低身長ツインテ爆乳負けヒロインがエルドラを救うためにがんばる話   作:ピンク髪ツインテの女の子はかわいい

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カザミくんよくヒロトに殴られなかったなって思うよ


他人の地雷でダンスダンス

「……結局、ここも違ったか」

 

 ロビーに舞い戻ったヒロトは、そう呟いて深く溜息をつく。

 なにが違うのか、なにを探しているのかはミミにはわからないものの、「ハズレ」を引く度に哀しそうな顔をするヒロトの力になってやりたいとは思っていた。

 だが、そのことに触れようとすると、ヒロトの目は別人のように冷たくなることを知っているから、ミミはなにも言えないのだ。

 

「そのうち見つかるわよ、きっと。ところで聞いた? 噂話だから話半分でいいんだけど、GBNのアプデで、誰も知らないシークレット──」

 

 ミミがぴょこん、とヒロトの半歩前に歩み出て、沈鬱な空気を変えようとしたときだった。

 

「よう、そこのあんたら!」

 

 やけに陽気な声が、ミミの言葉を遮ってロビーに響く。

 なんだこいつは、とヒロトは面食らっていたが、ミミは声の主である大柄で筋肉質、そしてアメコミに出てくるヒーローのような衣装を纏ったダイバーに心当たりがあった。

 名前は、確か。

 

「探したぜ? 俺の名はカザミ! 人呼んで『ジャスティスナイト』……『キャプテン』と呼んでくれてもいいんだぜ!」

 

 いかにも実力者然とした雰囲気を醸し出して自らの肩書きを名乗ったカザミなる男は、ばしばしとヒロトの背中をフレンドリーに叩き回す。

 なんだこいつは。

 ヒロトは再び怪訝な顔をして、なにかの誘いなら適当に断って追い払おうとしたが。

 

「あーっ! 思い出した! あんた経歴詐称の地雷じゃない!」

「げっ!?」

「経歴詐称?」

 

 ヒロトが言葉を発するより先に、ミミはカザミを指さして、高らかに言い放つ。

 最近……というほど最近ではないが、ロビーで自分の実力を誇示して回っているダイバーがいるからそいつの話は聞かなくていい、という話題が、掲示板には上がっている。

 カザミとミミは面識こそなかったが、掲示板に晒されたスクショとダイバーネーム、そして自称する二つ名が合致していたことで合点が行ったのだ。

 

「そうよ、元AVALONとかエターナル・ダークネスの攻撃隊長とかほら吹き回ってるの」

「おいおい! 人聞きの悪いことを言うんじゃねえ! 俺はな、ヒーローになる男なんだ! それに、決して怪しいもんじゃねえ! お前らにも耳寄りな情報も持ってきてるんだ!」

 

 ヒーローになる前に掲示板のおもちゃにされていそうな男が、必死な顔で弁明する。

 

「耳寄りな情報? なにそれ」

「ふっ、そんなに知りたきゃ教えてやるぜ……GBNのアップデートで追加された高難度ミッションがあるだろ? それを最初にクリアしたやつだけがもらえる限定称号! そいつを狙ってるんだよ! この俺があんたらと組めば、獲得は間違いないぜ!」

 

 GBNのバージョンが1.78に移行したことで、様々なアップデートが追加されたことは、ミミとヒロトのみならず、多くのダイバーが知るところだ。

 検証班ですらアップデート要素が多すぎて根を上げているほどの大型アプデに伴って、様々なミッション、要素、機能が追加されている。

 高難度ミッションを一番最初に攻略したダイバーのみに与えられる称号がある、というのも数ある噂の一つだったが。

 

「それってまだ未確定情報じゃない!」

「ぐうっ!?」

 

