世界の敵になるために   作:黒巛清流

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いつもみたいに飽きるまで書いていきます


0.世界の敵になるために

宇宙空間のような不思議な空間、そこにオレンジ色の髪をしており神と同じ色のフリフリの……魔法少女のような服を着た少女と青と白で構成された猫のような犬のような兎のような不思議な生物がそこにいた。

 

「……本当にいいんだね。カエデ」

「ルルゥ……うん、これでみんなが救えるなら」

 

彼女達の前には歪んだ扉のような空間が口を開けている。

 

「確かにここに命を捧げればこの世界から魔力は消える。でも死んでいった彼女達が戻ってくるかも命を捧げたものがどうなるかも分からないのに」

「でも……ここで終わらせないと、また私達みたいに殺し合いをしないといけなくなる。私達みたいな人達がもう現れないようにするためなら……私は構わない」

 

ルルゥと呼ばれた生物はそうか…と呟くとカエデがスライド式携帯のようなものをルルゥに差し出し、ルルゥはそれを受け取る。その瞬間、カエデの体が光に包まれ魔法少女のような衣装からどこかの学生服へと変わった。

カエデは再度歪んだ扉へと視線を戻すと何度か息を整え、覚悟を決めた表情をして扉の奥へと歩を進めようとした。

その時

 

「でも、ボクはそれを許容できない」

 

ルルゥのその声と共にカエデは光の輪で体を拘束された。

カエデは驚き、その拘束を解こうと体を揺らすがびくともしていない。

 

「ル、ルルゥッ!? な、なんで!」

「ボクはずっと後悔していたんだ。君達に任せることに、何も出来ない自分に」

 

ルルゥはカエデを扉の前から離すとカエデの顔を見るように前に立つ。

表情は美味く読み取れないがどこか優しそうな顔をしていた。

 

「待ってっ! ルルゥ!」

「これでお別れだよカエデ、今まで……ボクを信じてくれてありがとう」

「ルルゥ―――――――――ッ!」

 

あぁ……これで本当に終わりなんだ……カエデ、レイ、アキラ、みんな……ごめん、そして……ありがとう……

 

そう呟くとルルゥは目を閉じて扉の奥へと消え……カエデ達の視界は真っ白に染まった。

 

 

 

 

 

「カエデー、早く起きないともうレイちゃんも来てるわよー」

「……ふぇ? ……あああああっ! もうこんな時間ーッ!」

 

カエデはベッドから飛び起きると急いで制服へと着替えて居間へと降りてくる。そこには母とカエデと同い年ぐらいの少女がいた。長い黒髪を揺らしながらクールな雰囲気を漂わせている少女はコーヒーを手に持ちながらこちらを向く。

 

「やっと起きたわね。まだ少し余裕があるとは言えギリギリまで寝るのはどうかと思うわよ」

「えへへへ、ぎりぎりまで寝たくなっちゃいまして…」」

 

そのまま朝食を詰め込むと急いで家を出る。レイはまだ余裕があるがカエデは今日早めに提出しなくてはならないものがあるのだ。そのまま小走りで学校へと向かう。

レイもやれやれと言いながらついて来てくれるが今のカエデは明らかに前を見ていない。

 

「カエデ、前を見て歩かないとあぶな…」

「きゃあっ!?」

 

曲がり角で同い年ぐらいの少女にぶつかってしまい転んでしまった。レイは慌ててぶつかってしまった少女に謝りながらカエデを慌てて起こす。カエデは御免なさいと言いながらまだ倒れている少女に手を差し伸べた。

所々青いメッシュの入ったふわふわとしている白い髪を持つなんとなく猫のような犬のような兎のような不思議な雰囲気を持つ少女だ。レイは何故かどこかで会ったことがあるかのような顔をしている。手を伸ばしたカエデも首を傾げており、ふと呟いた。

 

「あの……? 私達、どこかであったことありましたっけ?」

 

 

エンジェル☆コネクト! 完

 

 

 

 

 

「……終わったかぁ」

 

読み終えた雑誌を閉じてふぅと息を吐く。

【エンジェル☆コネクト!】

魔法少女物の作品だが一言で内容を説明するなら『魔法少女達が殺し合いをする話』である。

詳しく説明しよう。

 

その世界には魔力という概念が存在する。基本少女、10代半ばから発現し徐々に体に溜まっていく。そしてその容量を超えると身体(うつわ)が壊れ、怪物になる。だからその前に身体に溜まっている魔力を使い魔法少女と共に現れる敵対生物へとぶつけて体内の魔力を押し付けて倒し、怪物になれるまでの時間を伸ばす。

では敵対生物が出なかったら? みんなが怪物になりたくなくて魔法少女になったとしたら?

 

相手の魔法少女に魔力を押し付けるしかない

 

そして起こってしまったのがこの漫画。魔力を持つ少女を魔法少女にする魔法生物、この漫画だとさっきのルルゥと呼ばれていた生き物だ。

本来は魔力が発生すると同時に魔力の押し付け先、敵対生物が同時に発生するのだがその世界では発生しなかった。魔法生物側は混乱し対策を練り、どうにかしようとしたがどう探しても存在せず。最終手段として魔法生物側は魔法少女同士を戦わせることにした。もちろん戦いたくないと少女もいたがその者達は怪物化し、戦わざるを得ない状況だった。

