洗ったら売れるっしょ。」

 

 タラップを昇り、マンホールのようなものを開ける。

光は差さず、埃っぽいにおいを感じる。

両手が塞がっては昇りにくいためヘルメットは被り直したが、バイザーは上げており、視界は良好。

空気もしっかりあるが、埃っぽい。

 

「暗いけど、ライトをつけなくても見える。

さっきの入口といい、使われてなさそうなところを見つけれたのはほんと、運がいいね。

 

 ほのかな街灯で道が照らされていて、遠くまではっきりは見えなくとも、あたり一面は目視できる。

カチカチと点滅するライトもあり、整備はされてなさそう。

 地面は老朽化で多少割れており、エアコンは程よく効いている。

寒くはない。

 

「一応居住区なんだろうけど、まだ地下っぽい。

またしばらく歩かなきゃなー。」

 

 コロニー落としで故郷を失った人達も、こんなふうに来たのだろうか。

ジオンの独立宣言とほぼ同時に襲われたサイド2。

 逃げる人達の多くが、初めて外から故郷を見るのが、燃えているコロニーの姿だなんて想像できただろうか?

そんな事、逆立ちしたって想像できない。

 

「上がっても上がっても暗いなと思ったら夜だったのか。」

 

 ようやく外・・・・・というよりもコロニーの街に入ることが出来た。

コロニー内はすでに夜の景色を映し出していて、車の光が川を作って・・・・・はいない。

たまに走るのを見る程度。

 

でも。

 

「これでやっと無事に入る事が出来たわけだけど。

・・・・・どうしよ?」

 

 ただ、中に入るだけでは軍警もしくはジオン軍に突き出される可能性がある。

ほぼ何も目的がなく、流れるようにやってきたので、段取りが何一つ出来ていないのは致命的ではないだろうか。

それでも、今日は生きている。

 

 

【第六話 ジャンクヤード】

 

 

 コロニーを作った人はまだ地球で生まれ育った人達。

自分達の手で宇宙にボトルシップみたいなのを作って、そこで大地を作った時何を思ったのだろうか。

 外壁を閉じて酸素を全体へ供給し、最後は機械の計測ではなく人が呼吸して建設完了。

最初に呼吸をした人は、とても怖かったと思う。

機械では空気は人が吸っても平気な数値を出していても、宇宙で作った人工の大地だ。

 でも、人類初コロニー内で呼吸した人はきっと・・・・・。

 

 

「うっわ、ひっどい臭い。」

 

 建造されて70年ぐらいの月日が経ったコロニー。

人が溢れんばかり住んでおり、難民も押し寄せ不法建築までされた。

難民が建てた難民が暮らす街、ジャンクヤード。

 スラム街のように暗い雰囲気、壁の落書き。

違法とされる紙タバコによる喫煙。

治安は悪いの一言に尽きる。

だけども、こういう場所でなら自分のような者を受け入れてくれるかもしれない。

 

「ガキの難民なんか何も役にはたたねぇよ。

どっか行きな。」

 

 ダメだった。

あーーいや、多分軍用を動かせるって証明出来るものを提示してたら受け入れてくれたかもしれない。

でもそんな事したら、下手したら取られちゃうかも。

 階級章やMSが動かせるよマークなんかは売れるらしい。

 

「いーや、ダメダメ!

流石にこれは働く上できっと必要になるだろうし。

でも、んーどうしようか。」

 

 難民が暮らす街では誰もが今日を生きるのが必死だったりする。

機械を修理して稼いだり、建物を建てて稼いだり、野菜とかを育てて売ったり。

自分にできることを探して、見つけて。

みんな自分で努力しているが、その努力は他人を助け合っていた。

 

 

「うげぇ・・・・・。

もうンマイゼバットがない。」

 

 1日に必要なカロリーを摂取できる上、美味しいスナック菓子。

宇宙暮らしで、軍人も片手間で食べられるからと人気だけど、もうそれが手元からなくなった。

 

「おいしい・・・・・。

いや、もうご飯ならなんでもいいから食べたい。

はぁ・・・・・。」

 

 人通りがない路地裏に座り込んで、意識朦朧。

ああ、暗い道なんだ。

朝だというのに建物と建物の間はとても暗い。

サバイバルするにも地球と環境が違いすぎる。

というかそんな生活なんてした事がない。

 外に置いてあるポリバケツを除いて何かあるかなと漁ろうとしても、体が拒絶する。

 

