嗚呼、なんと素晴らしき自由(強制)   作:なめなめろう(旧名:ELDERSIGN)

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お久しぶりです。テスト期間が終わりました。多分耐えてないです()



金級昇格

 

 

 ドラゴンの体が光の粒となって消えていく。後に残ったのはいつもの宝箱だけだった。

 

「さてと。開けるとしようか」

「こんなに暑いところからはさっさと出ましょう」

 

 宝箱を開けるといつものように金の指輪が入っていた。それも二つ。

 

 カインとエリスはそれをすぐに手に取って指に嵌めた。

 

「「帰還(リターン)!」」

 

 そう唱えるとともに、金の指輪から眩い光が放たれて二人の体を包んでいく。光が収まる頃には、二人の姿は迷宮から消えていた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 いつもと変わらぬ迷宮の入り口。しかし、第七階層から帰還した二人にとってはあまりにも涼しく快適な空間に思えた。

 

「なんとか帰ってこれたな……」

「それにしても、私たちが金級ですか……なんだか実感が湧きませんね」

 

 エリスの言葉にカインも同意した。カインはこの迷宮都市ラークルに来てから日が浅いが、なんだかんだで金級になってしまった。それに足るだけの実力があることはわかるが、どうも実感がない。

 

「金級か……でもまあ、ゾルガにも師匠にもまだまだ全く及ばないし、先は長いよ」

 

 右手を強く握り、それを見つめる。手は震えていた。魔力痛の影響だ。

 

 今回の迷宮探索前に、リゼはカイン単独で第七階層を攻略できると言っていた。しかし、振り返ってみると危うい場面がいくつもあった。今回に関してはエリスの助力がなければ厳しかっただろう。

 

「ありがとな、エリス。君と一緒じゃなきゃきっと死んでた」

「それは私のセリフです。私はそもそも、ドラゴンに対する決定打を持っていませんでした。貴方がいなければ、金級になるだなんて当分先、ひょっとするとずっと銀級のままだったかもしれません」

「……出逢いに感謝ってやつだな」

 

 握り拳を突き出すカイン。それを見てふっと笑ってエリスも拳を突き出す。勝利のグータッチ。このコンビで良かった。二人の思いは同じだった。

 

「よし! さっさとギルドに報告するか!」

 

 痛みと痺れに苛まれていてもなお、カインは意気揚々とギルドの方へと歩を進めた。

 

 

 

 ギルドはいつも通り騒がしい。しかし、カインとエリスの二人がギルドに入るなり、自然と静かになりヒソヒソとした囁き声が増えた。どうしたのだろうか。

 

「あ、カインさんとエリスさん!」

 

 そんなふうにカインが疑問に思っていると、受付嬢が二人に気づいて和やかに手を振ってくる。

 

「その指輪はもしかして……第七階層の"門番"を倒したんですか?」

「ああ。ほら」

 

 二人が手を掲げる。その指にはしっかりと金色に輝く指輪が嵌められていた。

 

 瞬間。ギルド全てが揺れるような大きな歓声が起こった。

 

「うお! なんだお前ら!」

 

 特に関わり合いのない探索者たちがカインとエリスを取り囲み、肩や背中をバンバンと叩く。

 

「現在の探索者ギルドには50人しか金級はいないんです! そんな金級に新たに二人が加わるだなんて本当におめでたいことですよ!」

 

 受付嬢はすでに揉みくちゃにされている二人をキラキラと輝く瞳で見つめながらそう言った。

 

「だああああ! 邪魔だお前ら! まだ金級認定が終わってねえだろ!」

「た、たすけてぇ〜〜」

 

 二人の叫びも虚しく、そこからさらに十数分は揉みくちゃにされ続ける。

 

 ようやく周りの探索者たちが満足した頃には、二人は疲労困憊のあまり倒れそうになっていた。

 

「ぜぇ……はぁ……き、金級認定を、頼む……」

「はい!」

 

 疲れ切った二人を微笑ましそうに見つめながら、受付嬢は金級認定書類の準備をする。

 

「では、カイン、エリスの両名とパーティ矛と盾(パラドックス)を金級として認定します! おめでとうございます!」

 

 ハッキリと通る受付嬢の声。それに応えるかのように再びギルド内の探索者たちが歓声を上げる。なんだかカインとエリスの二人よりも喜んでいる気がする。

 

「こちら、金級のギルドカードになります! いやぁ、私がこのカードを探索者さんに渡すの、実は初めてなんです!お二人にこのカードを渡せるだなんて、とっても嬉しいです!」

 

 にぱーっと笑う受付嬢。金色のギルドカードよりも眩しく見える笑顔だった。

 

「というわけで! お二人の金級昇格を記念して本日ギルドの酒場は全てのメニューを無料で提供致します! 皆さんいっぱい食べて飲んで騒いでくださいね!」

「「「うおおおおおおおおおおお!!!!!」」」

「ああ……そういうことね……」

 