ルルゥは責任は自分にあると魔法生物側の協力を断り自分を悪役した筋書きで行くことに決めた。

魔法少女に深く関わらず、あくまで君達を利用しているとスタンスを取った。その結果多数の魔法少女に恨まれたがそれも仕方ないと受け止め非情に徹した。

そのせいか作品中盤までは読者からもさんざん言われていた。が終盤にはいる時に入ったルルゥしか出ない話『空の墓場』で見事にみんな手のひらを返し、一気に人気も出た。

今読んだ最終回もよかったなぁって言葉が漏れるほどに。

 

 

 

そんな風に思ったことをふと僕は思い出していた。

何故そんなことを思い出したのかというと…。

 

『要救助者発見! 急いで!』

「大丈夫ですかー!? 聞こえてますかー!?」

 

バラバラと聞こえるヘリの音と近くで僕に声をかける救助隊員を横目にぼんやりとそんなことを思い出していた。

僕はどうやら事故にあったらしい、意識が目覚めたら足を骨折しており山の斜面に寝そべっていた。しばらくしているとヘリの音と救助隊員がこちらに降りてきたのでうっすらと返答しながら担架に乗せられ救助されたようで。

 

結構衰弱していたらしく救助されたことに安心すると僕はそのまま意識を失った。

 

 

 

「…知らない天井だ」

 

そんなことを言ったが恐らく病院だろう。右足は吊り下げられており左腕はギブスで固定されており右腕には点滴が繋げられている。

不意に腕や体、近くにあった鏡に自分の姿を映す。

 

「…誰だろ」

 

口から発せられる声にも聞き覚えはない。僕の名前は何だったか…。

だがそれでも今の僕の顔ではなかったような気がする。まるで流し見した映画の内容のようにうすらぼんやりだが別の人として人生を送った記憶がある。

30代ほどの男性だったような記憶があるが今の見た目は20歳前後と言ったところ。

自身の顔にこういうことを言うのはあれだけども女の子をたらし込みそうな印象を受けた。

 

目が覚めたことをナースコールで伝えると医師がやってき問診を行う。

記憶がないことを伝えると驚かれて名前や歴史、地理や道具の使い方などを検査させられた。

結果はエピソード記憶がどうこうと言われて普通の生活には問題ないレベルとのこと。

 

「…『夜野アスカ』」

 

これが僕の名前らしい。19歳、大学生、現在一人暮らし。

親は海外にいるらしく大学に通うために上京してきたようだった。

ちなみに記憶を失っていることを親に伝えてみたら帰国をしようとしていたけど、仕事で動けなくて帰れないと涙声で返答された。その代わり仕送りを増やすとか。

いい人達だ、思わず頬が緩む。感謝を述べて電話を切った。

 

 

 

ある程度時間が経ち、松葉杖で出歩けるようになり。僕はこっそりと夜に屋上へと上がった。

人がいないことを確認すると僕は呟くように声を出す。

 

「…で、君は何だい?」

 

そういうと同時、この夜でも黒く光っている小さな光が現れた。

か細い光ではあるがまるで頭に響く様に声が届く。

 

『私はオムニブスと申します。説明は難しいですが…簡潔に説明するとこの世界の『敵』となるものです』

 

丁寧に告げられたその言葉を聞くと僕はオムニブスに向き直る。

 

「敵?」

『えぇ、私はこの世界に『敵』としての役割を与えられました。本来はこのまま敵として行動するのです……が』

「随分と…弱弱しいね…」

 

光の大きさは手のひらほど、その光も弱弱しく今にも消えてしまいそうだ。

オムニブスは言葉を詰まらせ…僕の言葉に同意する。

 

『本来は魂が弱った人間にとりつき、その体を操り対となる存在。敵対生物を生み出す存在となるのですが』

『私はあなたを乗っ取れませんでした。それどころか力のほとんどがあなたに奪われた』

『もうしばらくすれば私はあなたに取り込まれて消えてしまうでしょう』

 

そういうオムニブスに悲しそうな感情は見えない。

力の使い方は僕の頭に情報として存在している。怪人と呼ばれる化物の生み出し方、そして。

 

「『CONTACT』」

 

僕がそう言うと僕の右手に玩具のような銃が現れた。まるで西洋剣の持ち手のような雰囲気もある。

そして左手にはマガジンのようなカートリッジ。デザインも含めてまるで変身ヒーローのアイテムのようだ。

このカートリッジを差し込んで引き金を引くと僕は怪人の姿へと変貌することが出来る。

そして一緒に流れてくる情報、『この世界には魔法少女と呼ばれる存在が生まれること』

 

…『エンジェル☆コネクト!』の世界じゃん。

この市もよく考えたら原作に出てくる『鏡丘市』じゃん。

 

…原作には敵対生物は存在しないはず。僕がここにいることで何か生まれた?

それとも本来はこの体に憑依するはずだったが何らかの原因でこの体が死亡していたか…。

まぁ、考えても分からないな…と、僕は武器を消すと柵に体を預ける。

 

「それで、僕にどうしてほしい?」

『私の役割を担ってもらいたい』

 

だろうね、受けなければ原作そのままになるだろうし。あの結果、この市も大変なことになる。

原作を知っていることが有利に働くかは分からないけど…。

 

「分かった、やるよ」

『…ありがとう』

 

オムニブスの光が薄くなり僕の体に入っていく。

何故僕が恐らく転生したのか、この力を得たのかは分からない。

でも、原作でエンジェル☆コネクト!がどうなったかは知ってる。

きっと、原作とは全く違うことになるだろう。それでも、皆を救えるなら…。

まずは体を治してからだ、やれることを全力でしよう。

原作なら命を落とし消えてしまう魔法少女を救うために。

そう、あえて言うなら...

 

「…世界の敵になるために」




昔書いた文章を完成させてから投稿してるんですけど
最終更新日2020年10月ってなっててビビった
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