低身長ツインテ爆乳負けヒロインがエルドラを救うためにがんばる話 作:ピンク髪ツインテの女の子はかわいい
「バイトの面接に行くのに、なんであたしも一緒なのよ」
ミミは、朝からむすーっと頬を膨らませていた。
18メートル級、原作そのままのサイズで作られたエールストライクガンダム立像が見守るガンダムベースシーサイドベース店。
その立像の足元に、ミミとヒナタ、そしてヒロトの3人は佇んでいた。
「ほら、この前もミミちゃんとヒロト、一緒にGBNやってたし、ついでに……ね?」
「……ついで、って。あれはたまたま気が向いただけで」
「でも、たまたま気が向いてGBNをプレイするには、ガンプラを持ってる必要があるよね? ヒロト、いつも持ち歩いてるから」
ヒナタの言葉にヒロトは思わず、腰裏に下げていたガンプラホルダーへと手を伸ばす。
そこには愛機、という言葉ではとても括れないものがある。
とっくに諦めていても、とっくに頭では理解していても割り切れない感情を心から切り離したように、コアガンダムはホルダーの中で眠っていた。
「それに、ミミちゃんもガンプラ持ち歩いてるでしょ?」
「あたしがおまけみたいな言い方やめてよ、確かに持ち歩いてるけど!」
「あはは、ごめんごめん。じゃあ私、面接行ってくるから、二人はGBN、楽しんできてね!」
苦笑しながら小さく手を合わせたヒナタは、ガンダムベースシーサイドベース店に併設されているカフェのアルバイトに応募すべく、走り出していく。
気を利かせて二人きりにしてくれた、わけではないのだろう。
気まずそうな顔をしているヒロトと一瞬目が合って、ミミは思わず頬を赤く染めて顔を逸らしてしまう。
「ひ、ヒナタが言うなら仕方ないわよね! 行きましょ、ヒロト!」
「……ああ、うん」
心ここに在らず、といった様子が続いているヒロトだったが、まるでなにかを思い出したかのようにエールストライクガンダム立像のツインアイを見上げると、ミミに生返事をして歩き出していく。
ヒロトの心の中には、誰かがいる。
ミミは、ヒロトが時々見せる「なにか」を思い出したような表情を見る度に、胸が苦しくなって仕方がなかった。
だが、それを悟られてはいけない。
なにも知らないでGBNを一緒にやる、ただの女友達。
悟られてしまえば、知ってしまえば、この関係は間違いなく、砂上の楼閣のように崩れ去ってしまうだろうから。
△▼△
「よう、待ってたぜ相棒! と爆弾娘」
「誰が爆弾娘よ経歴詐称キャプテン」
「経歴詐称は余計だ!」
GBNにログインするなり、ミミとヒロトはカザミに絡まれていた。
例の高難度ミッションのクリア称号がどうのこうのという噂話をまだ諦めていない辺り、良くも悪くもこの男は図太いのだろう。
ミミは全くもってカザミについていきたくなかったが、ヒロトが無理やり肩を組まれて引きずられているから、仕方なくその一歩後ろを歩いていたのだ。
「……つけられてるわね」
背後から漂ってくる気配を感じ取って、ミミは呟く。
慣れたものではない。
気配をダダ漏れにしているどころか、隠すつもりもなく、時折こちらをちらちらと伺っている、獣耳と尻尾を生やした緑がかった銀髪の少年が、尾行というにはあまりにも拙くミミたちを追っていた。
「お、なんだ? この俺の威光を感じ取ってパパラッチが湧いてきちまったか」
「バカが頭の中に湧いてるの間違いでしょ」
「んだとこのちんちくりんが!」
「はっ! 人のおっぱいガン見しながら言うセリフじゃないわよねぇー?」
「んぐっ!」
「男子って本当、わかりやすいんだから!」
「……なあミミ、俺、帰っていいかな」
カザミとくだらない口喧嘩をしているミミに許可を求めてはいたものの、既にヒロトの指はログアウトボタンに伸ばされていた。
「ダメに決まってるだろ、相棒! なんせ今度の高難度ミッションは、誰も見たことがないエリアらしいんだぜ!?」
「……ッ」
誰も見たことがないエリア、というカザミの言葉が、ヒロトの心を微かに揺さぶる。
誰も見たことのない場所なら、この広大なGBNで誰一人知らない場所があるとしたら、あるいは。
そんなことはありえないと理性が囁いていても、心が惹きつけられてしまう。
「それって、情報屋のヤスってやつから聞いた話?」
「お、なんだ。爆弾娘は知ってんのか。確かアジアン・サーバーの裏路地でドラゴンみたいなNPDと会話することが受注の条件らしいぜ」
