嗚呼、なんと素晴らしき自由(強制)   作:なめなめろう(旧名:ELDERSIGN)

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やばすぎるレポートが終わったので、モチベ爆上がりですよ。




懐かしき第九階層

 

 

 第九階層は、カインが罠にかかり落ちてきた時から何一つ変わっていなかった。豪華な装飾、床に敷かれた真紅のカーペット、そして、どこまでも続く静寂。けれど、あの時と状況はかなり変わっている。

 

「落ちてきた頃とは違って、全然危機感はないな」

「あの時の君にとってはここは未知の塊だったからね。知っているかどうかというのはそのまま生死に直結する」

「あー……うーん……それもあるけど、今回はあんたがいるからな」

 

 カインの目の前を先導するエクサ。彼の体から常に迸る光は、仄暗く不気味な気配の漂う第九階層を塗り替えるかのように周囲を照らしている。

 

「そもそも、呆れるくらい魔物が来ないんだけど、なんかしてるか?」

「ん……?迷宮なんてこんなものじゃないかい?魔物なんて自分から会いに行かないと戦えないことがほとんどな気がするんだけど」

「はあ?そんなわけないだろ、迷宮なんていつ奇襲されるかわからないからずっと気を張ってなきゃ……はぁ、まあいいや。あんたは色々とおかしいからな」

 

 首を傾げるエクサ。なお、第九階層の魔物が全くと言っていいほどカイン達に襲いかからないのは、エクサが常に第九階層にいるせいで、魔物達がエクサの存在を覚えてしまっているためである。魔物達も死ぬとわかっていて襲いかかるほど馬鹿ではない。

 

 だが、何事にも例外というものはある。稀にエクサに襲いかかるような命知らずも現れる。

 

 パタパタと羽の音が聞こえる。微かな音であったが、カインがそれを見過ごすことはなかった。

 

「なあ、なんか羽の音が聞こえるんだけど、第九階層ってどんな魔物がいるんだ?」

「えーっと……君が戦ったデーモン、サイクロプス、ヴァンパイアにお仕置きのリーパーだから……まあこの羽音はヴァンパイアかな」

 

 ブン、と風を切る音が響く。気付いた時には、エクサの左手にコウモリが一匹。

 

「うん、大当たりだね」

「吸血コウモリ……?」

「ヴァンパイアは体を無数のコウモリに変化させて偵察をしたり逃走したりするんだ。だからこれはヴァンパイアの体の一部だね」

 

 そう言い切ると、エクサは勢いよくコウモリを握りしめ、風船が破裂するかのように爆散した。

 

 通路に悲鳴が響く。甲高い男の悲鳴である。

 

「本体はあっちみたいだね」

「いやあ、魔物だけど同情するぜ」

 

 悲鳴が聞こえる方へと歩を進めると、そこには優雅な燕尾服を着た血色の悪い男が脇腹を抑えて蹲っていた。エクサが近づくと、弱々しく立ち上がるとともに牙を剥き出しにして威嚇をした。

 

「こんな風に人間の姿をしているけれど、全く言葉は喋れない。意思の疎通も無理だ。心を痛めずに殺せるという点においてはありがたいね」

 

 光り輝く剣がいつのまにか振り下ろされていた。適度な脱力感が、その太刀筋を恐ろしいほど速い一撃に変えていた。

 

 一瞬で身体を縦に断たれたヴァンパイアはそのまま床に崩れ落ちると、白い砂となって消えていく。

 

「この白い砂は素晴らしい魔力伝導性を持っている。高値で取引されているから集めて損はないよ」

「あっはい」

 

 カインにとってはそんなことはどうでもよかった。それよりも、デーモンよりは弱いだろうが、魔素濃度から察するに相当な力を持っているであろうヴァンパイアを抵抗すら許さずに屠った事の方が重要であった。カインは改めて最強とはどういう事なのかを思い知った。

 

 その後は特に魔物の襲撃もなく、二人は大部屋の門の目の前にたどり着いた。

 

「緊張してきたな……」

「……申し訳ないね。まず間違いなく、ここから先は死地だ」

「いや、いい。いつか第九階層は攻略しなきゃいけなかったんだ。それが早まっただけだ」

 

 それに、カインにとってもこれは良い機会だった。誰よりも近くで、最強の戦い方を見れる。糧にできればお釣りが来る。

 

「さて、最後の準備をしようかな」

 

 そう言ってエクサは、身につけていた様々な装飾品を外し始めた。

 

「あー……持ち物までドッペルゲンガーは再現するのか?」

「うん、その通り。だから蘇生用のアイテムだとか防御用のアイテムはここで捨てておかないと、いつまで経っても戦い続けることになるからね」

 

 ジャラジャラと音を立てて豪華絢爛な装飾品が捨てられていく。装飾品の中には、命綱のアミュレットや不死鳥のアミュレットもある。小国であれば、ここに捨てられているものを売るだけで一年間の予算を満たすだろう。

 

「君は不死鳥のアミュレットを持っておいてくれ」

 

 ポンと凄まじいアミュレットが手渡される。カインの手に汗が滲んだ。

 

「お、おわ……」

「はは、金級になったらそんなものは簡単に買えるようになる。今のうちに慣れておくといい」

 

 おそるおそるアミュレットを身につけたカイン。その後、二人は武器や防具の点検、作戦の擦り合わせをした。

 

「よし、準備はいいかい?」

「ああ。もう、いつでも行ける」

 

 カインの闘気を感じて満足気に頷くと、エクサは狭い門の隙間へと進み始めた。

 

 

 

 

 





Tips:迷宮に居座りすぎるとリーパーという魔物が現れる。金級でも平然と刈り取るほどの実力を持つ。なおエクサにとっては他の魔物と変わらない。

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