嗚呼、なんと素晴らしき自由(強制)   作:なめなめろう(旧名:ELDERSIGN)

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今回の話は難産でした。


闘技場 その1

 

 

 闘技場。探索者ギルドのすぐそばに併設されている、迷宮都市ラークルの迷宮と並ぶ知名度を誇る名物。カインは今、そこにいた。それも観客ではなく、参加者の一人として。

 

 大きな歓声。まるで地響きのようであった。

 

「すげえ人の数だな……なんか冷や汗出てきた」

 

 狩人として生きてきたカインにとって、大勢の人の前で戦うというのは初めてのことだった。カインらしくもなく少し緊張している。

 

 間も無く試合が始まる。司会の男、名をマイクと言うが、彼が大きく声を張り上げる。

 

「今日の闘技場はバトルロワイヤル!最後の一人になるまで戦ってもらいます!多くの勇士が入り乱れる大混戦!これは目が離せませんね!なお、残った一名には、後日開催されるトーナメント戦への出場資格が与えられます!ぜひ奮って戦ってください!」

 

 槍を強く握る。すると、観客が目に入らなくなった。もうカインには目の前の打倒するべき敵達しか見えていない。緊張していた心が、スイッチを切り替えるようにして静まった。

 

「よし、やるか」

 

 バトルロワイヤル開始の合図とともに、カインが駆け出した。

 

 なぜカインが闘技場のバトルロワイヤルに参加しているのか。それは数時間前に遡る。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ふむ、やはり実戦経験が足りないな」

「はぁっ……くっそ……」

 

 カインが汗だくのまま大の字になって地面に倒れ込んでいる。対照的にリゼは汗一つかいていない。服には汚れも見当たらなかった。

 

「狩人だったので、やっぱり正面切っての戦いは格下じゃないと厳しいです」

「そうだな。君は人との戦い方を知らないと見える。……カイン、手っ取り早く経験を積める方法がある。闘技場を知っているか?」

「ええ。あの、ギルドのすぐ近くにあるバカでかい施設でしょう?時々大きな歓声が聞こえてくるのでうるさいなあって思ってたんですけど」

「ああ、そこで合ってる。それに参加してこい」

 

 カインは嫌そうな顔をした。うるさい場所はそこまで好きではない。

 

「これも大切なことだ。闘技場は命の保障がされている。危険を犯さずに本気で人と闘える機会なんて、そうない。おそらく今の君なら最初のバトルロワイヤルくらいは突破して、トーナメントに参加することができるはずだ。そこから勝ち上がれるかは、怪しいがな」

「……なにか、やる気の出る話はありませんか?今のままだと全然気持ちが上がらないんですけど」

 

 闘技場は要するに、闘うためだけの場所だ。そのためだけにさまざまな規則に縛られ、変わり映えのしない場所で闘わされる。自由も冒険もない場所。カインにとって興味のそそられる点が一つもなかった。

 

「開催されるトーナメントの規模にもよるが、優勝したものは賞金の他に、褒美を国王直々に与えられることがある。過去の優勝者は禁忌(アンタッチャブル)とされ、誰も足を踏み入れることすらできなかった土地への冒険を望み、国がそれを支援した。結果、そいつは人類で初めてその大地を踏みしめた。……お前の村が飛んで行ったという空島。優勝すればそこに行くための支援がされるかもしれないな」

「……出まぁす!」

 

 カインは闘技場に出場することにした。

 

 

 ◇◇◇

 

 大混戦。多くのものが入り乱れながら武器を交えている。

 

 カインの目の前で、二人の男が剣で鍔迫り合いをしている。そんな彼らの首を撫で斬るようにして槍を一閃。

 

「な……!」

 

 何かが割れるような音。意識外からの攻撃に目を丸くしながら、二人の男はどこかへと転送された。

 

 命綱のアミュレット。闘技場参加者に配られるアミュレットであり、致命的な攻撃を受けた瞬間、一度だけその攻撃を無かったことにした上で安全な場所に転送する、極めて強力な魔道具。本来非常に高価な魔道具であるが、闘技場限定で効果を発揮するようにしたことで、再利用が可能となっている。闘技場で安全な決闘が行える理由である。

 

 二人を脱落させたカインの背後に忍び寄る影。その影は、ナイフを持った小柄な女性。カインに奇襲を仕掛けるつもりだ。しかし、常に探知の魔術を使用し続けているカインにとって背後からの攻撃はまるで意味をなさない。

 

 カインは後ろを振り向くことすらせず、槍の石突を彼女に向ける。石突から放たれる黒い閃光。その黒い光がもろに腹部に直撃する。また一人、転送した。

 

 光の正体は、魔力放出。高速で循環させた魔素をそのまま外界に打ち出し、純粋な魔力エネルギーを放つ単純な攻撃。だが単純であるが故に、身体強化と同様に極めれば回避不可能の強力な攻撃となる。事実、『黄金』のエクサが放った極光も、この魔力放出である。

 

「やっぱりこの槍すげえいいな。自分の身体みたいに魔素が通る。前の槍じゃこうはいかないだろうな」

 

 カインは槍の性能にはしゃいでいた。ちなみに、魔力放出を覚えたのは三日前。恐るべき才能である。

 

 上がったテンションのまま、次々と他の参加者を撃破していくカイン。あるものはカインの突きを防ごうとし、そのまま盾を破壊され、あるものは正面からカインに斬りかかり、槍で弾かれそのまま胸を刺された。

 

 リゼからすれば対人戦がダメと評されるカインではあるが、そもそも素の能力が銀級を超えている。そのせいで、ほとんどの参加者はただ槍を振るうだけで事足りる。

 

 気づけば立っているのは、カインを含めて4人だけになっていた。

 

 しかし、それらの全員が猛者。本当の闘いが、始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 





Tips: 闘技場は禁足日で暇を持て余した探索者達がトーナメント方式で闘い、誰が一番強いか決めようとしたのが始まり。数年もすると多くの人が見物にやってきて、それに目をつけたラークルの領主が公営化した。今では国営化されている。
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