 カインは探索者の喜びように納得がいった。恐らく金級が新たに生まれると酒場で宴をやるのが恒例なのだろう。そりゃテンションも上がる。

 

 チラリと探索者たちを見るとすでに皆が酒を片手に騒いでいる。主役はカインとエリスのはずなのだが、そんなことは頭の片隅にもなさそうだ。

 

「はあ……ま、探索者だしこうじゃなきゃな」

「せっかくですし、私たちも飲みましょうか」

「そうだな。てかこれ俺たちが居なきゃなんの宴かわからねえだろ」

 

 そうぼやきながら、カイン達は席についてエールを頼んだ。

 

「じゃ、改めて。第七階層制覇を祝って、乾杯!」

 

 勢いよくエールをあおる二人。疲れた体に沁み渡るうまさ。勢いのままに飲み干した。

 

「くぅ〜〜こういうときはほんとに美味いな!」

「正直エールはそこまで好きではないのですが、今日に限っては別格に美味しいです……」

 

 二人は口の周りに白い泡をつけたまま、エールのおかわりとおつまみとしてソーセージを頼んだ。

 

「いい飲みっぷりだね。二人とも」

「うお、ってサイエルか」

 

 注文を終えた二人のすぐ横にいつのまにかサイエルが立っていた。

 

「なんか用か?」

「もちろん、お祝いでもしてあげようかなって」

「でもどうせ俺が金級になることなんて知ってただろ? 祝う必要あんのか?」

「わかってないね〜君は。風情ってやつだよ風情。人間性とも言うね」

 

 やれやれとサイエルが首を振る。一番人間性が無さそうなやつに言われる筋合いはないのではないだろうか。

 

 トコトコと小さな歩幅で酒場のマスターへと駆け寄るサイエル。

 

「マスター、エールを一つ」

「ダメに決まってるだろ」

「え!? なんでさ!? こんなにめでたい日なのに!」

 

 わざとらしく驚きながら大きな声をあげるサイエル。人のふりをしているようにしか見えない。

 

「エールを飲むと毎回漏らすだろお前!」

「漏らすだなんて失敬な! そこだけ聞くと汚いじゃないか」

「そっちのお漏らしの方がまだマシだ。出禁にしただろうが。お前に出す酒はねえ」

「ええ〜」

 

 口をとんがらせて文句を言いながらすごすごとサイエルはカイン達の元へと戻っていった。

 

「おい、漏らすって聞こえたんだが? 一体何が漏れるんだ」

「大したことじゃないさ。この眼帯、封印のためだっていっただろう? それがちょっと緩んで、周りに飛び出るだけさ」

 

 なんてことないように言っているが、明らかにヤバそうである。サイエルに絶対お酒を飲ませてはいけない。

 

「お酒、飲みたかったな〜〜……ま、いいや。本題はこっちだから」

 

 そう言いながら、サイエルは自身の懐を漁って何かを取り出した。

 

「はい、あげる」

「なんだこりゃ」

 

 それは捻じ曲がった木の枝だった。しかし、どこか黒光りしていてただの木とは明らかに異なる迫力があった。

 

「いつか役に立つから、その時までしっかり持っててね。僕から君へのご褒美だからさ」

「……まあ、受け取っておくわ」

 

 なんとも言えない長さ。ずっと懐に入れておくには若干長い。カインは少しだけ嫌がらせを疑った。

 

「じゃあ渡すものも渡したし、帰るね。このまま長居するとちょっとめんどくさそうだし」

 

 そう言ってサイエルはトコトコと走り去っていった。

 

「なんだったんだあいつ……」

 

 果たして『全知』には何が見えているのだろうか。そう疑問に思うのも束の間。サイエルの姿が見えなくなると同時に、ギルドの入り口が俄かに騒がしくなった。

 

「は?」

「はい?」

 

 そこに立っていたのは血まみれのリゼだった。

 

「師匠!? 大丈夫ですか!」

「リ、リゼさん!?」

「あー大丈夫大丈夫。それよりも、金級昇格おめでとう」

 

 リゼは全身がボロボロだというのに、なぜか上機嫌だった。よく見ると血はついているものの、傷はどこにも見当たらなかった。

 

「な、何があったんですか? 返り血? それとも、師匠が怪我するほどの魔物が……」

「あー違う違う。ちょっと色々あってな。それよりも、お前に話しておかないといけないことがある」

 

 ニコニコと笑っていた顔が、すっと真剣な顔になる。そして、カイン以外には聞こえないように耳元でリゼは囁いた。

 

「ゆ……『黄金』が、第八階層でお前を待っている。一人で来てほしい、だそうだ」

「なる、ほど」

 

 『黄金』との約束を果たすときだ。

 

 

 

 

 

 

 





Tips:サイエルにお酒を飲ませていけないというのは、ラークル中の常識である。店も彼にお酒を売らない。

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