「どうせ十中八九ガセでしょ」
「んだと、この爆弾娘!」
「ヤスって初心者相手にゴミ売りつけてるセコいやつでしょ、とても本当とは思えないわね」
ヤス、というのはこの名前とダイバールックを見たら初心者は注意しろ、と散々掲示板で警告されている程度には悪名高い人物だ。
自称情報屋だが、その信頼度はお察しといったところだろう。
そんな人間の口から出まかせを信じて路地裏を歩かされているこっちの身にもなってほしいわね、と、ミミは静かに溜息をつく。
『──すけてくださぁい!』
「……? 今、あんたなんか言った?」
「お前じゃねえのか?」
「……二人とも、静かに」
突如として聞こえてきた甲高い声に、ヒロトは身構え、カザミは首を傾げ、ミミは胸を挟むように手を寄せて、きょろきょろと辺りを見回す。
声の主はわからないが、少なくともこの3人の中で誰かが発した声でないことだけは確かだ。
ならば、一体誰が。
『助けてください、創造主様ぁー!』
「う、うわああああっ!?」
「……反対方向か!」
「そうみたいだけど……」
「よっしゃ、ビンゴだぜ! シークレットミッション一番乗りはこのキャプテン・カザミがいただいたァ!」
声のした方に3人が走り出すと、そこには先ほどまで自分たちを尾行していた銀髪の少年が、紫色の背景をした通信ウィンドウを前にへたり込んでいる姿があった。
一体なにがあったのか、と問いかける間もなく、今度はどこかからか飛び降りてきた女性がしなやかな身のこなしで着地する。
自分たちは一体なんのアトラクションに巻き込まれているのか。ミミは理解が及ばず、呆けたような表情で小首を傾げる。
「これが……隠しミッションなのか?」
「……ドラゴンっていうより、犬っぽいけど」
「犬でもドラゴンでもなんでもいいけどなんなのよあんたらは! 特に飛び降りてきた人!」
「……? ああ、急を要したからな、すまない」
飛び降りてきた黒髪の女性は小首を傾げて、ミミの問いにそう答える。
そういうことを聞いているのではないのだが、もしかしてこの女性も話が通じない手合いなのだろうか。
ダイバーは文字が読めないとはよく言われることだが、会話もできないとは嘆かわしい、とミミは目頭を抑えた。
『ぼ、ぼく! 違った! 私は今、敵の襲撃を受けていて、創造主様に御神体の力でお守りいただきたく!』
「えっと……なに言ってんのかわかんないけど、要はキミがピンチってこと?」
『はいぃ!』
犬っぽい見た目の推定NPDは、大きく何度も縦に首を振る。
「恐らくは会話形式のエントリーなのだろう」
「……なるほど。君の身柄を敵から守ればいいのか? バトルエリアは? 敵の数は?」
女性の言葉を受けて納得したのか、ヒロトは矢継ぎ早に推定NPDへと問いかける。
『し、神殿の近くです! 敵はいっぱい! 40とか、30とかー!』
「どっちなのよ……」
「どっちでもいいじゃねえか、時間制限はあんのか?」
『じ、時間制限!? よ、よくわかりません!』
「……タイムアタックではないようだ」
黒髪の女性がそう呟くと、カザミはここぞとばかりに目を輝かせて、突如現れたミッションエントリーボタンに指をかけようとする。
「なるほど、大体わかったぜ! このチャンスは逃せねぇ! あんたらもエントリーするんだろ!?」
「は、はいぃ……っ!」
「待て! 40機以上の高難度ミッションかもしれないんだぞ、それを5人でなんて……!」
銀髪の少年を言いくるめたカザミがエントリーしようとするのを制止して、ヒロトがそう言い放つ。
「おいおいおい、こいつはシークレットミッションなんだ、エントリーの機会を逃したらそれっきりだぜ? 敵が40機いようが知ったことか! 俺が30機倒す! そうしたら残りの10機を4人で山分けして、一人頭3機ってとこだな!」
「そ、それだと敵の数が足りないんですが……」
「あんた算数もできないの?」
「うるせー! 細けえことはいいんだよ! エントリーだ!」
「ちょっ……!」
ミミが止めるよりも早く、カザミは迷いなくエントリーボタンを押してしまった。
刹那、5人のダイバールックがテクスチャへと分解されていき、新たなディメンションに連なるゲートを潜り抜けるときのような感覚がミミを襲う。
だが、それは、普段やっているディメンション間の移動とは確実に違う──どこか言葉にできない違和感を、伴っていた。
物語は動き出すようです