 考えるなんてのはもう無理だ。

水でもいいから飲まないと。

飲まないと・・・・・。

 と・・・・・。

 

 

「明る。」

 

 多分光を見るのは久しぶり。

眩しすぎて、まともに目が開けられない。

それと、意識を失った場所とは違う。

最低限寝れるようにされた敷布団の上に寝転がされてたみたい。

 

「目ぇ覚めたようだな。

と、栄養失調で倒れてたんだからいきなり動くのはやめておいたほうがいい。」

 

 機械の油が服に付着してとれてないのか、さっき着いたのかはわからないが、ちょっと汚れた作業着を着たおじさんがやって来た。

 どうやらたまたま通りがかったら倒れてたもので心配だからとここまで連れてきたらしいが。

多分普通の街でそれをやれば誘拐になるだろうね、でも。

 

「あの、ありがとうございます。

その、助けてもらって。」

 

 上手く起き上がれず、頭を下げるのはできない。

それでもちゃんと伝えておかなきゃだもんね。

 

「君みたいな小さな子だって難民でこんな所でしか生きられないんだ。

助け合っていかにゃ、戦後と言えど生き残れまいて。」

 

 布団から起き上がる。

 

「手のひらがちょっとゴツっとしたけど、お嬢ちゃんMS乗りか?」

 

「うぇっ?!」

 

 そんな特徴あるの?!

と驚きの声が出てしまった。

すぐに自分で手のひらを触ってみる。

 するとおじさんはガハハと笑いながら言う。

 

「冗談だよ!

たまに君みたいな反応する人いるもんで面白くってなぁ。

でも、MSの運転ができるなら働き口はいくらでもあると思うがねぇ。」

 

 ついさっき・・・・・ではなく、数日前に断られたばっかりなのだけども。

 

「戦争の影響でサイド6の方にもゴミが流れ着いてるって騒いでるのを聞くからの。

運転手を育てる手間を考えたら、元軍属でもなんでも使いたがるはずさ。」

 

 それもそうかもと思う。

ザクと言えど最低一週間の訓練を受けないと戦闘には使えない。

どこかで聞いた話だけど、軍警に払い下げられたザクでも同じ訓練期間が必要らしい。

 

「宇宙での作業となりゃ尚更経験あるやつのがいいだろうよ。

上も下も、左右すらないからな。」

 

 方向感覚がなくなる。

足がつかない上、景色も目印になるものを失えば距離すらも測れなくなる。

それに、MSを動かすとなれば推進剤の残量のチェックも大事だ。

もしなくなってしまえば、流されるままどこかに進み続ける事になるかも。

 

「民間の宇宙清掃会社って確か、コロニー会社の下請けで難民も雇用してたはずだから・・・・・。」

 

 多くの命が消えた。

サイド3が独立宣言し、連邦と戦争をしたおかげだ。

 近くにあったから、戦争協力を拒否したから、大きな被害が出たサイド2は壊滅。

その後も宇宙で戦争が続いて、その時に発生した多くのデブリが今も彷徨い続ける。

まるで、どこか安らかに眠れる場所を探すように。

 

 

【第7話 ルナツー攻略】

 

 宇宙世紀0079.12月。

 

「帰還途中に偶然見つけたが、ジオンの兵と見て間違いない。」

 

 声がする。

 

「彼女が持っていたタグでデータ照合はできたのだろ?

手に入れた軽キャノンはグラナダで降ろして研究部に調査させればいい。」

 

 グラナダ・・・・・。

ならジオンの艦なんだ。

 月は鉱物資源をたくさん蓄え、いわばジオンの生命線とも言える場所。

MSや戦艦を開発している工場もあるらしく、連邦はグラナダを攻めるか、ソロモンを攻めるかを宇宙に艦隊を送って数を揃えるまでは決定しなかった。

今を考えると、情報漏洩を危惧してギリギリまで各艦の艦長に伝えなかったと見るのが正しいか。

 

 

「名誉あるジオン軍人を讃えー・・・・・。」

 

 ジオン本国ではないものの、階級章の受け渡しがグラナダで行われた。

鹵獲した軽キャノンで戦力の分析が出来たらしく、二階級特進し少尉になっちゃった。

それだけ、人がいないと見るのが正しいのか、正直わからない。

 オデッサでは結局ジオンは負けて、押され始めているのは事実。

でも、なんでも赤い彗星が鹵獲したMSの量産が始まってるなんて噂がある。

 