 ツインテールを逆立てて、ミミが激怒する。

 ミミは噂話が嫌いなわけではないし、むしろ好んでいる方だが、不確定な情報を確定情報として嬉々と語る輩は死ぬほど嫌いだった。

 嘘バレ、フラゲ、公式のお漏らし──それらを嬉々として拡大解釈し、発信する行為はアクセス数稼ぎのためとはいえ、決して許されるものではない。

 

「それに大体、キャプテンだのなんだの名乗ってるけど、あんたの肩書きは経歴詐称野郎なのよ、あたしの中では今んとこ!」

「お、俺の実力を疑ってるっていうのかよ!? わ、わかった、説明してやるぜ……2年前の第二次有志連合戦って知ってるか?」

「知らないわよそんなの」

「は?」

「あたしがGBN始めたの、1年前からだから」

 

 ミミは豊かな胸を支えるように腕を組んで、唇を尖らせる。

 すっかり蚊帳の外になっていたヒロトは、そろそろログアウトボタンに手をかけようかと迷っていたところだったが、「第二次有志連合戦」の単語を聞いて、ぴくりとウィンドウに伸ばした指を振るわせた。

 しかし、そんなヒロトの様子に気づくことなく、ミミとカザミは口論を続ける。

 

「お、お前……モグリかよ!? GBNやってて第二次有志連合戦を知らないとか、今時初心者でも珍しいってのに!」

「別にいいじゃないの人がどんなスタンスでプレイしてたって! それよりあんたの実力よ!」

「お、おう……そうだな! とにかく俺はその第二次有志連合戦で、あの『BUILD DIVERS』の攻撃隊長──」

「……帰ろう、ミミ」

「になれたかもしれない男なんだ……ぜ……?」

 

 ヒロトはカザミの言葉に割り込む形で小さく呟く。

 しかし、その言葉は有無を言わさない圧力を伴っていた。

 ビルドダイバーズ。第二次有志連合戦。調べようと思えばいくらでも調べられるそれをミミが調べていないのは、それらが──ヒロトにとって、触れてはいけないものだと知っているからだ。

 

「わかったわ、ヒロト。とにかくもう、ロビーで経歴詐称すんのやめなさいよあんたも」

「……それに、俺は……ここにガンプラバトルをしにきてるわけじゃないんだ」

 

 もう二度と会わないことを祈って、ミミはヒロトと共にログアウトボタンに手をかける。

 

「おい、ちょっと待ってくれ! 俺の話は──」

 

 カザミの制止も虚しく、ミミたちはリアルへと解けて消えていった。

 

 

 

△▼△

 

 

 

 

「……今日は散々だったわね、ほんと」

 

 ミミは浴槽に顔を半分埋めながらぶくぶくとそう呟く。

 壁越しに聞こえる隣の部屋──ヒロトが住んでいる部屋から発せられている楽しそうな声の中には、ヒナタのそれも混ざっている。

 ヒナタは両親が度々留守にするからと、よくヒロトの家に世話になっているのだ。

 

 同じ幼馴染だったら自分だってヒロトの家に上がりたい、と、ミミは常々思っているが、厳格な父親がそれを許してくれない。

 目を盗んで何度かヒロトの家に上がったことはあるものの、それも数える程度だ。

 曰く、年頃の男子は皆獣なのだからそんなやつの元に愛する娘を一人で行かせるわけにはいかない、だそうだが、時代錯誤も甚だしい。

 

「……それに、パパの言う通り、ヒロトがそーいうやつだったら、とっくにあたしは……ぶくぶく……」

 

 バスソルトの香りが、鼻の奥をつんと刺激した気がする。

 そうでなければ目の奥から込み上げてくる熱に説明がつかない。

 いっそ自分も、臆することなく経歴を詐称していたカザミのような度胸があれば、ヒロトの「禁忌」に踏み込めたのだろうか。

 

 わからない。

 何度自問自答しても、答えは出てこない。

 幾度となく繰り返したことを今日も繰り返しながら、ミミは無為な時間を過ごしていた。




そんなんだから負けるんだぞミミちゃん
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