【旧】皆を救いたいだけなのに、不器用すぎて主人公勢に敵認定されるミステリアスヒロインムーブをしたい!   作:k-san

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お久しぶりです。
本作は終わり方にだけは自信があったのでいっさい続きを考えていなかったのですが、
海外の小説サイトに楪柚月さんが主人公のスピンオフ二次創作が投稿されているのを発見し、私のなかで楪柚月さんへの関心が急速に高まっていったので彼女のスピンオフ小説を書くことにしました。
不定期更新になりますが、お付き合いいただけますと幸いです。

また、わたくしごとですが本作の完結後『魔法少女ノ魔女裁判』をプレイしました。
Twitterで本作の感想をウォッチしていたところ、読者さまのなかにまのさばプレイヤーがいらっしゃいまして、そこで初めてまのさばを知りました。めちゃくちゃ面白かったですね~。
この場を借りて読者さまにお礼申し上げます。ありがとうございました。


番外編
運命じゃなくても①


 

 血みどろの映画が好き。

 

 殺人鬼のナイフが乙女の柔肌を突き破り、熱い鮮血がほとばしる様にうっとりする。

 屍人に食い散らかされる人間の、どこまでも伸びゆくはらわたが全身を火照らせる。

 ドミノ倒しの要領で死に追われる不運な登場人物たちの水風船のようなやわな人体は胸を高鳴らせた。

 怪物に蹂躙される人々の残骸――下半身を失った胴、どこにも繋がらない右腕、もともとの部位がなんだったのかも分からない肉片――がなんともいじらしい。

 

 残酷描写のない映画に、いったいどれだけの価値があるだろうか?

 

 心臓を握られたかのようなめくるめくショックシーンの数々。〝ビジョン〟が持つ鮮烈な暴力性。自分はいま、そこに立ち会っているのだという生々しさ。

 

 小説では代替できない魅力がそこにある。

 

 だから私が観るのはもっぱらホラー映画だった。

 逆に恋愛映画はほとんど観なかった。

 

 そこで描かれるシチュエーションに憧れる気持ちは分からないでもない。

 こういう恋愛をしてみたい、と思うこともある。

 だけどスクリーンに映される主人公は私じゃないし、その相手にしたって私の運命の人じゃないのだ。

 

 他人の恋愛ほど見ていてばかばかしいものもないと思わない?

 

 私はオーディエンスではなくプレイヤーになりたいの。

 

 だいいち、恋愛というものはふたりっきりの閉じた世界で行われるべきだ。

 

 ふたりの恋路を見守る第三者――つまり私なんだけど――の存在は野暮というもの。

 

 真に完璧な恋愛映画があるとしたら、それはきっと無人のシアターでひっそりかかっている。

 

 少なくとも私の恋愛はそうあってほしい。

 

 

     1

 

 けっきょく一睡もできなかった。

 

 寝不足の祟った顔は、目に見えてむくんでいた。

 

 勇気を出してすみれにメッセージを送ったのは、もう二か月ほど前のことだ。

『今度会ってくれますか?』という文章を、私は送信してすぐに削除した。にもかかわらず、すみれはそれを見てくれていて、簡潔に了承の返事をくれた。

 

 メッセージを削除した直後、頭から布団を被ってそのまま寝てしまった私が、翌朝すみれからの返信を見て飛び上がったのはいうまでもない。

 

 しかし、そのやりとりから実際に会う約束を取り付けるまでには、かなり長い時間がかかった。そこには愛おしくも焦れったいさまざまな恋の駆け引きがあったのだが――ここでは割愛することにしよう。

 

 大事なのは、今日が約束の当日だということ。

 

 それなのに昨夜は緊張のせいでうまく眠れず。結果、コンディションは最悪だった。

 くすんだ顔色。開いた毛穴。むくみのせいで小さく見える目。

 ひどい顔だ。こんな状態ですみれに会うなんてできない。

 

 ベッドから起き上がってすぐに熱々のシャワーを浴びた。血の巡りをよくすれば、多少はマシになるはずだ。さらに、スキンケアを丁寧におこない、肌を充分に保湿した。

 

 下着姿で化粧台の前に座り、自分の顔を確認する。確かに寝起きに比べると改善されてはいるものの、まだ完璧とはいいがたい。

 

 化粧でカバーしよう。しかしここでも寝不足が悪さをした。ファンデーションの乗りが悪く、色むらができたりして、どうしても納得いくかたちにならないのだ。

 

 試行錯誤しながら、私はすこし前に観た『サブスタンス』という映画を思い出していた。その映画には、ちょうど現在の私のようにデート前の化粧に納得がいかず、強迫的(きょうはくてき)に化粧直しを繰り返したあげく出かけること自体をやめてしまうというくだりがある。残酷シーンや哀しいシーンがたくさんあって、当時は終始にこにこしながら鑑賞することができたのだが、まさか私がデミ・ムーアと同じ愁嘆場(しゅうたんば)を演じることになるとは……。

 

 私は鏡のまえで苛々(いらいら)した。

 

 なんで、こういう日に限って。

 

 すみれに不細工(ぶさいく)な顔を見せたくないのに――。

 

「はあ~~~」

 

 私は盛大なため息をついて、項垂れた。そばで《仲介者(エージェント)》のロミオが心配そうに見守っているのが分かるが、彼に気を遣って明るく振舞う余裕はなかった。

 

 こうなったらもう、しかたないか……。

 

 私は最終手段をとることにした。

 

 中途半端な化粧をすべて落とす。今日のために散々悩んで準備した勝負用コーデを放置し、ラフというか野暮なスウェットを選んで着た。

 

変身(メタモルフォーゼ)!」

 

 そう唱えると、私の装いが変わった。ヘアカラーが紫に変化し、服装が魔法少女のそれになる。ただし、鏡にうつる私の顔色はそのままだ。相変わらず調子の悪そうな楪柚月がそこにいる。

 

 最終手段とは魔法少女の恰好(かっこう)ですみれに会うことではない。

 

 ――《幻惑魔法》。

 

 それが私の持つ《固有魔法》。

 その効果は自身のすがたを任意の対象に変えるというもの。

 

 私は《幻惑魔法》を使用し、髪の毛の色をもとのダークブラウンに戻した。魔法少女の衣装を高価で手が伸ばせなかった洋服に変え、くすんだ肌を明るくし、むくみをとって目元をスッキリさせた。ついでに顔を小さく、ウエストを細く、脚を長くした。最後のは、まあ、ご愛敬というやつでしょう。

 

 これが最終手段。魔法で不調を嘘の絶好調に上塗りすること。

 

 まるでSNSにアップする自撮り写真を加工するようだ。そこに写っている私は、本当とはいえないのかもしれない。

 

 それでも――。

 

 好きな人の前では完璧な私でありたい。たとえそれが偽りであったとしても。

 

「うふふ」

 

 私は満足して頷いた。鏡にうつる私が追従する。

 

 これならすみれのとなりに立っても恥ずかしくない。

 

 午前一一時。私は家を出た。




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と言いますのは、本作に関連し「『皆を救いたいだけなのに~』非公開の話と、番外編について。」と題した活動報告を投稿したからです。

本作は電撃小説大賞への応募にともない2026年3月いっぱいで完全非公開となります。
落選すればすぐに復活しますし、カクヨムで応募するため引き続きweb上での閲覧は可能です。

本件につきまして、詳細は活動報告に書いておりますのでそちらをご確認ください。
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