「ザクに中距離用火器を取り付けた、さしずめザクキャノンっていったところかな。」

 

 ザクの背中は拡張性がある造形になっており、オプション兵装を視野に入れた設計となっていた。

リックドムが建造され、型落ちとなりつつあるザクもこうしてドムの支援と割り切って使う事により現役を続行できる、というよりやはり物資は有限だから、使えるものは使うというスタンスなのだ。

 

 ルナツー攻略作戦決行日。

司令はマ・クベ大佐の指揮の元、作戦が行われた。

 

 コロニーよりも大きな地球連邦軍の活動拠点。

流石にそこに宇宙船の開発も行うだけの施設があるだけにして、守りも硬い。

 ジオンは月のグラナダで4隻の船を残し、ほぼ全ての戦力でルナツーの攻略にかかるのだ。

 

「緑のサラブレッドが見えない。」

 

「あぁ、居残り組らしいぜ。

数を揃えているから、ジオンで唯一の強襲揚陸艦はいらないんだとか。」

 

 赤い彗星がMSと一緒に鹵獲した、連邦の新造戦艦。

MSの運用を前提とした作りをしているらしく、ジオンでも実装されていないカタパルトでの発進をさせるらしい。

その分大型化して、鹵獲された艦以外は製造されているか不明。

 

「MS隊は出撃準備をせよ!

艦隊発砲後、順次発進!」

 

 開戦初期で行われた戦術。

艦隊を囮とし、MSは死角からの奇襲を。

しかし今は連邦軍もMSを開発して実戦に出している。

現時点であまり有効的な戦術でないことは、ソロモンが落ちた事で証明されている。

しかし、キシリアに指揮を任されたマ・クベには策があった。

 

「敵の第一防衛ライン通過!

各機、戦闘開始せよ!」

 

 敵の主力艦隊が総並びする宇宙空間。

ザクやリックドムの編隊で数を減らしにかかる。

リックドムの推力は現時点でトップクラスであり、機体が重い割に速度があり砲撃をかわしやすい。

撹乱はドム隊に任せ、ザクはその隙をついてバズーカやマシンガンを撃ち込んで行く。

 

「まるで誕生日になった気分だぜ!

追加のケーキがお皿に盛り付け始まった!」

 

 ルナツーのドッグから次々とマゼランやサラミスが出てくる。

更に遅れながらも敵の量産型MSである軽キャノンと、指揮官機はガンキャノン。

 

「へ、数を揃えたらいいってもんじゃねぇんだよ!!」

 

 リックドムは体当たりをかまして軽キャノンを吹き飛ばす。

サラミスにぶつかった軽キャノン目掛け、バズーカを3発打ち込みその場をさる。

連邦はMSの開発に遅れをとったために、慣れてないパイロットが多い。

しかし。

 

「なんだこいつ!

早い!!」

 

「また見失った!!

うあっ・・・・・ー。」

 

 ある宙域ではザクであろうとリックドムであろうと、持ち前の技術でキルを重ねる軽キャノンがいた。

 

「新型じゃない、軽キャノンであんなマニューバできるはずがない!」

 

「くそ!こいつだけにどれほどやられた?!」

 

 近づくものには死を与えよう。

そう言わんばかりに目視した瞬間に姿を消して、次に見ることがあればそれは自分が死ぬ時だ。

 

「そこのキャノン付き、接触回線で聞こえますか?」

 

 コトノハが乗るザクキャノンの肩に触れて接触回線を開いた。

ミノフスキー下での通信は基本有線や接触回線でしか行えない。

 

「いくら相手が強くてもMSの推進剤や武器は有限なものです。

あれに構わず、戦艦を落としてくださいまし。」

 

 少し癖がある喋りの女性だった。

全身黒に白のエングレービングが施されたリックドムは離れて、敵の艦隊に突っ込んでいった。

 

「よし、やるぞ!」

 

 と意気込んだ時だった。

発光信号があがり、引き上げのサインだ。

 

「なに・・・・・。

あのカレーパンに足が生えたような。

そもそもMSのサイズじゃない・・・・・!」

 

 コトノハや、他のジオン兵。

連邦兵も目にした大型MA。

それは、ジオンが開発したビグ・ザムという巨大な悪魔だった。

 4機はゆっくりながらルナツーへ向かう。

 

「新型MAだと?!

あの速度ならビーム砲の餌食だ!主砲はあのMAを狙え!!」

 

 マゼランとサラミスの主砲がビグ・ザムへ向けられ。

 

「撃てェー!!」

 

 合図とともにビームが放たれる。

 

「新型といってもあれじゃ直撃しちゃう!!」

 

 誰もがそう思った。

でも。

その場を見ていたものたちは信じられない光景を目にした。

 なんと、ビームは見えない壁に当たったかのように、防水加工を施してピカピカの車が水を弾くように、ビームが後ろへ流されたのだ。

 

「Iフィールド、正常稼働確認。

敵艦隊ロック完了。」

 

「撃て。」

 

 ビグ・ザムの口に該当する部分からメガ粒子砲、つまりはかなり圧縮されたビームが放たれ艦隊を一気に消し炭に変えてしまった。

 

「最初から、ビグ・ザム一個戦隊を投入しておけば、あと3日早く落とせたのだ。」

 

 ルナツーはビグ・ザムの活躍により陥落する事になる。

 

 だが、ビグ・ザムを投入したこの戦いの裏で月のグラナダにソロモン落としが強行されていた。

 

 

【第八話 ジャンク屋】

 

 0080.04.02、晴。

口座はコロニーを跨いでも使えるみたいで助かった。

でも、それだけでずっと生活できるわけではない。

 

「たしかおじさんが言ってたのはー・・・・・。

あ、ここだ。」

 

 ジャンク回収業者で、人手不足のため広告を出していた会社があった。

スペースデブリマックスは戦後すぐにできたばかりで、宇宙に出られる人材が不足していた。

 

「あー、ザクの操縦経験があります。

一応その時の照明バッチです。」

 

 簡単な履歴書と、MSを乗れるという証明バッチを机に置く。

 

「17で戦争か・・・・・。

理由は尋ねないが、わかってるとは思うが宇宙は危険なところだ。

その覚悟はあるかね?」

 

 当然はい、だ。

銃弾が飛び交う中に身を投じる事と比べれば些細な事。

 

「なんだこれ。」

 

 人が入れるくらい大きな球体。

その頭上にはデブリを引っ掛けるためのクレーンがあり、足なのか腕なのかわからないのが下に左右付いている。

おそらく手?クレーンゲームのアームみたい。

 

「コロニー建設時代から使われてるボールだよ。

まぁ新目の型だから扱いは難しくないさ。」

 

 大きなコロニーを作る時に使われていたモビルポット。

一年戦争の時にも頭にキャノン砲を付けたのが多少いたらしい。

 MSで作業するよりはコストがかからないんだとか。

 

 簡単な操作ガイドを読んだり、コックピットに座りテストモードで操縦方を手に覚えさせる。

 コックピットシートは連邦標準規格の物で、一年戦争時の軽キャノンでよく使われていた物だったから、座り心地はさほど悪い気はしない。

 

「アームは回転と挟み込み。

あとはちょっと伸び縮みができるっと。」

 

 コロニー建設で必要最低限の動作は可能らしい。

MSでできた細かい動作がない分、操縦に必要なスキルはさほどいらなさそう。

 ただ、宇宙での活動を行う際、ボールの後部にはケーブルを接続するらしい。

旋回にある程度の制限が発生するけど、位置を見失わなくて済むし、それが安全帯としての役割を持っている。

 

「コトノハちゃん、いけそうかい?」

 

 仮採用から1週間。

資料を読んだり、訓練をしたり過ごした。

マシンガンで動く的を狙うよりは難しくないと感じる。

 

「ノーマルスーツとボールの機密チェックは念入りにしましたし、行けます!」

 

 スペースデブリマックスは小さいながら小さいながらビルをもち、その地下には宇宙へ出るための通路がしかれている。

 そのため、アームで固定して最深部までボールを降ろせるのだ。

 

「ケーブルの接触回線で位置はモニターできるが、安全第一なのは頭に入れておいてくれ。」

 

 ゲート前に到着する。

信号があり、コロニーの管理者側にロック解除の要請を行う。

承認がおりると信号は赤から青に変わってゲートが解除される。

 

「14:30時コトノハ、デブリ撤去作業に出ます。」

 

 スラスターに火をつけ、機体を固定するアームを解除してコロニーの外へ出る。

 

「久しぶりだなぁ。

宇宙に出ると孤独って感じがする。」

 

 ドンパチして振動が伝わる中生きていた自分からしたら、今の現状はものさびしさに近いものがある。

もちろん、そんな事起きて欲しいとは思わないが。

 

「ケーブル接続、開始。」

 

 バック駐車をするようにコロニーにお尻をつける。

ケーブルが接続されて、少量のミノフスキー下で通信が乱れていた中、はっきりとトレースできるようになった。

 

 0080.07.20。

 

 サイド6の27と28バンチの間の宙域でジャンク屋業者間のいざこざが発生した。

一年戦争で大量のデブリが発生して、多くのデブリが飛来してまもないこの時期では、あまり珍しいことじゃなかった。

 

 全身が黄色で紫のラインを散りばめたザクと、ライトグリーンと黄緑の塗装のザクはデブリの取り合いでついには闘いに発展した。

周囲のジャンク業者も面白がり、どっちが勝つか賭けを始め、あるものは動画を生配信し始めた。

 見かけたボクも当然最後まで見届けようと、ケーブルの限界まで近づいた。

 殴り合いの末、黄色のザクが頭を潰されて降参し、取り合いになっていたMSのパーツなどは勝者のライトグリーンのザクが持って去っていった。

 

「ひさびさにMSが戦ってるの見たけど、迫力あるなぁ。」

 

 空気の残量が少なくなった時に出るアラートが鳴り、その場から立ち去る。

戦いたい訳じゃないけど、やっぱりMSはいいものだなと、感じた。

 

 

【第9話】

 

 

 ギィィ・・・・・。

ギィ・・・・・。

 

「なんで・・・・・。」

 

 家の玄関に入り、リビングへ向かった先。

目の前には信じられない・・・・・。

信じたくない光景が見えた。

 

「おとう・・・・・さん・・・・・?!」

 

 自分の父親が。

首を吊って。

 

 

死んでいた。

 

 

 あまりの光景で、喉を締め付けるような感覚ができる。

なんでこんなことが?

なんでお父さんが?

 

 倒れている椅子の存在で、自らの意思で行ったのは確実なものだった。

これは、他殺じゃない。

 

自殺なんだ。

 

 震えが止まらない。

どうしたら、いいのか。

まるでわからない。

 

「なに・・・・・?」

 

 机に、開封された手紙がある。

それは、軍からのものだった。

 

 1つは、ボクが軍に強制入隊させられた時のもので、もう一つは・・・・・。

 

「そんな・・・・・。

そんな事って・・・・・。

こんなのちっともリアルじゃないよ・・・・・。」

 

 死因は過労死。

ジオニック社は、新たなMSを開発途中に鹵獲したMSを解体・解析してその技術を取り入れた新型MSやMAの開発に転換。

 あまりにも労働環境がひどく、納期も急かされていたという話を、当時働いていたと言うメカニックの人に聞いた。

 

 お母さんは、ゲルググの開発中に死んだんだ。

手紙はそれを知らせる通知なんだ。

お父さんは絶望して、いられなくなっちゃってこの道を選んだ。

 せめられないよ。

 

「帰る場所も、守りたいと思った人もいなくなっちゃったんだ。

なら、ボクは・・・・・。」

 

 ・・・・・さよなら。

 

 

 

 

「えー、でもこれさ状態はいいからもうちょっといい値で買い取って欲しいなー?」

 

 0081.02.06、ちょっと曇り気味。

 

 今は、ジャンク屋にこっそりパクったジャンク品を売りつけようとしているところ。

 

「MSの記録回路は自作できるレベルだぞ?

出せても15ハイトだな。」

 

「いいよーだ、後でいるなんて言われてもあげないからね。」

 

 ジャンク業社の間で密かに盛り上がっているコンテンツ。

MSファイト。

 去年の7月で起きたいざこざは、動画が一部界隈に広まって注目を浴びた。

賭け事も横行し始めて、ジャンクの取り合いというよりは、勝負の賭け金で儲けるのがメインになりつつあった。

 

 同年5月。

 MSファイトにスポンサーが付き、ルールがいくつか追加された。

それは、最初に勝敗が決まった頭部の破壊。

頭部を破壊されれば負け、そして2対2で行う事。

ランクの導入により、勝てば勝つほど旨味を得る。

 そして、名称は変更されクランバトルとなった。

 

 

 

「よかった、まだ回収されてなかったんだ。」

 

 こっそり宇宙に出て、ザクを見つけた。

コロモ・コロニーへ運んでくれたザク。

 

「よーし、がんばっちゃうぞ。」




 たたかいは、近い。
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